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2009.06.1821:33

ブーンは18歳になったようです

「開けろ、エロ本を売れ」

        ――漫☆画太郎著「ババアゾーン」より

―――――――――――――


プロローグ『解禁』

( ω )「…………」

ずっと、時計を眺めていた。
帰宅してからずっと。夕飯を食う時も。風呂に入る時も。
神聖な儀式である自家発電の最中、そして達する瞬間さえ、時計を眺め続けた。

ずっと、この日を待ち続けてきた。
アレの存在を知ったあの日からずっとだ。
そして明日、ようやく禁が解かれる。
ボクは、それが待ち遠しくて堪らなかったんだ。







あと、三秒――――二秒――――



そして――――遂に時計の短針と長針が零で重なった。



( ω )「……来た」

体が小さく、小刻みに震えた。
体の奥底から湧き上がる、はちきれんばかりの衝動に震えた。
でも、それも仕方のない事だろう。待ちに待ったこの日が、遂に来たのだ。
今までいついかなる時もこの日の事を心の何処かで考えていたのだ。

今日は、ボクの誕生日。ボクも、ついに18歳。
これでもう、携帯に保存したエロ画像で自家発電なんて情けない真似とはサヨナラだ。
堂々と誰にも咎められる事無く本屋でエロ本を買える。
そして、携帯とは比べ物にならないサイズのエロスを堪能出来るのだ。

素晴らしい。
まるで、世界がボクに微笑んでいるようだ。
誰も僕を止める事など出来はしない。




( ω )「……」

気付かぬ内に、ボクは右手で拳を作っていた。
いつの間に……いや、違う。
我が相棒も、エロ本という新たなる相手を待ち望んでいるのだ。
ならばやるべき事は一つ。
膨張しきった十代の逸物の様に、勢いよく立ち上がりながら拳を突き上げ、












(#゚ω゚)「STAND UP TO THE VICTORY!」









そしてボクはカーチャンに殴られた。


プロローグ「副題:夜中に叫ぶのは近所迷惑です」糸冬



―――――――――――――
第一話『挑戦』

隣町の本屋、VIPマーケット。
ボクはその店内で立ち尽くしていた。

(;^ω^)「ぐぅ……迂闊に近寄れないお」

エロ本コーナーは、本屋の中でその一角だけ明らかに空気が違っていた。
そこの空間だけ瘴気が満ち溢れている。
臆病者ならば前の通路を通るだけで失禁してしまいかねない、魔界と呼称しても良さそうな空間。
タフガイと一部で噂されているボクでさえ、その領域に十秒留まれば射精。
悠長に本を選びなどしていれば、MISAKURAが発動してしまうだろう。
3mほど離れた場所にいる今でさえ、その瘴気に触れてしまった僕の膝は生まれたての小鹿の様に震えている。
何という禍々しさ。何という淫猥さ。

(;^ω^)「……ここまでとは思ってなかったお」

……正直、ボクはエロ本コーナーを甘く見すぎていた。
本を手に取る前に崩れ落ちかけるなどと、誰が予想出来ようか。

(; ω )「仕方ないお、今日は諦めて……ッ!」

待て……ボクは、今何を考えた。
諦めるだって?
18歳になった瞬間の昂りをもう忘れてしまったのかボクは!
今までの屈辱(オカズは携帯のエロ画のみ)を忘れたのかボクは!
昨日、相棒と共に叫んだアレを忘れてしまったのかボクは!








否ッ!ボクは忘れてなどいないッ!




ボクの心はッ!まだッ!折れてなどいないッ!




ボクはッ!まだ倒れる訳には行かないんだッ!












(#゚ω゚)「STAND UP TO THE VICTORY!」










拳を掲げながらの絶叫。
そう、ボクはまだ戦えるんだッ!

(´・ω・`)「大変申し訳ありませんがお客様、他のお客様の迷惑になりますので……」

( ^ω^)「ですよねー」

そしてボクは本屋から追い出された。


第一話『副題:店内での他人の迷惑になる行為は控えましょう』糸冬




―――――――――――――
第二話『親友』

翌日、ボクは再びVIPマーケットを訪れた。
当然エロ本を購入するのが目的だ。
だが、それより先にあの店員に謝らなければならない。
お店に迷惑をかけるなんて、エロ本を買える18歳の大人として恥ずべき行為を行ったのだから。

( ^ω^)「えっと……いたお」

(´・ω・`)「いらっしゃいませ……って、君は昨日の」

( ^ω^)「昨日はホントすいませんでしたお」

(´・ω・`)「反省しているのならいいんですよ。おっと、他のお客様が呼んでいますので」

失礼します。そう言い残して店員さんは客の声のする方へと消えていった。

( ^ω^)「いい人だったお」

今後は漫画本を買う時はこの店を利用する事にしよう。
ボクはそんな事を考えながら振り返り、昨日の事を思い出しながら足を進める。





( ^ω^)「何もせずに行っても、昨日の二の舞だお」

自我を失っての絶叫。
あれを繰り返してしまえば、今度は出入り禁止になってしまうかもしれない。
出来る事なら出入り禁止だけは避けたい。
町内の本屋だと、知り合いに出会う確率が高過ぎるのだ。
そんな事になったら「エロリスト」などという不名誉な渾名が付けられてしまう。
エロ本のジャンルによっては「エロリーマン」や「痴漢者トーマス」などと言う……
ああ、何て恐ろしい。そんな事になったらボクの人生は破滅だ。
ならば、どうすれば……

( ^ω^)「……お?」

(;゚∀゚)「くぅ……」

足を止めたボクの視線の先には、エロ本コーナーを窺う一人の男。
僅かに見える横顔はとても見知った顔。幼い頃からの親友であるジョルジュだった。
彼の体は小さく震え、その両拳は硬く握られている。
間違いない。彼はエロ本コーナーの瘴気に当てられてしまったのだ。
早く助けないと……彼も追い出されてしまうッ!





(;゚∀゚)「糞ッ……俺は……俺はよぉッ!」

( ^ω^)「ジョルジュ、このまま進んでも無駄死にするだけだお」

(;゚∀゚)「ぶ……ブーン!?何でここに……」

( ^ω^)「それより一度引くお」

(;゚∀゚)「それは出来んッ!逃げるような真似が出来るかよぉッ!」

(#^ω^)「ここはボクらみたいな素人が立ち入れる場所じゃないお!」

(;゚∀゚)「……チッ」


~~~


……辛うじて近くの公園へと退避した僕らは、精神的疲労の余りその場にへたり込んでしまった。

(;^ω^)「……危なかったお」

(;゚∀゚)「……ああ」

本当に危なかった。まさに紙一重。
あと数秒遅かったらジョルジュは精神崩壊を起こしていた事だろう。





( ゚∀゚)「そういやよ、何でお前がここに?」

( ^ω^)「多分……いや、間違いなくジョルジュと同じ理由だお」

( ゚∀゚)「……なるほどな」

僕の言葉にジョルジュがニヤリと笑い、その手を差し出す。
そうだ。ずっと昔からそうだった。ジョルジュが一緒なら、怖いものなど存在しなかった。
そして今回も、ボクらなら……そう、ボクらならきっとやれるッ!






( ^ω^)「我が名はブーン!」


( ゚∀゚)「我が名はジョルジュ!」


( ^ω^)「「我らッ!一心同体阿吽の呼吸ッ!」」(゚∀゚ )


( ^ω^)「「今こそ叫ばん誓いの言葉ッ!」」(゚∀゚ )










(#゚ω゚)「「STAND UP TO THE VICTORY!」」(゚∀゚#)










今この瞬間、最強のコンビが再結成された。
そして、



(#^ω^)「虹最強に決まってんお!」


(#゚∀゚)「惨事のおっぱいに勝てる訳ねーだろ!」


崩壊の危機も迎えていた。


第二話『副題:嗜好に於いてNo1は存在しない。OnlyOneのみが存在する』糸冬




―――――――――――――
第三話『怪物』

拝啓
皆さん、ボクらは何時もの如く隣町の本屋に来ています。
未だ購入までは到っていないものの、あの領域から2m以上の距離ならば平静を保てる様になりました。

( ^ω^)「おっおっ、この調子ならもうすぐ買えるんじゃないかお」

( ゚∀゚)「だな。やっぱ俺らは無敵だぜ」

ボクらが組めばどんな困難にも打ち勝てるし、勝てる者など存在しない。
二人とも、そう心から確信していた。

だが……その根拠のない自信は、ある男の登場によって打ち砕かれた。

('A`)「あ……これにすっか」

やる気が全く無いかの様な言動と格好でエロ本コーナーに侵入したその男。
適当にエロ本を手に取った様にしか見えなかった。
だからこそ……





(;^ω^)「なっ……」

( ;゚∀゚)「まじ……かよ……」

だからこそ、ボクらは戦慄した。
あらゆる動作が自然すぎたのだ。
しかも、自然さの中にあらゆる動作が含まれている。
表紙に記載された作品名、作家名のチェック、表紙の絵師名。
そして……いや、これはボクの予想にしか過ぎない。
こんな事が出来る人間がいる筈が無い。人間にこんな事が出来る筈が無いんだ!

(; ω )「……ある筈が無いお」

(; ∀ )「……ある筈がねえ」

(; ω )「アイツ……あの一瞬で、金額、厚み、作家。その三つを統合して……」

(; ∀ )「……一番コストパフォーマンスの高い奴を選びやがった」

思わず腰が抜けそうになるが、そんな事は許されない。
ボクらはあの化け物の挙動全てを目に焼き付けなければならない。
天が与えてくれた機会を逃す訳には行かないのだ。





(;^ω^)「み、見失っちゃ駄目だお!」

(;゚∀゚)「分かっている、奴はレジに向かっている!」

ボクらは奴を舐めてなどいないつもりだった。
だが、エロ本コーナーさえ抜ければ後はどうとでもなる。
心のどこかでそんな事を考えていたのかもしれない。
だからこそ、そんな甘えた気持ちを粉々に吹き飛ばされてしまったのだろう。

そして――――ボクらはレジで更なる戦慄を味わう事になった。


第三話『副題:不審者ってレベルじゃねーぞ』糸冬




―――――――――――――
第四話『神業』

(; ω )「まさか……」

(; ∀ )「なんて事を……」

奴がレジに差し出したのは一冊、あの時チョイスしたエロ本だけ。
考えられない。まさか、カモフラージュをしないなんて。
エロ本のカモフラージュは、隣町の本屋と並ぶ基礎中の基礎の筈。
それをやらないなんてありえない。
あの奇跡的な挙動の一つ一つが偶然だったというのかッ!

(  ω )「アレはたまたまだったのかお……」

ボクは正直失望していた。
アレほどの行為を一瞬で行う歴戦の勇者と思われる男。
彼がこんなイージーミスを犯すなんて……

(;<○>∀<○>)「……違うッ!アレは全て計算済みの行為なんだッ!」

(;゚ω゚)「おまっ!きめええええええええええええええええ!」

限界以上に目を見開いたジョルジュの叫び。
ボクはその顔のキモさの余り、その言葉の意味に気付く事が遅れた。





(´・ω・`)「税込みで650円になります」

('A`)「じゃ、丁度で。それと袋はいいです」

(´・ω・`)「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

( ゚ω゚)「――――ッ!」

言葉が浮かばない。
確かに、確かに複数の本を買えば紙袋に入れるペースが遅れる。
そもそも袋に入れる時点でかなりの時間を必要とする。
ならば単品、袋なしなら時間は劇的に短縮されるだろう。
だが、一歩間違えば変態扱い。奴はそれが怖くないのか?

( ∀ )「あれが……」

(  ω )「もう、言うなお……」

もう、ボロボロだった。
入店したときに満ち溢れていた自信。そんなものはとうに朽ち果てていた。
そしてついさっき、まさに神業としか言えない行為を見た時、ボクは確かに聞いたんだ。
枯れ木の折れる様な、心にヒビの入る音を。

第四話『副題:敗北の味は酷く苦く』糸冬




―――――――――――――
第五話『決意』

……彼が出て行った後も、ボクらは店内に立ち尽くしていた。
ジョルジュは人目に憚らず涙を流していた。

( ;∀;)「……人って、あの領域まで辿り着けるんだな」

(  ω )「……お」

( ;∀;)「しかもさ、俺らよりちょっと上くらいに見えたじゃん」

(  ω )「……お」

( ;∀;)「俺らもさ、あんな風になれるよな?」

(  ω )「でも……」

( ;∀;)「なれるって!俺ら二人なら何でも出来る!そうだろ?」

(  ω )「……」

……そうだった。
ボクらはコンビを組めば無敵だ。
今までがそうであったように、これからもそうでなければならない。




ボクは増長していたのではないだろうか。
努力し、高みを目指す事を忘れてはいなかっただろうか。
一度、心にヒビが入ったからなんだ。
なぁに、却って耐性が付く!

( ^ω^)「ジョルジュ!」

( つ∀;)「おう!」

( ^ω^)「あの人に、弟子入りするお!」

( ゚∀゚)「おう!」

心は折れてなどいなかった。
ただ、傲慢さという古い皮膜を脱ぎ捨てたに過ぎなかった。
ボクはまだ上を目指せる。
二人でならもっと上を。

第五話『副題:この手を離すもんか真っ赤な誓い』糸冬




―――――――――――――
第六話『毒男』

('A`)「はぁ……恥、捨ててるよなぁ」

公園のベンチに座り、つい先ほど買ったエロ本を見つめながら、俺はため息を吐いた。
初めてエロ本を買った時の事は、今でも目を閉じれば思い浮かぶ。
中一の冬休み、お年玉を握り締めて近所の駄菓子屋で買った。
あのときの胸の熱さ、初めてエロ本で抜いた時の感動は今でも思い出せる。

だが、20になった今はどうだ。
恥じらいなどどこにも無い。ときめきもどこにも無い。
エロ本はエロければ、あとはどうでもいい。
そんな浪漫も糞も無い思考だけでエロ本を買っている。

('A`)「彼女もいねえしなぁ……かといって……」

風俗は駄目だ。あれは値段が高すぎる。
一発抜くのにヘルスならエロ本13冊分、ソープに到っては50冊分だ。
そんなコストパフォーマンスの悪いものに貧乏学生が金を出せる訳が無い。





('A`)「ハァ……」

俺は何をやっているのだろう。
体が丈夫な訳でもない。頭が良い訳でもない。
ただ漠然と周囲に流されて大学へと進学し、そこで意欲的に何かを学ぼうという事も無い。
ただ適当に授業を受け、単位を取れればどうでも良いなどと考えている。
多分、ずっとこのままなのだろう。
好きな人に告白も出来ないまま就職し、漠然とした日常を過ごすのだろう。
童貞のまま。

('A`)「……欝だ……」

死のうかな。どうせ良い事ないし。
そんな事を考えながらページを捲る。
目に映るのは目の大きな少女が恥らいながらセーラー服を脱ぐ姿。
何気なく話を追ってみると、どうやら弟が借りたDVDを割ってしまったらしい。

('A`)「いやもうありきたりすぎだろ……」

何たるありがち。何たるドジッ子姉。何たる意外とでかい胸。
ああもう大好きだ。エロいの大好きだ。
食費削ってエロ本買っちゃうくらいに大好きだ。
もうやっちゃうぜ。漫画と一緒にやっちゃうぜ。





(*'A`)「DVD!DVD!」

(*^ω^)「「DVD!DVD!」」(゚∀゚*)

(*'A`)「DVD!DV……あれ?」

(*^ω^)「「DVD!DVD!」」(゚∀゚*)

(;'A`)「……」

……なんなんだこいつらは。いったいどこから現れた。
何でこんなにノリノリなんだ。訳が分からん。

(*^ω^)O彡゚「「DVD!DVD!」」゚ミO(゚∀゚*)

それにしても、何でこいつらはの目はこんなに輝いているのだろう。
なんで、俺の眼にはこいつらが眩しく映るのだろう。

……そいつは考える迄も無い事だった。
きっと、こいつらは俺が無くしたあの頃のときめき。
そいつを持っているんだろう。
だから、俺はこいつらから眼が離せないのだろう。

第六話『副題:こんな絡まれ方はいやだシリーズより抜粋』糸冬




―――――――――――――
第七話『師弟』

強い陽射しの降り注ぐ公園のベンチ。
俺はその前に立つ二人を見つめながら、半ば呆然としていた。
冷静に考えると、こいつらは俺をからかっているんじゃないかと思えてきたのだ。

(;'A`)「なぁ……お前ら何なんだ」

(*゚∀゚)「俺らはしがない18歳なりたてです!」

(*^ω^)「弟子にしてほしいお!」

なんて眩しい眼をしてやがるんだこいつら。
そんな眼で見られたら何でもお願い聞いて……って、何の弟子だよ。

(;'A`)「ちょっと待て。俺アレだぞ、しがない大学生だぞ。そんな俺の弟子になって……」

(*゚∀゚)「その本を買う時の神業、しかと拝見させていただきました!」

(*^ω^)「ぜひともボクらにその技を!」

('A`)「……なるほど」

……きっと、これは運命なのだろう。
神は、俺にヒヨッ子のこいつらを導けといっているのだろう。
ならば、その天啓に従おう。
この天啓は幻かもしれない。
7カウントで撤退してしまうかもしれない。




……それでも構わない。
こいつらが自らの手でエロ本を手に出来るのなら、どんな結果でも受け入れようじゃないか。
だが、その前に……

(’A`)「弟子にする前に一つ聞く」

( ^ω^)「はいっ!」

( ゚∀゚)「何でしょうかっ!」

(’A`)「お前ら、彼女とか……いないよな?」

これだけは聞いておかなければならなかった。
彼女持ちは敵だ。それだけは譲れない。

(  ω )「……」

(  ∀ )「……」

(;’A`)「あー、スマンかった」

やはりと言うか何というか。
俺もいないから人の事など言えはしないが。




('A`)「じゃあ、明日の九時、ここに集合な」

( ^ω^)「ハイッ、師匠!」

( ゚∀゚)「では、また明日!」

(*^ω^)O彡゚「「見送りの!DVD!DVD!」」゚ミO(゚∀゚*)

(;'A`)「ちょ……お前ら落ち着け」

(*^ω^)O彡゚「「見送りの!」」゚ミO(゚∀゚*)






(#゚ω゚)「「STAND UP TO THE VICTORY!」」(゚∀゚#)






(;'A`)「あぁ……」

神様、クーリングオフは可能ですか?

第七話『副題:無理(笑)』糸冬




―――――――――――――
第八話『講習』

師曰く、エロ本購入というものは非常に恥ずかしいものだ。
長年購入してきた自分でさえ、レジが女子なれば時間を改めてしまう。
自分でさえそうなのだ。若輩者の貴君らでは、男の店員でも失禁してしまうだろう。
だが、それらは全て心の問題なのだ。
だからお前ら、

(’A`)「恥は捨てろ。それが一番手っ取り早い」

(;^ω^)「……」

(;゚∀゚)「……」

言葉一つ出ない。まさに絶句。そうとしか言い様が無かった。
ボクらはスケベと呼ばれる事を何よりも恐れるピュアボーイズ。
トイレに行く時は「お花を摘みに」と、頬を染めながら言ってしまうピュアボーイズ。
大の時は「世界に一つだけしか咲かない花を摘みに」そう言ってしまうほどの純情さ。
そんなボクらが恥を捨てるなど……





('A`)「無理、だろうな。だから最初に教える事は、恥の軽減方法だ」

(;^ω^)「それを早く言ってくださいお」

(;゚∀゚)「心臓が止まるかと思いましたよ」

('A`)「まずは格好。とにかく無難な格好を選べ」

なるほど、木を隠すなら森の中と言う所か。
その点においてボクは完璧だろう。何故なら

('A`)「まずブーンはアウト」

(;^ω^)「えっ、何でですかお?」

('A`)「お前、黒尽くめとか……厨二病丸出しの格好じゃ誰だって覚えるぞ」

(; ω )「あああ……」

( ゚∀゚)「じゃあ俺はセーフですか?」

('A`)「全然。パンツイン、リュック、バンダナにケミカルウォッシュ。その組み合わせはオタ過ぎる」

(; ∀ )「ぐはぁ……」

('A`)「店には不特定多数の客が来るんだ。だから、普通は一々客の顔など覚えていない。けどな」




唐突な沈黙。
その沈黙は重く、たった何秒間かの時間がまるで数時間の様に長く感じられる。
そして……師匠が小さく溜息を吐いた後、ようやく次の句が紡がれた。

('A`)「特徴的な奴ってのは、嫌でも覚えちまうんだよ」

(;^ω^)「つまり、この格好ではアウトって事ですかお?」

(;゚∀゚)「普通の格好だと思ったんだけどなぁ……」

('A`)「……お前らの格好なら、厨二病とガチヲタってとこか」

(;^ω^)「それって、なんですかお?」

('A`)「何って、渾名だよ渾名。特徴的な奴はな、渾名が付けられちまうんだよ」

(;゚∀゚)「まさか店員が俺を見ながらひそひそ話してたのって……くぁせdrftgyふじこp;@」

唐突に奇声を発しながらのた打ち回るジョルジュ。
きっと思い当たる節があったのだろう。
その点ボクは……




(;゚ω゚)「くぁせdrftgyふじこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉまいがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

思い当たる節がありすぎて死んだ。
百万十回死んだ。百万回生きた猫余裕で越えた。ナンテコッタイ。
今まで、「あのハニーフェイスな坊やってかわいくない?」と言っていると思っていたアレ。
「母性本能くすぐるって言うか、可愛い系って言うか」と言っていると思っていたアレ。
それらは全て嘲笑だったのか。
もういいや、どうせだから百万十一回目に突入しとこう。

(  ω )「あばばばばばばばばばば」

(  ∀ )「あががががががががががが」


