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2009.06.1302:12

ブーン達はマインスイーパに集められたようです 2巡目

―18―









腐ったゲームをやらされてた。
見ず知らずの10人が集まり、命がけのマインスイーパをやらされるゲームだ。
ゲームも後半へ入り、失格によって命を失った者も3人出た。

長かった一巡目は終わり、とうとう二巡目へと進む。
これでまたランダム指名、僕への指名がありうる状態になったのだ。

残ったランクは、初級が1回と、中級が2回。
残った人は、僕とモララーさんとショボン君とハインさん、ジョルジュ・ペニサス
……たった、6人







( ・∀・)で、どうするんだ?

('、`*川……何が?

( ・∀・)指名されたら、どっちを選ぶか、って話だよ

それはつまり、やるなら初級か中級のどちらをやるのか。
大切なことだ。これは命に直結する選択だから。

( ・∀・)ま、ペニサス論でいけば、「最初に指名された人が初級をやるべき」なんだろ?
     簡単な奴から潰していく、っていう順番を崩さずに。

('、`*川……そうね

( ・∀・)俺もそれが一番正しいと思う。
     この状況で最悪なのは仲間内での混乱だ
     さっきは反対したが、もう既に状況が違う。上級とオリジナルは消えたんだ

彼は僕らを仲間と言った。
僕は彼のことを仲間と思っている。
しかし、ジョルジュとペニサス、それとここにはいないシィ、この3人は仲間では無いと思っている。




( ・∀・)あ、ちょっと良いか?スピーカー男

「なんだ?」

( ・∀・)俺たちのクリアや失格はしぃにも伝わるのか?

「ああ、もちろん」

( ・∀・)じゃあ、あっちのクリアは?俺たちに伝わるの?

「もちろんだ、時間短縮が目的なのだろう?」
「私達も時間が短くなるなら、願ったり叶ったりだ」
「そのために孤立させる意味は無いからな、情報くらい共有させてやろう」

( ・∀・)こっちにクリアのアナウンスが無いってことは、しぃはまだプレイ中なんだな?

「その通り」

( ・∀・)ふーん、どーもね




モララーさんが何を聞きたかったのかは、しばらくして分かった。

彼は、シィがオリジナルを早めに切り上げることを期待したのだ。
つまり、僕らがまだ中級か初級を残した状態で、シィがこの部屋に戻ってくることを。

しかし、こちらの状況がシィに全て伝わってしまうとなると、それは無理だろう。
オリジナル盤が易々とクリアできるとは思えないが、「あと一枚」という状況で、画面の前でずっと座していれば良い。
僕らが初級・中級を全て潰した後に、最後の一枚を開けば……

あら不思議、シィがプレイしたのは結局オリジナル盤だけ。

もはや、シィは戦力として考えてはいけないようだった。
彼女は除外。
オリジナルと共に、コンクリート部屋から出て行った。

そう思え。
シィは味方じゃない。裏切り者。
それも、ペニサスやジョルジュなんかより、よっぽど狡猾で悪質な裏切り者。

もちろん同時進行のデメリットに気づけなかった僕にも責任はあるが。
それでも奴は許されざる裏切り者!




心が黒い感情で満たされていく時、スピーカーから声が聞こえた。

「休憩は終わりだ」

二巡目のアナウンスが、始まる

残っているのは初級・中級合計であと3回。
うまくいけば、最短3回で解放。
その3回に当たらなければ挑戦しなくても良い。

( ^ω^)(つまり……運次第では、もう既に解放されている状態……)

喜ぶべき状態のはずだが、僕の気持ちは明るくなかった。
シィの安全が確保されていることが、この上なく腹立たしかった。
シィが死なないということが、この上なく。




「では、二巡目の一人目のプレーヤーを選ぶ」
「可能性は全員にある。耳を澄ませ」

( ・∀・)(;´・ω・`)(;゚∀゚)('、`;川从;゚∀从

…………

( ^ω^)

僕には指名されるかも知れないという恐怖はあった。
それでも僕は不思議と落ち着いていた。

なぜって……なぜだろう。




告げられた名前は



「次のプレーヤーは、伊藤=ペニサス」




('、`*川…………ハー…………




ペニサス。
ここで裏切り者ペニサス。

( ・∀・)ははは、はは。ははははは、はははは。
    はははははは、はははぱ。ははははは、はは。ははは、は。ははは、ははは。
    は、ははは。ははははははははは、は。はは、はば。ははははははははは、はは。ははははははは、ははははは。ははははは、ははははは。
    ははは、はは。ん。はははは、はははば。はははは、ははははは。は、ははは。ははは、はははば。ん。はははは、ば。

( ・∀・)は、ははははは。ははははははははは、はははは。はははははは、ははははは。は、ははは。はははははは、は。はは、はば。ははははははははは、はは。ははははははは、ははははは。ははははは、ははははは。はははは、ば。はは、ば。ははははは、は。

('、`*川…………




彼女は一巡目の九人目のプレーヤー。
十人目のシィはすぐに退室したため、実質これは連続プレイ。
のべにして十一人目のプレーヤーは、裏切り者の伊藤=ペニサス。

裏切り者の、命がけのプレイ。
面白いとは思わないが、「ざまあみろ」という考えが心の中を埋め尽くす。

「3分以内に着席せよ。二巡目以降もこのルールは変わらない」
「もう一度説明しようか?3分以内に着席しなければ……」

('、`*川…………分かってるから良いよ。
    3分以内に着席しなければ殺されるんでしょ……

「ではさっさと座れ」

('、`*川……その前に、ショボン。
    薬を頂戴




(´・ω・`)…………信じますよ、ペニサスさん。

信じるも信じないも、彼女はこれをクリアしなければ失格するんだ。
失格は死亡と直結する。皆のためでなくとも、本気になるだろう。
ペニサスは無言でヴィプクオリティを受け取り、飲み込んだ。

彼女は一巡目のプレイが終わった時に、僕にだけこっそりと伝えてきた。
「次は中級をやる」と。
まあ、どうせ嘘だろう。期待などこれっぽっちもしていない。

死んで欲しい。
けれど何かクリアしてほしい。
矛盾するけれども、それが素直な気持ちだ。

('、`*川

初級にせよ中級にせよ、死の危険を孕んだランクであるのは間違いない。
彼女は、命がけのマインスイーパを初めてやることになる。

その緊張感を、全身で味わえ。伊藤=ペニサス。




彼女はなかなか座らなかった。
3分というタイムリミットが、過ぎてしまうのではないかとも思った。

不安になり、ペニサスを見てみると、彼女もまた僕の方を見ていた。
そしてつぶやく。

('、`*川 京都に帰る。
     舞鶴の寒い海を、もう一度見る。

急に呟いた言葉は、気を抜いてたら聞き逃しそうだった。
京都舞鶴。確かにそう言った。
力強く、頼もしい声だった。


けれど……故郷を思い出す人間というのは。もう既に現実から逃げ始めている。



('、`*川 絶対にクリアして、帰ってみせる




「では、ランクを選べ」
「上級とオリジナルは消えたから、初級か中級の二つから選ぶことになる」

('、`*川 分かってる。

「初・中のどっちを?」

('、`*川………初級をやるよ。

('、`*川 帰るよ。私は生きて帰ってみせる。

ここでクリアしても、僕らには得しかない。
彼女が生き残っても、なんら損することは無い。
だから、ペニサスのするべきことは、この初級の9×9盤を全て開ききること。

僕らもそれ以上を求めてはいない。




('、`*川 じゃあ、行くよ
    表示はXPバージョンのままで。

「分かった。では初級のプレイを開始せよ」

('、`*川 ……

ペニサスが無口になると、コンクリート部屋は痛いほどの静寂に包まれた。
当たり前か、こいつ以外は発言できないのだから

僕らにできることは、初級のプレイを成功させることを祈るだけ。
これでクリアしてしまえば、残るのは中級の二つだけとなる。
そうすれば、そうしてしまえば、クリアはもう目前と言えるだろう。

誤解が無いように言うが、彼女に生き残って欲しいわけではない。
ただ、僕らを少しでも楽にしてもらいたいだけだ。




('、`*川…………でもね、

一手も開いていない状況で長い時間が過ぎていたが、プレイ開始後初めて彼女が口を開いた

( ^ω^)……?

('、`*川 私はさっき謝ったけど、でもね。

('、`*川 …………これを失敗するつもりは無い。
    生きて、そこに座ってみせる。

視線はパソコンに向けられたまま。
僕らは反応を示さない。
モララーさんとジョルジュに至っては、目を閉じて眠っているようにも見えた。

彼ら二人は彼女の言葉に興味がないのだろう。
僕も、僕の中にある彼女への関心が少しずつ薄れていくのが分かった。




('、`*川 …………私はあなた達を裏切った。
     それは許されることでは無い。
     それでも、それでもね。償えないことでは無いと思うの

( ^ω^)……(……なら中級をやってみせろってんだお
          初級を選んだのは、可能な限り保身に走ってるだけだお)

('、`*川 嫌ないい方だけど、私がコレをクリアすれば、文句が言えるのはモララーだけ。
     特にハインとジョルジュには、文句は言わせない。
     私と同じ「上級」をやった人間なんだから

ハインさんは、違う。
皆の同意の上で、上級の意味も分からない内にプレイした。
ジョルジュとお前は裏切ったが、ハインさんは違う。

从 ∀从

ハインさんの表情は、彼女の赤みがかった髪の毛で隠れていた。




('、`*川 私はコレをクリアする。



そして一手目を刻む。

マインスイーパにおいて、もっとも大切な手となる一手目を。





マスが大きく――複数枚――開けば勝ちも同然。
ほぼ間違いなく、クリアできる。



そして、指が離れた瞬間、現れたのは――――


















――――数字の「1」

クーさんの時と同じく、またしても「1」。
なんのヒントにもなりえない、最悪の結果。

盤の辺のマスに現れた数字は、その周りの5マス中1マスに地雷があることを示す。
かといって、その5マスを除いても残った9個の地雷は満遍なく広がっている。
つまり、次手、どう動こうと賭けになる。

('、`;川 ……うぅ

賭けに出れば命の保証は無い。
けれど、賭けをせずに時間を取ると、失格になりかねない。

('、`*川 ……定石でいけば、開いたマスの真下を……開くんだけどね……

焦っているようだが、定石を忘れてはいなかった。
もしもそれで一手目と同じ「1」が出れば、さらに下の1マスとその左右1マスずつが保証される。
つまり、一度の賭けで4枚の安全を得られるのだ。

そうすれば、危険は今より遥かに少なくなる




それが最上手であることはコンクリート部屋の誰もが分かっていた。
しかし、簡単に打てるような状況では無い。
リターンは大きくとも、リスクは他と変わらない1/5。

ドクオさんと同じくらいの決断力があれば別だが、彼女は明らかに論詰めしていくタイプ。
一歩が踏み出せない。

( 、 川 わかんない、わからない。
     どこを押せば京都への切符?
     どの決断がダイオードへの面会許可状?

( 、 川 教えてよ。ねえ、教えてよ。
     教えろよ…………

('、`#川 教えろっつってんだろ!
     どこを押せば京都に帰れるんだよ!?

もちろん誰も答えやしない。




('∀`*川 ひょっとして、分からないの?
     さっぱり分かってないんでしょ!?
     ひゃはははっ。哀れだね。滑稽だよ!

('∀`*川 これはもう笑うしかない。
     なあ?お前らも笑えよ。おいスピーカーも。
     執行人とやらも、聞いてたら笑え!ひゃはははははは!!

('∀`*川 ドクオもクーも、モナーも!聞こえてたら笑えよ!
     こんなに面白いことなんて無いぞwwwwwうひゃはははひゃははは!!!

('∀`*川 なんたって、裏切ったのに、死んじゃうんだよ?
     皆に嫌われて、嫌われた中で死んでいくんだよ?
     ひゃはははwwwwwwおまえの死を悼むものなど、い・な・い!

('∀`*川 ひゃーっははっはははははwwwwwwっうぇwwっうぇwwwwwwww

( 、 *川 やっべーな。
     私、死にそうじゃね?

躁鬱が激しくなってきた。
ペニサスの心が揺れ始めている。
「最低の考え」で今まで保ってきた彼女の心が、「死の恐怖」で崩れ始めている。




( 、 川 …………でもまだ私は死なない。死ねない。死ぬものか

( 、 川 …………生きるよ。生きてみせるよ。
     だから私はマスをクリックする。
     クリックして、初級をクリアしてみせる。




カチ…………


( 、 川 生きる生きる生きる生きる!!!

('∀`*川 生き残るよ!!

( 、 #川 生き残る!!!



















パッ












マウスから手が離れた瞬間は、見逃した
でも結果はそこに出た




クリックしたマスから出るグラフィックが、ソレであることは予感していた。

( ^ω^)…………

分かっている。
そのクリックが決して間違った判断では無いことは。

( ^ω^)…………

そもそもの間違いは、こんなマインスイーパをやらされてること。
ここにいることが間違い。

( ^ω^)…………

それでも執行人には抗わないし、彼女を護ることだってしない。
執行人が入ってきても、僕はなんの反応もしなかった。





開いたマスから出てきたのは地雷だった。




それでも、今までの失格がでた時よりもずっと…………楽だった
ペニサスへの関心が、薄れていたからだろうか

( 、 *川 …………ちょっと良い?スピーカーさん

「なんだ」

( 、 *川 …………皆に言葉を伝える時間をくれない?

