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2009.06.1117:20

ブーンがあの事件に挑むようです

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AE%AB%E5%B3%B6%E4%BA%8B%E4%BB%B6
↑鮫島事件を知らない人はまずこちら






インターネット巨大匿名掲示板、2チャンネル。
2006年現在、発足当時から比べその知名度は、もはや聞いたことのない者は居ないといっても過言ではないほどになっている。
膨大な過去ログや日々乱立する糞スレ。その中で稀に生まれる良スレ。
まるでこの世界の縮図のように、独自の世界を作り出している2チャンネルに惹かれる者は後を立たない。
2006年3月8日。
日本のある町で、一人の少女が2チャンネルに足を踏み入れた。


ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、内藤。私2チャンネルって馬鹿にしてたけど、結構面白いわね」
( ^ω^)「お、本当かお?嬉しいお。ツンも一緒に2chライフを送るおww」
ξ゚⊿゚)ξ「そこまではのめりこみたくないけどね・・・内藤ってどこの板見てるのよ?」
( ^ω^)「僕は基本的にVIPにいるお。ツンもどうだお?w」
ξ゚⊿゚)ξ「厨房隔離版じゃない。内藤にぴったりね」
(;^ω^)「ちょwwwテラヒドスwwwww」

2chに足を踏み入れた少女の名はツン。
彼女は幼馴染の内藤に誘われ、2chの扉を叩いた。
オカルトやミステリーが大好きなツンは言葉とは逆に、すぐに2chにのめりこんでいった。
801板や恋愛板などをめぐり巡って、やがてツンはオカルト板の住人に納まった。
2chは、とても居心地がよかった。
身近に少ないオカルト好きな人ばかりの板での論議は最高だった。
2週間もすると、ツンは立派な2chネラーとなった。

だが、世界にはかならず暗部というものがある。
世界の縮図ともいえる2chにも、当然のように暗部があった。
それは、あまりにも大きすぎる闇だった。

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ内藤、S事件って知ってる?」
(;^ω^)「・・・!?・・・なんだお、それは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、知らないなら良いのよ、別に」




そしてある日突然、少女は消えた。
学校にも家にも連絡をいれず、忽然と姿を消したのだ。いつも通りの下校途中に。
知人は皆必死で行方を探したが、とうとう行方はわからなかった。

(;^ω^)「ツン・・・どこにいってしまったお・・・」

内藤はまだツンを探していた。
ツンは何も問題を抱えてはいなかった。家出をするとは考えにくい。
誘拐、だろうか。
だがそれにしては身代金の要求もなく、変質者による誘拐だとしても、何もそれらしい事件は報道されなかった。
下校途中で寄り道をした形跡もなく、事故に遭遇した訳でもないようだ。
手がかりはなかった。
ただ一つの、ほんの小さな心当たり以外には。

(;^ω^)「・・・まさか・・・2chの・・・」

ツンが失踪する数日前、内藤はツンに聞かれたことを思い出す。
S事件。
それは、とても稀有な事件だった。
何故か人を惹きつける現実性をもった、壮大なネタスレ。
2chにそこそこ詳しい者なら、一度は聞いたことがあるだろう。
それはネタだった。何故そう断じられたか。それは、証拠がなかったからである。
証拠がない故に、ネタと判断され廃れていっても、その言葉は魔力じみた魅力をもっていた。
好奇心という名の魅力を。



(;^ω^)「そんなはずがないお。あれはネタだお・・・きっとツンはもうすぐ見つかるお」

内藤はすぐにその考えを打ち消した。
ありえなかった。そんな理由で、ツンがいなくなってしまうなど。
きっと、他の理由があるはずだ。
誘拐でも事故でも家出でもない、もっと別の理由が。

だが、頭に芽生えた小さな疑念は晴れず、内藤の心を蝕んだ。
そしてその疑念は、一斉に芽生えることとなる。




ツンが失踪してから1ヶ月がたった。
まだ捜索は続いている。
続いてはいるが、一向に成果はなかった。
警察の懸命な捜索はやがて申し訳程度のものになり、クラスメイトや親戚、知人など、捜索に協力する者も一人、また一人と減っていった。
髪の毛一本すら見つからないツン。下校途中で遠くに行く資金もないのに、いったいどこに行ったというのだろう。

(;^ω^)「・・・もう1ヶ月かお・・・なんで、手がかり一つも見つからないお・・・」

内藤は自宅で椅子に腰掛け、パソコンを立ち上げていた。
想い人が居なくなっても、いつもの習慣は変わらず、今日も2chを放浪する。
一縷の望みをかけたオカルト板への書き込みも、ツンの行方を尋ねるコピペも、なんの効果もなかった。

いや、あったのだろうか。
こんな時でも変わらない習慣が、内藤に思わぬ収穫をもたらした。
内藤はツンが行きそうな板を巡ったあと、つい癖でVIPに立ち寄った。
いつもと変わらない妹スレ、今話題のポーションスレ。
その中に、内藤の目の色を変えるスレタイがあった。


327.内藤、このスレ見てる?(4)





(;^ω^)「・・・!!??」

内藤はすぐにそのスレを開く。
心臓の鼓動が高鳴り、マウスを持つ手に力が篭る。
内藤は自分を落ち着けるように、ゆっくりとスレタイをクリックした。

――――――――――――――――――――――――――――

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:22.97 ID:okdao5w0
内藤、このスレ見てる?

2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:38.54 ID:mmiep4w
2ゲト

3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:38.54 ID:YhKkho8
見てない

4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 01:54:38.54 ID:okdao5w0
内藤、見てたら返事して

――――――――――――――――――――――――――――

(;^ω^)「・・・本物かお?・・・それともコピペを見た偽者かお・・・?」

偽者であれば、なぜVIPにスレを立てたのだろう。
自分がVIPの住人だとは知らないはずだ。自分とは違う内藤という人物あてへの誰かからのメッセージだろうか。
それも可能性は低いだろう。
これが本物のツンであって欲しいという内藤の願いと、単純に可能性の問題から、内藤はこのスレの1はツンだと判断した。




( ^ω^)「これは・・・ツンだお・・・!」

確信した内藤は、すぐにレスを返す。
逸る指先がタイプミスを連発したが、かまわない。
今すぐレスを返さないと、ツンの手がかりが永久に消えてしまう気がした。


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:06:38.54 ID:adrhho9
診てrおツン!今どおkだお1!!!


(;^ω^)「・・・まだかお、ツン・・・はやくレスするお・・・!」

たった数分のうちに、何度その台詞を繰り返しただろう。
1分たっても、レスはこない。
2分たっても、レスはこない。
3分たっても、まだこない。

内藤の鼓動は収まらず、速度をあげていく。
心臓が窄まる思いだった。まさかこのVIP板でこんな思いをするとは。
内藤の顔が歪み始めた頃、やっとレスが返ってきた。
あの単語を孕んで。


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/03/09(木) 02:10:42.54 ID:okdao5w0
私いま、鮫島にいるの





(;^ω^)「・・・」

聞きたくない単語だった。
内藤が脳裏に押し込んだ嫌な考えが首をもたげる。
2ch最大のネタスレにして、最大の暗部といわれるS事件。
誰もが直に口に出したくないためS事件と呼ばれるその事件の正式名称を、鮫島事件といった。

(;^ω^)「鮫島・・・事件・・・」

それ以降、ツンからのレスは返ってこなかった。
内藤がパソコンの前で固まっているうちに、すぐにそのスレはdatの海に沈んだ。

鮫島事件の名は知っているが、内藤はそれに触れたことはなかった。
初めて2chにきたいつかの夏休みに、それは2chの暗部だ、触れるな。と言われ、大人しく従った。
そのうちに内藤は鮫島事件をネタとして煽る立場になっていた。
それも昔のこと、今ではそのネタも廃れかけ、過去のものとなっていた。

(;^ω^)「ツンのいたずらかお・・・?」





いたずらで1ヶ月もの間失踪するだろうか。
ツンはそんな意地の悪い性格はしていない。
いたずらでないとしたら、それは―――

(;^ω^)「鮫島事件は・・・実在する・・・?」

―――身近な人が巻き込まれると言う、決定的な実在の証拠。





とても信じられないことだった。
自分の身に起こるとは思わなかった、都市伝説。
鮫島事件が本当に実在して、それにツンが巻きこまれたと言うのなら。

(;^ω^)「僕は、鮫島事件を調べなければいけないお・・・ツンのために」

内藤は自分の知識を掘り返す。
内藤が鮫島事件のことについて知っていることと言えば、それがネタであるという事くらいだった。
自分の知識では、鮫島事件は追えない。
すぐに内藤はオカルト板にスレを立て、グーグルで鮫島事件を検索した。
検索した情報は膨大だったが、どれも似たようなものばかりだった。

鮫島事件はやばい、公安に消される、結局はネタ、もう飽きた。
どれも、有益な情報ではなかった。
オカルト板に立てたスレも似たようなレスが返され、役に立たない。

それも当然だろう。
自分も信じていなかったのだ。いや、今も半ば信じられない。
それでもツンが言うのなら、内藤は鮫島事件のことを知らなければならなかった。
それも速やかに、詳しく。





今すぐ、詳しい情報を得る方法が、内藤には1つだけあった。
内藤たちのクラスの担任。
その担任は鮫島事件に強い興味をもち、今でも推理を繰り返していた。
内藤は携帯をとりだし、担任に電話をかけた。