~~~


('A`)「落ち着いたか?」

(;^ω^)「ご迷惑おかけしましたお」

(;゚∀゚)「サーセン」




('A`)「よし、それじゃあユニクロ行こうか」

( ^ω^)「あ、ちょっと待ってください」

('A`)「ん、庶民の味方ユニクロに何か問題でもあるのか?」

( ^ω^)「いえ、そうじゃなくてですね、学生服なんてどうですかお?」

師匠は最初の方で目立たない無難な格好と言った。
ボクはその言葉で、一つの名案が浮かんだのだ。
夏休みではあるものの、補修や部活などのせいか、学生服を着ている人間は結構多い。
ならば学生服はカモフラージュになるのではないか。そう考えたのだ。
だが

( ゚∀゚)「あれ、師匠?」

( A )「……それだけは止めとけ」

……師匠の反応は、まるで昔の古傷を抉られた様な、悲壮感の漂うものだった。
見ているこちらまで死にたくなる様な、そんな死臭漂う表情。
いったい師匠の過去に何があったというのだろうか。




( ゚∀゚)「なにか、あったんですか?」

( A )「友人がな、制服でエロ本を買おうとして……レジで説教されたんだよ。店員のババアに……」

(;^ω^)「うわぁ……」

なんという恥辱。なんという羞恥プレイ。
そんな事されてしまったら間違いなく本屋恐怖症か引きこもりコース。
本屋にそれほどまでに恐ろしい罠があったとは。
ボクらはその犠牲を無駄にしてはならない。その犠牲を糧にしなければ、彼も報われない。

(;^ω^)「で、その人は……」

('A`)「一時期引きこもってたけど……まぁ、今は元気だな。言動におかしいとこがあるけど」

(;゚∀゚)「……」

(;^ω^)「……」

第八話『副題:本屋には罠がいっぱい』糸冬




―――――――――――――
第九話『訪秋』

朱色の空を眺めながら、ボクとジョルジュは公園のベンチに座っていた。
涼しげな風と、少しばかり涼しくなってしまった財布。
それらは、夏の終わりをそっとボクらに告げていた。

( ゚∀゚)「もうすぐ、夏休みも終わっちまうな」

( ^ω^)「……おっ」

夏の終わりを惜しむような呟き。
もうすぐ、終わってしまうのだ。高校最後の夏が。
すこし、寂しいものがあった。
けど、心のどこかで仕方が無いと諦めもしていた。

( ^ω^)「夏休み終わったら、受験が終わるまでこんな風に遊べないお」

( ゚∀゚)「……」

( ^ω^)「ジョルジュ?」

( ゚∀゚)「……ウチのクラスのペニサスって知ってるか?」

( ^ω^)「ペニ……サス……」

ペニスペニスペニス……ちんちん。ω。
思い出した、ちょっと地味なジョルジョのクラスメイトか。





( ^ω^)「一応顔は分かるけど、それがどうかしたのかお?」

( ゚∀゚)「お前にだから言うんだからな。他の奴に言うなよ。絶対笑うなよ」

( ^ω^)「前向きに対処するお」

(* ∀ )「俺、夏休み中にエロ本買えたら……あいつに告白するんだ」

(;゚ω゚)「……」

何という事だ。
ジョルジュが口にした言葉は、間違いなく死亡フラグ。
というか、その発言の前半部は少しばかりペニス訂正ペニサスに失礼なんじゃないだろうか。
そういのは普通試合に勝ったらとか、戦争で生き残ったらとか……
あ、後者の死亡臭半端ないな。

( ゚∀゚)「大体、エロ本も買えない奴がさ、告白なんて出来ると思うか?」

(;^ω^)「エロ本買った事も告白したことも無いから分かんないお」

( ゚∀゚)「でさ、思うんだ。好きって気持ちが強いほど、告白する時恥ずかしくなるんじゃないかって」

( ^ω^)「んー……」

( ゚∀゚)「だからさ、せめてエロ本で勢い付けようって、そう思ったんだ俺は」




ジョルジュの気持ちは分かる。
生半可な気持ちじゃない、好きで好きで堪らない人に告白する時は、きっと恥ずかしくて顔が真っ赤になるだろう。
でも、それには恥ずかしいだけじゃなく、色んな感情が混じっているだろう。
ボクが思うに、恥ずかしいと同じくらいに恐怖があると思う。
振られてしまったら、その好きで好きで堪らない感情の行き場がなくなってしまうから。
それは、とても恐ろしくて悲しい事だから。

( ゚∀゚)「マジ、想像だけで顔赤くなるとかどんだけよ」

( ^ω^)「ねえ、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「……なんだよ」

( ^ω^)「恐くは、ないかお?」

( ゚∀゚)「振られた場合考えたらめっちゃ恐ええ。でも、どんな結果でも受け入れるさ」

そう言いながらも、ジョルジュは笑っていた。
恐怖は勿論ある筈だ。だが、彼は勇気で克服したのだろう。
黄金の精神を秘めているであろう瞳が、雄弁にそれを物語っていた。





( ^ω^)「ジョルジュ、ボクは君が友人である事を誇りに思うお」

( ゚∀゚)「……あんがとよ」

( ^ω^)「お、本屋に行ってるねーちゃんめっちゃ美人だお」

( ゚∀゚)「ナイスおっぱい!」

こうして、ボクらは完全に日が暮れるまで話し続けた。



諸事情により、ジョルジュの時だけエロ本が売り切れれば良いのにと思った。

第九話『副題:他人の惚気話で殺意急上昇』糸冬




―――――――――――――
第十話『店員』

(´・ω・`)「……この子達は何なんだろう」

監視カメラで録画しておいた映像を見ながら、僕は独り呟いた。
店というのは色んな人が来る場所だ。
だから、時折訳の分からない人が来るのも仕方のない事だと思っている。

(´・ω・`)「うーん」

けど、この子達はそんな訳の分からない人たちとは何かが違う。
確かに挙動不審だ。物凄く挙動不審だ。童貞臭のプンプンする不審者二名だ。
でも、何故だろう。
他のキ○ガイじみた人達の時と違って、彼らを嫌悪する気持ちが全く湧かない。




(´・ω・`)「こういう眼が……覚悟している眼。って奴なのかなぁ」

彼らの強い信念を秘めた、一点の曇り無き眼差し。
その眼は食い入る様に、店の一角を見つめていた。
その一角、その名はエロ本コーナー。

(´ ω `)「は、ははは……フゥハハハーハァー」

思わず笑みが漏れた。

アレを求めるか。アレを求め、覚悟をしたか少年達よ。

甘さとほろ苦さの混じる青春時代、その象徴とも言うべき物を求めるか。

求めるならば汝のその手でその重みを知れ。そして、その手で掴み取れ。

勇気を振り絞り、智謀の限りを尽くしてレジまで持ってくるのだ少年達よ。

そして、我らを求めよ。我らは願いに応えよう。











我ら店員一同ッ!レジにて心よりお待ちしておりますッ!










~~~


( ´∀`)「てんちょー、面接希望の大学生の子がきたモナー」

(´・ω・`)「えっ、もうそんな時間?」

( ´∀`)「ちょっと早めに来たって言ってたモナ。で、これが履歴書モナ」

(´・ω・`)「どれどれ……」

( ´∀`)「……」

(´・ω・`)「……ねえ」

( ´∀`)「モナ?」

(;´・ω・`)「志望動機の所にさ、一目惚れって書いてあるんだけど」

(;´∀`)「……モナに言われても困るモナ」


第十話『副題:万引き犯?ぶち殺すぞ~それがVIPマーケットクオリティ~』糸冬




―――――――――――――
第十壱話『秘匿』

(’A`)「今日は親不知についてやっとくか」

師匠は何の前触れも無く、唐突にそう言った。

( ^ω^)「……?」

( ゚∀゚)「歯とエロ本に何の関係が?」

(’A`)「歯じゃなくてだな……字の如く、エロ本を親の知らぬ存在とする方法だ」

( ゚∀゚)「本の隠し場所なら俺はちゃんと考えてますよー」

(;^ω^)「あ」

ボクは全く考えていなかった。
何故、これほど大切な事を忘れていたのだろう。
エロ本を家族に見られる恐怖。
机の上に置かれていた時の絶望。
夕食時に家族から向けられる憐憫の眼差し。
そして……ボクにその視線を向けた父親はきっとこう言うだろう。













「ブーン。お前も、大人になったんだな」











(;゚ω゚)「ノォォォォォォフゥゥゥゥゥゥゥチャァァァァァァァ!」

(;゚∀゚)「うおっ!?」

(;’A`)「ちょっ!?」

想像だけで魂が抜けそうになった。
そんな台詞が親の口から出た日には、間違いなくボクは発狂する。
直後、ボクの世界はそこで終わるだろう。
何という理不尽なリスク。何という理不尽な罰。
まるで、本の存在自体が穢れであると言わんばかりだ。
何故に人この様な物を作り出したのだろう。
こんなにも罪深い存在さえ無ければ……




否……罪深い存在だからこそだろう。
罪深く、淫靡。人の業の権化。
雄生命体としての本能を強く刺激する、ネクロノミコンと並ぶ禁断の書物。
其れこそがエロ本なのだ。
そういう存在だからこそ、人は古来から其れに惹かれ、畏れを抱きながらもそれを求めるのだ。性的な意味で。

(  ω )「これが……真理……」

(;゚∀゚)「お前、どうかしたのか?」

(’A`)「……悟ったか」

( ;ω;)「頭でなく、心で理解しましたお」

(;゚∀゚)「え?え?マジなんなの!?ねえ!」

何か本題から外れてしまった気がするが、ボクは気にしない事にした。






~~~


(;゚∀゚)「あ゙ー、きになるぅー」

( ^ω^)「これは自分で気付かなきゃいけない事だお」

('A`)「じゃ、それじゃあボチボチやってくか。まず隠し方な」

(;゚∀゚)「うぅー」

('A`)「言っとくが、ベッドの下、箪笥、引き出し。この三つは見つかる場所TOP3だ」

(;゚∀゚)「ゲェッ!」

(#゚ω゚)「嘘だッ!」

('A`)「ここもな、悪い訳じゃないんだ。ちゃんと整理整頓と掃除やってればの話だが」

(;^ω^)「今日からちゃんと掃除するお」

(;゚∀゚)「俺も……」

そういえば掃除は母親に任せっ放しでここ数年やっていない。
だが、やらねばならない。見つかって自宅から居場所が消えるのは真っ平御免だ。





(’A`)「一応、お勧めはプラモや靴の空箱。それに、使ってない鞄の中とかか」

(;^ω^)「なっ、そんな手があったなんて……」

(0。゚∀゚)「古いリュックの輝く時代ktkr!」

眼から鱗とはまさにこの事だろう。
空箱は隅に置いておけば問題ないし、鞄もフックに掛けておけば弄られる事もない。
なんという神算鬼謀。恐るべし……いや、さすが師匠と言うところか。
だが、それを実行する前に一つ、大きな問題があった。




(;^ω^)「師匠、両方とも部屋に無いですお……」

('A`)「……お前、兄弟とかいるか?」

(;^ω^)「いえ、一人っ子ですお」

('A`)「少年ダディとか部屋に積んでたりするか?」

(;^ω^)「積んでますお」

……この質問は何なのだろうか。
エロ本を隠す事に何の関係があるのか全く分からない。
一体師匠は……




('A`)「じゃあ、それに背表紙を壁に向けて挟め。他に何冊か同じようにすると最高だ」

何を言ってるんだ、正気かこの人は。
エロ本を外気に晒すだと?
そんな触れようと思えば触れる事のできる場所に放置するだと?
冗談は止してくれ。そんなふざけた事を言わないでくれ。

(#^ω^)「そんな事……」

出来る訳が無い。怒りに任せてそう言おうとした時、

(#゚A゚)「出来るんだよッ!」

ボクは鋭い眼光に射抜かれた。
何たる威圧感。何たるプレッシャー。何たる本気を出したっぽい雰囲気。
思わず失禁してしまいそうだ。
これが、師匠の本気状態なのか……




(#゚A゚)「外見を隠すのは確かに大事だッ!しかしなッ、それより大事な事があるんだッ!」

(;^ω^)「ゴクッ……」

(;゚∀゚)「ペロッ……」

(#゚A゚)「人にそれを意識させない事だッ!分かるか小童共オォォォォォォォォッ!」

(;゚ω゚)「なんとぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

(;゚∀゚)「ヌァンダットゥエー!」

……なんて人だ。
師匠は、人の意識……そんなものまでも操作しろと言っているのだ。
確かに一流のマジシャンは人の意識を誘導し、観客を魅了する。
けど、ただの高校生であるボクにそれが出来るのか?
エロ本、それのみを求めて突き進んできたボクにそれが出来るのか?