「………………少しだけ許そう」

( 、 *川 サンキュ。

ここで何を伝えるのか、もう僕たちには分かっていた。
きっと、伝えてくる言葉は遺言。




('、`*川 京都北部の街、舞鶴に住んでる一人の男に伝えて。

( ^ω^)……

('、`*川 その男性の名前は「鈴木=ダイオード」。
     舞鶴の港で聞き回れば、すぐに見つかると思うわ

( ^ω^)…………

('、`*川 …………伝えて欲しい内容は、一言で良いの

('、`*川 …………「ペニは最後までダメな女だった」って、伝えて。

やっぱり、伝えてきた言葉は遺言。
しかしクーさんやモナーさんの時のように、心は揺れなかった。
少なくとも僕の心は。




彼女の遺言は、ひょっとすると京都まで届かないかも知れない。

ざまあみろ。だ。




(メ^Д^)…………

( ´_ゝ`)…………

(-_-) …………

(´<_` )…………

(`・ д・´)…………

そして5人の執行人が彼女の両脇に立ち、鉄の扉を閉めた。
鍵がかかる音がし、これで彼女のプレイは終了したことになる。


部屋に残ったのは5人だけとなった。







―19―







鉄の扉が閉まり、ブーンやモララー達の姿が見えなくなった。
最後の時には、彼らとは目が合わなかったな
逸らされてたのかな。仕方ないけど、寂しいな。

(メ^Д^)では、行くぞ。

('、`*川 …………はい

(-_-) ………一つ、聞いて良いか?

('、`*川 ……

(-_-) なんで、裏切ったんだ?

('、`*川 ……生きたかった
     生き延びて、京都に帰りたかった。

「生きたかった」とは言ったけど、別に命乞いをしたわけじゃない。
聞かれたから本心を話しただけ。




(-_-) 裏切って、どうだった。
   心は痛んだか?

(-、-*川 …………別に?
     人間として当然でしょ、他人を踏み倒して前に進むってのは

わかってもん。

(-_-) そうか。反省はして……ないのか?

地雷が出た時から、わかってた。

(-、-*川 してないよ

「その態度が気に入った。命は奪わない」とか。
そんな言葉を期待してたわけじゃない。

(-_-) ま、そうだろうな……

もう、わかってたから。




(-_-) そうか…………


(-_-) アニジャ執行人。よろしく

どんな事を言っても、私は死ぬんだって。わかってたから。





( ´_ゝ`)了解です

大きな音がして、私の意識は無くなった。






―20―







伊藤=ペニサスが死に、裏切り者が一人居なくなった。
もちろんそれは戦力が減ったということも表す。

死ぬ危険しかない現状、どんな奴でも、人数は多い方が良い。
故に本当は悔しがるべき出来事のはず。

それでも、少しだけ胸がスッとした。




( ・∀・)さーてと、今のペニサスのプレイでわかっただろ?
    初級も決して楽なランクじゃない

(´・ω・`)でも……中級よりもはるかに楽ですよね?

( ・∀・)まあな、だから中級は後回しにするべきだ。
    初級から潰していきたい。
    俺が言いたかったのは、油断するなってことだ。

(´・ω・`)そうですね
    しかし、ゲームの特性上、油断しなくても飲まれますよね……
    ペニサスさんや、クーさんのように……

( ・∀・)…………まあ、な

クーさん、こと素直=クール。このゲームの最初の失格者だ。
初級を失敗し、失格となり、おそらくは殺されてしまっている。
その他にも既に3人。クーさんを合わせると計4人が失格したことになる。

そして裏切り者「シィ」は、別室で安全なプレイを続けている。
つまり5人がこの部屋から消えた。




この部屋に残ったのは僕、モララーさん。ショボン君、ハインさん。そしてジョルジュ。
たった5人。最初の半分になってしまった。

从 ゚∀从…………減りましたね

( ・∀・)この部屋に居ないシィの帰還は期待できないな
      オリジナルが簡単にクリアできるとは思えないが、俺たちが全て終わった後にゆっくりとクリアすれば良いんだからな
      あいつ、俺たちが初級・中級を終わらせた後に戻ってくるぜ?

从 ゚∀从しぃって子、ホントに裏切ったんですかね?

( ・∀・)それは、どういう意味?

从 ゚∀从本当に皆のためを思って、オリジナルを同時進行でやったんじゃないかなー、って。
     その時は、こんなデメリットに気付いていなかった……とか

それはつまり、シィが裏切り者では無い。ということ
確かに僕もあの時はデメリットに気付けなかったじゃないか。
シィが気付けなくても、おかしくは無い。

なるほど、その発想は無かった




( ・∀・)なるほど。天然の害悪説か。

从;゚∀从が、害悪……

( ・∀・)面白い説だけど、それはちょっと厳しいかな
    アイツがオリジナルをやることになった経緯を覚えてる?

(´・ω・`)スピーカー男に喧嘩をふっかけました。
     それをオリジナルという特殊なプレイをクリアすることで晴らそうとした

( ・∀・)そう

確かにそんな感じだったか。
しかしショボン君、小学六年生なのによく覚えてるなあ。

(´・ω・`)……?でもそれがどうして天然害悪説を否定できる要素なんです?

ああ、いつの間にか「天然害悪説」という名前が浸透してしまった。
でも他に呼び方を思いつかないので、ここは流しておく




( ・∀・)過程はどうあれ、自発的にオリジナルを選んだだろ?
     そこがクサい。

( ^ω^)?

( ・∀・)シィは最初のルール説明でオリジナルとマインスイーパの特性を理解した。
     そしてオリジナルを別の誰かがやらないように流れを持って行った…
     喧嘩をふっかけたのも、最初は意図しなかったことだろうけどうまく利用したんだ。
     そう考えたら、全部納得できる。天然害悪説よりも、ずっと自然にな。

( ・∀・)不安がってる奴には「オリジナルは私がクリアしてみせる」とか言ったんじゃねえかな
     そいつがオリジナルをやっちまうと、自分の計画が狂うから。

( ゚ω゚)!!!!!!言われましたお!!

( ・∀・)ほらビンゴ。
     どうしても自分がオリジナルをやる必要があったんだ。
     他の人間にリスクを全て背負わせる計画のためにはな。




もちろん、それが全て正しいとは思わなかった。
「天然の害悪説」を否定しきれているわけではない。
それでもかなりの説得力と信憑性を持った意見だ。

シィが失ってしまった信用は僕の心を大きく引き離し、
モララーさんが勝ち得た信頼は僕の心を大きく惹きつけた。

信用できるモララーさんの話だから、やはり信じてしまう。
安易に人を信じるのは危険だと、何度も身をもって知ったのに、それでも。
もしも彼が裏切ったら、僕はきっと誰も信じることができなくなるだろう。

( ^ω^)…………やっぱり裏切ったのかお、シィ

僕の声は消えそうだったから、スピーカーからの声にかき消されてしまった。




「次のプレーヤーが決まった。」
「君たち5人、全員可能性はある、心して聞けよ」








( ^ω^)…………(誰を指名するんだお)

从 ∀从…………

( ゚∀゚)…………(いつ当てられても、俺は……)

( ・∀・)…………

(´・ω・`)…………(死にたくないな)



ゴクッ




誰かが唾を飲み込んだのが合図となり、スピーカーのアナウンスが続いた

「次のプレーヤーは―――」












「――――苛猫=ウララー。お前だ」




「3分以内に着席せよ。着席しなければ棄権とみなし、失格にする」

( ・∀・)失格って遠回しにいうの、やめない?
     失格イコール死なんでしょ?

「ふふ、そうだな。3分以内に着席しなければ殺すぞ」

( ・∀・)そうそう、そうじゃないと燃えないよwww

軽い調子でやりとりをする彼には、かなりの余裕が見られた。
この中でただ一人、中級をクリアした人間だ。
普通の人間とは神経も異なるのだろう。




( ・∀・)ショボン君、ヴィプクオリティをもらえるかな?

(´・ω・`)一日一錠が目安量らしいので……モララーさんは既に一錠飲んでますよね
     もう、飲まない方が良いですよ?

( ・∀・)あー、そっか……

(・∀・ )じゃあ、やりますかね

ついさっきまで図太く見えた彼でも、精神安定剤「ヴィプクオリティ」を貰おうとした。
しかも「一日一錠」の用量を忘れていた。
内心はかなり焦っているのか。

これはかなりマズい。
あの飄々とした雰囲気も、薬のおかげなら……彼の精神はもう限界に近いかも知れない




正直、彼の精神状態など分かるはずも無かった。
感情が顔に出にくい彼のことだ。
はらわたが煮えくりかえっていても微笑んでいるかも知れない

( ^ω^)…………頑張って下さいお

声を掛けることしかできない。
もちろん、そんな言葉が彼に何もプラスにならないことは分かっている。

( ・∀・)ん、頑張るさ

信じるしか無い。

信じるに値する人だ。
中級をクリアし、裏切り者と真っ向から対立した人。
今回は初級のプレイとなるのだろうが、きっとクリアしてくれる

そう信じて、彼が座るのを見届けた




( ・∀・)座ったぞ

「よし、ではランクを選べ」


( ・∀・)中級


( ゚∀゚)……!!!
从 ゚∀从!!!?
(´゚ω゚`)!!
( ゚ω゚)…………

座ってから、「中級」というまでの時間が短すぎて。
反応できなかった。

モララーさん、さっきショボン君に「初級から潰して行こう」って言ったじゃないか
なんでアンタは地獄を選んだんだ。
ああ、畜生。

モララーさんをここで失いたくはない。
一人減るのはプレイに響くし、何より彼は皆の心の支えとなっている。
ここで死んでは…………後に響きすぎる!




( ・∀・)もう始めて良いのか?

「あ、ああ。いや、なんでもない。」
「表示はこれで良いのか?」

( ・∀・)ああ、XPバージョンが良い

「では始めろ」

スピーカー男も、驚いているようだった。
それもそうだ。
これはモララーさんにとっては、中級を二連続プレイということになる。

中級を失敗したのはモナーさんだけだ。(ドクオさんは自殺だから失敗にはカウントしない)
だが、その難易度は誰もがよく知っている。
全ランク中、最悪の条件下でのプレイだ

( ・∀・)さて、始めますか

中級をやると決まってからは、先程よりも強く祈った。
助かれ。クリアしてくれ。と。




( ・∀・)悩んだって何も出てこないんだよねー
    だからカチカチ開くのが正解なのさ

マインスイーパの時計は既に動き出していた。
そういえば、普通は一手目を押した後に動き出すのに……
ゲームの開始は、アナウンスから、ってことだろう。

( ・∀・)…………まー、無難にここだろうね

一手目、モララーさんがクリックしたのは上辺のマス。
言うまでもないが、一手目にいきなり失格というのはルール上ありえない。
しかし、ここで出現する数字は今後のゲーム進行に大きく影響を及ぼす。

一手目のリターンが小さかった故に、マインスイーパに飲み込まれた人もいた。
クーさんとペニサスがそうだ。
クーさんは別の所を攻め、ペニサスは連続したマスを攻めた。
しかし、最後の結果は二人とも失格。

逆に、一手目のリターンが大きかったおかげでクリアした人もいる。
僕とショボン君、そしてモララーさん自身。

一手目はかなり大きなウェイトを持つ。
その一手目、モララーさんの出したマスは――――
















――――数字の「2」。

(;^ω^)(ま……マジかお…………)

最悪だ。連続マスを攻めることが難しくなる。
その他のマスを攻めようにも、中級盤には全部で40個の地雷がある。
これはもう手詰まったも同然。

( ・∀・)んー…………きついかなー……?

(;^ω^)…………(生き残ってくれお)

( ・∀・)けど、俺がここでクリアしなきゃ、全滅の恐れがあるよね?

そう、残るメンバーは僕とショボン君とハインさんとジョルジュ。
あまりに頼りない。
万が一シィが戻ってきたとしても、一緒のことだ。




( ・∀・)さーて、次は下のマスかな?
     開くべきは定石だろ?

疑問系が多くなっている。
それはつまり、自分の意見に自信が持てなくなっている。
危険な兆候……だと思う。

( ・∀・)躊躇わずにうつ。
     それがマインスイーパの必勝法だ。

しかし、定石である「一手目の下のマス」に地雷がある可能性は5分の2。
40%で地雷、つまり死亡だ。
しかし別の場所を開いた所で、良いヒントが出るとも思えない

( ・∀・)ははは、はは。ははははは、はは。ははははははは、は。ははは、はははは。ん。
     はははははははは、ははははは。は、ははは。ははははは、はは。

笑いながら打った二手目。
その結果は、この部屋の誰もが望んでいたモノ。













出てきたのは数字の「2」。
地雷では無い。そして、賭けが成功したことを示す数字。

( ^ω^)(初手が「2」、次手も「2」と来れば、二手目の下とその左右、計3マスはセーフ……)

( ^ω^)(その中に空白があれば、足がかりにできる!)

( ・∀・)いやいや~、「3」とかだったらどうしようかと思ったよ
     でもこれで安全の確保は完了

そう、とにかくこれで、3・4・5手目は安全だ。
しかし全てを安心できるほどの生き駒では無い。
中級盤というのは、初級盤とは文字通り格が違う。

3・4マス開いた程度で、安心できるランクではない。

( ・∀・)一番恐ろしいのはクリックミスだよね
     後悔の度合いがハンパじゃない。
     クリックミスで死んだ奴は、最後に後悔してたから。




( ・∀・)さて、3・4・5手目で良い結果が出れば良いんだけど

カチカチカチ

3連打し、出てきた数字は1・1・1。
空白マスが出てこない
やはり現実というのは甘くない。
これでまたヒントがなくなってしまった

( ・∀・)…………心配するな、侮るな。
     この程度で行き詰まる俺じゃない。

( ・∀・)今あけた3マスの真上には、6マス存在する
     その内2マスが開いていて、結果は「2・2」。
     つまり、残ったのは4マスで、地雷は2つだ。




( ・∀・)ひとまず整理しようか。
     残った4マスに地雷の存在する全通りは4コンビネーション2通り、6通りだ。
     その内、二段目の2マスの未知に地雷が無い事象は1通りだけ。
     つまり、五分の六の可能性で下段に一つは地雷が存在する。

( ・∀・)(ホントは、三段目が「1・1・1」だから下段に二個とも存在する事象がありえない。
      全事象が一つ減るから五分の四なんだけど……不安にさせることもないか)

( ・∀・)よーするに83%の確率で四段目の3マスは再び安全が確保されている状況だ

(;^ω^)(正直よくわからんお……)

( ・∀・)今の説明が理解できなかった奴はこれだけ分かれば良い
     『俺は死なない』

彼の説明は分からなかったが、自信を持って言うのだから、正しいのだろう。
それでも17%のリスクを背負った状況からのスイープ活動だ。
かなりのプレッシャーがのしかかる。

とりあえず、彼の説明が理解できた人は居なさそうだった。
クーさんかドクオさん、もしくはペニサスくらいじゃないと理解できないんじゃ……





( ・∀・)さてさて、四段目を開くよ
    刮目せよ!