( ^ω^)「先生、夜分遅くにすいませんお」
(´・ω・`)「何時だと思ってるんだ、ぶち殺すぞ」
( ^ω^)「ごめんだお。けど、どうしても聞きたいことがあるお」
(´・ω・`)「テストの問題とかだったらすぐに切るぞ」
( ^ω^)「いえ・・・鮫島事件についてだお」
(´・ω・`)「詳しく聞こうか。なにがどうした?」

内藤たちのクラスの担任、ショボンはすぐに食いついた。
水を得た魚のような生き生きとした声で、先を促す。

( ^ω^)「できれば今から会って話したいお」
(´・ω・`)「お前こんな時間に生徒を・・・と言いたいところだが鮫島事件についてなら話は別だ。今すぐ迎えに行こう」





深夜三時をすぎた寂しい国道を、ショボンのRX-8が走っていた。
内藤を乗せたRX-8はやがて、バーボンハウスという喫茶店の前に止まった。
ここまで無言だった内藤と、妙に生き生きとしたショボンが車から降りる。
深夜だというのに、その喫茶店は開いていた。

(`・ω・´)「はいいらっしゃい!バーボンハウスへようこそ!!」
(´・ω・`)「ああ、兄さん。悪いけど客じゃないんだ」
(`・ω・´)「ぶち殺すぞ」
(´・ω・`)「なんだと?ぶち殺すぞ」
( ^ω^)「・・・先生、はやく」
(´・ω・`)「ん、ああすまん。そこの隅のテーブルで話そうか」

ショボンは内藤に促され、兄を無視してテーブルに座った。
車の中で無言だった内藤が、やっと口を開く。

( ^ω^)「まず・・・ツンから連絡があったお」
(´・ω・`)「・・・なんだと?」
( ^ω^)「ツンは言ったお。私はいま、鮫島にいる・・・と」
(´・ω・`)「・・・鮫島にいる、だと・・・!その台詞は・・・」

その台詞は、鮫島事件の概要の一節に出てくる台詞だった。





鮫島事件には色々な形態がある。
柏台駅で起こったリンチ事件を鮫島事件だとする物もあれば、鮫島代議士絡みの事件であるとする物もある。

「いま、鮫島にいる」

それは、鮫島事件のひとつに出てくる、重要なファクターを担う台詞だった。
ある日5人の2chネラーが、鹿児島県沖にある鮫島に訪れた。
だが、その5人は帰ってこず、しばらくして5人のうちの4人の遺体がそれぞれに縁のある地に届けられた。
だが、残る一人の遺体は届けられなかった。
ある日、その残った一人から、2chに書き込みがなされる。
鮫島にいる、と。

(;^ω^)「・・・本当かお?」
(´・ω・`)「ああ、本当だ。そのあと鮫島に向かった捜査隊が、残った一人の遺体を見つけた。その遺体は獣に食い荒らされていたが、首を絞められたような跡があったそうだ」

その話はネタのはずなのに、ツンの件と合致する点が多かった。
残った一人が鮫島で死んでいたというのなら、ツンも危ないかもしれない。

(´・ω・`)「もし鮫島事件が真実だとするなら・・・行くべきかも知れんな、鮫島に」





鮫島事件に登場する鮫島という島は実在する。
その島は鹿児島県沖に静かに浮かんでいた。
幸運にも春休みにはいっていた内藤とショボンは、ツンを探すため鹿児島に向かう。


(´・ω・`)「公安に消されるとよく聞くが・・・」
( ^ω^)「そんな雰囲気はないお」
(´・ω・`)「ああ。公安が絡んでいるというのは嘘なのかも知れんな・・・」

内藤とショボンは鮫島に到着していた。
そう大きくない島に、豊かな自然をもって鮫島は二人を出迎えた。
噂に聞くのとは大違いだ。それほど人の手がはいっていないこの島には、噂で聞くような不気味な雰囲気はなく、凪いだ海のような穏やかさがある。
内藤とショボンは、この島で唯一の舗装道路を歩いていた。

(´・ω・`)「人は住んでいないようだが・・・なぜこの道だけ舗装されているんだ?」
( ^ω^)「昔は住んでいたんじゃないかお?」
(´・ω・`)「そうだとすると、なぜいまは誰もいないんだ?」
(;^ω^)「それは・・・」

それは、住めない理由でも出てきたのでは・・・。
そう、噂で聞く鮫島事件のような、不気味な何かが起こったせいではないだろうか。
そう考えると、この島を包む静けさが途端に恐ろしいもののような気がした。




舗装道路を歩いていった先、島の中央部に、そう大きくない廃墟があった。
プレハブで作られた1階建て、3部屋の小さな建物の廃墟。

(;^ω^)「建物だお・・・」
(´・ω・`)「はいるぞ、内藤。ツンがいるかもしれん」

その建物は廃墟ではあったが、中は綺麗なものだった。
窓も割れていなければ、どこかが壊れているわけでもない。
この島から人が去ったために打ち捨てられたのだろう。
部屋には学校にあるような木製の机が乱雑に並び、割れた花瓶などが転がっている。
学校として使われていたのだろうか。

( ^ω^)「こっちの部屋は職員室かお?」
(´・ω・`)「そうみたいだな。あとは普通の教室か・・・」
( ^ω^)「うわ、この部屋だけ汚いお。コーヒーでもこぼしたお?」

3つの部屋の一つ、一番散らかっている教室には、ところどころに茶色い染みがついていた。
泥水かコーヒーか、何かは知らないが盛大にぶちまけたようだ。
ただ、その染みは何故か、見ていると気分が悪くなった。





手がかりを得られないまま、内藤とショボンは外に出た、
この島にあるのはこの建物と、周辺の険しい森。それ以外はツンがはいっていけないような山ばかりだ。
ツンがいるとすれば、この建物以外には考えにくい。

(´・ω・`)「ここにはいないな・・・ほかに建物はないようだが」
( ^ω^)「もうどこか別の場所に行ったかもしれないお。もしかしたら帰ってきて・・・おっと」
(´・ω・`)「どうした?」
(;^ω^)「何かにつまづいたお・・・」

内藤が躓いたのは、表札のような大理石の板だった。
おそらく、校門だろう。痛んだ2本のコンクリートの柱がたっている。

(´・ω・`)「どれ・・・なんだこれは?」
( ^ω^)「文字が擦れてて読みにくいお。えーと・・・さ・・・め・・・鮫島?鮫島・・・特殊学級・・・」
(´・ω・`)「・・・鮫島特殊学級だと・・・!?」

その名もまた、鮫島事件に縁のある言葉だった。
鮫島事件のうちの1つの説、鮫島特殊学級リンチ事件。
たしか、そういう話があったはずだ。

(´・ω・`)「・・・実在したというのか・・・しかも、この鮫島に・・・」





鮫島特殊学級リンチ事件。
その話の概要は、以下のとおりだ。

鮫島特殊学級と呼ばれる学級に着任した教師が、生徒たちを次々にリンチしていった。
その教師はリンチの様子をビデオにとり、2chで販売した。
やがて購入した者が逮捕されていき、教師は購入者名簿をもったまま逃亡。
生き残った購入者が逮捕されるのを恐れ、鮫島事件と呼ばれる架空の事件を捏造し事実を隠蔽した。

いくつかある鮫島事件の形態のうちの一つだ。
鮫島という島で、5人が行方不明になったという鮫島事件。
特殊学級でのリンチ事件を隠蔽するために作られた話という鮫島事件。
同じ鮫島事件というカテゴリーでありながらまったく別物であるはずの2つの事件が、いま繋がった。

(´・ω・`)「・・・信憑性がでてきたな」
( ^ω^)「けど、この島に訪れた2chネラーはいないのかお?一人くらいいるはずだお」
(´・ω・`)「ああ。たしかに誰か来たはずだ。なぜそれが報告されていないのか・・・」
( ^ω^)「・・・鮫島事件が起こったのはたしか・・・」
(´・ω・`)「2000年5月以前・・・か。削除された過去ログに何かあるかもしれんな」





内藤とショボンはツンを見つけられないまま、地元に戻ってきた。
ツンは見つけられなかったが、奇妙な謎は手に入れた。
ネタであるはずの二つの鮫島事件が繋がった今、再び過去ログを洗う必要がある。
今内藤とショボンの二人は、2000年5月以前の膨大な過去ログを1つずつ漁っていた。

(´・ω・`)「とはいえ・・・2000年5月以前の鮫島事件に関するログはすべて削除されているな」
( ^ω^)「そのあたりのスレも役に立つような情報はないお?」
(´・ω・`)「いま見ているとおりだ。なんの役にもたたん」

数十個めのスレを見終わる。
取るに足らない書き込みばかりだった。
次のスレも、似たようなレスが並ぶ。
ショボンがスクロールしていく画面の中に、内藤は引っかかる点を見つけた。