出来る、出来るのだ!







師匠は、ボクらにも出来るからこそ言っている。
そう、不可能ではないッ!
マジシャンのように観客全てを騙す必要など何処にも無い。
騙すべきは……そう、カーチャンただ一人ッ!
ならばやれない事はないッ!

(#゚ω゚)「師匠ッ!やりますッ!」

(#゚A゚)「大事なのは自然さだッ!分かるかブタムシ野郎ッ!?」

(#゚ω゚)「Sir!敢えて乱雑に積む訳ですねッ!Sir!」

(#゚A゚)「YES!ベッドの下に雑誌をデコイとして用意するとより一層YES!」


(;゚∀゚)(……俺、兄貴いるからできねえよ)

ジョルジュはそう言いたかった。
だが、ノリノリな二人を見ていると、そんな事は口が裂けても言えなかった。
誰だって、空気読めない奴と思われるのは嫌なのだから。






~~~


そして30分後、

'A`「ツマリ……タンコーボンナラ表紙ダケカエルノモ……有効デアッテ……」

そこには輪郭の消えかけた師匠がいた。
きっと、本気状態で体力を使いすぎたのだろう。
まぁ、そんな風に冷静に考えている僕も

ω「……ナル……ホ……ド」

塩をかけたられたらロストしそうな感じになっていたのだが。

第十壱話『副題:兄弟姉妹や空気読まない友人がいる方にはお勧めできない』糸冬




―――――――――――――
第十二話『隠蔽』

('A`)「よっし、次はオナヌしている事を悟られない方法だ」

( ^ω^)「おっおっ」

( ゚∀゚)「うっす」

('A`)「とりあえず、使用済みティッシュは全てトイレに流すのが一番確実だな」

( ゚∀゚)「え、ゴミ箱に捨てちゃ駄目なんですか?」

( ^ω^)「ジョルジュ、そいつは愚問って奴だお」

甘いッ!甘すぎるぞジョルジュッ!
使用済みティッシュはゴミ。そこに異論を挟むつもりはない。
だがしかしっ、そこが大きな落とし穴なんだよォ―ッ!





( ^ω^)「使用済みティッシュは特徴的過ぎるお。分かる人が見たらバレバレだお」

(;゚∀゚)「ッ!」

自分の方法を完全に否定されたジョルジョの顔が青褪めるが、ボクは容赦などしない。
確かにボクらは相棒であり親友。それは間違っていない。
しかし、それは「強敵」と書いて「とも」と呼び合う関係。つまりライバルなのだ。
一人の雄として、エロ本を求める者として、戦う宿命なのだ。

( ^ω^)(ジョルジュは三次専門だった気がするけどまぁいいお)




そして、ボクの口が追い討ちをかけるかの様に言葉を紡ぐ。

( ^ω^)「視覚を念頭に入れる事は基礎にして必須ッ!それを失念するとは笑止千万ッ!」

(  ∀ )「なら……お前はどうしているんだ?」

( ^ω^)「菓子の空箱に入れて、ティッシュが見えたり人の手に触れたりしないようにしてるお」

(  ∀ )「……それだけか?」

( ^ω^)「これが……最善の策だと思うお」

……ふと、違和感を覚えた。
青褪めた顔を俯かせ、ボクの言葉に耳を傾けるジョルジョ。
その身体は小さく震え、今にも崩れ落ちんばかりだ。
それなのに……




何故、面を上げた君の目は細められている?
何故、面を上げた君の唇は吊り上っている?

(  ∀ )「は……ははっ、ハァーッハッハッハッハッ!」

唇の両端を限界まで吊り上げ、狂った様に笑うジョルジュ。
何が可笑しい。何が可笑しくてそこまで笑う。

(#゚ω゚)「何がおかしいんだお!」

(  ∀ )「……ティッシュをそのまま捨てていた事……これは重大なミスだったと認めよう」

そう呟くジョルジュの頬が更に歪み、獣が牙を剥く様な笑みを形作る。
まさか……まだ終わっていないとでも言うのか?

( ゚∀゚ )9m「だがな、お前も重大なミスを犯している事に気付いているのかッ!?」

(;^ω^)「そんな訳あるはずがッ……」

ボクの空箱作戦にミスがあるだと?
そんな筈はない。ボクの作戦は完璧な筈だ。
人間の五感の内、触覚、視覚、聴覚、味覚を遮断し……




(;^ω^)「まさか……」

そうか、この場合に於いて視覚と並ぶくらいに重要な感覚。
そいつだけは、空箱では完全にカバーできない。

(;^ω^)「臭い……かお」

( ゚∀゚)「そう、臭いだ」

(;^ω^)「けど……それはジョルジュも……」

(#゚∀゚)「残念ッ!俺はなぁッ!毎日ゴミ箱をファブってるんだよォォォォッ!」

(;゚ω゚)「フヌォッ!」

何て奴……いや……ここは、それでこそ我がライバルッ!と言うべきだろう。
だが、まだ終わってはいない。あちらは五感の内一感を封じたに過ぎない。
こちらは五感の内、四感を封じれるのだ。まだ勝機はこちらにある。




(;^ω^)「まだだお!ゴミ箱見られたら終わる時点で欠点でかすぎだお」

(#゚∀゚)「甘え!俺のゴミ箱は蓋付きよッ!」

(;^ω^)「だけどッ!四感封じる時点でこちらの……」

(#゚∀゚)「消防の頃を思い出せッ!自宅の玄関を開けたらカレーの匂いがした時の事をッ!」

(;゚ω゚)「グアァァァァァァァッ!」

ジョルジュが言った状況でのwktk感は、その時嗅覚が他の四感を完全に凌駕していた証拠だ。
ならば、部屋に入った瞬間に烏賊の香りがした場合も同様ではないか。
悪臭に気付いた瞬間……間違いなく、他の四感を凌駕するだろう。

そして、完全に立場が逆転した今になって大事な事を思い出した。
自分の臭いは自分では余り気付けない。だが、他人はそれに気付くのだ。

(  ω )「皮肉な物だお……自分が放った物であるが故に気付かないなんて……」

( ゚∀゚)「どうやら……」




('A`)「あーもう、トイレに捨てたくないなら、ビニール袋に入れろ。そして口を縛れ」

(;^ω^)「……」

(;゚∀゚)「……」


父さん、母さん、ボクらの師匠はビックリするほど空気が読めません。


('A`)「うるせぇ、空気キャラになるよりは空気読めない方がマシなんだよ」

第十二話『副題:…………あれ?』糸冬




―――――――――――――
第十三話『過去』

('A`)「じゃあ最後に、オナヌをいかにして気付かれないか」

( ^ω^)「ktkr!」

( ゚∀゚)「wktk!」

('A`)「家族の行動パターンを覚えろ。それが全てだ」

( ^ω^)「つまり、安全といえる時間を把握する。という事ですかお?」

('A`)「そうだが……余りに不確定要素の多い家族がいる場合、その限りじゃない」

( ゚∀゚)「無職だったりとかですか?」

('A`)「それもあるが……世の中にはいるんだ。嫌がらせを至上の喜びとする人間が」

(;^ω^)「ま、まぁいますけど……」

(;゚∀゚)「もしかして師匠の身内に……?」

('A`)「ああ……初めての時にな、やられたんだ……」






~~~


……アレは、五年と少し前、初めてエロ本を買った日の事だった。

(*'A`)「フヒッ……フヒヒ……」

エロ本を手に入れた俺は、自分でも驚く程に興奮していた。
ついでに勃起もしていた。
まぁ、それも仕方のない事だろう。
パソコンは高級品。携帯でインターネットはパケ料金が高すぎる。
そんな時代だったからな。

(*'A`)「ハッ……ハァハァハァハァハァハァハァハァ……ハァンッ!」

エロ本を手にして最初の射精はパンツの中。
衣擦れの僅かな刺激による発射だった。




(*’A`)「まぁいいや!さーて、ページオープン!」

あの頃の俺は若かった。
あの時の俺は漲り過ぎていた。
あの瞬間の俺はエロ本に夢中になり過ぎていた。



……だから、気付かなかった。



玄関の開く音を。

階段を上る音を。

廊下の軋む音を。

部屋の引き戸が僅かに開かれた事を。

隙間から俺を見つめる誰かの視線を。




(*'A`)「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ!」

絶頂が近い事を感じ、スパートをかける。
自分の息子を労わる気持ちなど微塵もなかった。
只ひたすらに強い快感を追求し、獣の様にその刺激を貪る。
脳が快楽に蕩け、遂には絶頂に達する――


寸前、


――ジャーン!ジャーン!


唐突にドラの音が部屋の中に響き渡った。

(;'A`)「え、ちょ……まさか……」

先程までの興奮が一気に冷め、嫌な予感に背筋が凍った。
こういう事をやる人間は知り合いの中……家族の中に一人しかいない。







へJ('∀`)しへ「でwwwwらwwwべっwwwwwwwぴwwwwんwwwwww」







開かれた引き戸から現れたのは、荒ぶる鷹のポーズを取ったカーチャンだった。

(;゚A゚)「うああああああああああああああああああああああ!」

J('-`)し「うるせえチーカマ。丁寧に包装されてるからって調子乗ってんじゃないよ」

(;’A`)「チーカマでいいから!神聖包茎って認めるからでてけよぉぉぉぉぉぉっ!」

J('-`)し「ごめん聞こえない」

死刑宣告にも等しい言葉を告げるカーチャン。そして、その手にはカメラ。
カメラってさ、写真撮る以外に使い道ないよね。
この状況で撮る物なんてさ、一つしかないよね。
それでさ、俺、下半身丸出しなんだよね。