カチ

四段目、左マスから出てきたのは数字の1。

カチ

四段目、中央マスから出てきたのは数字の1。

カチッ…………………

そして四段目、右マスから出てきたのは



( ・∀・)っしッ!




空白マスだった。
待望の空白マス。
それもかなり大きく開いた空白だ。

( ・∀・)ニヤニヤ

これで、もうほぼクリア同然だろう。
モララーさんの顔にも余裕が出てきた。
油断しきった顔だが、モララーさん自身もそんなことは分かっているだろう。
油断を振り払うまではクリックしないはずだ。

( ・∀・)なあスピーカー?

「……っ、なんだ?」

( ・∀・)お前自身は、マインスイーパってやったことあるか?

「……………………まあな、お前ほど勝負強くないが」

( ・∀・)俺のさっきの説明で、変な所を指摘できるか?

「……………………ぅ…………ん?」




「……………………いや、それはプレイヤーに対する助言になるため、言えないな」

( ・∀・)あははは、教科書通りの素晴らしい回答だよ
     引っかけ問題によく引っかかりませんでした。おめでとう。

「減らず口をたたかず、マインスイーパを続行せよ」

( ・∀・)はいはい、怖いなー。ありがとうね。


このやりとりの意味は、きっと無かったのだと思う。
強いていうなら、モララーさんが緊張をほぐすために誰かとの会話を欲した
それと、さきほどの油断しきった気分を引き締めるための儀式。

断言しても良い。
このプレイでモララーさんがミスを犯すことは、もう無い。




プレーは進む。
やや遅いが、確実に慎重に進んでいった。
時折、背筋を伸ばしたりと、リラックスしようと必死な様子が伝わってきた。

( ・∀・)やっぱり緊張するね

彼でもそういうことはあるのか。
意外だったが、まあ、当たり前といえば当たり前か。人間なんだし。

( ・∀・)でも、まあほぼクリアだよね
     残ってるマスも、全体の10%くらい?

( ・∀・)…………

それっきり黙ってしまい、マウスからも手を離した。
旗の立て間違えが無いか、確認しているのだろう。
僕が見る限りでは間違いは無かった。
そしてモララーさんが旗の立て間違いなどという初歩的ミスをするとは思えない。

じっくり時間をかけて確認するモララーさんに苛立つが……
まあ、仕方ない。
命を賭けたプレイなのだから、ベストを尽くしたい気持ちも分かる。




確認は終わり、プレーを再開する。
訂正する箇所も無く、あとはもう楽勝だった
残ったマスに不可予知が出る可能性もあったが、そんなことは起きなかった。



とうとう残りのマスも消しきり、モララーさんは二度目の中級クリアを成し遂げた。





「…………苛猫=ウララー。中級クリアだ。おめでとう」

( ・∀・)あはは、心にもないことを言うね。
     おめでとう、だなんてwwww
     君たちからしたら、僕なんて邪魔なだけだろう?wwww




(*^ω^)モララーさん!すごいですお!!
      ありがとうございますお!

(´・ω・`)お疲れ様でした。
     ホントにすごいマインスイーパでした

( ・∀・)あはははは、無理したかいがあったというものだよ。

モララーさんは軽く笑って流す。
それでも、やはりこの戦果は大きい。
中級で残っているのは1回だけとなった。

( ゚∀゚)…………ありがとな…………
    中級をやってくれて

( ・∀・)……?
     あ、ああ。

とにかく、中級を一つ減らした。
喜ばしいことだった







―21―





【監視室】

(メ^Д^)

苛猫=ウララーが、二度目の中級をクリアした。
その出来事には、監視室にいた監視官と執行人達も驚いた。

( ´_ゝ`)ほー、中級を2回、一人でクリアしましたね

「ああ、やはり苛猫は侮れんな」

( ´_ゝ`)どうします?なるべく指名を遠ざけますか?

「うーん……」

監視官がここまで悩むのは初めて見た。
それほどに、中級の二連続クリアというのは異例の出来事なのだろう。
実際、俺も見たことが無い




(-_-) とりあえず、二巡目が終わった時の状況で判断しましょう

「そうだな、二巡目の間はこのまま流す。」
「内藤。長岡。下眉。高岡を指名し、その4人の生き残り状況で判断する」

(メ^Д^)無難な対応でしょうね。
     それに、必要に迫られてるわけでも無いですし。
     しかし、一人を指名から遠ざけるのは止した方が良いかと。
     こちらが苛猫を危惧しているのが伝わります

「うむ、あまり良く無い状況だ。」
「奴らが調子づくと、簡単にクリアされてしまう」

(メ^Д^)団体でやるマインスイーパは、流れというのがありますからね
     流れを崩す一手が必要です




( ´_ゝ`)流れを断ち切る。そういう意味では失敗させるのが一番だろうな
     だが俺たちはマインスイーパのプレイそのものを邪魔はできない。
     不可予知などを操作によって作ることもできない。

「まあ、打つ手が無いわけじゃない」
「ここらで『一番失敗しそうな奴』を指名するか」

(´<_` )…失敗しそうな奴…………誰だ?

「苛猫以外の実力は似たり寄ったりだ」
「やや内藤が侮れんが、伊藤にも及ばんだろう」
「だから……一番心の揺れている奴を選ぶ」

心の揺れている奴。
大方予想はつく。たぶんアイツだろう。
あのコンクリート部屋で、アイツが一番動揺しているはずだ




「ほら、今トイレに入ったアイツだよ」

( ´_ゝ`)…………なるほど、悪いチョイスじゃないですね

「だろう?」

(メ^Д^)では、五分後にプレイを開始させましょう
     それまではゆっくり休んでいてください







―22―





モララーさんが再び中級をクリアした
これで、残ったランクは初級1回、中級1回となる。
もちろんシィのオリジナルのクリアも待たなければならないが、必ずいつか終わる。

かなり楽になっている。


しかし残った人数も5人だけだ。
モララーさん。僕。ハインさん。ショボン君。ジョルジュ。




マインスイーパの二巡目は回り始めた。




( ゚∀゚)…………なあ、一つ聞いてくれねえか?

( ・∀・)ん?

僕は裏切り者の話に耳を貸さない。
……つもりだったけど、なにやら真剣な様子だ。
そのせいで僕はちょっぴりジョルジュの話に興味があった。

( ゚∀゚)…………俺さ、初級をやりたいんだ

しかし、出てきた言葉は僕を失望させるだけだった。




( ・∀・)ん……そりゃあ……そうだろうね
    中級を2回やった俺が言うのもおかしいけど、明らかに楽だもん

(;゚∀゚)あ、いや。そうじゃねえんだ
   別に保身とか、そういう意味じゃない

いや、そういう意味しかないだろ
他にどういう理由があっても、結果的には保身になる

( ゚∀゚)俺さ、あの姉ちゃんの仇を討とうと思うんだ

あの姉ちゃん。クーさんのことか。
確かにクーさんを殺したのはマインスイーパの初級というランクだ。
それをクリアすることは確かに仇討ちと言えるだろう

でも……




(´・ω・`)卑怯ですよ

(゚∀゚ )……!

(´・ω・`)クーさんを建前にして、綺麗事を並べる。
     その本心は保身であろうというのに。

僕もショボン君と同じ意見だった。
おそらくジョルジュはここで「初級をやる」という宣言を出すことで皆を退けた
その隙に二巡目を比較的手軽な初級ですませようという魂胆、だろうと思った。

( ゚∀゚)…………いや、違うんだ。話を聞いてくれ

(´・ω・`)聞く耳持ちませんね

(;゚∀゚)違うんだ!
    次のプレーヤーが俺じゃなければ、そいつが初級をやれば良い!
    その位は分かってる!

お?
これは意外な言葉だった。
何がなんでも初級をやりたがり、僕らを脅迫をしてくるのかと思ってたが……




(´・ω・`)……?
    話を続けてください

( ゚∀゚)ホントに、素直=クールの仇を討ちたいだけなんだ
    さっきは逃げたが、そんなの男じゃねえ!!
    やるって言ったからには、やらなきゃな!

( ゚∀゚)あんな弱そうな女を殺すなんて、人間のやることじゃねえな
    だから俺は「執行人」とかいう奴らや、スピーカー男を許さない

( ゚∀゚)だからって、お前らに「初級は俺がやるから、中級をやってくれ」なんて言わない
    次がショボンかブーンかハインだったら、お前らがやれば良い。
    でももし俺だったら……やらせてくれねえか?

( ゚∀゚)………………頼む

ジョルジュが頭を下げた。
これは本気だ。本気で僕たちにお願いしている。

( ・∀・)………………




( ・∀・)良いに決まってんじゃん。
    なんで今さら頼んだのさ?

(;゚∀゚)なっ、そんなあっさり……ホントに良いのかよ!?

( ・∀・)さっきも決めただろ?
     「初級から潰して行く」って。
     ジョルジュの言ってることはそれと同じだよ

(;゚∀゚)で、でも……俺は一巡目で裏切ったんだぞ……?
    お前達を……卑怯な形で。
    そんな奴に初級をやらせて良いのかよ……?

( ・∀・)良いに決まってる。
     もともと、「初級から潰す」って決めたんだから
     それは指名されたプレーヤーがジョルジュでも例外なく、だ。

それでもジョルジュはなかなか折れようとしなかった。
元々ジョルジュ自身が頼んできたことなのに、立場が逆じゃないか?

( ゚∀゚)………………すまねえ……

最後にはモララーさんが半ば命令するように言ったので、納得したようだった。






「さて、次のプレーヤーが決まったから、指名させてもらおう」


ここでアナウンス。
こちらの会話を全て聞いていて、タイミングを計っていたのか
悪趣味な……

从 ゚∀从その前に……一つ。

「なんだ?」

从 ゚∀从シィって子は……今どうしてる?

「同じような部屋でオリジナルをプレイしているよ」
「中々苦戦しているようだがね」

「さて、本題に戻ろうかね」
「次のプレーヤーは――――」














「―――高岡=ハインリッヒ。君だ」
「苛猫が中級をクリアしたからな、そろそろ悪い流れも見ておきたい」

从 ゚∀从………

( ・∀・)(俺のせいかよ)

从; ∀从……いってきます

( ・∀・)あ、……

从∀ ;从……?

( ・∀・)初級を、やってくれよ

从∀ 从…………コクッ

静かに頷いた彼女。
その目は何も見ていなかった。
絶望と危機感のみがハインさんの視界を覆い尽くしていた。




「着席したようだな」
「では、ランクを選べ」

从 ∀从初級

打ち合わせ通りだ。
これでクリアすればあとは総掛かりで中級へのプレイ。
ジョルジュの方を見るが、真剣な表情でハインさんを見ているだけだった。

「表示は?」

从 ∀从…………XP

「オーケー。少し待て」

しばらくすると、モララーさんのクリアした中級画面が、初級に切り替わった。
遠隔操作で切り替えているのだろう。
たいした時間も与えずに、マインスイーパの時計は動き出した

「では始めろ」




从 ゚∀从…………9×9盤。10の地雷
    初手を除けば80マスの内に10の地雷。
    二手目は適当に打っても高確率で回避可能……

いつもそうだ。
プレーヤーは「始めろ」の合図から急に饒舌になる。

死と隣り合わせのゲームが作り出す緊張感。
その緊張を解すための無駄口なのだろう。
唯一、ドクオさんだけは何も喋らなかったが……

でも、ハインさんの無駄口は……

从 ゚∀从でも、俺は死ぬだろうね
    なんとなく分かるんだ

今まで聞いてきた中で、もっともネガティブな無駄口だった。




(;^ω^)…………(一手目で空白を出せれば勝てる!そういうランクだお!
            まだ悲観するのは早いお!!)

この考えは決して偏ったものではない。
実際、初級で空白を出して負ける可能性など10%にも満たないはずだ。
というか初級とは、一手目に空白が出ずとも楽観視できるランクである。

だが、飲み込まれた人はいる。
素直=クール。伊藤=ペニサス。
二人とも、最初の10人の中ではかなりの上級者だったはずだ。
その二人でも飲み込まれるランクだ。

つまり、マインスイーパというゲーム自体に「運」の要素はあるのだ。
でも、だからこそ

(;^ω^)(運にも見放されてない時に……絶望しないで欲しいお)




从 ∀从………


カチ


一手目のクリック。
マウスから手を離せば表示される。
一手目は地雷が出ないから死なない。
その結果を早く知りたい。

从 ゚∀从 私は………………

彼女は指を離す決心をした。
細くて白い、ハインさんの指が、マウスから離れる。




指を離して、そこから現れたのは、空白マスだった

(*^ω^)……!(よっしゃ!)
(*´・ω・`)…………!!!(これは……!やった!)

( ゚∀゚)…………(油断はできないな)
( ・∀・)…………(安心するのはまだ早い)

ハインさんの反応は?
絶望的な言葉ばかり口にし出したけど、これで変わるはず!

从 ∀从……………………死ぬかも知れない…………いや、絶対死ぬんだ…………
    私は生きていけない。…………仙台に帰ることはできないんだ…………

これでは、クリアできて、もし解放されたとしても……ヤバいかも知れない
予想以上に彼女の精神は繊細だった。




从 ゚∀从ははははははは…………

力の無い笑いで、安全なマスを開いていく。
初級盤。そう広い盤面では無い。
そのため自然とクリアへの時間は短くなる。

初級を100秒でクリアできない人はいないだろう。
けれど、最初の数手が終わった時点で既に時計は70秒を回っていた。
ハインさんの精神を正常にするには、早くクリアさせる他無い。

从 ∀从………………ははは…………

カチカチ

(;^ω^)(おっ?)