( ^ω^)「先生、ちょっともどってほしいお」
(´・ω・`)「なにかあったか?」
( ^ω^)「ちょっとだけ気になることがあるお」

ショボンがスクロールをとめ、内藤が指示したレスまでさかのぼる。
それは、他と同様意味のない書き込みのようだった。


やっぱネタじゃないかな。
縦、横、斜めだよ。


(´・ω・`)「・・・これがどうかしたのか?」
( ^ω^)「縦、横、斜め・・・」





( ^ω^)「・・・先生、このIDの人の発言を探してほしいお」
(´・ω・`)「面倒臭いな・・・」

その書き込みをしたIDのレスを探す。
それは1000までいったスレの中で、先程の書き込みを含めても4つしかなかった。
一見ただの凡レスのように見えるが、内藤の直感はそこに隠されたキーワードを見つけ出す。

( ^ω^)「縦読み・・・そして・・・右からの横読み・・・最後に、斜め・・・」
(´・ω・`)「・・・これは・・・」

最初のうちは意味がないと思っていたショボンだったが、2つめのレスを右から読むうちにその考えが変わる。
1つめのレスをたて読みした結果が、“あめりかにゆ”
2つめのレスを右から読んだ結果が、”うようくのねら”
最後に、3つめのスレを斜め読みした結果が、“あしやにかころぐがある”

それを全てつなげると、一つの意味をもった言葉が浮かび上がる。

(´・ω・`)「まさか・・・」
( ^ω^)「・・・アメリカ、ニューヨークのネラー社に、過去ログがある」

それは、今まで残った、数少ない真実を知る者のメッセージだった。





(´・ω・`)「アメリカに過去ログがあるだと・・・まさか」
( ^ω^)「先生、何か心当たりがあるのかお?」
(´・ω・`)「ああ・・・鮫島事件には何の関係もない都市伝説だ。アメリカの民間か公共かはわからないが、世界中のネットの情報がすべて保存されている会社がある、と」

それは、関係ないとかつまらないとか言われて、流行もせずに消えていった都市伝説だった。
だが、もし本当にそんな会社が存在するとしたら。
日本の2chの過去ログも、全て保存されているかもしれない。
そう。なぜか削除されている、2000年5月以前の過去ログも。

(´・ω・`)「・・・ニューヨークか。面倒だが・・・行ってみるしかないか?」
( ^ω^)「少なくとも、僕は行くお・・・」
(´・ω・`)「そうか。それなら、引率者がいるな」

内藤とショボンの次の行き先が決まった。
遠くニューヨークへの旅にかかる金額を考え、ショボンは今月の給料を諦めた。





内藤の両親に研修だと告げて、ショボンは内藤を連れてニューヨーク行きの飛行機にのっていた。
ショボンは眼下に広がる太平洋を眺めながら、内藤に話しかける。

(´・ω・`)「・・・内藤、町田事件というものを知っているか?」
( ^ω^)「いや・・・?知らないお?なんだおそれは?」
(´・ω・`)「鮫島事件の大元になる・・・といわれている事件だ」

誰が言ったのかはわからない。
だがその話は、たしかに伝えられてきた。
昔、町田事件という事件があった。
国の中枢に関係するようなその事件に大物政治家が動き、その同時期に自衛隊機のスクランブル、警察による警戒強化などが密かに行われたらしい。
やがてその事件を隠蔽するために、町田事件という事件は5つの都市伝説にわけられた。
2ch最大の暗部であり、謎とされる鮫島事件も、町田事件を隠すために分割された都市伝説の1つにしか過ぎないという意見もある。
町田事件の真相に至るには、その5つにわけられた都市伝説。
つまり、5つの鍵が必要だ。

(´・ω・`)「その5つの都市伝説が何なのかはわからない。だが、もしも繋がった2つの鮫島事件と、アメリカにネット情報を保存している会社があるという都市伝説・・・それが5つのうちの3つだとしたら・・・」
( ^ω^)「ツンが巻き込まれたのは・・・鮫島事件であり、町田事件・・・?」
(´・ω・`)「・・・かもしれん。いや、ただの思いつきなんだが」
( ^ω^)「けど、もしそうだとしたら・・・」

もし、そうだとしたら。
今向かっていくアメリカの会社を含め、内藤たちはまだ3つの手がかりしか得ていない。
アメリカで何も手がかりがなければ手持ちの鍵は2つ。
さらに、その2つももしかしたら関係ないかもしれない。
もしかしたらツンは、途方もない闇の底にいるのだろうか。





(´・ω・`)「やれやれ・・・外国ってのは勝手が違うから困る」
( ^ω^)「おまけに何いってるかわからないお・・・」
(´・ω・`)「とりあえずサイトシーンっていっとけ」

初めての外国に戸惑いながら、なんとか内藤は入国審査を終えた。
先に審査を済ませたショボンは空港の職員に何か訪ねているようだ。

( ^ω^)「先生、英語喋れるのかお?すごいお」
(´・ω・`)「まぁな。ホテルの場所を聞いてきた。寝床は確保したとして、問題は例の会社だな」

世界中のネットの情報が保存されているという会社の名前はわからない。
世界中の情報を保存しているような会社だ、おそらく表世界の会社ではないだろう。
政府関係か地下世界関係か、それはわからないが、探し出すのは困難を極めるということは容易に想像できた。

(´・ω・`)「とりあえずホテルに行こう。ネット環境がないと調べ物もできん」





ホテルに着いた内藤たちは、早速ノートパソコンを立ち上げる。
遠くアメリカの地から2chに接続し、再び過去ログを丁寧に洗い上げた。
だが、都市伝説にあるアメリカの会社の情報など皆無に等しかった。
住所などわかるはずもなく、名前はおろかニューヨークのどこら辺にあるかすらわからない。

(´・ω・`)「マイナーな都市伝説だからな。情報はないか」
( ^ω^)「となれば・・・聞き込みかお?」
(´・ω・`)「それしかないだろうな」

内藤とショボンは連れ立って外にでた。
もし本当に都市伝説の通りの会社があるのなら、ネットなどに詳しい人物が何か知っているかもしれない。
二人はネット関連の会社を訪ねたり、見るからにオタク臭い通りすがりに話を聞いたが、会社のことを知っている物はついぞ現れなかった。

(;^ω^)「・・・誰も知らないお。探すのは無理なのかお・・・?」
(´・ω・`)「あるいは無駄足だった、か・・・」

内藤とショボンは歩き疲れ、ベンチに腰を下ろした。
アメリカのまずいジュースを一口のみ、キャップを閉めて傍らに置く。
それを見たホームレスらしい男が近づいてくる。ジュースが欲しいのだろうか。
男は、東洋系の顔立ちをしていた。





( ^Д^)「あんたら、そのジュース飲まないならくれないかな」
(;^ω^)「おお!?え、英語がわかるお。僕はいつの間にか英語をマスターして!?」
(´・ω・`)「阿呆、日本語だ。・・・ジュースならあげるよ、まずいからね」
( ^Д^)「どうもどうも。ありがたい。あんたら日本人だろ?何しにアメリカに?観光?」
( ^ω^)「ある会社を探してきたんだお」
( ^Д^)「へー・・・珍しい理由だね。なんて会社?」
(´・ω・`)「名前すらわからん。何でも世界中のネットの情報を保存しているらしいが・・・」

ショボンの台詞を来て、にこやかに笑っていたその男はペットボトルを取り落とした。
信じられない物を見たような顔で、内藤とショボンを見つめる。
その顔に浮かんでいたのは、恐怖だった。

(;^Д^)「・・・あんたら・・・もしかして、鮫島事件って知ってるか・・・?」
( ^ω^)「・・・なんでその名を知ってるお」
(´・ω・`)「ここに来てやっと当たりがでたか・・・どれ、知ってることを話してもらおうか」
(;^Д^)「い、いやだ。俺はもうあの事件には・・・」

立ち去ろうとする男の肩を内藤が掴む。
ショボンはまだ蓋を開けていないコーヒー缶をもって立ち上がると、男の前に掲げる。ショボンが顔色一つ変えずに手に力を込めると、蓋の開いていない缶がコーヒーを噴出しながら握りつぶされていく。

(´・ω・`)「痛い目にあいたくなかったら話したほうがいいぞ」




( ^ω^)ブーンがあの事件に挑むようです




その男は、タカラと名乗った。
ショボンの脅しに屈し、しぶしぶベンチに座る。
中々話し出さない男に内藤が業を煮やしたとき、ショボンがタカラの隣に座り、タカラの肩を抱いた。

(´・ω・`)「なぁ、タカラ。あんたはまだ若いみたいだ、そんな年で新聞に載りたくはないだろう?ホームレス、観光客にタコ殴りにされて病院送り、なんてな・・・」
(;^Д^)「く・・・顔に似合わずなんてやつだ・・・わかった、話すよ・・・」

タカラは苦渋に満ちた顔で語りだした。
その表情は、目の前のショボンに怯えているというよりも、もっと恐ろしい何かを恐れているように見える。

(;^Д^)「俺は2chネラーだったんだ。そして、あの日・・・鮫島事件が起こった日、俺は本スレにいた・・・」

2chが今よりもっとアングラ色が強かったころ、その事件は起こった。
鮫島と名乗るコテが凄まじい荒しを繰り返し、それに激怒した仙人というコテが20人を引き連れ、鮫島コテを柏台駅でリンチした。
だが、途中でタカラはそのスレから移動した。
タカラは後にリンチ後に鮫島が死亡し、警察も動き出したと聞き、再び興味を惹かれ独自にその鮫島事件を調べだした。
そして、やがて大元の事件の存在に気付き、過去ログを求めここアメリカに来たという。