(;'A`)「まさかカーチャン……」

その後の事は思い出したくもないというか思い出せない。
多分、防衛本能って奴が働いたんだろうな。




J('ー`)し「かわいいよー、ドクオちゃん。ほら、足もっと開いて笑ってー」

(*//A//)「や、やだぁ……ソコ、汚いよぉ……」






~~~


('A`)「……とまぁ、こういう事があった訳だ」

(;^ω^)「ウチの親がまともでよかったお……」

(;゚∀゚)「同じく」

('A`)「オナヌ時は常に周囲の気配を探れ。でなければ死ぬぞ」

(;^ω^)「把握」

(;゚∀゚)「心の底から理解しました」

父さん、母さん、僕らの師匠は空気読めない人です。
だけど修羅場を潜った人でした。
やっぱり凄いです。

第十三話『副題:チーカマじゃなければベビーチーズ』糸冬




―――――――――――――
第十四話『杞憂』

('A`)「それじゃ、そろそろ行くか」

( ^ω^)「行くって……何処にですかお?」

('A`)「本屋だよ本屋。そろそろ実戦形式でやらないとな」

( ゚∀゚)「ついに、あそこへ……」

弟子入りしてから一度も行っていないあの場所。
あそこへと再び向かう日が遂に来たのか。
栄光を夢見、挫折を体験した場所。
そんな場所に再び行くのだ。何らかの感情が沸かない訳が無い。




( ^ω^)「たった一日行ってないだけで長い間行ってない気がするお」

( ゚∀゚)「そこは気にしちゃ駄目な部分だろ。常識的に考えて」

なるほど、ひとつ勉強になったぜブラザー。

('A`)「……知っときゃ何とかなる事は全部教えた。後は実際にやらんとどうしようもない」

( ^ω^)「実際に……」

( ゚∀゚)「犯らんと……」

エロ本を買う。
言葉にするだけなら何と容易い事か。
だが、実際買うとなると、幾つもの試練を越えなければならない。
ボクらは、乗り越える事が出来るのだろうか。
というかジョルジュ自重しろ。




(((;^ω^)))「やべっ、ちょっと震えてきたお」

(((;゚∀゚)))「俺も」

('A`)「……恐いか?」

……その言葉は否定できない。
この胸の内に、確かに恐怖は存在する。
だが、この震えは恐怖によるものと何かが違う。
ボクの魂が、否と叫ぶ。
心が。精神が。身体が……全身全霊が燃える様に熱い。
過去に感じた事のある衝動。あの、18歳になった瞬間と同等の衝動。
ボクという存在全てが求めている。
エロ本という存在を心の底から渇望している。
もう、自分という存在を制御出来そうになかった。

(((^ω^=^ω^)))「めっちゃテンション上がってきたおwwwwwww」

(((゚∀゚=゚∀゚)))「おwwwwwwれwwwwwwwもwwwwwww」

(((^ω^=^ω^)))「じゃあいつものやるおwwwwwwww」

(((゚∀゚=゚∀゚)))「おkwwwwwww」






(((^ω^=^ω^)))「STAND UP!」

 
(((゚∀゚=゚∀゚)))「STAND UP!」


((((^ω^=^ω^))))「STAND UP!」

 
((((゚∀゚=゚∀゚))))「STAND UP!」


(((((^ω^=^ω^)))))「STAND UP!」

 
(((((゚∀゚=゚∀゚)))))「STAND UP!」


((((((^ω^=^ω^))))))「STAND UP!」

 
((((((゚∀゚=゚∀゚))))))「STAND UP!」








(((゚ω゚=゚ω゚)))「「STAND UP TO THE!」」(((゚∀゚=゚∀゚)))







(#゚ω゚)「「VICTORY!!!!!!!!!!!」」(゚∀゚#)








そう、ボクらは挫折を味わいながらも立ち上がった。ならば求めるは勝利のみ。
この手でエロ本という勝利のトロフィーを掴むのだ。


('A`)「思い過ごしだったみてえだけどよ…………返事くらいちゃんとしようぜ」


師匠はちょっと寂しそうだった。

第十四話『副題:Vガンって漫画版しか見た事ないんだよね。でも大好き』糸冬




―――――――――――――
第十五話『特訓』

本屋に入ったボクらは、人の目を気にしながら訓練を開始した。
ただひたすら近づき、エロ本に触れる訓練。

(;^ω^)「そぉい!」

('A`)「力入れすぎ。弁償する羽目になって良いのか?」

そして似たサイズの本を持っての訓練。

(;゚∀゚)「グッ……貴様見ているなっ!」

('A`)「顔を動かすな。眼と空気の流れで人の動きを理解しろ」

壁|;´・ω・`)「……」

時折、店員が不審者を見る目つきをしていたが、ボクらは気にしない事にしていた。




本を買うのは夏休みが終わってからで良いのかもしれない。
だが、夏休みが終われば師匠もボクらも学校に通わなければならないのだ。
それを考えると今日から明後日までの三日しかチャンスは残されていない。
その間に訓練を終えて、二人揃ってエロ本を買う。
とても難しい事かも知れないが、それを実行しなければならないのだ。

(;゚ω゚)「ワンツー!ワンツー!」

(;゚∀゚)「飛行機ブンブン!飛行機ブンブン!」

(;´゚ω゚`)「ワンモアセッ!」

(#゚A゚)「チンタラやんな!もっと気合入れろ!」

(;゚ω゚)゚∀゚)´゚ω゚`)「「「Sir!YES!Sir!」」」

壁|;´∀`)「店長……いくら客少ない時間帯だからって、はしゃぎすぎモナ」




……そして二時間後。

('A`)「よし、今日は休憩入れた後、公園でダメ出しして終了な」

師匠のその一言で、ようやくボクらは開放された。

( ^ω^)「ふぅ……師匠、ちょっと新刊出てないか見てきてもいいですかお?」

('A`)「おk。早めに来いよ」

( ゚∀゚)「そんじゃ、俺と師匠は公園にいるからな」

( ^ω^)「把握」

(;´・ω・`)「あっ、やばっ、なんか全身痛いッ!ヤバッ!動けないッ!」

壁|;´∀`)「店長……」




(;´・ω・`)「ちょ、そこの少年、助けて……」

( ^ω^)「……」

(;´・ω・`)「……って、あっ、Gが……Gが近づいてくる……」

(^ω^ )「確か新刊コーナーはあっちだった筈だお」

ボクは何も見ていないし聞いていない。そういう事にした。

<嫌ァァァァァァァ!

第十五話『副題:敢えて触れない優しさもある』糸冬




―――――――――――――
第十六話『善意』

……人は気分次第で、自分でも訳の分からない事をする。
まぁ、人間なんてそんな物なのかもしれない。そして、僕もそんな人間なのだ。

( ´∀`)「それじゃ十円のおつりモナ。アザッシター」

(*^ω^)「おっおっ」

ボクは少々……いや、相当浮かれていた。
人気の高さ故、発売日に入手する事が困難である「職業・VIPPER。」の新刊。
それが発売日に買えたのだ。浮かれるなという方が無理な話だ。



( ^ω^)「職Vの新刊マジラッキーだったお」

レジを離れ、入り口へと向かう僕の足取りは軽い。
ここは鼻歌の一つでも歌うべきだろうか?ノンノン、どうせなら熱唱するべきだ。
そんな事を考える僕の魂は現実とお花畑を行ったり来たり。
嬉し過ぎてもうお花畑から戻れなく……

「これ、お願いします」

( ^ω^)「ん?」

その声は、多分ボクの後ろに並んでいた人の声だろう。
きっとその言葉は店員に向けられたものだろう。
どう考えても自分に向けられた物ではない。
なのに、なぜかボクは振り向いた。




( ^ω^)「……んんー?」

( ´∀`)「はい、ありがとうございますモナ」

振り向いた僕の視線の先にあるのは、前髪を下ろした女の子がレジに差し出した一冊の本。
何の本なのかは分からないが、尻に妙な違和感を覚えた。

( ^ω^)(……アッーなるほど把握)

何と言うか、本能が理解した。
男同士が絡む本がある事は噂に聞いている。そういう本なのか。
世の中色んな性癖の人がいるんだな。などと思いつつ、再び入り口に

( ´∀`)「雑誌一冊で六百七十円モナ」

向かおうとした時、

川д川「はい、丁d……あれっ?」

本を買おうとしていた子が固まった。




川;゚д川「あっ、あれっ……なんで……?」

( ´∀`)「どうしましたモナ?」

川;゚д川「丁度ポケットに入れといた筈なのに……十円足りない……」

彼女のうろたえ振りで確定した。あの本は間違いなく18禁。
そうでもなければ、わざわざポケットに丁度の小銭を入れる理由が無い。
というか、後ろめたい本でもなければあそこまでうろたえない。
まぁ、運が無いと言うか抜けていると言うか……




川;д川「あれっ……なんで……なんで……」

( ^ω^)「これ、使っていいお」

川゚д川「え……」

気付いた時には先ほど手渡された硬貨をレジに置いていた。

( ^ω^)「勝手にやった事だから気にしなくていいお」

今のボクにとってこの十円はたかが十円。
しかし、今の彼女にとってこの十円はまさに値千金。
ならば、この十円は彼女の元で輝かせてやるべきだろう。
自分でも良く分からない理論だが、もう十円は置いてしまったのだから仕方ないだろう。
明日は我が身という言葉もあるし、こういう事をするのも悪くないかもしれない。
そう思いながら、ボクは何かを言おうとしていた彼女を尻目に店を出た。




( ´∀`)「六百七十円丁度モナ。アザッシター」

川д川「……」

(;´∀`)「……お客様?」

川* ー川「……かっこいいじゃん」

(*´∀`)「僕のことモナか?」

川д川「それは無い」






~~~


('A`)「おせえよ」

(;^ω^)「サーセンwwwwww」

( ゚∀゚)「なんかあったのか?」

(;^ω^)「ちょっとした人助けと言うか何と言うか……」

……その言葉に二人の表情が変わった。




親友ジョルジュが顕にしたのは

(*゚∀゚)O彡゚「フラグ!フラグ!」

純粋な好奇心。もしくは野次馬根性。
もう一人、師匠であるドクオさんが顕にしたのは

(#'A`)「コイツは臭ェー!フラグの匂いがプンプンするぜェー!」

憎悪と嫉妬の混じった怒りだった。

(;^ω^)「ちょwww何でいきなりフラグになるんだおwwwww」

ボクは確かに人助けをしたと言った。だが、助けた相手が男とも女とも言っていない。
もしかしてアレか、二人はボクがいない間に邪気眼を発現したのか?
なんて事だ。物凄く羨ましいじゃないか。




( ゚∀゚)「何でって……お前、野郎なんぞ助けねえだろ」

(#'A`)「ちょっとした事なら尚更だコンチキショー!」

何たる名推理……
間違いない、二人の頭脳は江戸川バーローを超えた。

(;^ω^)「それはそうですけど、そんなフラグ立つような大それた事は……」

( ゚∀゚)「因みに何したんだ?」

( ^ω^)「十円見つからなくて半泣きになってた子に、十円あげただけだお」

そう言い終えた時、ボクは確かに聞いた。
限界まで張り詰めた何かが、小気味良く切れた音を。




(#゚A゚)「手前は氏ねじゃなくて死ねェーッ!」

師匠が、切れた。

(#゚A゚)「手前なんかなぁッ!無双三段でブチ撒けてやんよォー!」

そう叫ぶ師匠の手には妙に長い竹箒。

(;゚∀゚)「落ち着いてください師匠!まだフラグが立ったと決まった訳じゃ……」

(#゚A゚)「でもそんなの関係ねえ!そんなの関係ねえッ!」

(;゚ω゚)「ヒィィィィィィィィィィィッ!」

ああ死んだ。得物は竹箒なれど、繰り出される技は槍技最強。間違いなく死んだ。
迫り来る師匠を見つめながら、ボクはそう思った。








だが、神はボクを見捨ててはいなかった。





能天気な音と共にボクの頭上に電球が浮かぶ。








[カウンター]


メメタァッ!( ゚ω゚)三つ)゚A゚#)ヘブァッ!


誰がどう見ても正当防衛。
ボクは何も悪くない。

そしてボクらは地に伏した師匠を置き去りにした。

第十六話『副題:スクエニはロマサガ2を一刻も早くリメイクするべき』糸冬




―――――――――――――
第十七話『成長』

翌日、

(#)A`)「おいすー」

師匠は顔を腫らして公園にやってきた。
昨日、綺麗に拳が入ってしまったのだから仕方のない事だろう。
改めて言っておくがボクは悪くない。

(#)A`)「なぁ、お前ら」

(;゚∀゚)「な、なんですか?」

(#)A`)「昨日の夕方辺りからの記憶が無いんだけど何か知らね?」

(:^ω^)「さ、さぁ?」

何たる奇跡。
昨日のあの一撃が師匠の記憶を飛ばしたのだ。
ありがとう神様。もうチェーンソーを使うような真似は絶対にしません。




(#)A`)「まぁいいか。泣いても笑っても今日で練習は終わりだ。気合入れろよ」

( ^ω^)「おっおっ」

( ゚∀゚)「うっす」

(#)A`)「よっしゃ。じゃあ行くか」


~~~


(#)A`)「エロ本を持つ力加減、表紙のエロい部分を隠せる最高の角度を体に叩き込め」

(;゚∀゚)「ウッス!こうですか!分かりません!」

(#)A゚)「馬鹿野郎!パンツ丸見えだ!死にたいのかバスト三等兵!」

(;゚∀゚)「サーセンッ!」




(#)A`)「作者チェックの手を抜くな。一つ当たりがあればそのエロ本で百回は抜けるからな」

(;^ω^)「えっと、じゃあコレだお!」

(#)A゚)「遅すぎるッ!三秒以内に選べッ!あと月乃定規は鉄板だと何度言わせれば分かるッ!」

(;^ω^)「サーセン!」

放たれる昨日以上の叱責。
要求される昨日以上のクオリティ。
特訓は熾烈を極め、とてもきついものだった。

けど、それ以上に楽しくてたまらなかった。
自分が成長している事が手に取るように分かるのだ。嬉しくない訳が無い。
ボクらはこの時間がもっと長く、永久に続けば。などと心の何処かで考えていた。





~~~


そして特訓は最後の一つを残すのみとなった。

(#)A`)「……最後に、俺が実際に買うからそれを目に焼き付けろ」

( ^ω^)「ゴクッ……」

( ゚∀゚)「ペロッ……」

(#)∀`)b「お前ら……俺の生き様見とけ!」

親指を立てた師匠の姿。
その姿はとても頼もしくて、そんな師匠の弟子になれたボクらは特別な存在だと感じた。

けど、ボクにはそんな師匠の姿がとても儚げなものにも見えて……

第十七話『副題:野良猫長屋とベンジャミンも鉄板』糸冬




―――――――――――――
第十八話『絶望』

(#)A`)「……これだな」

師匠の手がエロ本に触れる。
ただそれだけで空気が張り詰め、ボクらは息苦しさを覚えた。

(#)A`)「作者、厚み、金額、手垢、破れ、付録……オールグリーン」

辛うじて耳に届いた師匠の呟き。
敢えて、呟いたのだろう。ボクらに全てを伝える為に。

( ;ω;)「……」

( ;∀;)「……」

自然と涙が溢れてきた。
ボクらの為に、思考を声にするという危険を冒す師匠の心遣いに心を打たれたのだ。




(#)A`)「……左斜前方3mに敵影。フォーメーションRBにシフト」

正確な察知能力と精緻な本の位置移動。
師匠の隣を通り過ぎた男性は、師匠が本を持っていた事すら気付かなかっただろう。

(#)A`)「この足音は……20代前半女性二名。進路をT-Z方面へと軌道修正」

そう呟いた後の、釣り雑誌方面への軌道修正。
直後、師匠からは死角の場所から現れたギャル系の女性二名が通り過ぎる。




(#)A`)「周辺に敵影なし」

まるでリアルタイムで店内全ての情報を知覚しているかの様に、挙動は淀みなく自然。かつ優雅。
その姿を凝視しているボクらでさえ、気を抜けば師匠が何を保持しているのかを失念してしまう。
これが、人に意識させない事を極めた者の業なのか。

(#)A`)「このまま…………否。右方より新たな……この足音……は……」

師匠の表情が強張り、その動きが止まる。
師匠の感覚が敵を捕捉した事はその呟きで理解した。
だが、何故そこまで師匠が緊張する?
なぜ、回避行動を取ろうとしない?
何故――




(;#)A`)「なん、で……」

川 ゚ -゚)「やあ、ドクオ君。買い物かい?」

姿を現した敵。
それはつい先日、ボクらが見かけた女性だった。

(;#)A`)「そ、そうだけど……あれ、クーさんその服は……」

川 ゚ -゚)「諸事情によりここでバイトを始めてな。その制服だ」

(;#)A`)「そそそそっか……」

川 ゚ -゚)「うむ」

師匠の頬を一筋の汗が伝う。
ただそれだけの反応が、彼女の危険性を如実に伝えていた。




川 ゚ -゚)「で、同じ大学同じ学科のよしみで一つお願いがある。君にしか頼めない事なんだ」

(#)A`)「……え?」

川 ゚ -゚)「だから、君にしか頼めないお願いがあるんだ」

(*#)A`)「俺にしか、頼めない……」

彼女の言葉を反芻した後、師匠が俯き口を噤んだ。
時間にして十秒程度の僅かな沈黙。




川 ゚ -゚)「無理か?」

(*'∀`)「何でもやります!」

顔を上げた師匠はとても幸せそうな表情をしていた。
ついでに腫れも引いていた。
間違いない。完全に我を失ってしまっている。
下手をすると、自分がエロ本を持っているという事すら忘れているかもしれない。

(;゚∀゚)「……これってかなりヤバいぞ」

(;^ω^)「お……」

(;゚∀゚)「間違いねぇ、師匠のあの目は……恋する目だ」

なるほど。恋をしている者だからこそ分かる思考という奴か。
恋とは程遠い生活をしているボクは蚊帳の外ですかそうですか。
なぜか分からないがイラっとした。




(;^ω^)「もし、エロ本見られたら……」

(;゚∀゚)「もし俺が見られたとしたら……間違いなく自殺物だな」

(;^ω^)「でも、師匠なら……師匠ならきっと何とかしてくれる!」

そう、師匠は所詮一般人のボクらとは違うのだ。
きっと人知の及ばぬ方法でこの状況を打……は?

(;*'A`)「やめて!かーえーしーて!」

川 ゚ -゚)「この本を買うのだろう?ならば別に問題はない」

師匠はあっさりエロ本を奪われていた。




(;*'A`)「ホントやーめーて!」

川 ゚ -゚)「何でもすると言ったのは君だ。だから、私のレジ打ち練習に付き合ってもらう」

(;*'A`)「そ、そんなの聞いてないよぉー」

川 ゚ -゚)「安心したまえ、私が全身全霊を以ってレジに通させて頂く」

何故だろう、焦っていながらも何処か嬉しそうな師匠の表情が腹立たしい。

(;゚∀゚)「分かるッ……俺には痛いほど分かるッ……」

( ^ω^)「……何がだお?」




(;゚∀゚)「確かに師匠は辱められてる。けど、好きな人と戯れる嬉しさが勝っちまってるんだ!」

(;^ω^)「戯れるって……いじめっ子といじめられっ子にしか見えないお」

(;゚∀゚)「気にするな。それに、師匠はまだ見られてはいないッ!」

(;^ω^)「ッ!」

だからか。
エロ本を奪われているにも関わらず嬉しそうに出来る余裕はそれが理由か。
だからこその、オーバーアクションか。
彼女の視線を自分へ向け、本への興味を薄れさせる。
正に一石二鳥。この状況すら師匠の想定の範囲内だったのかッ!