あれ?
今の何気なく打った二手。危なくなかったか?
まだ安全が確保されていないところを開いたような……

(;・∀・)(精神にキたか……冷静な判断ができずにいる
       まずいな、早めに立ち直らないと失敗するぞ)

(;-∀-)(というか、今の二手も失敗といえば失敗だ
       地雷が出なかっただけのこと。運に助けられたか)




从 ∀从……………あ……ははははは………………

力の無い笑い。
もはや生きることに対して疲れている。ように見える。

( ^ω^)(……もうダメだお……ハインさんはここで脱落かお)

僕も、もうハインさんに期待はしていなかった。
そもそも彼女の一巡目は上級だった。
自信が無いから上級に行ったわけで、上手では無いのか。

从 ∀从…………

初級盤はかなりの広さが開けている。
ラストは数マス。だった4マスしか残っていない。

だというのに僕が諦めているのには、理由がある。
マスの左上にある。圧倒的な存在。
マインスイーパというゲームにおける癌。




画面左上に存在する不可予知。

从 ∀从…………ははは………………不可予知とか……なんで……


大方開いたが、ここでとうとうやってきてしまった。
最後の最後で不可予知。
完全なる二分の一の賭け。

ややいびつで、パッと見は不可予知に見えないが、完全に賭けだ。

从 ∀从…………不可予知…………かあ…………

不可予知を乗り切るコツは無い。
純粋な賭けであり、それには運の要素しか無い。

ハインさんは上級で不可予知を破っている。
が、再び初級で不可予知を破れるかどうかは分からない。
二分の一から逃げることもできない。

从 ∀从




不可予知は迷っても正解は出ない。
タイムのために早めに決断し、迷わずクリックせよ。

マインスイーパの基本だが、この状況で実行できるほどの精神を持つ人間などいるだろうか?
きっと僕でもモララーさんでも迷った。

(;^ω^)(初級で不可予知が出ること自体珍しいのに、なんでこのタイミングで……!)

从 ∀从しゃーねえ。やるか。








カチッ









































ああ、だと思ったよ。

予想してた通りだった。
僕にとっても、ハインさんにとっても。






从 ∀从…………………………


「高岡=ハインリッヒ。初級失格だ。」
「執行人。頼む」





―23―




【執行室】

(メ^Д^)………………

今まで、素直=クール。鬱田=ドクオ。古猫=モナー。伊藤=ペニサスを執行してきた。
それぞれ表面は取り繕っていたが、根底にあるのは絶望だった。
この高岡=ハインリッヒも例外では無い。

从 ∀从………遺言、頼めるかい?

(メ^Д^)ああ、それも執行人の仕事だからな

从 ∀从へえ。大変だな

从 ∀从東北地方の大学……T大なんだけどさ。
     そこの「渡辺=アヤカ」って教授に、伝言頼むよ

从 ∀从「研究室の掃除。
      もう手伝えないんで、今度からは、一人でしてください」

(メ^Д^)……確かに、伝えよう。

从 ∀从それともう一つ。




从 ∀从 あたしさ。気付いてたんだ
      このマインスイーパのルール。
      たぶん誰よりも早く、ね。

从 ∀从 上級の意味。ジョルジュが裏切るまで分からなかった人もいるよね。
      でも私は最初っから分かってた。
      で、皆が私に上級をやらせてくれる、ってなった時、意外だった。
      殴り合ってでも上級を取り合うと思ってたからね

从 ∀从 こいつら馬鹿か!?って思ったけど、どうやらクーは気付いてたみたいだ。
      お人好しだったんだな、クーは。
      だけど……私は辞退しなかった。

从 ∀从 私もジョルジュやペニサスと一緒さ。
      上級の意味に気付いて、皆をけ落とした。
      皆を裏切った。


从 ∀从 ダメかも知れないけどさ、これだけは伝えてくれねーかな

(メ^Д^)…………うぅむ…………

しばらくの沈黙。
伝えて良いものか、迷う。




(´<_` )………わかった。俺が伝えよう
      箱捨=シィにも伝えるんだな?

オトジャ執行人が勝手に判断したが、正直助かった。
執行する前にプレイヤーとベラベラ喋るのはあまり良くない。

从∀ 从…………。ああ。頼むよ。ありがとう

( ´_ゝ`)それじゃ、執行するぞ
     もう言い残すことは無いよな?

いい加減、アニジャ以外の執行人にも執行させなきゃな。
ゴノネガイとか、まだ執行することに慣れてないんじゃないだろうか。




執行室には5つの死体が並べてある












―24―








( ・∀・)ハインの行動で、他人と違うことがあった。
     分かるか?

(´・ω・`)…………ヴィプクオリティ……ですか

( ・∀・)そうだ。彼女は最後まで一錠も飲まなかった。
     おそらく、そのせいで酷い鬱状態になった。

( ・∀・)で、ヴィプクオリティを飲んでない奴は今の内に飲んでおけ
     えっと……?ジョルジュだけか?

(´・ω・`)…………

ショボン君は無言でヴィプクオリティを渡す。
裏切り者への支援は、確かに思うところがあるだろう。
だが、裏切り者だからといって、ここで戦力を減らすのは得策ではない




(´・ω・`)ブーンさんも飲んでませんよね

言われて気付いた。
そういえば、僕が一巡目にプレイしたのはヴィプクオリティを飲む前だ。
ヴィプクオリティを飲み始めたのは4人目のプレーヤー、モララーさんからだ。

( ^ω^)そうだったお……一錠もらうお

(´・ω・`)どうぞ

苦い。
錠剤っていうのはどうしても苦手だ。

( ^ω^)なんていうか、あんまり効果が無いように感じるお

それはジョルジュも思ったようだ。
精神安定剤という性質上、目に見えた効果は無いだろうけれど……
ホントに意味があるのだろうか




( ・∀・)ま、飲まないよりはマシでしょ。
    他にできることなんて無いんだし

それもそうか。
でも、僕らにできることは無くなってしまった。
ボーッと次のアナウンスを待つ。

次は僕かショボン君かジョルジュ。
次のプレーヤーが誰であっても、するべきランクは初級。中級は後回し。
それは皆の同意の上だ。

( ゚∀゚)しかし……アナウンスかからねえな

ジョルジュのその言葉が合図だったとは思えない。
でも、それは突然だった。



失格者を連れ出すための鉄の扉が開き、執行人が入ってきた。




何の用だ?
と聞く前に、執行人の一人――頬傷男――が、来室の理由を述べた。

(メ^Д^)………伝言だ。

入ってきた執行人は3人だった。
いつも5人で来ていたから、なんだか新鮮だ。

(メ^Д^)高岡=ハインリッヒから、お前らに遺言だ。
     監視官の要望でな、今すぐに伝えろということだ。

遺言ってことは、ハインさんは死んだのか。
失格した者は死ぬ。
分かっていたルールだが、こうして伝えられると、改めてマインスイーパの恐ろしさを感じる。

( ・∀・)内容は?

今は聞くしかない。
スピーカー男が「今すぐ」伝えろと言った……ということは、僕らにとってあまり良い内容では無いのだろう。
あまり聞きたくなかった。




ハインさんの遺言なら、聞かないわけにもいかない。
けれど、頬傷男の口から出たのは、にわかに信じがたい言葉だった。



(メ^Д^)私はこのマインスイーパの上級の意味に、誰よりも早く気付いていた。
     その上で、一巡目に上級をやることになった。
     だが私は自らの保身のために辞退しなかった。
     上級の意味を分かっていたのに、皆を蹴落として上級をやった。
     私は裏切り者だ。ペニサスやジョルジュと同じように



(メ^Д^)とのことだ。

一息で言い終えた頬傷男はそのまま出て行こうとした。
というか実際、頬傷男は他の執行人を置き去りにして出て行った。

だが、僕の口は勝手に動いていた

( ^ω^)ざけんなお…………




ハインさんが裏切り者……?

( ^ω^)ハインさんが裏切り者なわけないお
      皆の同意の上で上級をプレイしたんだお

( ´_ゝ`)確かに「カタチは」裏切り者ではない。
     だが彼女は確かに上級の意味に気付いていたんだ。
     その上でプレイした。
     これを裏切りと言わずして、なんという?

執行人の言葉には、何も言い返せなかった。
さらに言葉は続く

( ´_ゝ`)それにお前、一巡目の高岡=ハインリッヒのプレイの時。何か聞こうとしてただろ?
     「聞きたいことがあるんだお!」って言ってたよな?
     すぐに監視官が止めたが

( ^ω^)お……

それはとても他愛の無い内容。
今の状況でその質問をハインさんにぶつけたなら、酷く滑稽だ。




( ´_ゝ`)彼女に何を聞こうとしたんだ?

ホントにホントに他愛もなく、酷く愚かな質問だ。
黒い銃をチラつかせる執行人に問いつめられては、答えざるを得なかった。


(;^ω^)……「ハインさんは、マインスイーパのルールは分かりますかお?」って……


今なら、この質問をしようとしたことの愚かさが分かる。
裏切り者を心配することなど無駄にして愚の骨頂。
もしハインさんが裏切ったのなら、彼女はこの質問を聞いてほくそ笑んだだろう。

( ´,_ゝ`)ふっ。自分が心配していた人に裏切られたら、さぞかし辛いだろうな
      まあこれから先も頑張れよ
      社会に出たら、信じた人に裏切られるなんてザラだぜ

「これから」があるかどうかはお前次第だけどな。
と、執行人は続けた。




憤慨する僕に対し、別の執行人が僕に囁いた。



(´<_` )まだクセモノは残ってる。
    気をつけることだ。



(  ω )…………クセモノ…………?

それはどういう意味だ?
尋ねようとしたが、執行人は出て行き、鉄の扉は閉じられた。


無口な方の執行人が囁いた言葉が、頭に引っかかった。




ハインさんが裏切り者であること。
その事を執行人の口から伝えられた僕は、意外に動揺しなかった。
確かに怒りは覚えたが、落ち込むことは無かった。

人の死だけでなく、裏切られることにも慣れてきたのだろうか
最後に囁かれた「クセモノ」の正体の方が気になっていた。
あれは単に裏切り者ジョルジュのことを指しているわけでは無さそうだった。

( ・∀・)普通に考えれば、執行人や監視官達の作戦だろうね
     僕らを動揺させて、失敗を誘う。
     どうして僕らを失敗させたいのかは分からないけど

( ^ω^)信じても信じなくてもハインさんは帰ってこないし、真実は分からない。
      信じない方が楽ですお。
      もっといえば、そんなことを考えない方が。

( -∀-)ずいぶんと悲観的な意見だね

確かに笑ってしまうほど悲観的だった。

( ^ω^)…………今までさんざん裏切られてきたから、ですお

( ・∀・)…………そうか。




今までは、プレイヤー達の騙し合いはジョルジュの時から始まったのだと思っていた。
その実、一巡目の一人目ハインさんのプレイの時から、僕は騙されていたのだ。
僕の認識は甘すぎたのかも知れない。

僕は裏切らなかった。
クーさんは裏切らなかった。だから死んだ
シィは裏切った。
ジョルジュも裏切った
ペニサスだって裏切った。
ハインさんは裏切ったらしい。
ドクオさんは自殺という形で裏切った
モナーさんもほとんど自殺みたいなものだったので、裏切ったに等しい
ショボン君は物わかりが良すぎて怖い
モララーさんは貢献しすぎていて怖い

まともじゃない考えが混ざっていることは承知だ。
でも、まわりの人間を信じたくなかった。
信じると裏切られるから。




信じられるのは自分自身とクーさんだけだ。
そのクーさんは一番最初に死んでしまった。
思えば、あの時から周りは裏切り者と裏切り者予備軍だけだったのだ。

( ^ω^)信じたくないんですお。

( ・∀・)…………

( ^ω^)だから、僕は決めましたお

先程の執行人との会話の最中に、既に決めていた。
愚かなことなのだろう。
でも、もう疲れた。

信じることと、裏切られることに。
中学生ってのは、多感な時期なのだ。
人の善悪などといったものに対しては特に。

だから僕は、決めた。
これからの方針を。



















( ^ω^)もう、誰も信じないお
      もし誰かが裏切っても、僕はもう何も動じないお
      そして、無事に生きて帰ってみせるお


( ;ω;)…………名古屋に…………戻ってみせるお…………
      そしてまた…………ィョウと遊ぶんだお!!










涙が出たが、すぐに袖で拭いた。
3人は見て見ぬふりをしてくれた。

( ^ω^)…………嫌なことを言ってるのは分かってるつもりですお

人を信じない方が、信じるより楽だ。
裏切られた時のショックは計り知れない。

( ・∀・)…………
(´・ω・`)…………ぅ
( ゚∀゚)…………(俺は仕方ない、か。裏切ったもんな)


しばらく誰も口を開かない。
が、考え込んでいたモララーさんが言葉を発し、沈黙を破った。

( ・∀・)俺はお前の方針について何も言わない。
     そもそも俺たちは数時間前まで顔も知らない他人だったんだ。
     信じられてたことの方が驚きだよ
     信じないってのもアリだと思う。




他人。
こいつらは、蹴落としてゆくべき、赤の他人












―25―




この状況が異常なことはわかっているが、もう後には引けない。

( ^ω^)モララーさんは、信じられる人間だと思ってましたお。
      中級を2回もクリアしてくれたから……ですお。
      でも、何らかの形で裏切られた時に、信じたままの僕なら立ち直れませんお

モララーさんは少しだけ考えるそぶりを見せ、

( ・∀・)信じないってのも、良いんじゃない?

と、先程と同じ台詞を言った。
モララーさんは表情には出さないが、ここで「誰も信じない」宣言。
面食らっているだろう。
申し訳ない。

それでもやはり、僕は生き残りたい。
生き残るためには、プレイ以外のところで変な影響を受けたくない。
裏切られることによるショック……なんてものを、受けたくはない。




そしてショボン君。

(´・ω・`)…………僕は……、僕は、信じるに値しませんか?