(;^Д^)「俺はその会社を見つけ、過去ログを見ることに成功した。だが・・・それと引き換えに俺は、日本には帰れなくなった」
( ^ω^)「・・・なんでだお?」
(´・ω・`)「金でもなくなったか?」
(;^Д^)「・・・公安に、監視されている」





(´・ω・`)「なんだと・・・」
(;^ω^)「公安が動いてるってのは本当なのかお・・・?」
( ^Д^)「残念だが本当だよ。大元となるあの事件・・・それを解き明かす5つの鍵を集めだした人間は、気付かない間にやつらに監視される・・・」
(´・ω・`)「大元の事件というのは町田事件か?」
( ^Д^)「・・・もう、知ってるのか。・・・鍵ってのはわかる?」
( ^ω^)「関係ないはずなのに繋がった2つの鮫島事件に・・・アメリカの会社、かお?」
( ^Д^)「うん、正解だ。それで3つ・・・まぁ、それだとまだネタの域を出ないけどね。俺が知っている限り、教えようか?」
(´・ω・`)「当然だ。聞かせてもらおうか」

タカラは、鍵となる都市伝説を4つ知っていた。
内藤たちが見つけた3つと、さらにもう一つ。
タカラのもつ4つめの都市伝説は、犬鳴村伝説といった。





( ^Д^)「昔、犬鳴村っていう村があった。中々人が訪れない秘境だったそうだよ・・・」

その村に近づくと、コノ先日本国憲法適用サレズ、という立て札があり、その村に立ち入った人間は例外なく行方不明になったそうだ。
実際その村は朝鮮人の住む村で、戦後しばらくはそこに訪れた日本人を朝鮮人が殺す、という事件は本当にあったらしい。
だがそれも昔の話で、今はそんな村はない。

( ^Д^)「そのはずなのに、犬鳴村に近づいたら行方不明になる、っていう都市伝説がたった。数十年がたって忘れ去られたはずなのに、奇しくも鮫島事件スレがたった直後からな・・・」
( ^ω^)「つまり、それが4つめの鍵・・・?」
( ^Д^)「そう焦らず。それが表向きなんだ、まだ続きがある」

その犬鳴村は、九州屈指の心霊スポットである犬鳴峠の近くにあった。
それゆえにホラー的な要素も含まれ、マニアたちは見学にいったそうだ。
そこに落とし穴があった。
犬鳴峠という今も残る、有名な心霊スポットの名をあげることで信憑性を高め、人々の目をそこに向けさせた。
だが、本当の犬鳴村は別にある。

( ^Д^)「そう、別の場所に、犬鳴村はもう一つあるんだ・・・あの、鮫島に」





( ^ω^)「な・・・それじゃあ、僕たちが行った鮫島に・・・」
(´・ω・`)「・・・朝鮮人が住む・・・隔離施設的な村があった、と?」
( ^Д^)「そのとおり。そこは真実、隔離施設だったんだよ。政府の邪魔になるけど、始末しにくい人物・・・極右派の大物、在日の犯罪者だが有力者、などの人物を隔離するな」
(´・ω・`)「だが・・・廃墟だったぞ?鮫島特殊学級以外は建物すら見つからなかった」

( ^Д^)「それこそが鮫島事件なんだよ。鮫島の、犬鳴村という隔離施設。誰にも知られないはずのそれを見つけた5人の2chネラーが島に上陸し、行方不明になった。最後の一人の死因からして、その時はまだ人がいたはずだ・・・が、それから犬鳴村は廃墟になった」

つまり、鮫島にある犬鳴村を見つけた5人が何者かに始末され、その何者かは鮫島を廃棄した。
さらに、2chに上がったリンチビデオの舞台である特殊学級は、鮫島に実在する。

( ^ω^)「どういうことだお・・・それぞれ独立しているはずの鮫島事件が、なんで繋がっていくんだお・・・?」
(´・ω・`)「・・・もしかすると、鮫島事件の5つが繋がったら、町田事件の真相が見えてくるのか?」
( ^Д^)「いいや、見えないね。鮫島事件はあくまで切符だよ、町田事件へのね。鮫島事件の真相はたしかに町田事件において重要な部分を担っているはずだけど・・・それだけじゃ町田事件は解き明かせない」
(;^ω^)「いくつかある鮫島事件の真実が・・・町田事件の5つの鍵の1つに過ぎないのかお?」

( ^Д^)「そのとおりだ。これで、君達のもっている鍵は2つに減ってしまったね。いや、2つにも満たない。君達の持っている鍵はアメリカの会社という1つの鍵と、鮫島事件という鍵の半分までだ」





( ^Д^)「・・・まず、アメリカの会社だ。そこで見た情報には、たしかに削除されたはずのログがあった」
( ^ω^)「そのはずだお。あのメッセージの通りなら・・・」
( ^Д^)「・・・縦、横、斜めか?そうか、あれを見つけたのか・・・」
( ^ω^)「知ってるのかお?」
( ^Д^)「ああ・・・誰が書いたのかは知らないが、俺もそれを見てアメリカに来たんだ」
(´・ω・`)「それだと俺たちも帰れなくなる可能性があるということか・・・」
( ^Д^)「ま、首を突っ込んだ報いだと思うよ。これ以上は聞かないほうが良いんじゃないかな。今なら帰れるかもしれない」
(´・ω・`)「良いから話せ、ぶち殺すぞ」
(;^Д^)「・・・あの会社にある過去ログには・・・」

ネラー社に保存されている過去ログの内容には、重要な情報が残されていた。
鮫島リンチビデオ販売事件で、ビデオを売った人物の本名。
そして、鮫島柏台駅リンチ事件での主犯である、仙人というコテの本名。
その二つの事件の重要人物の本名が残されていたのだ。

( ^Д^)「おそらく・・・鮫島事件はパーツの一つだが、町田事件の母体となるパーツなんだろう・・・なぜなら、その二つの鮫島事件の主犯は・・・ともに、町田という名前だったんだ」





( ^Д^)「ただの偶然かもしれない。けど、偶然で片付けるのは無理ってもんだよ。町田事件を隠蔽するために分割して世に広まった5つの都市伝説。その中の一つ、鮫島事件はさらにいくつかに分けられ、その中の2つの鮫島事件の重要人物の名前が同じ・・・」
(´・ω・`)「たしかに・・・怪しすぎるな」
( ^ω^)「それで、ほかの鍵っていうのは・・・?」
( ^Д^)「まず一つは・・・死刑囚は死刑執行時に生き延びると、釈放される、って都市伝説だ」
(´・ω・`)「ああ・・・聞いたことがある」

それは、5つの鍵の中では地味なものだった。
地味だからこそ、これに目をつける者は少ない。
確証はなかったがその地味さが、タカラにそれが隠匿された情報であるという信憑性を高めていると考えていた。


( ^Д^)「誰が言い出したかはわからない・・・けど、その死刑執行時に生き延び、釈放された人物っていうのが、ただ一人だけ居たらしい。それが町田だという説がある」
( ^Д^)「その説を唱えた者がいうには、その死刑囚だった町田という人物は日本政府の暗部を知ってしまったらしい。
そこを無実の罪で捕まり、その町田という男は死刑執行に・・・耐えた」
(;^ω^)「耐えた・・・のかお」
( ^Д^)「厳密に言えば・・・後に息を吹き返したらしい」

執行後、ちょうど棺にはいり外に出されたとき、その町田という男は息を吹き返した。
そしてそのままうまく逃げ延びたらしい。

( ^Д^)「その執行後に逃げたっていう失態・・・それも、日本政府にとって知られたくない情報をもった男がいるという事が流布する前に、政府は都市伝説を流したのさ。執行後に生き延びたら釈放、ってね」
( ^Д^)「普通に考えたらありえないからね、それはネタとして浸透し、うまく真実を隠したよ」





(´・ω・`)「ネラー社、死刑執行後の釈放、犬鳴村・・・お前が知っている残り1つっていうのは鮫島事件か?それとも、別の鍵か?」
( ^Д^)「いや・・・鮫島事件の全容は俺も知らない。もうひとつは別のもだ」
( ^ω^)「そのもう一つっていうのは・・・」

( ^Д^)「公安だよ。さっき普通に話しに出てきたけど、よく考えて見れくれ。公安の実動隊なんて聞いたことあるか?アニメじゃあるまいし・・・」

たしかに、公安というのはデスクワークをするはずだ。
それが自ら動き、わざわざ町田事件に首を突っ込む者を監視し、時には排除さえすろというのは、冷静に考えればありえない。
だが、それは気付かない間に当たり前の話として受け止められていた。
そう、鮫島事件によって。
鮫島事件関連のスレの中で必ず見かける、公安が動いている、というレス。
何度も何度もそれを見るうちに、それが当然の事実であると認識してしまっていたのだ。

( ^Д^)「そう、もっとも巧妙なトリック。派手に仕掛けた鮫島事件に紛れ込ませて、ひっそりと浸透した都市伝説としてすら認識されていない話だ。それが、最後のカードなんだよ」

(´・ω・`)「・・・なるほど。公安というものが本当にあるかどうかわからない、ないだろうという常識的な判断をすれば、鮫島事件はネタとなる。しかし、存在を信じるとするならば・・・それはつまり、公安という日本の影とすら言える組織が暗躍するほどの事件・・・」