( ゚∀゚)「こんな時にもサプライズを忘れてないなんてさすが師匠だぜ」

( ^ω^)「まさに超一流のエンターティナーだお」

( ゚∀゚)「どさくさにまぎれておっぱい触ろうとしてるし」

( ^ω^)「正直そこは引くわ」 

ボクらはガキみたいに目を輝かせて師匠のショータイムを見つめていた。
夢の様な、現実離れした光景に完全に入り込んでいたんだ。






だけど、悪夢は気を抜いた瞬間に襲い掛かってきた。


川 ゚ -゚)「それじゃあレジに…………そういえば、これはどういった本なんだ?」

(;'A`)「あぁっ!見ないでぇー!」

師匠の顔が一気に青褪める。
だが、そんな事など気にせず彼女は開いてしまった。
エロ本を。

川 ゚ -゚)「ふむ……なるほど……」

奪い取ろうとする師匠の手を巧みに掻い潜りながらも彼女は読書を止めようとせず、それどころか……




川 ゚ -゚)「『駄目だよ……僕らは兄妹なんだよ?』『兄上を……誰にも渡したくないんだ……』」

(;゚A゚)「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

あろう事か、情感をたっぷり込めて朗読し始めたのだ。

(; ∀ )「……うわぁ」

(; ω )「……きっついお」

何という悪夢。何たる生き地獄。何たる羞恥プレイ。思わず勃起した。
見ているこちらでさえ精神が崩壊しそうになる。
傍観者である僕らでさえそうなのだ、当事者からしてみれば絶望すら生温い筈だ。
それなのに、言葉に出来ないほど辛い筈なのに、

川 ゚ -゚)「『んっ…中に、兄上のが出てる……あたたかい……』」

(;゚A゚)「お願いだからッ……後生だから……」

それでも師匠は倒れなかった。勃起しつつも。
言葉に精神を抉られ、羞恥に魂を焦がされて尚、二本の足で立っていた。




( ;ω;)「何で、立っていられるんだお……」

( ;∀;)「決まってるじゃねえか……愛の力だよ」

愛。そんな物で人はここまで耐えられるのか。
愛で人はここまで強くなれるのか。

川 ゚ -゚)「『じゃあ女の子にちんこついてたら?』」

(;゚A゚)「なめたい!ふしぎ!」

川 ゚ -゚)「『ですよねー』」

愛ってすごい!ふしぎ!






~~~


どれほどの時間が経っただろう。

川 ゚ -゚)「……ふぅ」

溜息と共に彼女が本を閉じた。
それが意味するものは悪夢の終焉。

(; ω )「助かったのかお……?」

(; ∀ )「多分……な……」

(* ω )「パンツが気持ち悪いお……」

(* ∀ )「俺も……」

誰一人死ななかった幸運を神に感謝した。
ガビガビになったパンツは気持ち悪い事この上ないが、命があるだけ儲けものだろう。
ボクらは助かったのだ。もう、全ては終わったんだ……




川 ゚ -゚)「ところでドクオ君」

(;゚A゚)「ナ、ナニ……?」

そう、悪夢は……

川 ゚ -゚)「男性というものはこういうのが好きなのか?」

(;゚A゚)「……エ?」

(  ω )「……え?」

(  ∀ )「……え?」

なにも、終わってなどいなかった。
今までの行為は全て布石だったのだ。
ならば、次に放たれるのは情け容赦の無い、必殺の一撃。




川 ゚ -゚)「時期がきたら、こんな風に彼を誘惑してみようと思ってな」

(;゚A。)「……カ…レ?」

彼女の言葉が意味するのは片思いの終焉。

川*゚ -゚)「ここの店長をやっているショボンさんが、ようやく首を縦に振ってくれたんだ」

彼女の言葉は、師匠の精神を完膚なきまでに粉砕した。

( A )「…………」

もう、師匠の耳には言葉など届いていなかっただろう。

川 ゚ -゚)「もうな、昨日など嬉しくて……ドクオ君?」

やめてくれ。それ以上追い討ちをかけないでくれ。師匠のライフはもうゼロだ。




( A )「…リ…グ………コンティオ……」

そう呟いた師匠の体が小さく揺れ、そのまま、糸の切れた人形のように、前のめりに倒れた。


少しだけ、腰を浮かせて。


( ;ω;)「師匠ォ――――――!」

( ;∀;)「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

ボクらは、何も出来なかった。
見ている事しか、出来なかった。


少しだけ、腰を引いて。

第十八話『副題:女の知り合いに見られると死ぬる』糸冬




―――――――――――――
第十九話『親心』

('A`)「……」

走馬灯を見る暇も無く、肉体から魂が抜けた。
気付いた時には、崩れ落ちた自分を見下ろしていた。

('A`)「……俺、死んだんだな」

限界まで追い詰められ、勃起したまま倒れた。
最後に乳を触ろうと手を伸ばしてみたものの、腰を引いていた分だけ届かなかった。

('A`)「結局、乳の感触知らないまま死んじまったんだな」

俺がこの世界に生まれた意味はなんだったのだろう。
何かを成した訳でもなく、子を残した訳でもない。
何も残せは……




('A`)「いや……一つだけあったな」

亡骸を抱きかかえ、俺の為に泣いてくれている二人の弟子。
ブーンにジョルジュ。
こいつらならきっと俺を超えてくれる。
短い間だったが、こいつらといれて良かった。
こいつらはきっと俺の意志を継いでくれる。
ならば、もう未練は無い。

J('ー`)し「アレがドクオの弟子かい?」

('A`)「……俺には過ぎた弟子さ」

J('ー`)し「で、アンタこれからどうするんだい?」

('A`)「どうするもこうするも……」




……あれ?
ちょっと待って欲しい。
何でカーチャンがここにいる。

(;'A`)「え、ちょ、何でカーチャンがいるんだよ!」

J('∀`)しb「息子のピンチを救いにカーチャンズバッと参上!」

(;'A`)「いや、でもさ、俺死んでるんだぜ?」

J('ー`)し「うるせえ!は!か!た!の!塩!ぶっかけんぞ」

(;'A`)「ガチで酷くね?」

J('ー`)し「さっさ復活しな。念仏5.1ch音量MAXで聞きたいのかい?」

(;'A`)「いや、でも、戻り方が……」




J('ー`)し「そうかいそうかい、そんなに昔の写真をzipでうpされたいかい」

(;'A`)「わかったから、戻るから……で、どうやって戻るの?」

J('∀`)しb「気合と根性」

(;'A`)「……」

J('ー`)し「それともカント寺院方式がいいかい?99%でロストするけど」

(;'A`)「……頑張ります」

そして、四苦八苦しながらも俺は肉体に戻る事に成功した。

J('ー`)し「……あ、gthmコラVIPにうpしたって言うの忘れてたわ」






~~~


(’A`)「ん……」

夏特有の熱気を感じながら瞼を開くと、視界は

( ;ω;)「し、師匠!」

( ;∀;)「起きた!師匠が起きた!」

涙でクシャクシャになったブッサイクなツラ×2に埋め尽くされていた。




(;'A`)「うわぁ……」

何という最悪な目覚め。
というか涙やら鼻水やら垂らすな。
あと顔近づけて叫ぶな。唾が、涎が……

(;'A`)「とりあえずどいてくれ。つかお前ら口臭い!」

( ;ω;)「聞こえないおwwwwwww」

( ;∀;)「だが断るwwwww」

俺の言葉を無視して密着してくる野郎二名。
暑苦しくてたまらなかった。




(;'A`)「暑いから止めろって」


――でも、


(*;ω;)「いやですおwwwwww」


――俺が生きている事を心から喜んでくれている事、


(*;∀;)「もう二度と離さないwwwwwww」


――それが言葉に出来ない位嬉しくて、


(*'∀`)「師匠の言う事聞けよこの馬鹿弟子どもwwww」


――俺はこいつらを跳ね除ける事なんて出来なかった。




(;^ω^)「うわっwwwwキモッwwwwwwww」

(;゚∀゚)「師匠の笑顔アウトwwwwww」

(*’A`)「……」

あれ、さっきまでの感動は何処へ?
何で逃げるの?

(*’A`)「まてよー、にげんなよー、つんでれかよー」

(;^ω^)「いやぁぁぁぁぁwwwwwwwwww」

(;゚∀゚)「きもいぃぃぃぃwwwwwwww」

結局その鬼ごっこは二時間ほど続いた。






~~~


('A`)「で、今更だけど一つ聞きたい」

( ^ω^)「なんですかお?」

( ゚∀゚)「何でも聞いてください!」

('A`)「なんで公園なの?普通病院じゃね?」

(;^ω^)「何たる盲点」

(;゚∀゚)「師匠の鬼才ぶりに全米が震撼した」

(;'A`)「……」

本気で言っているのだろうかこいつらは。
人がぶっ倒れてんのにこのクソ暑い公園のベンチに寝させるとか……




まぁいいか。
生きてるって素晴らしい!

(’A`)「とりあえず、泣いても笑っても明日が最後だ。悔いは残すなよ」

(;^ω^)「でも……」

(;゚∀゚)「あの人がいるんじゃ……」

あの人……クーさんの事か。
俺が完膚なきまでに叩き潰された光景は、嫌でもこいつらの目に焼きついた事だろう。
こいつらの心に恐怖が生まれるのも無理は無い。




だが、

('A`)「安心しろ。その点については何の問題もない」

( ^ω^)「……お?」

( ゚∀゚)「……へ?」

('A`)「あの場合、相手が俺の天敵だっただけだ」

同級生且つ片思いの相手。
しかも、知り合いであるが故に保持していた回避不可な追跡能力。
正に最悪の相性。

それは全て、俺に限っての話だ。




('A`)「お前らとクーさんには何の因果も無い。単なる店員と客だ」

( ^ω^)「なるほど」

( ゚∀゚)「つまり、直に相対しなければ問題ないと」

('A`)「ああ。お前らにわざわざ近づいて来る事も無いだろうしな」

勝てないなら戦わなければいい。そもそも戦う必要など何処にも無い。
俺らにとっての目的は店員に勝つ事ではなく、エロ本を手に入れる事なのだから。






~~~


空が、朱色に染まる。
今日という日が終わろうとしている。
俺には、最後に伝えなければならない事があった。

('A`)「お前ら、エロ本を買う時の事を考えると恐いか?」

(;^ω^)「……恐いお」

(;゚∀゚)「……かなり」

こいつらの気持ちは痛いほど分かる。
運が悪けりゃ俺みたいな目に逢うし、ましてやこいつらは初心者だ。




('A`)「でも、wktk感やときめきもあるだろう?」

( ゚∀゚)「はい」

( ^ω^)「おっおっ」

まだ見ぬ存在への期待。それを知りたいと思う気持ち。
エロ本を開いた時に抱くのは喜びか、それとも失望か。
それは誰にも分からない。

('A`)「なら、恐怖も期待も全部ひっくるめて楽しめ」

( ^ω^)「楽しむ……ですかお?」

( ゚∀゚)「恐怖も、期待も……」




('A`)「ああ。本を買う行為自体を楽しめるようになれば一人前だ」

エロ本を選ぶ時のときめき。

本をレジに持っていくまでのスリル。

店員とのヒリつくような一瞬の心理戦。

買って家に帰るまでのwktk。

そして、開く瞬間の言葉にならない高揚感。

それら全てを、心から楽しんでほしい。

(;゚∀゚)「俺らに、出来るんでしょうか」

(;^ω^)「難しそうだお」

('A`)「できるさ」

出来るに決まっている。
俺が見込んだコイツらに出来ない訳が無い。

('A`)「それが、俺が伝えたかった最後の一つだ」

受け渡すべき技術は全て見せた。伝えたい言葉は全て伝えた。
もう、こいつらに教える事は何もない。俺の役割は終わったんだ。




だから、

(’A`)「俺の役目はここでおしまい。ここでサヨナラだ」

そう言い残して俺は走り出した。

(;゚∀゚)「……へっ?」

(;^ω^)「ちょ、師匠、待ってくださいお!」

( A )「いやだね!後は自分らで何とかしやがれ!」

唖然とする二人を置いて全力で走る。
何と言われようとも、俺は振り返るつもりなど毛頭無い。
振り返れるはずがなかった。

(;A;)「弟子にこんな面見せれる訳ねーだろーがよー!」

俺は、最後の最後まで師匠として格好を付けたかったんだ。

第十九話『副題:色々とクシャクシャのガビガビ』糸冬




―――――――――――――
第二十話『前夜』

師匠は走り去った。一度も振り向く事無く。
自分の役目は終えた。そう言い残して、ボクらの視界から消えた。

(;゚∀゚)「……どうするよ」

(;^ω^)「明日は……自分たちで何とかするしかないお」

(;゚∀゚)「今日は帰るか……」

(;^ω^)「おっおっ……」






~~~


( ゚∀゚)「……バス遅えなぁ」

( ^ω^)「……暇だお」

毎度の事ながら、待ち時間というのは妙に長く感じる。
退屈が時間を引き延ばす。とでも言えばいいのだろうか。
退屈を覚えた途端に一秒が十秒にもその倍にも感じられる。
だから、ジョルジュは退屈を紛らわす為にこんな下らない話を始めたのだろう。




( ゚∀゚)「そういやさ、お前好きな人とかいないの?」

( ^ω^)「……唐突過ぎないかお?」

( ゚∀゚)「いや、俺と師匠の好きな人知ってんのに、お前だけ内緒ってのはずるくね?」

……なるほど。そいつは尤もな話だ。
しかし残念、今のボクに想い人など存在しないのだ。
中学の頃なら確かにいたさ。だがしかし、あの中学三年の夏、

エロ本知ったその日からボクの辞典に色恋の字は無い。




( ^ω^)「んー、今はいないお」

( ゚∀゚)「何で?お前のクラスって、しいとかツンとか可愛い子いるじゃん」

( ^ω^)「……ジョルジュ、知らないとは言わせないお」

しいには高校に入る前から付き合っている彼氏がいて、その彼氏はボクの友人。
その時点で恋愛対象から除外される。

そしてツン。
彼女は正真正銘、根っからのガチレズである。

アウトなんてレベルじゃない。




( ゚∀゚)「じゃあ、ハインはどうよ?」

(;^ω^)「ハイン……かお……」

ハインリッヒ高岡。
アスラを一人でフルボッコにしたと噂される女番長。体術Lv50
死亡確認と刺繍の入った長ランを一年中羽織っている硬派of硬派。
誰ともつるまず、暇さえあれば純文学の文庫本を読み耽る孤高の存在。
あとツンの標的。

そんな彼女に恋愛感情を抱く事は、少しばかり畏れ多かった。




(;^ω^)「ちょっと無理だお」

( ゚∀゚)「なんでよ?」

( ^ω^)「野生の肉食動物と同じだお。遠目に見る分には良いけど……」

( ゚∀゚)「近づいたらギャーってかwwwwwww本人が聞いたら傷つくぞwwwwww」

( ^ω^)「サーセンwwwwwww」

こんな事を笑って言えるのも、この場に本人がいないからこそだろう。
本人に聞かれたなら、間違いなく練気拳でLP0になるまで殴られる。
その後、強制リセット→ロード→即エンカウント→再フルボッコの可能性も……
無限ループっておそろしいよね。




( ゚∀゚)「実際そんな恐くないけどなwww口悪い上に人見知り激しいけどwwwwww」

( ^ω^)「ん?何でジョルジュがそんな事知ってるんだお?」

( ゚∀゚)「何でって…………お、あそこ走ってんの師匠じゃね?」

( ^ω^)「全裸とかきめえwwwwwwwww」

( ゚∀゚)「パトカーktkrwwwwwwwwwwwwwww」

そんなこんなでバスがきた。乗った。
師匠は捕まってた。
さよならVIP町、また明日、バイバイ!

あ、ハインについて聞くの忘れてた。






~~~


( -ω-)「…………」

正座した上で眼を瞑り、心を空にする。全裸で。
明日は最終日。決戦の日。
心身共に万全の体制で挑まなければ、本懐を遂げる事は叶わないだろう。
買わねばならない。買い、愚息を扱き、種を放たねばならない。
時は来たのだ。機は熟したのだ。

( ゚ω゚)クワッ!