( ^ω^)……ごめんだお。でも、信じることと、裏切られることに疲れたんだお
    そしてショボン君は「偽名を使う」という過ちを犯したお
    そっちが信用していなかったのに、信用する筋合いは無いお

ショボン君が偽名を使った理由も分かる。
見ず知らずの大人9人に囲まれて、ただ一人の小学生。
不安だから、自分を隠した。

だからこそ、僕はその点を指摘した。

(´・ω・`)……そうですか

嫌なことを言ってるのは分かってる。
小学六年生という、まだ幼いショボン君に対して、厳しすぎる口を叩いている。

でも彼もここまで生き残ったプレイヤー。
未知の裏切り方法を編み出すかも知れない。
だから、ショボン君にも牽制。




裏切られる前に裏切ってしまおう。
そうも考えた。

しかし上級とオリジナルが潰れてしまった今、どうやって裏切るというのか。
僕の頭では思いつかなかった。
モララーさんかショボン君ならその方法を思いつくかも知れない。だから怖い

だからこそ、口に出して「信じない」と言った。
これは裏切らせないための牽制球。
効果は無いかも知れないが、できる限りのことはしたい。

僕に利する全てのことを、し尽くしておきたい。




黙ってばかりでは無いのがモララーさんだ。
僕に対しても、釘を刺してきた。

( ・∀・)マインスイーパは一人用のゲーム
     確かに馴れ合う必要は無い。
     でもな、孤独との戦いって事を忘れるなよ
     モナーさんのプレイを忘れたのか?

古猫=モナー。
10人の中で最年長のプレーヤーだ。
元々彼には上級のプレイ権が認められていた。

だが、モナーさんは中級を選び、結果として失敗した。
皆のために、と。一人で全てを背負いすぎたためか。
プレッシャーに潰されて、旗の立て間違えという基本ミスをおかすことになった。
そして死んだ。




( ^ω^)……

僕は黙っていたが、彼の意見は苦し紛れであることに気付いていた。
モナーさんの死は、皆から独立して行ったプレイでは無く、皆を想っての行動。
つまり、他人を思い遣っていた人は死んだ。
経験からいうと、信じる者は救われなかった

モララーさんの言葉を最後に皆が黙った。

( ^ω^)…………

( ゚∀゚)…………

(´・ω・`)…………

( ・∀・)…………

僕らは皆ここまで生き残ってきた。
形はどうあれ、ここまで来た。
脱出の光はすぐそこにある。




居心地の悪い静けさだった。
もちろんその原因は僕にある。

そして、そんな沈黙に割ってはいるのは決まっている。
スピーカーの声だ

「次のプレーヤーを指名する」
「その前に一つ確認しようか」

「箱捨=シィは生存しているが、オリジナルをプレイ中のため、君ら4人から選ぶことになる」
「また、公平性を守るために、苛猫は他の3人が終わってから再抽選とする」

( ・∀・)つまり、ジョルジュ・ショボン・ブーンの中から……か。

( ゚∀゚)…………
(´・ω・`)……ですね
( ^ω^)…………お

覚悟は決まっている。
再び初級をやる覚悟も、一人で戦うことの覚悟も。
あらゆる手を尽くして生き残る覚悟を決めている。




「そして残っているランクは初級1回・中級1回だ」

( ・∀・)次のプレーヤーは、誰であっても初級をプレイする
      さっさと画面を切り替えたらどうだ?

「お前の言いなりにはならん」
「あくまで私達の定めたルールに則ってプレイしてもらう」

( ・∀・)………我の強い奴め。

「お互い様だろう」


「無駄話は好きでは無い。」

( ・∀・)嘘吐け

「次のプレーヤーを指名する」
「次のプレーヤーは…………」















「長岡=ジョルジュ。君だ」

ここで裏切り者ジョルジュ。
ジョルジュ自身の望んだ展開だろう。

ジョルジュは裏切り者。とはいっても、僕は彼の本質を見抜けずにいた。
裏切り者であることは間違いないが、悪い人間には見えなかった。

ペニサスやシィの時はあんなに簡単に見限ったのに。
このジョルジュは、何かが違う。
それはたぶん、裏切ったことに対して、後悔しているか否か。

ジョルジュは反省し、後悔した。
あの一瞬だけ弱気になったのかも知れない。
だとしたら……悪い人では無い?

それでも良い人にも悪い人にも、死は平等にやってくる。
だから僕は信じない。
良い人だと信じて、その人が死んでしまうなんて、悲しすぎるから。

「3分以内に着席しなかった場合、棄権と見なして失格扱いとする」

そしてお決まりの台詞が流れ、ジョルジュは椅子に座った。




( ゚∀゚)座ったぜ

「そのようだな」
「では、ランクを選べ」

( ゚∀゚)初級だ!

彼が裏切り者であるにもかかわらず、僕らは彼の初級へのプレイを認めた。
絶対にクリアすることが条件。
素直=クールことクーさんの仇を討つことが、彼を許す条件。

( ゚∀゚)ぜってぇクリアする

そして仇を討つことは彼の意志でもある。
死なないためという消極的理由では無く、仇を討つためという積極的理由だ。
気合いは人一倍だろう。

コンクリート部屋の中の誰もが、ジョルジュのクリアを望んでいた。
それは利己的なところもあっただろう。
彼のクリアは、僕ら全体の利益になるのだから、否定はしない。




「表示はどうする?」

( ゚∀゚)XPのままで良い

「そうか、プレイ開始まで少しまて」

実は、少しだけ彼が中級を選択することを期待した。
責任を感じて中級をやるかと思ったのだ。
しかし、仇を討つという理由ならば、初級の方が適切だろう。

「よし、では長岡=ジョルジュ。プレイを開始しろ」

画面を見ると、ハインさんの残した失敗画面は消え、新たな初級盤が出現している。
これでハインさんがこの世に残したものは全て消えたことになる。
さようなら、ハインさん




  _
( ゚∀゚)………………

ジョルジュはプレイ開始時から、ぴくりとも動かなかった。
今まで見た誰よりも集中している。
クーさんやドクオさんやペニサス、モララーさんよりも。

所詮初級盤、と侮ることはできない。
実力的にはナンバー3・4のペニサスとクーさんは、初級に飲まれた。
ついさっき、ハインさんもだ。
  _
( ゚∀゚)…………

ジョルジュは未だに一手も開いていない。

マインスイーパにおいて、一手目を早めに開くことは愚かなことではない。
勢いを付ける意味でも、有意義なことだ。
しかし、一つのミスも許されない状況で、勢いなど不要。
「やる気無し」と認められる直前まで時間をかけて、集中力を高めるのが得策。




一手目が初級盤において大きな意味を果たすことは、もはや説明不要だろう。
この一手で、全てが決まると言っても過言では無い。
そのことは今まで何度も感じてきた。
  _
( ゚∀゚)よし…………

プレイ開始から、初めてジョルジュが口を開いた。
決断したか。

ジョルジュは、汗一つ掻いていなかった。
ヴィプクオリティ。仇を討つという義務感。自身の生への欲求。
全てが、彼を支えていた。
  _
( ゚∀゚)

マウスカーソルは初級盤の上辺を。
定石だが、それしかない。
あまり考えても無駄だ。


カチッ


クリックした音が、静かにコンクリート部屋の中に響いた。


















鬼が出るか、蛇が出るか。

















  _
(;゚∀゚)…………クッ!!

出てきたマスは3。
かつて初級盤をプレイした中でも、最悪の出。
  _
(;゚∀゚)…………グゥ……ゥゥ……!!

取り乱す。当たり前だ。
僕自身、こうなったのが自分で無くて良かったと思うくらいだ。

こんな状況で、勘で進められるはずがない。
初級を失敗した人は全員勘で挑んで、沈んだ。
ましてや、今出た数は「3」。過去最悪の結果。

クーさんの初級の時は、1/8以下の確率で失格。
ペニサスの時は、1/5で失格。
ハインさんの時は1/2で失格した。
そしてジョルジュが置かれた状況は定石を打てば3/5で死。

二手目の定石である、一手目の真下。
これはほぼ打てなくなった。




もちろんそこで「3」が再び出れば、かなりの高確率で抜け出せる。
しかし、やはりリスクが高い。
ならば……


(;゚∀゚)(…………飛びマスしか、ねえか……)


隣り合った5マスではなく、まったく別の場所を開く。
クーさんがやった戦法だ。
本来初級などで使うべき技では無い。

いや、初級に限らない。
飛びマスとは「リ・スタート」と同義。
しかも純正の一手目とは違い、リスクを伴ったスタート。

普通のマインスイーパで用いられる技では無い。

だが、今は状況が特殊。
何が正しい判断か、など、僕にもジョルジュにも分かるハズがない。




一手目とその周りを除けば75マス。
その内、地雷は7マス。
90%以上の安全が確保されていることになる。

冷静に考えて見れば、かなりの確率で安全が確保されている。
決して悪い手では無い。
  _
(;゚∀゚)(だけど……、あの姉ちゃんはこれで失敗した)

やはりクーさんが失敗したことがネックになっているのだろう。
彼女の残した傷跡は予想外に大きい。

クーさんは飛びマスをして、ろくなヒントが出ず、飛びマスを二連続で行った。
結果は地雷。
飛びマスが、普段以上に気軽にできる技ではなくなっている。




  _
( ゚∀゚)……(だけど、怖いからって逃げるのか、長岡=ジョルジュ?)
  _
( ゚∀゚)……(仇を討つんじゃなかったのか?
       俺が護るべきはか弱き市民。
       そのために俺は公安機動隊に入ったんだ……)
  _
( ゚∀゚)……(護れなかったから、せめてもの仇討ち)
  _
( ゚∀゚)……(間違ってるかも知れないが……俺は逃げたくない
       勝つためには、死ぬ気で戦うしかない。)
  _
( ゚∀゚)……(飛びマス、やるしかない)

ジョルジュの顔が変わった。
いや、顔が戻った。
一手目を打ってから見せていた不安そうな顔が、再び覚悟の顔に戻った。




飛ぶ先はたぶん真ん中のマス。

そこは、仇討ちとしては十分すぎる意味を持つマス。
クーさんが地雷を出したマスだから。
そこで空白が出れば、仇討ちとしては十分。

でも、不吉な予想が僕の頭の中を埋め尽くしていた。

結果が失敗に終わり、クーさんと同じく、初級盤の飛びマスに飲まれてしまう
鉄の扉が開き、執行人がジョルジュを連れて行く。
そして執行人の銃で、ジョルジュは殺される……

そのビジョンが頭から離れなかった。

( ^ω^)…………(生きろお)




  _
( ゚∀゚)…………(飛びマスは、中央!
         素直=クールを殺した、この中央のマス!)

マウスカーソルは、9×9盤の中央へ移動した。
将棋でいえば五五の位置。
クーさんを飲み込んだマス。

( ゚∀゚)…………

それを恐れず、仇討ちに行った姿勢は認める。
それでも、僕の予想通りのマスに飛んでしまったのが、とても残念だ。




カチ


















開いた結果まで予想通りになったことが、とても残念だ。







「長岡=ジョルジュ。初級失敗だ」



「初級を潰しきれないな。ははは、これで初級失敗者は4人か?」
「しかも2連続の失格か。鬱田の時とは違い、本気でやったプレイヤーが失敗とはな」

「果たして、何人が生き残れるかな?」

「執行人、長岡を連れて行け」


画面には地雷のグラフィックが出ていた。




(  ∀ )…………



失敗して、鉄の扉が開くまでの間、僕らはジョルジュの目を見ていた。
責めるような視線では無く、むしろ哀れむような視線でジョルジュを見ていた。
プレイは終了したにもかかわらず、誰も口を開くことは無かった。

( ・∀・)……
(´・ω・`)……
( ^ω^)……


ジョルジュがやっと口を開いたと思ったら

( ゚∀゚)東京の「杉浦=ロマネスク」って男に遺言を頼む

それはまた、人の死をクリアに想像させる言葉だった。




( ゚∀゚)俺は千葉の銚子の生まれでな。長らく千葉に住んでた。
    正義に燃えててな、ずっと警察官になろうと思ってた。

( ゚∀゚)でも、俺は馬鹿だから、千葉県警に採用されなかった。
     その結果に落ち込んで、喧嘩ばっかりの日々になってた。

( ゚∀゚)そんなある時、喧嘩の仲裁をしてくる中年親父がいてな。
    気にくわなかったから、一発で伸してやろうとしたんだ。
    でも「その腕っ節、国のために使わないか?」って言われて、やめたんだ。
    警察官になることに、未練があったのかも知れないな

( ゚∀゚)聞いてみたら、そのオヤジは国家公安実動部隊の隊員らしくてな。
    やることも無かった俺は、オヤジについていった。
    今までの自分を見返したかった。ってのもあるな。

( ゚∀゚)訓練中、ケガすることなんて当たり前だ。
    一時は左眼を失明しかけた。

その時の傷が、まだ残っている。
初めて見た時から気になっていた、左頬にある傷だ。




( ゚∀゚)普通、筋トレとかだと思うよな。
    でもさ、視力・聴力まで鍛えさせられたんだぜ?