( ^Д^)「その通り。それが最大のトリックにして、公安の最大の失敗だったのさ。ある程度真実に近づいた者からすれば、公安の存在だけである程度の推理の材料になるからね」





( ^ω^)「ちょっと質問いいかお?」
( ^Д^)「ん?」
( ^ω^)「柏台で起きたリンチ事件と、ビデオ販売事件・・・どっちが先に起こったんだお?」
( ^Д^)「・・・なぜそんなことを?」
( ^ω^)「いや・・・何かひっかかったんだお」
( ^Д^)「変なことを気にするんだね。先に起こったのはビデオ販売さ。その事件で鮫島特殊学級の名前が出てきたから、鮫島というコテは嫌われ、それに腹をたてた鮫島コテは荒しを始めたんだ」
( ^ω^)「なるほど・・・偶然にも聞きたくない名前をコテにしてしまったのかお・・・」





( ^Д^)「これが知っている情報の全てさ。もう行っていいかい?」
(´・ω・`)「・・・ああ、すまなかったな、無理矢理話させて」
( ^Д^)「・・・もういいよ。探してる人が無事に見つかればいいね」
( ^ω^)「ありがとうだお。とても助かったお」

タカラは、ようやく解放された肩をもみながらニューヨークの雑踏に消えていった。
まさかアメリカに来てすぐにこれほどの情報を得られるとは思っていなかった内藤とショボンにとって、このわずか1時間たらずの会話は数ヶ月の調査に匹敵する価値をもっていた。

(´・ω・`)「素材は飛躍的に増えたな・・・あとは残りの謎と、鍵の組み立てか」
( ^ω^)「たしかに、材料はあってもそれだけじゃ解き明かせないお。それぞれがどうやって組み合わさっているのかがわからないお」
(´・ω・`)「まぁ・・・これで数歩前進したことに変わりはないな。さっそくだが、日本に帰るか」
( ^ω^)「ちょwwwテラハヤスwwwwww」





次の日、内藤とショボンは飛行機に乗り日本に向けて飛び立った。
はやすぎるとんぼ返りに、疲れを癒す暇もないまま乗った飛行機はひどく疲れる。
内藤とショボンが寝ようかと思ったときに、ショボンが見ていたニュース番組に速報がはいった。

―ー―本日8時26分、ニューヨークの路地でホームレスが殺害されました。被害者は日本人と思われるホームレスで、被害者の知人によると被害者の名前はタカラ―――

(;^ω^)「・・・な・・・!!」
(´・ω・`)「ふむ・・・これはまた、面白い冗談だ」
(;^ω^)「ちょ、先生、僕らもまさか・・・」
(´・ω・`)「なぁに、大丈夫さ。こんな人気のあるところでは動かないだろう。まぁ、危ないのは日本についた後だろうが・・・」
(;^ω^)「もしかしたらこの中にも・・・?」
(´・ω・`)「さぁな。ところで・・・いきなりだがトイレにいってくる」
(;^ω^)「は?・・・ああ、いってらっしゃいだお・・・」

突然トイレにいくと席を立ったショボンを見送る。
タカラを消したのが公安だという証拠はない。だが、公安の仕業だとすれば消された理由は十中八九、自分たちに話しを聞かせたからだろう。
となれば、もしかすると公安がこの飛行機に乗っているかもしれない。
だというのにショボンは恐怖を感じないのだろうか。
内藤は、ショボンの豪胆なのか暢気なのかわからない態度に困惑した。
困惑し、冷静な思考をしていない内藤の頭では、ショボンに続くように席をたった男に気付けなかった。





(´・ω・`)「トイレ、トイレ・・・と・・・満室か」

ショボンは扉の前でトイレが空くのを待つ。
その後ろで、席をたった男が同じようにトイレが空くのを待っていた。
いや、乗客が唯の一人もこちらを見ていなくて、なおかつショボンがこちらに気付いていない状況が訪れるのを待っていた。
やがてトイレの一室が空き、はいっていた人がでてくる。
だが、ショボンはトイレにはいらず、振り向きもせずに背後の人物へ話しかけた。

(´・ω・`)「後ろの人、私はもう少し我慢できるのでお先にどうぞ。どうにも周りを見渡して落ち着かないようですからね、もうそろそろ限界なんじゃないです?」
背後の男「な・・・い、いや。まだ大丈夫ですとも。先にお待ちになられていたのですから、あなたからどうぞ」
(´・ω・`)「いやいや、そう遠慮せずどうぞ。ほらほら、遠慮せずに」
背後の男「ちょ・・・わかりました。ではお言葉に甘えて・・・」

男は内心で舌打ちしていた。
まさか背後についた自分に気付いて、しかも先にトイレに行かせるとは。
ショボンがトイレにはいっていった所を始末しようと思っていたのが、作戦の変更を余技なくされる。
が、背中を押し先を促すショボンは、男がトイレにはいってもまだ男の背中を押していた。
あろうことかそのまま一緒にトイレにはいってくる。
トイレのドアが閉まる刹那、男はショボンに片手で口を塞がれ、残った片手で腕を極められた。

男「!?」
(´・ω・`)「あんた、公安だな?」





男「~~・・・!」
(´・ω・`)「大声を出せばぶち殺す。何も喋らなくてもぶち殺す。ついでに、抵抗してもぶち殺す」

ショボンの言葉には、明らかに本気の響きがあった。
専門訓練をうけている公安の男をして、本当に殺されると信じさせるほどの凄みがあった。
男は、2,3度ゆっくり頷いた。

(´・ω・`)「よし・・・質問に正直に答えろ。嘘をいえばとりあえず肘を砕く。で、お前は公安だな?」
男「・・・な、なんのことでs」
(´・ω・`)「ほいっと」
男「・・・っ!あっぐ・・・や、やめてください・・・」
(´・ω・`)「ふむ・・・なぜ大声で叫ばない?一般人なら錯乱し叫んでもおかしくないぞ?なのにお前には混乱がない・・・」
男「・・・!き、貴様・・・何者だ・・・」
(´・ω・`)「ただの教師さ。さぁ、答えてくれ。なぜあんたらは町田事件に対してそう過敏になる?町田事件とはなんだ?」
男「・・・私も国のために働いている。それには答えられんな・・・!」
(´・ω・`)「国のために、か。どうやら本当に日本政府にとって都合の悪い事があるらしいな・・・いや、確認がとれた。ありがとう」

この男は何も喋らないと判断したショボンは、容赦なく腕をねじ上げ男の体をこちらに向けた後、鳩尾を殴った。
訓練された腹筋も問題なく貫通する衝撃によって、男の意識が途切れる。
ショボンはトイレの外に誰もいないのを確認して、何事もなかったかのようにスチュワーデスを呼んだ。

(´・ω・`)「あー、すいません。この人がトイレで倒れてましたので、看護お願いします」





( ^ω^)「良かったお・・・襲われなくて」
(´・ω・`)「なぁに、少々なら俺が撃退してやるから心配するな」
( ^ω^)「そりゃ先生は良く喧嘩してるし・・・ていうかよく考えたら何でそんな無駄に強いんだお?」
(´・ω・`)「無駄ってお前・・・俺は自衛隊の野戦特科にいてなぁ。軍隊格闘技に憧れてはいったんだが、訓練でむかつく上官をぼこったせいで辞めたんだよ。それから教師になったんだ」

(;^ω^)「そんな教師いやだお・・・」





無事に日本に帰ってきた内藤とショボンは、ひとまずショボンの家であるバーボンハウスで話し合った。
鮫島事件のすべてはまだわからないが、とりあえず今ある情報を組み立て、ツンがどういう経緯で失踪し、今はどうしているかを推理する。

(´・ω・`)「まず、なぜツンが失踪したかだ。これは鮫島・・・つまり町田事件に踏み入ったからだろう」
( ^ω^)「・・・それは間違いないはずだお。けどなぜ、ツンは鮫島に行ったんだお?」
(´・ω・`)「鮫島事件に興味をもち、その舞台である鮫島を突き止めたか・・・」
( ^ω^)「もしくは、誰かに連れて行かれたか・・・?」
(´・ω・`)「だがそう考えると誰が連れて行ったのかは謎だな。公安も興味をもっただけで拉致はせんだろう。それに、鮫島に連れて行った意味がわからん」
( ^ω^)「となるとやっぱり自分で鮫島にいったんだお」
(´・ω・`)「しかしそうするとなぜ連絡もいれずに失踪したかという謎が出てくるな・・・」





( ^ω^)「・・・どういう状況なら、両親にも告げずに鹿児島まで行くお?」
(´・ω・`)「わからん・・・よほど切羽詰っていたのか・・・」

開始した途端に暗礁に乗り上げた推理に、突然わりこんでくる声があった。
カウンターでコップを拭いていたショボンの兄が、なんともないように言ってくる。

(`・ω・´)「何を話しているのか知らないけど、その娘に鹿児島まで行く理由がないなら誰かに呼ばれたに決まってるじゃないか!」

(´・ω・`)「シャキン兄さんは黙っていてくれ。気が散る」
( ^ω^)「・・・そうか・・・呼ばれたんだお。誰かに」
(´・ω・`)「ん?」
( ^ω^)「きっとツンはスレを立てるか、鮫島事件関連のスレで質問したんだお。鮫島事件の真相について」
(´・ω・`)「ふむ・・・それに答えた人物がいたのか?」
( ^ω^)「・・・例えば、真実を教えるけど、これは危険な話だから誰にも言わずに鮫島まで来てくれ、とか・・・」
(´・ω・`)「・・・どうしても好奇心を抑えられなかったツンは、単身鮫島に渡った、か・・・少々無理があるが、今はそういう事にしておくか?」
( ^ω^)「ひとまず、そういうことにするお」