堪え切れず拳を掲げる。
響き渡らせるはときの声。









(#゚ω゚)「STAND UP TO THE VICTORY!」






くがつついたち どようび はれ
よなかにさけんだら おとーさんとおかーさんに おもいっきりなぐられました
ついでに ぼくのむすこも みられました
なさけない と はもられました
ぼくは まくらを なみだで ぬらしました

さんねんいちくみ ないとう ほらいぞん

二十話『副題:いまのところみられたことはない』糸冬




―――――――――――――
第二十壱話『再会』

夏休み最終日。それ即ち決戦の日。
心身共に万全の状態で挑むべきその日の朝、

(#)ω(#)「「……」」(#)∀(#)

本屋の前に立っているボクらは既に瀕死だった。

(#)∀(#)「糞……兄貴の奴本気で殴りやがって……」

(#)ω(#)「前が見えないお……」

顔が蜻蛉っぽいけど気にしてはいけない。
ボクらは見た目通り繊細なのだ。
些細な中傷で傷ついてしまうのだ。




( ゚∀゚)「まぁすぐに治るんだけど」

( ^ω^)「若さって素晴らしいよNE!」

コレが十代の若さという奴だ。
性欲をもてあますボクらだからこそ、と言えない事も……

「……あの、すいません」

( ^ω^)「お?」

( ゚∀゚)「え?」




川д川「やっぱりこの前の人だ……やっと見つけた」

ボクら……というかボクに声をかけたのは、つい先日十円をあげた女の子。
どうりで聞き覚えのある声だと思った。

( ^ω^)「やっとって……もしかして、あの後からボクの事を探してたのかお?」

川д川「はい……あの、この前は本当に……」

(;^ω^)「いや、アレはボクが勝手にやった事だし……」

川д川「でも、アレで私が助かったのは変わりありませんし……」

何と言うかアレだ。
アレアレ言い合うのも何かアレだなぁ……あれ?
と言うかだ、ちょっとした人助けがこんな展開になるとはまさに予想外。
たとえ神様お天道様丞相様でも想像できなかっただろう。




(;^ω^)(……ちょっとばっかし困ったお……)

……正直言えば、こういうやり取りは少しばかり苦手なのだ。
でも、ジョルジュなら何とかしてくれるんじゃないだろうか。
何の根拠も無いが、その期待を視線に乗せてジョルジュに送信してみる。

(;^ω^)(……ヘールプ!リオンヘールプ!)

( ゚∀゚)「……」

だが、ジョルジュは彼女を見つめたまま沈黙を保っていた。

( ^ω^)(……あれ?)

おかしな事にその視線は胸ではない。
冷静に、観察するような目で、彼女をくまなく見つめていた。
確かに胸は少々薄いかもしれないが、ボクからしてみればその膨らみは充分と……




川д川「あの……」

(;^ω^)「おっ……ちょっと魂抜けて……」

川д川「本当に、ありがとうございました」

言葉と共に、彼女の頭が下がる。
深々と一礼。

(;^ω^)「……」

何とも義理堅い人だ。
たった十円の礼をする為に人探しする人なんて普通はいないだろう。
軽い言葉の礼ならともかく、こんな深々と礼をしながら言う人はもっといないだろう。
天然記念物……いや、絶滅してしまった筈のトキを見つけてしまった気分だ。




(;^ω^)「あの、頭を上げてほしいお」

川д川「でも……まだ恩を返していません」

( ^ω^)「じゃあ、困ってる人を見つけたら助けてあげてほしいお」

川д川「え……?」

( ^ω^)「それがボクにとって最高の恩返しなんだお」

誰かが困っている時に助けてあげるヌクモリティ。
それを心に持ってくれる事はボクにとって十分な恩返しだ。
ボクだっていつ同じ状況に立たされるか分からないのだから。

( ^ω^)「それに……」

ここから先の言葉は他の人に聞かれちゃいけない。
ジョルジュには言ってしまったから仕方ないとしても、道行く人に聞かれないとは限らないのだから。
だから、彼女の耳に手を添えて口を近づけた。




川*゚д川「ひあっ!」

異性が近づく事に慣れていないのか、彼女の口から変な声が漏れる。
いや、口が近すぎて耳に息がかかってしまったのかも知れない。
まぁいいか。

( ^ω^)「あんな本を買う時は誰だって恥ずかしいし……」

川* д川「え、あ……気づいて……たんですか……」

彼女の頬がほんのり桜色に染まる。
きっと、あの時の事を思い出してしまったのだろう。
でも、僕の口はそんな事など関係なく言葉を紡ぐ




( ^ω^)「それ以前に、泣きそうになってる子を見捨てちゃ漢が廃るって奴だお」

川///川「……」

彼女が顔全体を真っ赤に染め、そのまま俯く。
あれ?僕はそんな恥ずかしくなるような台詞を言ったつもりは無いのだけど。
もしかして自分でも気付かない内にとんでもない事を……

(;゚∀゚)・',`、'; ブフォッ

え、吹き出すくらいとんでもない事言ったの?
と言うか聞き耳立てんな。

(;^ω^)「あの、僕変な事言ったかお……?」

川///川「いえっ!あ、ああああのっ、失礼します」

彼女は、そう言い残して行ってしまった。




(;^ω^)「ジョルジュ、ボクって変な事言ったのかお?」

( ゚∀゚)「……それ本気で言ってんのか?」

(;^ω^)「……お」

本気で分からないから聞いているのだ。
それくらい理解して欲しい。

( ゚∀゚)「何っつーか、立った!フラグが立った!って言えばいいのかな」

( ^ω^)「そんな簡単にフラグが立ったら苦労しないお」

( ゚∀゚)「まぁいいか。面白いもん見れたし」

(#^ω^)「ボクが困ってるのが面白いって言うのかお」

( ゚∀゚)「そうじゃなくてだな……っと、そろそろ開店時間だぜ」




その言葉に、はぐらかされた感を抱きつつも腕時計を覗き込むと、時間は9:59。
もうすぐ、決戦の地への扉が開かれる。


――あと3秒――2秒――1秒――


扉は、ついに開かれた。


~~~


( ゚∀゚)「……ん」

( ^ω^)「……お」

いつもと変わらぬ本屋。
朝一という事もあり客は少なく、エロ本を買うには絶好の機会と思えた。




だが、油断は死に直結するという事を忘れてはいけない。
油断、慢心、増長、そういった気持ちは全て捨てるのだ。
それらが心にある事は敗北への第一歩である事を理解せよ。

これは、訓練ではない。
これからボクらがやるのは実戦。
これから先の事には、どんな言い訳も通用しない。
例えどんな事があっても敗北は許されないのだ。

( ^ω^)「今日で、決めるお」

( ゚∀゚)「……ああ」

周囲を一瞥。
警戒すべき敵は今の所存在しない。
ならば足を進めよう。彼の地へと。




( ^ω^)「……」

( ゚∀゚)「どうか、したか?」

( ^ω^)「……おっおっ」

( ゚∀゚)「……なるほどな」

振り返ったボクらの視線の先……レジにはあの義理堅い女の子。

川* ー川「この本、ずっと探してたんだ」

(■、■*川「ハーちゃん、よかったねぇ」

隣にいるサングラスをかけた子は友人だろうか。
本当に、嬉しそうだ。







願わくば、ボクらもあんな風に、笑って本屋を出られますように。



第二十一話『副題:書いてて殺意が沸くなんて生まれて初めて!』糸冬




―――――――――――――
第二十二話『長岡』

(  ∀ )「…………」

本屋という空間自体の状況を探り、隙を見出す。
五感――そして第六感と呼ばれる感覚すらフル稼動させての知覚。

(; ∀ )「ぐっ……」

限界以上に思考速度を向上させる。
脳の神経が焼き切れかねない速度での情報整理、統合。




( ゚∀゚)「――――見えた」

口内での呟きと共に、その眼が鋭く輝き……ジョルジュが、動いた。
彼が脳裏に浮かべるは、初めて見た時の師匠の技。
二度と忘れる事はないだであろう、魂に刻まれた姿。

( ゚∀゚)「一つ――」

呟く彼の手が掴むは、ファッション雑誌『メンズVIP』。
今の流行から脱ヲタファッション、女装の方法まで載っているお得な一冊であるが……

この場合、内容は関係ない。
重要なのはエロ本と同等のサイズであるという事。




( ゚∀゚)「――二つ」

更に掴まれしは三次のエロ本。
その迷いの無さから、前日より目をつけていたであろう事が予想できる。
 
( ゚∀゚)「三つ――――――さぁ、征こうか」

エロ本を内側に、更には僅かに後方にずらし、2冊を片手で掴む。
その間一秒未満。ここ数日、彼が密かに行っていた自室での特訓が功を奏した瞬間だった。






その歩み、無人の荒野を行くかの如く。


手に持つ本は、誰にも関心を向けられる事無く。


その存在、限りなく自然体。


それが、ジョルジュ長岡の辿り着いた領域。


本屋という空間を完全に理解し、そこにいる人間の意識をずらす。




その姿を見た彼の友人は、思わず呟いた。


(  ω )「……本屋を歩む者(Book Store Walker)かお……」


自然と口から零れたその言葉は、最大級の賛辞。


その言葉は後に、ジョルジュ長岡、彼の通り名となる。




――彼は遂に辿り着いた。
最後の場所、レジへと。

( ゚∀゚)「これを、お願いします」

その言葉と共に、裏返された二冊の本がカウンターの上に置かれる。

(;´・ω・`)「――ッ、ありがとうございます」

店員の目の前には絶妙にずらされた二冊の本。
バーコードを通せるかどうかという範囲がギリギリ露出しているずらし具合。
通るのだろうか、自分はコレを通せるのだろうか。と、店員は思った。

(;´・ω・`)「820円が一点――」

店員は心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。
目の前の彼は最高のずらしを見せた。
ならば、こちらも最高の通しを見せねばならない。
この店の店長として、最高の技で応えねばならない。

(;´・ω・`)「そして――」







小さく、電子音が鳴った。




(;´・ω・`)「740円が一点。二点で1560円になります」

( ゚∀゚)「丁度で。あと、袋をお願いします」

これは伝説の幕開け。
本屋を歩む者の伝説が、今この瞬間始まったのだ。

第二十二話『副題:厨二病具合が足りない』糸冬




―――――――――――――
第二十三話『内藤』

( ^ω^)「……」

( ゚∀゚)「……」

視線の先にはジョルジュ。
彼の手には店員より渡された紙袋。
彼の目が、ボクに告げる。




ねんがんのエロほんをてにいれたぞ!



と。




ころしてでもうばいとるのは簡単かもしれない。
だが、それはSFC版のみ訂正現実ではやってはいけない事。
それに、こういう物は自分で買ってこそなのだ。

( ゚∀゚)「見せてもらうぜ、お前のクオリティ」

( ^ω^)「……おっ」

ジョルジュは目的の物を手に入れた。
次は、ボクの番だ。






~~~


(;^ω^)「ぐぅ……」

本を、手に取る。
重い。そして、灼熱を感じる。

それは拒絶。
体ではない。心が本を拒絶しているのだ。
心がそれの危険さを知っているが故に、拒絶し、重さと熱を感じさせているのだ。




(;^ω^)「この……程度ッ!」

それでも耐え、掴む。
しりのあなの広告を外に向け、足を一歩踏み出す。
ボクには師匠やジョルジュの様な優雅且つ自然な動作は不可能だ。
今この時だけは、不器用すぎる自分の体が呪わしく思えてならない。
だが、

(;^ω^)「全部、自分でやらなきゃダメなんだお」

やらねばならないのだ。
全身全霊を以って。己の限りを尽くして。
道を切り開かねばならないのだ。
頼れる者など存在しない。頼ってはいけない。
何かに縋ろうとした時点で己の身に隙が生まれる。
己の力のみで、レジへと向かわねばならないのだ。




(;^ω^)「あの角を曲がれば……」

あの角を曲がればレジが見える。
そこからは周りを注意しながら一直線に進めばいい。
曲がり角で鉢合わせさえしなければ特には……

(; ω )「……」

本が、僕の手から離れ、床に落ちる。
裏表紙が上になった幸運を喜ぶべきだろうが、そんな余裕など微塵もなかった。
僕の視線が捕らえたのは入り口脇のレジ。




そのカウンターの奥で腕を組み、仁王立ちする一人の女性の姿。

それは人鬼。
それは悪夢。
それは最強。

川 ゚ -゚)「……」

それは――――師匠を打ち倒せし天敵。

(; ω )「あ……ぐ……」

膝が震え、脳裏にあの光景がフラッシュバックする。
嫌だ。否だ。厭だ。恐い。怖い。やめてくれ。
このままへたり込みたい。逃げ出したい。
本当に、勘弁してくれ。




頭で分かっていても、体は動こうとはしない。
刻み込まれた最大級の恐怖が頭を擡げていた。

(; ω )「ハァッ……ハァッ……」

痛いくらいに鼓動を早める心臓。
自然と荒くなる呼吸。

川 ゚ -゚)「……む?」

(; ω )「――――ッ!」

視線が、重なった。
重なってしまった。
相手は完全にこちらの存在に気付いた。
もう……




「すいません、店員さん」

僅かに聞こえた声。
それは、今朝聞いたあの子の声。

川д川「ハウルの動く尻ってありますか?」

川 ゚ -゚)「はい。こちらにお持ちしますので、少々お待ち頂けますか?」

川д川「宜しくお願いします」

川 ゚ -゚)「では……モナーさん、レジの方お願いします」

( ´∀`)「おkモナー」




師匠が天敵と呼んだあの女性がレジを離れ、コミックコーナーへと姿を消した。

(;^ω^)「……助かったのか……お……」

ギリギリで踏みとどまった。
絶望的な状況が彼女の手によって覆された。
これが、最初にして最後のチャンスだろう。

だが、レジは遥か先。余りに遠い。
そして、時間が足りない。
普通に走った所で、着いた頃には間違いなくあの店員が戻っている。




今のボクが出せる速度では到底足りない。もっと速く。
人類史上最速の人間よりも早く。
草原を駆ける四足獣よりも速く。
天翔ける翼を持つ鳥よりも迅く。
鋼鉄の翼と心臓を持つ機械の鳥よりも更に疾く。
肉を持つ存在の限界を超えなければ到底届きはしない。

ならばアレをやるしかない。
かのヒーローが巨悪との死闘の中で閃いた最終奥義。
己の身を火の鳥と化し、回避不能な速度で突貫するあの技。
それしかない。

だが、ヒーローですらアレを繰り出す為には変身し、身体能力を向上させなければならなかった。
それを、生身で出来るのか?それを、生身で耐え切れるのか?






――やれるッ!



――何も問題は無いッ!



――片手、片目、愚息さえッ!それさえ残っていればッ!