あの聴力の良さは、そういうことか。
他の誰にも聞き取れなかった銃声が、ジョルジュだけに聞こえたことがあった。
あの時はなんとも思わなかったが、そういう背景があったというのか

( ゚∀゚)まあ、そんなこんなで公安機動隊に入ったわけだ。

( ゚∀゚)「杉浦=ロマネスク」がそのオヤジだ。
    猫みたいな親父でな。
    素早くて、ずるがしこくて、それでもどこか憎めないオヤジだ。

( ゚∀゚)そのオヤジに伝えてほしい。




( ゚∀゚)杉浦=ロマネスクに伝えてほしいことってのは、礼だ。
   「こんな俺を、育ててくれてありがとうございました。」って、伝えてくれねえかな。
   この一言で良いんだ。

( ゚∀゚)…………裏切り者の言葉は、伝える気がないかも知れん。
    でも、頼むことしかできない。

( ・∀・)……ああ。
     お前の言葉、確かに杉浦=ロマネスクに届けよう。

( ゚∀゚)頼んだぞ、ロマネスクは東京に住んでる。

モララーさんは彼の意志を尊重することにした。
これで彼の遺言は伝わることになる。

とにもかくにも、鉄の扉が開き、この部屋からまた一人プレイヤーが減った。

残されたのは、3人となった。







―26―






( ゚∀゚)

暗い道だ。
暗闇に慣れれば多少見えるが、それでも薄暗いことに変わりはない。

このまま逃げ出すことは不可能。
5人の執行人に囲まれて、逃亡しようものなら、きっと背後から撃ち殺される。

( ´_ゝ`)何も喋らんな、古猫=モナーのようだ。
     根底にあるのは、死への恐怖か。

(`・ д・´)鬱田=ドクオは違いましたがね。

( ´_ゝ`)あいつは死にあこがれてたのか?よく分からん奴だった。

( ゚∀゚)……………………

過去形で話している。
やはり死んだのか。
わかっていたことだ。鉄の扉の向こうから銃声が何度か聞こえていたから。

自分の鍛えられた聴力を怨んだ。
死ぬ瞬間が分かってしまったから。
それでも耳をふさぐことはしなかった。




最後、アイツらに託した遺言は届くだろうか?
誰か一人でも無事に、ここから脱出して欲しい。

初級と中級を1回ずつ残してしまったのは、俺の責任が大きい。
一巡目に上級を選んだのは、「逃げ」だ。
もう否定しない。皆を裏切った。

だが
「公安機動隊は、自分を犠牲にしてでも目の前の人間を助けなきゃならん」
というロマネスクの教えが、俺の義務感に火を付けた。

機動隊・諜報隊・開発研究隊・治安維持隊・災害救援隊。
機動隊は公安にある5つの部隊でも最強と名高い部隊だった。
その隊長が杉浦=ロマネスク。(今は退職し、別の者が隊長をやっているようだが)

紛れもなく、公安最強の男だったはず。
そのロマネスクに育てられたことは、俺の一生の誇りだ。




しばらくすると、執行室という所につれてこられた。
死体が5つ並んでいた。

( ゚∀゚)お前ら覚悟しとけよ?
    俺が死んだら、一生呪い続ける。
    国民を躊躇無く殺す奴らなんて、俺が呪い殺してやる

(´<_` )呪いか……………まるで……サダ……

( ゚∀゚)あ?なんだって?

(´<_` )……………アニジャ。こいつと居るのは不快だ。
     執行しろ




最後の最後まで、あのマスをクリックしたことは後悔しなかった。
仇を討つためには、あそこ以外無かった。
そこが地雷であったけれども、俺は後悔していない

それだけは、誇っても良いよな?ロマネスク。



銃特有の音が鳴った






―27―



【監視室前通路】



長岡の執行が終わった。
アニジャ執行人の後も、他の執行人が一発ずつ弾丸をぶち込んだ。
念には念を、だ。

これで残っているプレイヤーは4人。
箱捨=シィを除けば、たったの3人だ。
下眉=ボーノン。内藤=ホライゾン。苛猫=ウララー。

そういえば監視官の立てた生存者の予想は
伊藤=ペニサス。鬱田=ドクオ。苛猫=ウララーの3人だったか?
既にその内二人が死んでいる。

やはり、あいつはアテにならんな。

(メ^Д^)はぁ……




( ´_ゝ`)どうしました、溜息などつかれて。

(メ^Д^)あ? いや、監視官の予想、外れたな。って思ってただけだ。

( ´_ゝ`)ああ……鬱田と伊藤と苛猫。って予想ですか

記憶は正しかったか。
その3人は確かにあの中でもかなり巧かっただろう。
だが、マインスイーパに飲まれた。

(´<_` )鬱田、か。
     そういえば、こんなものを貰ったな

オトジャ執行人は、自分の黒服のポケットをまさぐりだした。
何が出てくるか期待していたが、出てきたのは白い錠剤だった。
期待はずれ……




色は白。大きさはゲームコントローラのボタンくらい。といったところだろうか。
別に変な所は無い。

(メ^Д^)それは?

(´<_` )あいつらが飲んでる薬だよ。
     鬱田が俺に渡した。
     素直=クールがあいつらに残した「精神安定剤」だ。

(メ^Д^)ああ……確か、ヴィプクオリティ?だったか
     でも、それがどうかしたか?

(´<_` )ちょっと、興味深いことがあるんだ。

ほう、オトジャ執行人が何かに興味を示すとは珍しい。

だが、その錠剤は一番最初の死亡者、素直=クールが残した錠剤だ。
管理は下眉が行っているが、別にオトジャ執行人の興味を引くような変なところは無かったように思う。
ただの精神安定剤だと認識しているが……




喋り慣れてないからだろうが、オトジャ執行人は説明が長い。
アニジャ執行人の方を見て、代わりの説明を求めるが、彼はこの薬について何も知らない風だった。
諦めて、オトジャの説明を聞くことにする。

(´<_` )執行長、素直=クールの調査書をよく読んだか?

素直=クールの?
一番最初に脱落した人間だから、あまり目を通していない。
苛猫=ウララーの調査書なら、暗唱できるほどに目を通したが……

素直=クールの調査書を探していると、ゴノネガイが持ってきてくれた。
気の付く奴だ。
何があるか見当も付かないまま、ザッと目を通す。

備考の欄で目がとまる

(メ^Д^)これは…………

(´<_` )そういうことだ。




       素直=クール。

タイトルはそのままだ。
その後、彼女の家族、学歴、生年月日、現住所、勤務先などの概略。
そして顔写真が貼ってあり、最後に小さくこう書いてあった。



 
       備考   末期癌を患っており、延命のために抗ガン剤を服用している。
            故に、この抗ガン剤はプレイ部屋からの回収を許可しない。
            また、彼女は癌を通告されておらず、この薬を精神安定剤と知らされている。




携帯電話や携帯ゲーム機などは回収後処理。
ペンやヘアピン・ネクタイピンといった、凶器となりえそうな物も回収後処理した。

しかし確かにあの時、錠剤の入った白い袋は残していた。




奴らを支えていた柱が、一本折れた。
素直=クールの残した「ヴィプクオリティ」は、精神安定剤では無く…………


(メ^Д^)これは…………面白い

( ´_ゝ`)素直が他の9人に渡したのも、悪意があった、ってわけじゃない。
     奴らの言葉を借りれば、「天然の害悪」か。

ヴィプクオリティは、精神安定剤ではなく抗ガン剤。
そしておそらく、その名前も適当にでっち上げたものだろう。

唯一の家族である素直=ヒートは高校生。家族の意志、を聞くには不適切だったということか
だから医者は自分で「癌を通告しない」選択をした。
彼女を診た医者は、末期であることを伝えずに「弱気になっているだけ」と言ったのだろう。

医者は架空の精神安定剤「ヴィプクオリティ」なるものを素直=クールに渡した。
その実は、末期に至った癌を患う素直=クールに与えられた、寿命延ばしの薬。




(`・ д・´)医者が処方箋を出す時に、精神安定剤だと誤魔化さなければ良かったのですが、
       その医者も仕方ないでしょうね。
       それが最善の対処だったのでしょうから。

(メ^Д^)インフォームドコンセント、ってヤツだな
     医療における素晴らしい精神だが、ここではそれが仇となったな。

そして、そのことを裏付けたのが、古猫=モナーだった。

(`・ д・´)古猫=モナーは、ベテランの臨床心理士であったはずです。
       にもかかわらず、あの薬を見た時「知らない」という反応をしました。
       なるほど、適当にでっち上げた薬ならば、知るはずも無いですね。

(メ^Д^)あー、確かにカウンセラーとかって、精神安定剤ならたくさん知ってるよな。普通。
     無免許だからって、普通の処方薬なら知らないはずは無いか…… 

(メ;^Д^)っつーか、抗ガン剤って、癌患者以外が飲んでも良いのか?

(´<_` )この種類の抗ガン剤ならば、大量に摂取しなければ……たぶん大丈夫だろ。
     治療薬じゃなくて、ただの延命薬だしな。ちょっと過激な栄養剤だ。
     現に、苛猫や内藤には何も体調の変化が起きていない。
     でも抵抗力の弱い子供なんかは、ヤバいかもな。




(メ^Д^)となると……下眉=ボーノンか

( ´_ゝ`)ああ、錠剤を飲んだだろうしな。
     一日一錠。そのルールを守っているとしてもヤバい。

(´<_` )さらに、奴は薬の管理をしてる。
     異常な緊張にさらされて、過剰に薬を摂取してる可能性もある。

( ´_ゝ`)ま、どうなるかは知りませんよ
     薬学は習っておりませんので。

確かに、癌は重病だ。
その病気への抵抗をする薬が、弱いハズがない。
もちろんその抵抗力は、人間の体にも及ぶ。

(メ^Д^)(面白い…………)




このマインスイーパ、中々に面白いじゃないか。
イレギュラーな存在が満載だった。

鬱田のクリア目前での自殺。
実際、あそこでクリアしていたら、脱出はかなり早かっただろう。
鬱田はおそらく苛猫に次ぐプレーヤーだったはずだ。

次に箱捨=シィのオリジナルの裏活用。
この発想は、正直無かった。
10人のプレイヤーで執行人を上回ったと言えるのは、おそらく箱捨と苛猫だけ。

さらに「偽精神安定剤」ヴィプクオリティ。
皆が信じ切っていた素直=クールの残した遺産。
彼女自身も信じて疑わなかったために、それは天然の害悪となった。

そして、苛猫=ウララー。
お前も、このマインスイーパを盛り立てる上で、大きな要素だ。
最後にして、最大の異端と言っても過言では無い。

期待してるぜ?




―28―





命を賭けさせられたマインスイーパ。
最初のゲーム開始から、既に半日が経過しただろうか?


ハイン・ジョルジュの連続した失敗。
残っているのは初級と中級が1回ずつ。
二巡目の未プレイ者は僕とショボン君。

ハイン・ジョルジュの失敗のせいで、二巡目は最後まで回りきることが確定した。

外に出ることが難しくなったのは嘆くべきこと。




( ・∀・)さっきまでは犠牲を少なくすませるために、初級を選ばせてたけど……
     もはや初級が安全とも言い切れない。
     自由に選んでくれ。

( ^ω^)分かりましたお

(´・ω・`)……はい。わかりました

モララーさんが傍観者的立場なのは、彼は既に二巡目を終えたからだ。

一巡目・二巡目ともに中級をクリア。
彼の功績は本当に大きい。
彼が居なければ、僕らは確実に全滅していただろう。

( ・∀・)ま、そうはいっても初級を選んだ方が楽なのは間違いない。
     単純に難易度が違うからね。

そして彼の言うことは全てが正しい。
盲信では無い。
全ての言葉が理に適っている。

その彼が初級を薦めてきた。
だから、初級はショボン君には譲れない。




(´・ω・`)しかし、既に初級では4人が失敗しています

( ・∀・)運に見放された……と思うしかないね。
     だが、君ら二人は初級のプレイをして、クリアした二人だ。
     二人とも、要領は得ているだろう

そういえば、ショボン君も僕も、一巡目は初級を選んだ。
初級を選んで生きているのは僕らだけ。
つまり、僕とショボン君は全くの対等なのだ。

(´・ω・`)…………

じっと見つめてくるショボン君は、きっと僕らの置かれている立場を理解しているのだろう。
対等な立場ということを知った上で、視線で訴えかけてくる。
小学生とは思えないほどの眼力で。

初級をやらせろ、と。

(´・ω・`)…………




誰が初級を譲るものか。
初級は中級より遥かに楽なランク。
実績からすると、初級の失格者は多い。しかし楽なランクであることは間違いない。

それに僕にとっては一度クリアしたランク。
これほど適したものも無いだろう。

さっきも言ったが、ショボン君からしても同じだ。
彼だって一巡目に初級をクリアした。
彼も僕も、初級をクリアできる可能性というのはほぼ同じだろう。

だが、利己的に考えるならば、彼に譲るべきではない。

( ^ω^)(10人が3人まで減ってしまった今、最初とは状況が違うお
       もはや他の人間は味方では無く、生き残るための道具)

( ^ω^)(僕が利用しても、彼らに利用されていく気はないお)

初めの頃に比べると、かなり腐った考え方だろう。
最初はフェミニストぶって、ハインさんとシィに上級・オリジナルを譲ることまでした。
それが今は、小学生相手に本気で初級の取り合いをしている。




(´・ω・`)………………

( ^ω^)………………

睨んでも、ショボン君は目をそらさなかった。
今にも取っ組み合いそうな緊張感だった。
小学生と中学生の体格差は大きい。取っ組み合いで負ける気はしない。

( ^ω^)僕が指名されたら、僕は初級を選択するお

(´・ω・`)それはつまり……僕に中級をやれ、と。

( ^ω^)僕が初級を選べば、ショボン君は必然的に残った中級をプレイすることになるお

ショボン君の言葉を、肯定する言葉だった。
もちろん、腐っている。




(´・ω・`)しかし、それ以外にもいくつか起こりうる可能性はあります。
     この指名システムも、マインスイーパも、運による所が大きいですから。

(´・ω・`)まず、僕が先に指名される可能性。
     先に指名されてしまえば、僕が初級を選べますからね
     これで僕が初級、ブーンさんが中級ということになります。

(´・ω・`)もしくは、ブーンさんが初級を失敗すること。
     これで僕は初級をプレイできます。
     そこでクリアして、三巡目の一人目、モララーさんが指名されてクリアすれば脱出。

ショボン君の先指名。僕の失敗。
後者はともかく、前者は僕の力でどうこうなるものではない。
完全にスピーカー男の指名、つまり運に任せるしかないからだ。

…………

いや、


本当に、指名は運任せにするしか無いのだろうか?