(´・ω・`)「鮫島にいったは良いが、なぜ帰ってこないのか」
( ^ω^)「そして、なぜ連絡をしてきたか・・・それも、わざわざ伝わる可能性の低い、2chのスレで」

おそらくツンは鮫島についた後、ツンを呼んだと思われる人物に会う前にVIPにスレを立てた。
そして、偶然すぐにそれに気付いた内藤がレスを返し、鮫島にいるということを伝えることが出来た。

( ^ω^)「だとすれば、何であんな深夜に鮫島に・・・」
(´・ω・`)「深夜にこいと言われたんだろうな。秘密の話のはずだ・・・」

ツンは単身で、それもわざわざ深夜に誰ともわからない人物と話をするために鮫島に行ったのだろうか。
それほど愚かな行動をとるとは思えない。
それとも、そうさせるほどの情報を聞ける予定だったのか。
それはわからないが、事実としてツンは深夜に鮫島に渡った。
そして、おそらくそこで何者かと会い、会話した。
その何者かがツンを連れ去ったのか、それともあの後でツンを誰かが連れ去ったのか。
もしくは、ツンは自分の意思で姿を隠したか。

(´・ω・`)「・・・姿を隠す、つまり・・・何かから逃げた・・・?」
( ^ω^)「鮫島、町田事件に関わったものを追いかけるといえば・・・公安かお」





まだ公安が追いかけているとは断定できない。
公安に目をつけられるほどの情報を持っていなければ、追われたりはしないはずだ。
内藤とショボンがアメリカまで行って入手した数々の情報、それに匹敵するほどの情報をツンが一人で調べ上げる、というのはとてもじゃないが無理だろう。
おそらく、内藤とショボンにタカラが真実のいくつかを話したように、ツンも誰かに話を聞いた。

( ^ω^)「ツンは・・・情報提供者と会って、話を聞くことに成功した」
(´・ω・`)「そしてそれはツンが身を隠す、または追われるに値する正確な情報だった・・・か」

あくまで推論の域を出ないが、ツンが何かしらの情報を得たのは確かだろう。
それでツンが姿を消したというのなら、その情報提供者はどうなったのか。
ツンと共に逃げているか、消されたか、ツンとは別に姿を消したか。

( ^ω^)「・・・わからないお・・・鮫島で何があったお?」
(´・ω・`)「・・・わからんが、ツンと同じものを追いかければどこかで会えるかもしれんな」





ツンが追いかけていたもの。
それは間違いなく、鮫島事件のことだ。
ツンがどこまで鮫島事件のことを知っていたかはわからないが、近づきすぎたことは確かだろう。

鮫島事件を調べていくと見えてくる町田事件。
それこそが公安の動くきっかけのはずだ。
ツンは、おそらく町田事件の存在に気付き、5つの鍵を集めだした。
どこまで集めたかはわからないが、今もツンが鍵を集めているとしたら、いつか終着点か道のりの途中で会える可能性が高い。

となれば、町田事件の真相を一刻も早く解き明かさなければならない。
今内藤たちがわかっていることは、

1・鮫島事件はそれぞれの説が互いに繋がりあい真相へと至る。
2・アメリカのネラー社で得た情報に、鮫島事件の重要人物と思われる町田なる名前がある。
3・町田事件という大きな事件が分割され、5つの都市伝説になった。
4・町田事件とは日本政府に都合の悪い事件である。
5・その都合の悪い事件の理由は、これまた町田なる死刑囚が知る政府の暗部のためである。

(´・ω・`)「・・・案外材料は多いな。ほかにも細かいものがまだあるしな」
( ^ω^)「やっぱり町田って人がかなり重要だお。色々なところに名前がでてくるお」





(´・ω・`)「町田か・・・」
( ^ω^)「町田という名前が出る事件から考えて見るお?」

まず、一番古いのは大本の事件である町田事件だろうか。
それがどういう事件かはわからないが、死刑から逃れ姿を消した町田という人物が大きく関係するはずだ。
その死刑逃亡事件を隠蔽するために、死刑で生き残ったら釈放されるという都市伝説が出来た。

それと同時期なのか、それとも後の事なのか。
2chで鮫島特殊学級でのリンチを収録したビデオが販売されるが、逮捕者が続出し販売者は逃亡。
それを隠すために購入した2chネラーの生き残りが鮫島事件というネタとしてその件を隠蔽した。

その後、鮫島というコテが現れる。
鮫島という名に過剰反応した一部の2chネラーのうち、仙人と名乗るコテが20人を引き連れて鮫島コテを柏台駅でリンチし、結果的に殺害した。

この2つの鮫島事件の主犯、つまり、ビデオを販売した人物と仙人と名乗るコテは、ともに町田というのが本名だという。
リンチ、鮫島という2つのキーワードに、町田という名前。

( ^ω^)「仙人っていうコテはもしかして・・・」
(´・ω・`)「ビデオを販売した男、か・・・?だからせっかく撹乱したビデオ販売事件を思い出させる鮫島というコテに過剰に反応し、20人も人を集めてリンチした・・・」





( ^ω^)「・・・リンチビデオの当事者だからこそ、町田は鮫島コテに過剰反応した・・・その気持ちはわかるお」
(´・ω・`)「ああ、なんとしても蒸し返されたくなかっただろうな、なにせ、自分が販売したんだからな」

そう考えるのが自然な気がする。
そして、リンチビデオ事件の再燃を抑えるはずだった柏台リンチ事件によって、また新しい鮫島事件が生まれた。
とするならば、仙人、つまり町田の思惑は成功しなかったといえる。

鮫島という名前が残ったことにより稀代のネタスレとして人の目から逃れかけていた鮫島事件は新しい形態を生み出し、再び2chで議論を呼んだ。
さらに、どういう理由かは分からないが鮫島という鹿児島県沖の島こそがリンチビデオの舞台だと気付いた5人のせいで、3つめの形態をも生み出す。
こうして、鮫島事件はその数を増やしていった。
それに好奇心をくすぐられ鮫島事件について調べる者が増えていき、ちょうどその時期、2chのログが大規模に削除された。

(´・ω・`)「鮫島事件の発祥はリンチビデオ、か。なぜ町田はそんなビデオをとったんだ・・・?」
( ^ω^)「・・・町田が単なる変態だったか、もっとちゃんとした理由があったのか・・・かお?」
(´・ω・`)「タカラから聞いた説が正しければ、町田は死刑執行後生き延びたという人物のはずだ」
( ^ω^)「その生き残った人物・・・町田は、どんな思いだったんだお・・・?」
(´・ω・`)「政府の暗部を偶然知り、そのために無実の罪で殺されかけた・・・」
( ^ω^)「・・・町田は政府を憎んでいる?」

十分考えられる。
それまではごく普通の生活をしていただろう町田が、突然国に殺されかけたのだ。
憎むなというのも酷だろう。
そして、何かを憎んだ人間のとる行動は大抵決まっている。

(´・ω・`)「日本政府への復讐・・・か」





( ^ω^)「復讐のために、町田は鮫島に特殊学級の教師として着任したのかお?」
(´・ω・`)「それは妙だな。特殊学級があった鮫島・・・つまり犬鳴村は政府の隔離施設だったはずだが・・・」
( ^ω^)「タカラはそう確信してたみたいだお」
(´・ω・`)「いや、そうか。政府の施設だからこそ、リンチビデオを取り2chという不特定多数の人間が見る場所で販売した・・・」
( ^ω^)「・・・犬鳴村のことを世間に広めようかと思ったのかお。アングラな場所から、少しずつ・・・」

そう考えれば、町田の行動に対する印象が変わってくる。
おそらく町田は、ビデオ販売が警察の目についても問題なかったのだろう。
むしろそうしてマスコミにでも取り上げてくれれば御の字だったはずだ。
だが、そこまでは広まらなかった。
逮捕されることを恐れた購入者が隠蔽工作に走ったから。

( ^ω^)「隠蔽工作・・・つまり鮫島事件の誕生は、町田が望んだものじゃなかったのかお?」
(´・ω・`)「その可能性もあるな・・・だがやはり決定的じゃない・・・」

そう、今の推測のとおりだとすれば、町田は鮫島コテをリンチした柏台事件を起こす必要がないということになる。
わざわざ鮫島リンチビデオ事件を蒸し返そうとしてくれたのだから、消す必要はないはずだ。





わからない。
何か決定的なものがかけている。
せめて町田の目的、今の推測では日本政府への復讐という事になるが、それが真実なのかどうか判別する手がかりでもあれば別なのだが。

(´・ω・`)「復讐が目的なら、町田が事の真相を世間に流そうとしたのが鮫島事件だと考えられなくもないんだがな・・・」
( ^ω^)「うーん・・・あと1つ2つの手がかり・・・んぁ?」
(´・ω・`)「どうした?」

ショボンに答えず、内藤は自分の服のポケットを見つめる。
内藤のポケットにはいっていた携帯が震えていた。携帯は三回振動し、その動きを止める。
メールだった。内藤は何気なく携帯を取り出す。
何気ない表情で携帯を開き、メールの送信者を確認する。
そこには、信じられない名前があった。