本を拾い上げ、そっと瞼を閉じる。


( -ω-)「……ぉ……」


そして、両腕を猛禽類の翼の如く横に広げ、全身の筋肉を限界まで引き絞る。
もっとだ、もっと引き絞り、張り詰めろ我が肉体よ。
人の限界を超えなければ神速の極みに到達する事など出来はしない。


( ^ω^)「……おおおぉ……」


心よ尖れ。鏃の如く。刃の切っ先の如く。万物を穿ち貫く螺旋の如く。
そうでなければ耐えられなどしない。
ボクは全てに耐え、全てを乗り越えなければならないのだ。






(#^ω^)「……おおおおおぉ……」


必要なのは自分という存在を知覚する事の出来ない速度。
百という距離を十に。その十を壱に。その壱を限りなく零に近い存在に縮める速度。
通り過ぎた後、暴風によって“何かが通り過ぎた”と、間接的に存在を知らしめる速度。


(# ω )「おおおおおおぉ―――――」


それは刹那の領域に近づく行為。
それは刹那の領域を超える行為。
それは光る疾風を追い越し―――――混ざり、一つになる行為。






(#゚ω゚)「おおおおおおおおおおおおおおぉ―――――ッ!」


ボクが纏うは真紅の炎ではなく、白色の輝き。
そう、人類の英知の結晶、蛍光灯の煌き。
今この瞬間から、本屋の通路という暗黒を切り裂く閃光となろう。
彼女が作ってくれたチャンスを生かす為に――――






(#゚ω゚)「――――ッ」


――それは、息を吸い込んだ瞬間の事だった。


――かちん。という、引き金が引かれた時の様な、少し間の抜けたな音がした。そんな気がした。


――それは、ひゅん。という、弓が放たれた時の様な音だったかも知れない。


――もしかしたら、ビュッ。という、白濁を放った時の様な音だった可能性もある。


――わからない。


――けど、どれであろうと関係ない。


――音がした瞬間、ボクの体は、その場所に存在しなかったのだから。












□⊂二二二(#゚ω゚)二二⊃「 光 の 翼 ァ ――――――――!」










誰も、その姿を捉える事など出来なかった。
誰も、その存在に気付く事など出来なかった。

親友でありライバルであるジョルジュ。
彼の目は、その存在を捉える事が出来なかった。
ただ、

(■、■*川「いやぁん!」

(*<○>∀<○>)O彡゚「パンチラ!乳揺れ!」

巻き起こされた暴風によって女性客のスカートが捲れ、乳が揺れた事。
それで辛うじて存在を感じたのみだった。




そして、弟子の身を案じ、物陰から見守っていたドクオ。
彼でさえ、気付く事が出来なかった。
そう、

J(*'∀`)し「 死 ね ェ ――――――――ッ!」

(;'A`)「アビゴルッ!」

母親に突き飛ばされ、

□⊂二二二(#゚ω゚)二二⊃「 死 ね ェ ――――――――ッ!」

(メ゚A゚)「ゴトラタンッ!」

その身がブーンに弾き飛ばされたその瞬間でさえ。





内藤ホライゾンことブーン。
彼はその瞬間、光と一体になっていたのだ。


第二十三話『副題: 光 の 翼 ァ ――――――――! 』糸冬




―――――――――――――
最終話『糸冬』


( ^ω^)「……」

自室にて、窓から刺し入る月光を浴びながらの正座。
全裸で相対するは一冊のエロ本。
この状況において尚、ボクの心は驚くほど冷静だった。
かといって興奮していない訳でもない。
先ほど清めた筈の体表には、うっすらと汗が滲んでいる。
冷静でありながら、いつでも行為に及ぶ事が可能な状態。
例えるならば、柄に手の掛けられた刀。居合いの構え。

( ^ω^)「……フッ」

これも修行の成果であろうか。
そう考えながら、本に向かって一礼の後、ゆるりと表紙を捲る。
同時に愚息がそそり立つ。




( ^ω^)「……ほほぅ」

感嘆の吐息を漏らしながら、再び頁を一枚捲る。
愚息からトロミを帯びた液体が滴った。

( ^ω^)「……いざ」

右手が、愚息を柔らかく包み込む。
途端、











(*゚ω゚)「 エ ン ジ ェ ル ハ イ ロ ゥ ! 」








痙攣と共に放たれしは白濁。
早すぎるのう。
悔しいのう。

前以て用意しておきしちり紙にて拭き取った後、更に頁を一枚捲る。
再度漲り、昂りしは我が愚息。
成る程。これがエロ本と云う物か。
げに素晴らしきかなエロ本。

再度、右手が愚息を包み、一擦り。二擦り。
二度目と云う事も有ってか白濁未だ放たれず。

( ^ω^)「……ふむ」

胸の内に生まれしは確信。
此れならば強く擦る事も可能であろう。
だが、夜はまだまだ始まったばかりなのだ。時間は……




(;゚ω゚)「アッ――――!宿題全然やってないお!もういいお!オナヌしながらやるお!」

/(;゚ω゚)\「汁が英語の宿題にぃぃぃぃぃっ!英語オワタァァァァァッ!」

(;゚ω゚)「ジャバコッ!国語の作文エロ本の感想書いちまったおぉぉぉぉぉぉっ!」

( ^ω^)「いや、これはこれで斬新かも知れんね」

(;゚ω゚)「って、あの子にお礼言うの忘れてたおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

こうして夜は更け、ボクらの高校最後の夏休みが終わった。






~~~


翌日、

(ヽ ω )「……太陽が黄色く見えるお」

(ヽ ∀ )「……同じく」

ボクらは二人揃って燃え尽きていた。

(ヽ^ω^)「ジョルジュは宿題やったかお?」

(ヽ゚∀゚)「ギリギリな……左手で書いたから字とか滅茶苦茶だけど」

(ヽ^ω^)「……右手は股間かお?」

(ヽ゚∀゚)「当然だろ?」

やはり、と言うべき所だろう。
多分二人揃って評価は最低ランクだが。




(ヽ^ω^)「そういえば、今日告白するのかお?」

(ヽ゚∀゚)「……放課後にでも玉砕覚悟で行ってくるわ」

(ヽ^ω^)「じゃあ、振られたら飯ぐらい奢ってやるお」

(ヽ゚∀゚)「ついでにお前の胸で泣かせてくれ」

(ヽ^ω^)「そのままロコモーションG決めてもいいかお?」

(ヽ゚∀゚)「No Thank You……っと、ちょっとタンマ」

(ヽ^ω^)「何してるんだお?」

(ヽ゚∀゚)「いや、ちょっと知り合いに大事なメールするのを忘れててな」

(ヽ^ω^)「ふーん」

そんな返事を返すボクの頭は財布の中身を思い出していた。
さて……今の財布の中身なら九祖味噌亭の『腹の中がパンパン定食』位ならいけるな。






~~~


( ⊃ω⊂)「……」

ジョルジュと教室の前で別れたボクは、自分の席に着くなり眠り始めた。
眠い。ひたすらに眠い。
登校時間直前まで宿題をしていたのだから、仕方のない事なのだが。
まぁ、先生が来るまでの間、仮眠を取れば何とかなる

「おい、子豚」

はずだったが、威圧感たっぷりの声によってボクの睡眠は開始三分で強制終了させられてしまった。

( つω`)「……お?」

从 ゚∀从「よう」

(;^ω^)「は、ハインさん……」

皆から向けられる好奇の視線。それも当然といえば当然だろう。
滅多に喋らないこの人が、わざわざ自分から話し掛けているのだ。




从 ゚∀从「放課後屋上な。来なかった場合……殺すから」

(;^ω^)「……把握」

ボクがそう答えると、彼女は、よし。と呟いてどこかに行ってしまった。

あいつ死んだな。とクラスメイトの誰かが囁いた。
まだ若いのに可哀想。という同情の声も聞こえてきた。
誰しもそう考えるだろう。皆、知っているのだ。彼女の恐ろしさを。

(;^ω^)「これはオワタかもしれんね」

けど、一人だけ同情ではなく別の感情を向けてくる人がいた。

ξ゚ー゚)ξ「ねぇ、内藤君」

(;^ω^)「……お」

彼女の名前はツン。
普段は男女分け隔てなく接するいい子なのだが……




ξ゚ー゚)ξ「何で、君がハインに呼び出されるの?」

ただ、異常なまでに独占欲が強かった。

(;^ω^)「……ボクが聞きたいお」

彼女は自分の気に入っている人が異性と関わる事を極端に嫌う。
ちょっと会話を交わしただけで不機嫌になり、二人きりになろうものなら実力行使すら辞さない。
そんな女性なのだ。

ξ ー )ξ「真っ直ぐ……帰るよね?」

彼女の目から光が消えた。
口調は優しいものの、その声から感じるのは鬼気迫る凄み。
だが、ここで引く訳には行かない。
来なかったら殺す。そう言われてしまったのだから。




(;^ω^)「行かなきゃ、殺されちゃうんだお」

ξ ⊿ )ξ「へぇ……私のお願い、聞いてくれないんだ」

(;^ω^)「悪いけど、まだ死にたくないんだお」

ξ ⊿ )ξ「ふぅん……」

(;^ω^)「……」

ξ ⊿ )ξ「別に、いいんだけどね」

彼女は、そう言い残して自分の席へと戻っていった。

(;^ω^)「ようやく眠れ……って、もう時間無いお……」

気付けば時間は先生の来る二分前。
結局ボクは寝る事を許されないまま始業式に向かう事となった。






~~~


そして放課後
ボクは放送室の前に立っていた。

( ^ω^)「すいませーん」

J('ー`)し「HeyBoy、どうしたんだい?」

( ^ω^)「先生ですかお?」

J('ー`)し「ノンノンノン。アタイは流浪のDJ、その名もKA-CHANさ!」

( ^ω^)「アナタが……」

噂で聞いた事がある。
神出鬼没のDJ KA-CHAN。
息子に対する情け容赦のないディスを聴いた者は例外なく咽び泣くという。
そんな人に会えるなんて、ボクは全く以って運がいい!




J('ー`)し「Boy、用件を聞こうか?」

( ^ω^)「マイブラザーの為に、コイツを頼むZE!」

ボクが差し出したのは一枚のCD。
曲は勿論「STAND UP TO THE VICTORY」
コイツこそ、今のジョルジュに相応しい曲の筈だ。

J('∀`)しb「OK!コイツは最高にCool DA・ZE!」

( ^ω^)b「Yes!」






~~~


( ^ω^)「……ただ走り抜けた、昨日までの毎日、信じている、のさ」

スピーカーから流れる曲を口ずさみながら、屋上へと続く階段を上る。
やはりこの曲はいい。どんな時でも、この曲はボクに勇気をくれる。

そんな事を考えながら、屋上のドアに手を掛け、それを押し開いた。

( ^ω^)「……あれ?」

ξ#゚⊿゚)ξ「……来たわね」

屋上にはボクを呼んだハインの姿は無く、代わりに腕組みしたツンが立っていた。




( ^ω^)「何で……ツンがいるんだお?」

ξ#゚⊿゚)ξ「ハインを賭けた決闘よ!アンタには消えてもらうわ!」

(;^ω^)「ちょ……女の子と喧嘩する訳には行かないお!」

ξ#゚⊿゚)ξ「じゃあ大人しく殺されなさいよ!」

(;^ω^)「勘弁してくれお!」

彼女はボクの説得に耳を貸そうとはしない。
それどころか、一足飛びにこちらへと近づき、容赦のない突き蹴りを繰り出してきた。

ξ#゚⊿゚)ξ「死ねェ――――!」

(;゚ω゚)「ザンネック!」

腹に衝撃。直後、意思に反して体が後退。というか吹き飛び転がった。




……一撃喰らって、ようやく思い出した。
ツンは実力行使をやる女だった。圧倒的暴力による実力行使を。

ξ#゚⊿゚)ξ「ハインの初めてはね!私が組み伏して無理矢理って決めてるんだから!」

自重すべき発言と共にツンが跳ね、その身を捻りながら踵を天高く振り上げる。
こちらはまだ起き上がってさえいない。

……どうしようか。
などと考える時間が有る筈も無い。
ツンの体は既に眼前。高く掲げられたその踵は、鉞の如く振り下ろされようとしている。

(;^ω^)「のわっ!」

起き上がらず、そのまま横に転がって回避。
二次愛好家で本当に良かった。三次愛好家なら下着に見とれて喰らっていた事だろう。
二次元バンザイ!




ξ#゚⊿゚)ξ「アンタなんかに絶対渡さないんだから!」

(;^ω^)「いや、マジで落ち着けお!」

転がりながらの説得。
目が回るが、踵が間断なく振り下ろされるのだから仕方が無い。

ξ#゚⊿゚)ξ「いい加減喰らいなさいよ!」

(;^ω^)「そんなのまともに喰らったら死ぬお!」

今は回避できてはいるものの、ツンが水面蹴りに切り替えたらどうしようもない。
それに、寝転がったままでは状況は悪くなるばかりだろう。

(;^ω^)(……やべえお!このままじゃ死ぬ……ん?)

それは、変化。
二次愛好家でありながら、三次を捨てきれなかったボクの股間に生じた僅かな変化。
そして、僅かに隆起したそれが、転がる事により刺激を受けて肥大。




つまり……ボクは、勃起していた。

(;^ω^)(……状況更に悪化じゃね?)

転がる度に刺激で変な声が出そうになるのを堪えながら更に回避。
落ち着け!落ち着くんだマイオチンチン!
頼むから落ち着いてくれ!

ξ#゚⊿゚)ξ「逃げるばっかりとかそれでも金玉付いてんの!?」

ツンの口から放たれる罵倒で膨張率が更に上がる。
ボクはMだったのか!全然知らなかったぜ!

とか考えてる場合じゃない。
せめて起き上がるなりしなければ出る!なんか出る!

(#^ω^)「こうなりゃ自棄だお!」

自爆する可能性があったとしても、ボクにはこの手段しか残されていない。
四肢を伸ばした体勢のまま体の回転を早め、うつ伏せになった瞬間、股間に力を込める。
直後、






(#゚ω゚)「おらっっしゃぁぁぁぁぁっ!」


僕の体は空高く跳ね上がった。

ξ ⊿ )ξ「飛んだ……どう、やって……?」

ボクを見上げる、呆然とした表情のツンと視線が重なる。
何が起きたのか理解出来ていないのだろう。
まぁ、理解できないのも仕方のない事だ。
これは、漢にしか出来ない技なのだから。

(  ω )「フッ……」

ツンの背後に着地するより先に、ボクは既に準備を終えていた。
両の掌を組み合わせ、人差し指と中指を伸ばした、印にも似た構え。
その威力故、対人戦に於いて禁忌とされたその奥義。

ξ;゚⊿゚)ξ「なッ!」

気付いた所でもう遅い!
その純白の下着に風穴開けてやんよ!