( ^ω^)…………(ハインさんの時を思い出すお)

( ^ω^)(悪い流れも見ておきたいから、高岡=ハインリッヒ……)

( ^ω^)(指名はランダムではなく、スピーカー男、もしくはその周辺による意志が介在する。
       ルーレットやくじ引きのような完全な50:50では、無いのかお?
       つまり、僕らの会話で、多少の影響を与えられる……?)

間違いないだろう。
悪い流れを見ておきたい、つまり失敗させておきたい。
となれば、実力が低く、動揺している人を狙って指名しただろう。それがハインさんだった。

ならば、今スピーカー男が望んでいるプレイヤー像とは?
ショボン君と僕を比べて、実力と功績に大差は無い。
となれば、言動によって決めるのか?

( ^ω^)(どういう言葉を選べば、スピーカー男の好みだお?)

他人の好みの言動を取る、というのは苦手だ。
だが、今は必死に頭を働かせねばならない。
頭が痛いのは、その無理がたたっているから、では無いだろう




現状を整理すると、残っているのは初級と中級。
そしてスピーカー側からすれば、ラストに中級を持って行きたいだろう。
初級をクリアして終わり、では、盛り上がりに欠ける。

( ^ω^)…………(つまり、中級をやりたがる主旨の台詞はダメ)

となれば、初級を熱望すれば良いのだろうか?
先程少し、そのような台詞を言ってしまったが……
ダメでは無いだろうが、最善手では無い気がする。

奴らがプレーヤーの思い通りに行動させてくれる可能性は低い。

( ^ω^)…………(だから、初級をやりたがってもダメ)

すると、裏切りのそぶりを見せるか?
いや、具体的な裏切り行為が思い浮かばない。
ならば、動揺(発狂)して、ハインさんの再現を……ってのは、もう遅いか

こうなったら、とにかく目立つしかない。




効果があるかどうかは分からない。
逆効果かも知れない。
けれど、とにかく目立とう。そして指名されよう。

(#^ω^)…………ちくしょう!
      絶対に帰ってやる!こんな所にいつまでも居てられるかお!
      ったく!こんな所に閉じこめやがって……死ねお!!

特に何を考えているわけでも無いが、スピーカー男に聞こえていれば良い。
興味を持て。

(#^ω^)飯はマズいし人は死ぬし!
      僕自身まで死ぬ危険がある、だって!?やってられっかお!

(;´・ω・`)…………っ?

(#^ω^)………………絶対にクリアしてみせるお!
      死なないために!
      生きて家に帰るために!!

スピーカー男、僕に興味を持て。
僕を指名しろ。
僕に初級を与えろ!!














―29―





【監視室】

(メ^Д^)

マイクは切ってある。
こちらからの声はきこえないが、部屋からの音声だけは流している。
もちろん映像も、だ。

(`・ д・´)次のプレーヤーは、どうするんですか?

(-_-) ガキ・クソガキの二択か。

(`・ д・´)年齢も近いですし、性別も同じ。どちらも初級を一度クリア。
     決め手が無いですね……

ゴノネガイは分かっていない。
この監視官は、そんなに物事を考えて動いてはいない。
面白そうだ、と思った事を実行に移すのみ。

ただ、それが考え込まれた論理をも超越することがある。
それだけのこと。
監視官は決して有能な人間では無いし、必要な人間でも無い。



この監視官という男は、やや単純なところがある。
苛猫=ウララーとの会話なんて、苛猫の思うがままに会話を進められている。
話を打ちきる時は「ルール」に頼るしかない。

話術は無い。
非常に口が下手で、頭が回らない。
人を惹きつける魅力もない。あるのは金と欲望、鋭い直感だけ。

この場で下眉か内藤かを決めろと言ったら、どちらを選ぶだろう?
面白そうなのは内藤か。
最初は気弱そうな中学生だったのに、今はかなり汚れている。

このマインスイーパによって、もっとも――間違った方向に――成長した人間だ。

単純な監視官の興味を引かないはずがない。



「なるほど、ならば成功させてみろよ」
「内藤=ホライゾン……」

部屋の中で監視官が口を開いた。
長岡の執行が終わってからは初めて、か。
マイクは入っていないから、プレイ部屋には届いていない。

だが、この監視室で声を聞き逃さなかった人間は居ない。
上司の声というのは無意識の内に聞こえてくるものだ。
そして、それを聞いた皆が思った。


こいつ、単純だな。本当に40歳超えているのか?
プレイヤーに指名の順番を左右されてるなんて、ちょっと頭が足りないだろ。


と。






爪'ー`)次のプレーヤーは――――――――内藤=ホライゾン。君だ。

マイクを入れ、プレイ部屋にアナウンスする。
その内容はプレイヤーの言動に左右されたもので、手玉に取られている。
『あえて』手玉に取られた……とでもいうのだろうか?いや、無いな。

本当に40歳を超えてるのか?と尋ねたくなるほどに子供だった。
外見では無い。外見はただのオッサンだ。
内面が非常に幼稚だ。

ま、とりあえず次のプレーヤーは内藤に決定か。
俺も見てみたかったしな。
どうでも良いか。順番に興味は無いし。







―30―




【プレイ部屋】

(#^ω^)!!

来た。
アピールが成功したのか、それとも偶然なのかは知らない。
とにかくこれでショボン君に対して絶対的なイニシアチブを握った。

(;´・ω・`)ブーンさん!!
      僕に初級を!!

なりふり構っていられないか、ショボン君
命を賭けたゲーム。リスクの低い方を選びたいのは分かる。
そしてそれを僕に懇願することも、理解できる。

だが君は、マインスイーパのルールの前に沈黙することになる。
僕が椅子に座るだけで、ショボン君は発言権を失うのだ。

(;´・ω・`)ぐっ……

これまでのマインスイーパで、そのことはよく分かっているだろう。
何か喋って、僕を巻き込んで失格になろうと、ショボン君に得はない。
君は沈黙するしか無いんだ




「座ったようだな、内藤=ホライゾン」
「ではランクを選べ」

(;´・ω・`)…………っ!!!

勝った。
下眉=ボーノンを蹴落とした。
僕は中級をやることなく、ここから脱出できるかも知れない。

( ^ω^)…………初級を。表示はMeの頃の。

「分かった。では少し待て」

画面が切り替わる僅かな時間、僕はショボン君を見ていた。
彼は落胆した様子で、仕方なくコンクリート部屋に腰を下ろした。
ショボン君は中級決定だ。

その結果がどうであろうと、彼は中級をやることになった。
若干、心が痛んだけれども、仕方ないんだ。




「よし、では始めろ」

ショボン君は中級決定だ。
とは言ったが、それはあくまで僕がこれをクリアすれば、のこと。
僕がここで死んでは元も子もない。

別にショボン君に中級をやらせたいわけでは無い。
僕が中級をやりたくないだけだ。

そのためには、今ここで確実にクリアする必要がある。
僕は死にたくない。
他の何を犠牲にしてでも、生き延びていきたい。

( ^ω^)…………

もちろんそれが醜い考えだということは分かっている。
現に、ショボン君に対して、何の言い訳もしていない。
言い訳をする余地も無い……という方が適切か。




じっと画面を見る。

初級盤。Meの頃のレトロな画面だ。
僕以外の人は皆XPでプレイしていた。
マスや数字などのグラフィックが違うが、ルールは統一されているようだ。

( ^ω^)

新品同様のディスプレイには、マインスイーパのみが映し出されている。
壁紙は黒一色。デスクトップにアイコンは無い。

今度は後を見る。
ショボン君とモララーさんが座っていた。
ためらいは捨てた。利用できるなら、モララーさんも利用したいところだ。

そしてまた、画面を見る。
今度は画面の向こうの、脱出した後の世界を見た。
そこには親友ィョウが居て、僕と一緒に遊んでいた。

( ^ω^)その未来。勝ち取ってやるお……




そもそも、僕にマインスイーパを教えてくれたのは、その親友ィョウだった。
彼の兄はパソコンオタクで、パソコンはプロ級に使えた。
その血がィョウにも流れていたのだろう。彼はゲームのプロだった。

そしてそれはマインスイーパのような、所謂「暇つぶしソフト」も例外ではない。
学校の中の、生徒が使えるパソコンのハイスコアは常に「御手上=ィョウ」だった。
もちろん先生にバレた時は怒られていたが……

その彼にマインスイーパを教わった。

(=゚ω゚)ノ『マインスイーパってのは、基本的に慣れることが大切なんだよぅ
     慣れてさえしまえば、クリアすることは難しくないよぅ』

(=゚ω゚)ノ『初級のコツかよぅ? 焦るな、としか言いようがないよぅ。
     まともにやれば、誰でも9秒以下なら楽に出せるよぅ。
     慣れれば3秒なんてのも出せてくるよぅ!』

(=゚ω゚)ノ『リラックスしてプレイすれば、クリアできないランクなんて無いんだよぅ
     ブーンは頭良いから、すぐにルールも覚えられるよぅ』

焦らなければ、勝てる。




( ^ω^)…………

僕が挑むのは初級盤。

クーさん。ペニサス。ハインさん。ジョルジュ。
4人のプレイヤーを飲み込んだ悪魔のランク。
ここで潰さなければ、なんとしても潰さなければ。

ここでクリアすれば、僕の脱出はほぼ確定と見て良いだろう。
中級はきっとショボン君が潰してくれる。

だがこの初級とて、易いランクでは無い。

( ^ω^)(ウダウダ言っても、仕方ないお)

覚悟を決めて、一手目を選ぶ。
もちろん、ィョウから習った定石を打つ。
上辺のマスを打つ。



カチッ
























                     ィョウ。信じるお。
                  君の教えてくれたマインスイーパを



























やや大きめに開いたマスは、盤の上中央から右上にかけて大きく陣取っていた。





(*^ω^)っしゃ!!来たお!!

(;´・ω・`)…………チッ

舌打ちが聞こえた。
ショボン君か。分かってるよ。
僕のクリアは君のピンチだからね。

(*^ω^)…………もう楽勝だお!

一手目で、既に盤の三分の一は開いている。
ヒントも十分に存在する。

(;´・ω・`)……

君は、中級をクリアしろ。
下眉=ボーノン。




( ^ω^)おっおっ!

もう楽勝だった。
初級は一手目が全てを決めるランクだ。
ハインさんの時のような、例外はあるけれど……

最低限のルールと、ある程度の運があれば、勝てる。

( ^ω^)…………

この戦いで、何よりも強敵だったのは、ショボン君だった。
そこは運で乗り切った。
監視官の興味をうまくひけたのかも知れないが、ともかく僕はショボン君に勝った。

( ・∀・)…………

僕がクリアした後は、ショボン君が中級をやることになり、そこでクリアすれば脱出。

もう名古屋は目の前だ。




盤は既に90%が開かれている。
ミスも無い。

( ^ω^)…………

ラスト8マス。
地雷数は残り2。

良いペースで減らしていった。
つまるようなところもない。
不可予知が出る可能性も、もう無い。

大丈夫だ。
これでクリアできる。
ミスは無いはずだ。




残り3マス。地雷はあと一つ。

僕はショボン君を蹴り落としたことになった。
けれど、皆の建前である「ランクは自由に」に乗っ取っただけだ。
文句を言われる筋合いは無い。

もちろん、人として間違っているとは思う。
小学生相手に、目に血を走らせてまで、中級から逃げたのだから。
本来護るべき人間を、地獄の底に突き落とした。

( ・∀・)…………

もしショボン君が中級を失敗したとしても、地獄を二度見た人間がいる。
三度目もきっとやってくれるはず。
大丈夫。僕は大丈夫だ。

残り1マス。全ての地雷に旗を立てた。




最後のクリック。
もう、結果は分かっている。
初級如きで、旗の立て間違えなどしてしまうはずが無い。

確認も不要。
地雷の箇所は、体で感じ取れる。













カチ

きっと、そこは数字の2のはず。




( ^ω^)…………


「内藤=ホライゾン。初級クリアおめでとう」
「残るは中級1回とオリジナルだ。」

( ^ω^)…………よっし、だお

これで二巡目を乗り切った。
雑念だらけのプレイだったが、なんとかクリアまでこぎ着けた。
あとはショボン君に中級をやってもらうだけ。

「次は二巡目最後のプレーヤー、下眉=ボーノンだ。」
「10分の休憩を入れる」

その声を最後に、スピーカーからの声は途切れた。










( ・∀・)おめでとう。
     形はどうあれ、君は二度初級をクリアした。
     これは評価されて然るべきだ。

(´・ω・`)…………

建前的には、僕は初級という「死の危険があるランク」をクリアしただけ。
別に「死の危険がてんこ盛りなランク」から逃げたわけではない。
もちろん、それが詭弁だということはモララーさんもショボン君も気付いている。

そして、彼らが気付いていることに、僕も気付いている。

だからこそ、モララーさんの言葉が、嫌味にしか聞こえない。




(´・ω・`)…………中級か……

ショボン君が口を開く。
その右手にはヴィプクオリティの入った白い紙袋がある。

(´-ω-`)…………やるしか、無い……
     僕は家に帰るんだ…………

そうだ。ぜひとも中級をクリアしてもらいたい。
それはショボン君の利益であり、僕の利益でもある。

死ぬか僕のために生きるか。
第三の選択肢は存在しない。
僕のために中級をクリアしてくれ。下眉=ボーノン






―31―




運良く、僕は二巡目を初級のクリアという形で通過した。
これで残るランクは中級一つとなった。

そして二巡目最後のプレーヤーはショボン君。
最年少マインスイーパー。下眉=ボーノン。
彼がクリアすれば、僕らは解放される。

何かの歯車が一つ違えば、中級をやるのは僕だったのかも知れない。

でもとにかく、僕は先に指名され、初級の選択権を得て、クリアした。
今から、ショボン君は中級をプレイする。
モララーさんが二度クリアしてくれた、最悪のランクを。



(´・ω・`)…………中級ですか……

( ・∀・)アドバイスなんてのはないんだ。
     普段なら中級くらい余裕でクリアしてるだろう?
     リラックスしてやれば、そう難しいランクじゃないはずだ。

中級は、確かに5回やれば3回はクリアできるランクだ。
そう難しくは無いのだが……
なんと言っても、かかっているのは自分の命。

(´・ω・`)…………わかりました。

彼の返事が頼りないものになるのは、仕方ないことだ。


ショボン君のプレイの価値は、もはやそれ単体で考えることはできない。
もし失敗すれば、僕が指名される危険だってある。
指先一つで、僕はまた崖っぷちに立たされる

( ・∀・)

モララーさんがもっと具体的なアドバイスを送ることができれば、クリアの可能性は上がる。
しかし、マインスイーパというゲームの特性上、アドバイスは中々難しい。
ある程度の実力があれば、あとは経験でしか物を語れないからだ。




(´・ω・`)…………ブーンさん。

突然話しかけられ、驚く。
しかし、このコンクリート部屋には既に3人しか居ない。
モララーさんとの話をやめれば、僕に矛先が向くのは当たり前だ。

( ^ω^)なんだお?