件名:内藤、ツンだけど
本文:今どこにいるの?私いま帰ってきたの、伝えたいことがあるから早く返事して







(;^ω^)「先生・・・ツンからだお・・・」
(´・ω・`)「・・・本物か?」
(;^ω^)「わからないお。けど、今帰ってきたって・・・返事しろって」
(´・ω・`)「・・・妙だな」

そう、よくよく考えてみれば不自然な話だ。
帰ってきたというのも急すぎるが、それは良いとしよう。
だが、伝えたいことがあるなら電話をかければ良い。わざわざメールを打つよりも早いのは言うまでもないし、なにより1ヶ月もの間失踪していたのだ。
普通、自分は無事だと声を聞かせようとするものではないだろうか。

( ^ω^)「とらの穴に入らずんば同人誌は得られず・・・だお」
(´・ω・`)「・・・お前国語の成績最悪だったな、そういえば」

不自然とはいえ、このメールが手がかりに繋がる可能性は高い。
本当にツンが送ったメールなのか、それとも別の誰かが送ったメールなのか。
それはわからないが、火中の栗を拾うにはその火の中にはいらなければならない。
出来ることとといえば、火の中にはいる前にどうにか火を弱める程度か。

( ^ω^)「伝えたいことがあるなら会って話そうお。けど、会う場所はこっちで指定するお・・・と、送信だお」

これで少なくとも待ち伏せ、張り込みの心配はない。
呼び出す場所は今いる喫茶店バーボンハウスで良いだろう。




(´・ω・`)「くると思うか?」
( ^ω^)「・・・偽者なら、来ないと思うお。ツンだとしても裏に誰かが居ればこないと思うお」
(´・ω・`)「同感だな。ツンが自分の意思でメールを出したのならあっさりと現れるだろうが・・・可能性は低いかもしれんな」

しばしの沈黙が訪れる。
内藤は黙ってツンが現れた場合の対応を考えていた。
体の心配をするか、どうしていなくなったかを聞くか、鮫島事件についてどこまで知っているかを聞くか。

同じように押し黙り、ショボンは別のことを考える。
メールはおそらくツンの真意ではない。
となれば、誰がなぜメールを送ったか。公安か、それともツンに情報を提供したと思われる人物か。
その誰かが鮫島事件にかかわるものに悪意をもっているのは確実なはず。

( ^ω^)「・・・遅いお」
(´・ω・`)「まだ10分もたってないぞ」

時計の秒針の音だけが、バーボンハウスを支配している。
押し黙った内藤とショボンと、静かに煙草をふかす喫茶店のマスター、シャキン。
返信メールを送って15分がすぎたころ、喫茶店のドアが開いた。
客が来たことを知らせる鐘が鳴り、シャキンが応対する。

(`・ω・´)「いらっしゃい!・・・友達は隅のテーブルで待ってるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、はい。どうも」

ツンは、ごく普通に現れた。





(´・ω・`)「・・・久しぶりだな、ツン。元気だったか?」
( ^ω^)「や、やぁ、久しぶり!・・・だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと・・・先生も内藤もそんなに警戒しないでよ・・・」
(;^ω^)「いやいや、警戒なんてしてないお?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・まぁ、警戒させるためにメールで連絡したんだけどね」
(´・ω・`)「どういうことだ・・・?」

あのメールは、正真正銘ツンが自分の意思で送ったものだった。
自分の意思と、鋭い思考で。

ξ゚⊿゚)ξ「説明するわ・・・その前に、鮫島事件について、詳しく知ってる?」
( ^ω^)「知ってるお。少なくとも、3つの鮫島事件を繋げられる程度には・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・3つの鮫島事件が繋がる・・・?3つ・・・ですって?」

内藤とショボンの考えの埒外にあった答えが返ってくる。
ツンは、3つの鮫島事件の関連性、つまり、柏台リンチ事件、リンチビデオ事件、鮫島3chネラー行方不明事件が繋がることを知らなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「ネタじゃなかったの?リンチビデオとか柏台って・・・私は、行方不明事件しか、知らない・・・」





(´・ω・`)「知らない、だと・・・?」
( ^ω^)「そんなはずはないお・・・じゃあ、ツンは町田事件のことは知らない・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「町田事件・・・?あなたたち、私とは違う切り口で鮫島事件を調べたみたいね」

内藤とショボンはそれ以降の質問をやめ、ツンの話を聞くことにした。
ツンの話によると、ツンは鮫島事件に興味をもったあと、まずあることに注目した。
それは内藤たちが気にも留めていなかったことだ。

ξ゚⊿゚)ξ「私は、行方不明になった2chネラー5人の素性に注目したわ」

そこに目をつけた者は少ないだろう。
鮫島事件に踏み入る段階では、それはあまりにも小さな疑問だった。
そして踏み入れた後には、完全に忘れ去られるような小さな小さな疑問。
だが、そこにこそ、謎をとく重要な手がかりがある。

ξ゚⊿゚)ξ「彼ら5人はね、同じ学級の出身だったの。鮫島特殊学級っていう学級のね・・・」





( ^ω^)「な・・・鮫島特殊学級・・・!?」
(´・ω・`)「馬鹿な・・・いや、だから5人は鮫島がリンチビデオの舞台だと気付いたのか・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「リンチビデオ事件と行方不明事件の繋がりは後で聞くとして・・・話を続けるわ」

ツンは5人の2chネラーが鮫島特殊学級という同じ学級の出身だということを突き止めた。
だがリンチビデオ事件との関連性には気がつかなかったようだ。
おそらく、行方不明事件に注力しすぎて視野が狭まったのだろう。
その時ツンは鮫島に行こうとは思わなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「けど2chに気になる書き込みがあったの。鹿児島県沖にある鮫島・・・そこで真実を教えるって」

ツンはそれに乗ってしまった。
内藤とショボンの推測通り、ツンは誰にも言わないという条件で鮫島に向かった。
ほんの1日、2日。両親に聞かれれば、友達の家に泊まっているといえば済ませられる程度の日数で帰れると思って。

ξ゚⊿゚)ξ「けど私を鮫島に送ってくれた船は、私が帰る前に姿を消した・・・そして、真実を教えてくれるっていう人もいなかった」




( ^ω^)「じゃあ・・・どうやって帰ってきたんだお?それに、なんで2chで連絡を・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「あの連絡が通るとは思ってなかったけどね。2chで連絡をとろうとした理由は・・・協力者がほしかったからよ」

ツンが2chに書き込みをしたのは鮫島に渡り、しばらくたった後のことだった。
そこでツンは自分の予想以上に鮫島事件が深いと悟り、外部からの協力者を欲した。
2chで有名な鮫島事件の事を知っていて、それを調べる方法を持っている人間。
つまり、一定以上のレベルをもつ2chネラーを。

ξ゚⊿゚)ξ「内藤なら、調べられると思った。・・・その、利用したみたいで、ごめん」
( ^ω^)「・・・それは良いお。それで、どうやって帰ってきたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「真実を話してくれるっていう人はいなかったけど、現われはしたわ。その人は・・・町田って名乗った」
(´・ω・`)「なんだと・・・!」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・内藤がさっき行ってた町田事件と、関係があるの?」
( ^ω^)「・・・後で話すお。続きを頼むお」




ξ゚⊿゚)ξ「その町田って人は約束どおり行方不明事件の真相を話してくれた」

鮫島に訪れた5人の2chネラーは、鮫島特殊学級の出だった。
そして当時ネタとして広まっていたリンチビデオ事件のビデオを購入し、その舞台が鮫島であることを突き止めた。
5人はすぐに鮫島に乗り込んだ。
リンチビデオが本当に鮫島で撮られたのか、そして、今も特殊学級はあるのか。
それを確かめに行ったのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ「その5人がなぜ行方不明になり・・・殺されたのか。それを町田は知っていたわ」

5人が殺された理由。
それは鮫島に上陸したからでも、鮫島事件に足を踏み入れたからでもない。
その理由は、単純明快。
鮫島特殊学級の生徒だったから。それが、唯一つの理由だ。

ξ゚⊿゚)ξ「町田はそれだけ話すと、私を鹿児島に帰してくれた。それからどこかへ去っていったわ」

それからツンは少ない所持金で海を越え、なんと歩いて帰ってきたらしい。
場合によってはヒッチハイクし。日雇いのバイトをして、自力で帰ってきたのだ。

( ^ω^)「だから近隣を探しても見つからなかったのかお・・・ていうかパワフルだお、ツン」





ξ゚⊿゚)ξ「私が知ってるのはそれくらいね・・・」
(´・ω・`)「・・・意味がわからなくなってきたな」
( ^ω^)「5人は鮫島特殊学級の生徒だった・・・だから殺された・・・」
(´・ω・`)「ということは、特殊学級の生徒、もしくは生徒だった人間は殺されるのか?」

鮫島事件、町田事件での死者。
それは内藤たちが知っている限りでは、特殊学級の生徒、などの共通点はないはずだ。
生死は定かではないが、リンチビデオ事件。この事件の犠牲者である特殊学級の生徒に死者が出ている可能性はある。
それと、柏台事件では鮫島コテがリンチされ死亡した。この鮫島コテの素性はわからない。