(#゚ω゚)「 三 ! 年 ! 殺 し ! 」

ξ ⊿ )ξ「アッ……ジャベ…リン……」

薄絹を貫く感覚。
第二関節までめり込んだと確信できる手応え。
指を引き抜くと同時に崩れ落ちるツンの体。

とりあえず指を嗅いでみた。

( ^ω^)「ペロッ……これはビター!」

ボクもそのまま崩れ落ちた。






~~~


誰かに小突かれた。
何度も何度も何度も何度も小突かれて、ようやくボクは瞼を上げた。

( 'ω`)「おぅぅ……」

視界に広がるのは青い空。
そして、

从 ゚∀从「……ようやく起きたか」

長ランの裾をはためかせながら、ボクを爪先でコツコツと蹴り続けるハインさん。
寝転んだボクの視点なら見える筈のスカートの中身がギリギリ見えない。
コイツが……絶対領域ッ……!




( ^ω^)「……チッ」

从 ゚∀从「……何か言ったか?」

( ^ω^)「いいえ。おはようございますお」

从 ゚∀从「おう。ところで」

そう言いながら、彼女が顔を横に向ける。
僕もつられて同じ方に顔を向ける。
視線の先には、

ξ ⊿ )ξ「……」

尻を浮かせ、うつ伏せに倒れているツン。
時折痙攣している事からして一応生きてはいるようだ。

从 ゚∀从「……アイツ、何で倒れてるんだ?」

( ^ω^)「禁則事項という奴だお」

言えない。言える訳が無い。




从 ゚∀从「まぁいいか……とりあえずコレ受け取れ」

( ^ω^)「……コーヒー?」

受け取ったそれは、KATE-ZATU社製のカップル板コーヒー。
いや、これゲロ吐くほど甘いって有名なんですけど。

从*゚∀从「く、口止め料って奴だ……頼むから誰にも言うなよ」

(;^ω^)「……」

顔が赤くなってしまうほどの秘密。
多分、誰かに言った時点で消されるレベルの話なのだろう。
だが……

(;^ω^)(……NGワードが分かんないお……)

从*゚∀从「……そいつじゃ不服か?なら、お前の申し出を受けてやらない事も……」

(;^ω^)「いや、何を言っちゃダメなのかが分かんないんだお」

ボクには何の覚えもない。
そもそも彼女の秘密をどうやって知り得るのだろうか。
少なくともボクには不可能だ。




从;゚∀从「はぁ?でも、確かにジョルジュが気付いてるって……」

( ^ω^)「……気付いてる?」

余計に分からない。
何故そこでジョルジュの名前が出てくるのだろうか。
ボクが何に気付いたと言ったのだろうか。

从; ∀从「いや、だから……私が……」

( ^ω^)「ハインさんが?」

从; ∀从「……」

( ^ω^)「わっふるわっふる!」

从  ∀从「……あれ?」

( ^ω^)「お?」

从 ∀从「おい、本当に何も気付いてないんだな?」

( ^ω^)「だから分かんないって言ったお」

从  ∀从「そう……か……あの馬鹿……」

何かが切れる音がした。ような気がする。
糸の切れる時の様なか細い音じゃない。
荒縄の束が一気に切れた時のような、連続して切れる音がした。気がする。






从#゚∀从「……騙しやがったな!DSCでフルボッコにしてやんよ!」


怒髪天を衝く。
その言葉の通り、髪は逆立ち、身に纏う衣服も暴風に煽られたかの様にはためいている。
それでもスカートの中身は見えない。恐るべし絶対領域!

( ^ω^)「……チッ」

从#゚∀从「何か言ったか!?」

( ^ω^)「記憶にございませぬお」

从#゚∀从「そうか……さぁて、アイツは何処にいるのかなァ……」

そう呟く彼女が取り出したるは携帯電話。
この状況で電話を取り出すとなればやる事は一つ。




(;^ω^)「出来れば……呼び出すのは少し待ってあげてほしいお」

从#゚∀从「何でだよぉ!アレだぞ!アイツとんでもない嘘ついたんだぞ!」

(;^ω^)「気持ちは分かるけど、ジョルジュの告白が終わるまで……ダメかお?」

从#゚∀从「告白中?でもそんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!」

(;^ω^)「お……」

なんて気合の入った小島よしおの物真似だろう。
ヤバいな……彼女は完全に頭に血が上っている。
何か無いか。何か手は……

(; ω )(……また、ボクは見ているだけなのかお……)

脳裏に浮かぶのは師匠が倒れる瞬間。
あの時の様に、何も出来ないまま見ているだけなのか。
ボクは、なんて無力なんだ……






( ^ω^)(……ピコーン!)


否――ボクにも、出来る事があった。
あの時の、師匠の天敵が放った一撃。
アレならば、肉体の強さなど関係ない。
ボクでも、彼女に勝てる可能性はある。
失敗すればフルボッコされかねないが、この手しか無いだろう。

( ^ω^)「そういえばハインさん」

从#゚∀从「なんだよぉ!?」

( ^ω^)「ハインさんは……ジョルジュにどういう嘘つかれたんだお?」

从;゚∀从「お、お前には関係ねえ!」

一目で分かる、明らかな動揺。
これは……いける!




( ^ω^)「わざわざボクを呼び出すくらいだから、関係ないって事は無いと思うお」

从;゚∀从「な、内緒だ内緒!絶対言わないからな!」

( ^ω^)「うーん……恥ずかしいみたいだし、ハインさんから聞くのは諦めるお」

そこで一旦言葉を切る。
次の句を続けて言ってはいけない。
大事なのは、

从;゚∀从「よし、それじゃ……」

相手が気を抜いた瞬間に、

( ^ω^)「仕方ないからジョルジュに聞くお」

止めの一撃を放つ事なのだから。

从; ∀从「え……ちょ……冗談だよな?」

( ^ω^)「本気だお。だって、すごい気になるんだお」

その言葉は嘘ではない。
真実だからこそ、こうやって悪意なく言えるのだ。




从;゚∀从「マジ勘弁してくれ!それ知られたら死ねるんだって!」

( ^ω^)「大丈夫だお。他の人に言ったりしないお」

从///从「お前に知られるのが一番恥ずかしいんだよ!」

彼女の脳内からは、怒りは完全に消し飛んでしまっている事だろう。
彼女の本気で恥ずかしそうな表情がそれを証明している。
そろそろ、頃合いかな。

( ^ω^)「じゃあ……ジョルジュの事、許してくれるかお?」

从///从「わ、分かったよ……その代わり絶対聞くなよ!約束だからな!」

( ^ω^)「んー……」

今こそ好機。
今こそ彼女に救いの手を差し伸べ、無駄に恩を売っておくのだ。
さあ、今こそ優しく微笑み、彼女を救ってあげるのだ!




( ゚ω゚)「 だ が 断 る ! 」

从  д从「……え?」

……あれ?
えーっと、ワンモアセッ!

( ゚ω゚)「 何 度 聞 か れ よ う と 答 え は N O だ ! 」

NOだ!じゃねえよ。やっちまった。
ものすごい勢いでやっちまった。
湧き上がる後悔。そして充実感。

じゃなくて、調子に乗りすぎだ。
コレは死ぬ。間違いなく殺される。
ボクもジョルジュも人生オワタ。

(;^ω^)(……って、あれ?)




とはならなかった。

从うд从「……ヒグッ……ヒック……」

耳に届くは最強の小さな嗚咽。
眼前には顔を覆い、小さく肩を震わすハインさん。

――最強にして孤高の番長。
誰が、最初にそう呼び出したのだろう。
なぜ、彼女がそう呼ばれるようになったのだろう。
ボクは、噂でしかそれを知らない。

(;^ω^)「あ……」

だからこそ、彼女の逸話を知るが故の先入観。
それ故に、失念していた。
確かに彼女は肉体的にはボクとは比べ物にならないかもしれない。
けど、

(;^ω^)(……ハインさんも、ボクと同じ18歳なんだお……)

彼女も自分と同い年なのだ。
そんな単純な事を忘れてしまっていた。
肉体が強いからといって精神が強いとは限らないのだ。




从うд从「……何で……そんな意地悪言うんだよぉ……スン……」

(;^ω^)「あの、つい口が滑ったというか……」

从うд从「私の事、嫌いなんだろ……嫌いだからそんな事言ったんだろ……」

(;^ω^)「そんな事ないお。ただ、なんというか……」

从うд从「うるさい……ブーなんか嫌いだ……」

(;^ω^)「……」

目の前ですすり泣く彼女を見て、誰が最強と呼ぶだろう。
彼女は、傷つけられて涙する、か弱い存在でしかないというのに。
噂とは逆の、脆くて儚い心の持ち主だというのに。
中身はボクと同じ、高校三年生でしかないというのに。




(;^ω^)「謝るから、絶対に聞いたりしないから泣き止んでほしいお」

从うд从「…………ホント?」

(;^ω^)「ホントだお!それに……」

――この時のボクはかなり混乱していた。
彼女に泣き止んでもらう事で頭がいっぱいだった。
だからだろう。
そうでもなければ、普通……

(;^ω^)「君に涙は似合わないお!」

昨日読んだエロ本の臭い台詞なんて言ったりしない。

从うд从「……」

(;^ω^)「……」

時が止まった。むしろボクが時を止めた。
ヤバイ、帰りたい。むしろ死にたい。




从う∀从「……」

(;^ω^)「……」

从う∀从「……プッ、クククッ……」

それは小さな笑い声。
堪え切れずに吹き出してしまった様な、そんな笑い声。

(;^ω^)「……お」

从 ;∀从「ははっ……似合わないにも程があるぞ」

(;^ω^)「サーセンwwwwwww」

从 ゚∀从「ったく、女の子泣かせるとか……」

彼女は笑っていた。
笑いながら腰を落とし、大きく右腕を引いていた。




从#゚∀从「死にたいらしいな?」

(;^ω^)「……さーせん……」

从# ∀从「……許さねえよ」

彼女がそう言い終えた時、拳は既に放たれていた。
かわせる筈が無い。今度こそ本当に死んだ。


――額に、小さな衝撃。


先ほどの拳の勢いからは考えられぬほどに、小さな衝撃だった。
拳を見ると寸前で止められ、中指だけが伸ばされている。

……デコピン?




从 ゚∀从「今回はコレで許してあげよう。今日の私は意外と寛大」

(;^ω^)「……あざっす」

从 ゚∀从「その代わり、私を泣かせた責任キッチリ取ってもらうからな」

(;^ω^)「えと、ボクに出来る事なら……」

从///从「じゃあ、今から本屋行くから……私と付き合え!」

( ^ω^)「把握!」

( ^ω^)(……あれ?)

そのとき抱いた小さな疑問。
そのときは深く考えなかった。
ちょっとした間違いなんて誰でもするものだからね。




从*゚∀从「ホラ、ボーっとしてたら置いてくぞー」

(;^ω^)「ちょ、待ってくれお」

だから、急かされてた事もあって、そこで考えるのは止めたんだ。



まぁ、その言葉が間違いじゃなかったって知るのは、ずっと後の事なんだけど。



最終話『副題:エロ本は浪漫。異論は認める』




―――――――――――――
エピローグ『疑問』

もう、七年になるんだね。
こうやって、君と歩くようになって。


――やべっ、小銭十円足りナスwwwwwwwwww


――しゃあねぇなぁ……ほらよ。


――うはwwwwwwサンクソwwwwwwww


――気にすんなって。ほら、さっさと行くぞ。


ずっと昔から、気になっていたんだ。
でも、あの頃のボクは聞く勇気なんて持ち合わせてはいなかったし、





――やーっと返せたな、十円。


――なんか言ったかお?


――なーいしょ。


君は、いつもそうやってはぐらかすから。
都合の悪い事や、照れ臭い事は絶対に答えようとしないから。





――大体よぉ、出産祝いに行くって時に何で漫画本買うんだよ。


――だって、発売日の朝じゃないとまず買えないんだお。君だって変な本の……ビルケナウッ!


――ったく、あの二人に言ったら笑われるだろうな。


――それより先に驚くと思うお。


――そうかもな。もう丸分かりだし。


そうだね。もう、隠し切れないくらいに大きくなってしまったね。
ボクからしてみれば、それも含めて君の全てが愛しく思えるんだけど。

だから、君の口から、直接教えて欲しいんだ。





――そういえば……ハインに一つ聞きたい事があるんだお。




――んー、なんだー?






どうして、君の背中には大きなチャックがついているの?



エピローグ『副題:はみ出る大きな801ちゃん』糸冬




 完









―――――――――――――
おまけ


・・・
・・



『糸冬直後のようです』

从 ゚∀从「ジョ-ルージュー」

( ゚∀゚)「んー、どしたよハイン」

从 ゚∀从「ヌッ殺していい?」

( ゚∀゚)「……一応理由を聞いておこうか」

从 ゚∀从「私を騙すとか、万死に値すると思うんだけど」

( ゚∀゚)「ん、ブーンに振られたか?」

从;゚∀从「そういう訳じゃないけど……って、何でそうなるんだよ!」

( ゚∀゚)「いや、せっかくお膳立てしてやったんだぜ?」

从* ∀从「まぁ、一緒に本屋行ったけどさ……」

( ゚∀゚)「ほうほう、初デートkwsk」

从///从「言える訳ねえだろ!」

( ゚∀゚)「一緒に風呂に入ってた仲なんだしよー、隠す事無いじゃんよー」

从///从「ガキの頃の話なんかするなっ!死ねっ!死んでしまえ!」

『副題:从 ゚∀从と( ゚∀゚)は従兄弟のようです』

・・・
・・




『( ゚∀゚)の糸冬でのメール内容のようです』

RE:RE:RE:

ブーンな、











昨日のアレお前って気付いてたぞwwwwwww
しかも「これが……恋って奴かお……」とか呟いてたwwwwwww
きwwwwwwめwwwwwwwっうぇwwwwwwwww

『副題:嘘八百な上に非常にウザい内容だったようです』


・・・
・・



『ドクオのその後のようです』

('A`)「さーて今日は何を借りるかな……」

ξ゚⊿゚)ξ「うーん……」

(;'A`)(……何でAVコーナーに女が……)

ξ゚⊿゚)ξ「コレはダメね……」

(;'A`)(……気にしない事にするか……)

ξ゚⊿゚)ξ「うーん……」

('A`)「義母中田氏レイプか……これ良さそうだな」
ξ゚⊿゚)ξ「義母中田氏レイプ……コレ良さそうね」

(;'A`)「え?」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ?」

(;'A`)「あ、その、よろしかったらどうぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「いえいえ、貴方が先に触れた訳ですし……」

(;'A`)「いや、レディファーストってものがあってですね……」




J('ー`)しb「じゃあ、三人で見ようか!」

(;'A`)「カーチャン!?」

J('ー`)しb「嬢ちゃん、アタイのゴールデンフィンガーの虜にしてやんよ!」

ξ///)ξ「素敵っ!抱いて!」


~翌年~


(;^ω^)「まさかドクオさんがツンと結婚するなんて……」

( ;゚∀゚)「どこで出会ったんだろうな……」

('A`)(……未だ童貞なんだけどね……)

『副題:偽装結婚のようです』


・・・
・・



『(´・ω・`)と川 ゚ -゚)のその後のようです』

(´・ω・`)「ちょっとレジお願いね」

川 ゚ -゚)「その前に……一つ教えて欲しい」

(´・ω・`)「なんだい?」

川 ゚ -゚)「私がレジをやっているとエロ本が売れないのは何故だろう?」

(;´・ω・`)「……どうしてそんな事を?」

川 ゚ -゚)「気になって仕方ないんだ」

(;´・ω・`)「……言わなきゃダメ?」

川 ゚ -゚)「だめ」

(;´・ω・`)「今言うのすっごい恥ずかしいんだけど……」

川 ゚ -゚)「ならばピロートークの時でかまわないぞ」

(;´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)b「……」

『副題:……なようです』


・・・
・・



『('、`*川と从 ゚∀从なようです』

('、`*川「舟木兄×舟木弟モエス!テラモエス!」

从*゚∀从「鈴×チュパ衛門ヤバス!ムッハー!」

('、`*川「あるあるwwwwwwチュパ受けテラモエスwwwwww」

从*゚∀从「頼母総攻め本ヤバスwwwwwww」

『副題:センスが尖っているようです』


・・・
・・


『エロ本コーナー入れないのようです』

気がついたら 同じ本屋に向かってる  そしていつも 何も買えずに出る 
あきらめずに エロ本コーナーに挑戦するけど 立ち読み客がいるよ  
あの客さえいなければ らくに  エロ本を手に 取れるけど
何回行っても 何回行っても  エロ本コーナー入れないよ 
立ち読み客何回行っても常にいる  
うしろを通って 牽制しても 相手は気付くこともない 
咳払いも試してみたけど 空気が読めない意味が無い! 
だけど今日は絶対買うために ボクは閉店間際最後まで待っておく


気がついたら 時間もう少ししかない そしていつも あの客は粘る
あきらめずに 雑誌コーナーで粘りはするけど すぐに読むのなくなる・・・
あの客さえいなければ らくに エロ本二冊買えるけど
何回行っても 何回行っても 立ち読み客動かないよ
読み耽り過ぎ 何回行っても気付かない
うしろで止まって ガン飛ばしても 気付きもせずに読み耽る
小さく「どけよ」 試してみたけど あいつは空気 読みやしない
だから明日は絶対買うために ボクは閉店あとに入り口で待っておく

あいつさえいなければ らくに  エロ本を手に 取れるけど
何回行っても 何回行っても  エロ本コーナー入れないよ 
立ち読み客何回行っても常にいる  
うしろを通って 牽制しても 相手は気付くこともない 
咳払いも試してみたけど 空気が読めない意味が無い! 
だけど今日は絶対買うために ボクは閉店間際最後まで待っておく

『副題:( ´∀`)はよその本屋でエロ本を立ち読みしているようです』

・・・
・・


『エピローグより更に後のようです』

从 ゚∀从「娘ー、娘ー」

从ω゚ 从「おー?」

川д川「ほーらお化けだぞー」

从ω゚*从「キャッキャッ!」

(;゚ω゚)「ちょ……っうぇ!?」

从 ゚∀从「……」

(;゚ω゚)「……」

从ω゚ 从「おっおー?」

川д川「お化けだぞー」

从ω゚*从「キャッキャッ!」

(;゚ω゚)「ハインがあの人だったのかおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

从;゚∀从(……今まで気付いてなかったのかよ……)




(;^ω^)「えと、あの時は助けて頂いて、本当に有難う御座いますお」

从;゚∀从「え、あ、こちらは礼をしたまでであってですね、その、そんな気にされる事は……」

从ω゚ 从「おー?」

~~~

( ゚∀゚)「息子ー、息子ー」

(゚、゚*)「にゃーにー?」

( ゚∀゚)「ほーらエッチなものだよー」

゚ミO(゚、゚*)「おぱい!おぱい!」

( ゚∀゚)O彡゚「おっぱい!おっぱい!」

('、`#川「アァァァァァァナァァァァァァァタァァァァァァッ!」

(;゚∀゚)「サーセンwwwwwwwwwwww」

('、`#川「逃がさん!って、私の奴見せるな!」

(゚、゚*)「にゃー?」

(;゚∀゚)「ちょ!いやん!らめぇぇぇぇぇぇぇっ!」

『副題:歳を食っても変わらないようです』




おしまい
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