(´・ω・`)………………
     もし、僕が失格したら、山梨県の甲府に住んでる兄に、遺言を伝えてください。

また遺言か。
託される遺言が、また一つ増えるというのか。
いい加減、鬱になりそうだ。

( ^ω^)いやだお。
      君が生き残って、山梨に帰れお
 
(´・ω・`)それができれば良いんですが、万が一を考えて、のことです。
      なんせ、プレイするランクは中級しか無いんですから

( ^ω^)…………

ちょっと皮肉をこめられた。
遺言くらい、聞くことにする。




(´・ω・`)良いですか?

( ^ω^)分かったお。
      お兄さんの名前は、何ていうんだお?

(´・ω・`)下眉=シャキン。今は姓を変えて上繭=シャキンとなりました。
      甲府の郊外に住んでる、大柄な男です。
 
シャキンさん、か。
別に珍しい名前では無い。
上繭という、特殊な苗字から探す方が見つかりやすいだろう。

(´・ω・`)伝えてほしい内容は、こうです。
     「結婚おめでとう。これからもお幸せに」

( ^ω^)…………

遺言としては、やや不適切な内容の気がする。
きっと、色々な事情があるのだろうけれど、僕には違和感しか感じなかった。
彼の遺言にケチをつけるつもりは無い。言葉通り伝えようと思う。




ショボン君を陥れたという罪悪感は確かにあった。
だからこそ、僕は彼の遺言を伝えようと思ったのかも知れない。

(´・ω・`)それと、お二人とも、ありがとうございました
      お二人が居なければ、僕らはきっと全滅していました……

( ・∀・)’
( ^ω^)…………

確かに僕とモララーさんの功績は大きい。
初級を2回クリアした者と、中級を2回クリアした者だ。
他のメンバーは運に恵まれなかったが、僕らは運に恵まれた。

僕ら二人のプレイが無ければ、ショボン君の言うとおりになっていただろう。
10人全員が失格。という、最悪の結果に。




「最悪の結果」というのは、あくまで生者の立場から見たモノだ。
死んでいった人たちにとっては、1人死のうが10人死のうが関係ない。
しかし、その遺言が伝わるかどうか、は残された人間にも、死んだ人間にも、大きな問題だ。

( ^ω^)(たくされた遺言は、クーさん・モナーさん・ペニサス・ハインさん・ジョルジュ
       そして今、ショボン君……6人分かお……)

きっと僕は、ドクオさん・ペニサス・クーさんの3人よりも下手だった。
だけど生き残っているのは、さっきも言ったように、運による所が大きい。
今、死んでいたのは、彼らではなく僕だったかも知れない。

彼らの遺言を、僕らは運ぶことになるのだが……
……彼らが、僕の遺言を運んでいた可能性だってあったのだ。

( ・∀・)礼は、脱出した後に言えよ

(´・ω・`)……………………




「では、次のプレーヤーを指名する」
「オリジナルランクは、箱捨=シィがプレイ中であるため、挑戦はできない」
「故に残るランクは中級のみであるため、次のプレーヤーは中級をプレイすることになる」

「次のプレーヤーは、下眉=ボーノン」
「プレイするランクは中級だ」

(´・ω・`)…………では、行ってきます。

ショボン君の座っていた所から、椅子までの5メートル。
小学生の歩幅でも、数歩でたどり着いてしまう。
数歩先で、ショボン君の命運が決まる。

(´・ω・`)…………謝らないと、ね。
      きっと、きっと…………この口で…………

安っぽい椅子の上に、ショボン君の腰が下ろされた。
画面は僕がクリアしたMeの初級。
それが今から、中級に切り替わる。




「表示は?」

(´・ω・`)XP

「わかった。では少し待て」

今までなら、ランクは? という問いもあった。
それが無い。
他のランクを全てつぶし終えたから。

その事は、脱出が目前に迫っていることと、有無を言わせず中級をプレイさせること。
どちらも意味していた。

やはり、ここでショボン君がクリアしなければならない。
もし失敗すれば、三巡目に突入してしまい、僕にもモララーさんにも指名の可能性が来る。
そこで僕が先指名されてしまったら、中級をやる羽目になる。

それだけは、なんとしても避けたい。
でも、避けるために僕ができることは、何もない。




画面が切り替わり、時計が動き出した。
ショボン君のプレイが開始された合図だ。

ショボン君が中級をやるのは初めてだ。
一巡目では上級をやると宣言したが、それを覆し、初級をクリアした。
そのことは、僕らの士気を著しく上げた。

しかし、その勇敢なショボン君でさえ、中級には怖じ気づいているように見えた。
理由は簡単だ。
中級は、このマインスイーパにおいて最悪の条件でのプレイが要求されるから。

一歩間違えれば死。
難易度自体も、初級とは比べものにならない。

(;´・ω・`)……

100%の生が約束されている一手目は、定石としては辺のマスを狙う。
ショボン君もそれを知っているし、きっと打つだろう。
だが、それでどの程度の戦果が得られるかは分からない。

大きく開かなければ、まだ死と隣り合わせなのだ。




だからと言って、力一杯打てば良いマスが開くというわけでも無い。
僕にできることも、ショボン君にできることも同じだ。
神に祈るだけ。

マインスイーパの神様がいるなら、お願いだ。
この中級、クリアさせてくれ。

(´-ω-`)…………やります!

誰に向かって言ったのかは、分からない。
僕か、モララーさんか、スピーカー男か、シャキンというお兄さんか。
それともマインスイーパの神様か。

とにかく彼は、一手目を打った。
打ったマスは、中級盤16×16の上辺やや左。
定石といえるマスだ。

マウスを握る手が、ゆっくりと弛緩していく。























マインスイーパの神様は、僕の願いを聞いてくれた





















出てきたのは空白マス。

やや小さめだが、それでも十分ヒントがちりばめられている。
クリアするには十分のマスだ。

( ^ω^)!!!
( ・∀・)…………!

これには、僕らも思わず声を出しかけた。
当たり前だ。
すぐそこに外の世界があり、最後の扉の鍵が、今開いたのだから。

あとはゆっくりドアノブを回し、クリアするだけ。

(*´・ω・`*)来た……来た…………

ショボン君も高揚しているようだった。
それも当たり前か。この脱出を、自分が決めたのだから。




一手目に空白マスが出たからといって、最後まで完遂できるとは限らない。
不可予知などの存在があるからだ。
数手で詰まってしまうことだってありえる。

(*´・ω・`)行ける……

しかし、そんなことも起きず、プレイはどんどん進んでいった。
中級盤のマスは既に過半数が開いている。

だが不安なのは、このペースだ。
異常なまでに速い。
僕のハイスコアを上回るペースでクリックしている。

ハイスコアを狙う時や、ハイペースでクリックする時はミスが生まれやすい。
理由の説明など不要だろう。

(*´・ω・`)よっしゃ………………

もしも、ショボン君が中級を無事クリアできたら、礼を言おう。
そして、蹴落としたことについて謝ろう。
ショボン君は許してくれるだろうか?

まあ、どっちでも良い。
礼を言って、謝ろう。




(*´・ω・`)早く……早く!
     ここはどうなの? セーフだよね……?

急いては事をし損じる。

ショボン君、急ぐ必要は無いんだ。
だから、そんなにマウスを強打しないでくれ。
もし間違えて、隣のマスをクリックしたらどうするんだ?

ガチガチガチガチ
ガチガチッ

ガチッ
カチッ

(*´・ω・`)うふふふふ

突然モララーさんが目を閉じた。
安心したからというよりは……何か、不吉なモノを見たような態度だ。

反射的に盤面を見る。




不幸が近づくのはいつだって突然だ。所構わず、時構わず、誰彼構わず。
ベッドの中でも、風呂の中でも、トイレの中でも。
コンクリート部屋にだって近づいてくる。

ショボン君のプレイしている中級盤が、呼び出すための魔法陣。

(;^ω^)(…………なんだお? この盤面……)

マスの左上の旗。
それに対し、何か異常なほどの恐怖を覚えた。

他と同じ調子で打った一手。
旗を立てただけだから、別に即死ということはありえないが……

( -∀-)………………

なんだろう、この違和感は。
明らかに、僕らを悪い方向へと導こうとしている。

ショボン君が、では無い。
ショボン君を媒介にした、何か不吉なものが。
マインスイーパの悪魔が。




         マインスイーパの悪魔は、前にも一度……

(*´・ω・`)行ける

         そう、あの時も中級だったような

(*´・ω・`)イケル……

         たしか、あの人の時と同じ

(*´・ω・`)…………

         嘘だろ?

(*´・ω・`)…………

         テンドンなんて要らない

(*´・ω・`)…………イケル!!

         気付いていないのか、ショボン君!!




盤面の右側。2と1で構成されているあたりのマス。
一見、ミスは無いように見えるが、そこは確かに地雷が一つ多く計算されている。
つまり、安全マスに旗を立てている。

旗の立て間違えで、中級を失格。
モナーさんの時とまったく同じだ。
こんな初歩的なミスで、再び扉が閉ざされるなんて、嫌だ。

(*´・ω・`)

一つくらい失敗したって……なんていう考えは通用しない。
慎重で繊細なプレイを重ねた上に、ある程度の運が乗って、初めてクリアできる。
一つのミスも許されない。

だが、ショボン君は一つのミスを作ってしまった。
たった一つだが、致命的なミスを、作り上げてしまった。









プレイは進む。
僕らの意志とは関係無く。

プレイは進む。
口を挟むことが出来ぬまま。

プレイは進む。
プレイヤーの笑い声と共に

プレイは進む。
僕ら二人を置き去りにして

プレイは進む。
兄を慕う少年を殺そうと。

プレイは進む。
外への扉を閉ざすため。

プレイは進む。
重大な失敗を残したまま。

プレイは進む。
モナーさんと同じ失敗を残したまま。






プレイは止まった。
その失敗が、止めた。
プレイは止まってしまった。








「下眉=ボーノン」

そこから先は、聞きたくなかった。
目を閉じ、耳をふさいでも、鉄の扉が開き、閉まる音だけは聞こえてしまった。
ごめんなさいショボン君。

その涙は、僕が流すべきだった。
その叫びは、僕が上げるべきものだった。
その銃弾は、僕が受けるかも知れなかった。

それら全てを、君に押しつけてしまったんだ。

ごめんなさい。ショボン君。
僕は生きて帰る。
そして、君の遺言を届けてみせる。

ごめん、ショボン君。
本当に、ごめん。







―32―







ひとしきり泣いて
―――それでもまだ涙は流れていたし、すっきりなんてしなかったけれど―――
僕は、喋れるほどには回復した。

だが、喋る相手は既にモララーさんただ一人となってしまった。
十人いたプレイヤーは、既に三人にまで減った。
そして、その内一人は別の部屋にいる。

( ;ω;)モララーさんだけでも生きて、帰ってくださいお

( ・∀・)……………………ああ。
     次に指名された時は、確実にクリアしよう。
     だが、君も生きて帰るんだ。
     絶望して、ドクオのようにはなるな。

( ・∀・)サダ……じゃない
      素直=クールのように、最後まで戦え。

それしかできないのか。
僕が皆のためにできることは、それしかないのか。
この後悔は、その程度では拭えない。




僕はショボン君を蹴落とした。
僕が彼を殺したも同然なんだ。

蹴落としたことの罪深さを、今になって知るなんて。
僕は馬鹿だった。
彼を追いつめたのは僕で、殺したのは僕なんだ。

執行人でも無い。スピーカー男でも無い。
一番の大罪人は、僕だった。

( -∀-)…………

( ;ω;)…………おっ…………おっ…………

泣き声だけが、コンクリート部屋に響いていた。
人の少ない部屋だと、声はよく響く。
それがまた、とても悲しくて。

( -∀-)…………

( ・∀・)あのさ……。




( ・∀・)ショボン君より先に指名され、初級を選んだことを悔いているようだけど…
     僕も一つだけ、君らに隠していたことがある。
     これはとても罪深く、人生を何度繰り返しても消せる過去では無い。

( ;ω;)…………なんの話ですかお?

僕は、彼の話を聞いて、少しでも楽になろうとしたのだろうか
確かな理由は分からない。単なる興味だったのかも知れない。
でもとにかく、聞いてみたかった。



けれど、聞かされる話のイントロは、とんでも無いものだった。

( ・∀・)僕はね、たくさんの人を裏切った。
     そうだな、ジョルジュやペニサスと一緒なんだ。



モララーさんが、あの二人と一緒?
どういう……?

( ・∀・)たくさんの人を裏切った。
     その時の話をしよう
     君がこの話から何を見出すかは分からないが、有意義なモノであってほしい。




彼の罪を聞こうとした理由。

ショボン君の死から立ち直るため。
だったかも知れない。

人を信じられなくなった僕が元に戻るため。
だったのかも知れない。

この話次第では他人を信じてみよう。
死んでいった7人とモララーさんを――できることなら、シィも――信じてみよう。









( ・∀・)ぼくはね、前にも一度、マインスイーパに集められたことがあるんだ。




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