( ^ω^)「・・・けど、リンチビデオを売った町田はおそらく、特殊学級の生徒をリンチした人物のはずだお」
(´・ω・`)「そして鮫島コテをリンチし殺害した仙人・・・町田は、それと同一人物の可能性が高い・・・」
( ^ω^)「ということは、もしかしたら」
(´・ω・`)「殺害された鮫島コテは、鮫島特殊学級の人間か?」

となると、一本の線が出来上がる。
町田はなんらかの理由で、鮫島特殊学級に教師として着任し、生徒をリンチした。
そのビデオを2chで販売するが、購入者に逮捕者が出たために購入者の生き残りが鮫島事件をネタとして撹乱、町田は購入者名簿をもって姿を消した。
しかしその事件を思い出させる鮫島というコテを名乗った人物が現れ、町田は仙人というコテを名乗って鮫島コテの居場所を特定し、殺害した。

( ^ω^)「鮫島特殊学級の関係者は殺される・・・その犯人は、町田・・・」





(´・ω・`)「町田は特殊学級の人間を消し、公安は事件に近づく人間を消す・・・」
( ^ω^)「つまり町田の目的は特殊学級の人間の殺害なのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと・・・私が会ったのはその町田なんでしょ・・・?気味の悪い話はやめてよ・・・」
(´・ω・`)「ふむ。ツンは行方不明事件のことしか知らないと言うしな」
( ^ω^)「・・・それ以外のことを教えるお。町田事件や5つの鍵のことを・・・」

内藤とショボンは今まで自分たちが集めた情報の説明をはじめた。
町田事件という大きな事件があって、それを政府が5つの都市伝説にわけた。
鮫島事件すらそのうちの一つで、町田事件を解き明かすには残り4つの都市伝説を集め、その真相を暴かなければならない。
タカラの協力によって、内藤とショボンはかなり町田事件に近づいていた。
ツンの情報も加わり、推測ではあるが町田の目的もすこしだけ見えてきた。

ξ゚⊿゚)ξ「複雑ね・・・町田の目的が特殊学級の生徒の殺害なら、その理由はなんなの?」
(´・ω・`)「町田の行動原理はおそらく政府への復讐のはずだ」
( ^ω^)「町田が特殊学級の生徒を殺すことが政府にダメージを・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・だとしたら、鮫島特殊学級って何なのかしら」
(´・ω・`)「隔離施設、犬鳴村・・・そこに隔離されていたのは始末しにくい犯罪者のはずだが」
( ^ω^)「それを始末してくれたならむしろ政府にとっては良いことだお」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・犬鳴村に隔離されていたのは本当に犯罪者なの?そもそも・・・隔離なのかしら・・・」

人知れない場所に、特定の人間だけを移動させる。
それは時には犯罪者などを隔離させる場合であり、もしくは保護したい人間を隠すための場合もある。
タカラは言った。犬鳴村に隔離されたのは、始末しにくい者たちだと。

(´・ω・`)「始末しにくい・・・始末したくはない・・・?始末したくはないが姿を消すことになった者の駆け込み寺が・・・鮫島の犬鳴村なのか?」





ξ゚⊿゚)ξ「始末したくないけど消したい人物・・・ね」
( ^ω^)「どういう人がそれに該当するお?」
(´・ω・`)「大きなヘマをしたり、ゴタゴタに巻き込まれたりした・・・政治家、とかのお偉いさん」
ξ゚⊿゚)ξ「あるいは、悪どい事をしてるけど逮捕されると困る大企業の社長とか?」
(´・ω・`)「とにかく、政府にとっていなくなると困るが、表舞台にいても困るような人物の隔離保護施設・・・」
( ^ω^)「・・・そうだとすると・・・どういう仮説が出来上がるお?」
(´・ω・`)「そうだな・・・仮説をたてるなら、こうか?」

犬鳴村は、政府の重要人物でありながら何らかの問題を抱えてしまった人物の保護施設。
おそらく犬鳴村という名前も公には知らされずに、万が一誰かが知っても九州の犬鳴村だと思うようにその名前がつけられたのだろう。
そこに、死刑から生き延びた町田がなんらかの手段を用いて教師として着任した。
おそらく、鮫島犬鳴村に住む人々の中には、少数だが子供連れもいたのだろう。
その子供の教育のための学級こそが、鮫島特殊学級。
だが、政府に怨みをもつ町田は生徒たち、つまり政府にとって重要だろう人物の子供たちをリンチし、それをビデオにとって販売した。

( ^ω^)「憎い政府の重要人物・・・それも、隔離施設まで用意でて保護するような」
ξ゚⊿゚)ξ「そこに潜り込んでその人達の子供をリンチ、さらにビデオにとり販売。町田からしてみれば胸がすくような思いだったでしょうね・・・」

ビデオを販売し鬱憤を晴らしたは良いが、購入者の中に逮捕者が出て、せっかく身を隠した町田は焦ったのだろうか。
おそらく違う。
リンチビデオなど販売すれば警察に目をつけられるのは火を見るより明らかだ。
ならばなぜ、うまい具合に2chネラーが撹乱してくれたビデオ販売事件を彷彿とさせる鮫島コテを殺害したのか。
それは、鮫島コテが鮫島特殊学級の出身者だったからではないか。
そして、鮫島に上陸した5人の2chネラーも鮫島特殊学級の出身者だという。
町田が鮫島特殊学級の生徒、そして広く見れば犬鳴村の住人だった者たちの殺害を目的としていて、それを追い、さらに関与しようとする者を公安が排除する。

(´・ω・`)「とまぁ・・・今までの話を総合するとこうなるわけだが・・・」





ξ゚⊿゚)ξ「・・・それが町田事件・・・?」
(´・ω・`)「いや・・・今の仮説は我々が持っている情報から構築した鮫島事件の仮説にすぎん」
( ^ω^)「仮説の域は出られないし、しかも鮫島事件でしかない・・・町田事件の真相を暴くには、もう少し考えないといけないってことかお」
(´・ω・`)「だが鮫島事件が町田事件の母体となるパーツだ、というのはタカラもいっていたしな」
ξ゚⊿゚)ξ「今の仮説が正しいとして考えると、それにいくつかの小さな要素を加えたら・・・」
( ^ω^)「町田事件がみえてくる・・・」
(´・ω・`)「かもしれんな」

先程の仮説で推理を進めるとして、町田事件に至るにはまだ何かが足りなかった。
まず、町田の行動の根本的な要因であるはずの、死刑執行。
それに耐えた町田は復讐に望んだと思われるが、なぜ死刑になったのか。
理由はわかっている。政府にとって、望ましくない情報を手に入れてしまった。
では、その情報とは一体なんなのか。

(´・ω・`)「それがわからん。その情報はなぜ無実の男を死刑にするに値するのか・・・」
( ^ω^)「けど、その仮説では集めた5つの鍵は繋がっているお。残っている鍵は、鮫島事件の真相だったはずだお」
ξ゚⊿゚)ξ「鮫島事件の真相・・・つまり、すべてを理解すれば、おのずと町田事件の全容も見える、か・・・」
(´・ω・`)「しかし仮説どまりだ。推論ではこれ以上は難しいな・・・」
( ^ω^)「うーん・・・タカラみたいに詳しい人でもいれば・・・」

おそらく、無理だろう。
タカラと出会えた事は奇跡とも言える偶然だ。現実に会える可能性は皆無に等しい。
もし、わずかでも会える可能性があるとしたら。

ξ゚⊿゚)ξ「2ch・・・2chで・・・町田に、会えないかしら?」





(´・ω・`)「それは・・・難しいとな何とか以前に、危険だろう」
( ^ω^)「町田という名前を出すと、町田も公安も黙ってはいないはずだお」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・私が、あの時鮫島事件の真相を教えてもらったものです、みたいに書き込めば?」

どこかの鮫島事件関連のスレ。
もしくは自分で鮫島事件のスレを立てて、そこでツンの言うように書き込みすれば、少なくとも町田にしかツンのことはわからない。
公安が書き込みを見ても、警戒はするだろうがまだ動かないはずだ。
良くあるネタレスと同じような書き込みが、はたして町田の目につくか。

ξ゚⊿゚)ξ「それが問題ではあるけど・・・一番危険が少なく真相を知っている人物・・・町田に接触する方法じゃない?」
( ^ω^)「・・・たしかにそうかも知れないお。けど、ツンを危険にさらすのは・・・」
(´・ω・`)「むう・・・ツンは一度町田と接触しているし、町田は鮫島学級の関係者以外にはすぐに手を出すわけではないと思うが・・・」

もしうまく町田を釣ることができれば、とりあえずこちらの指定場所で落ち合うようにする。
そして、その場所には内藤とショボンが待機すればいい。
公安が動きにくい人目のある屋内。
隠れる場所もあり、地理も把握していて、隠れている者にも様子が手に取るようにわかるような所といえば。

ξ゚⊿゚)ξ「ここね。喫茶店バーボンハウス、ここに呼び出せば問題はないわ・・・決まりね?」
(;^ω^)「・・・わかったお・・・釣れないとは、思うけど・・・」





(´・ω・`)「じゃあ俺のノートPCで書き込みするといい。現れない可能性が高いが・・・念のため家には帰らないほうがいいだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「はい。それじゃ・・・書き込みます」

幸いオカルト板に鮫島事件のスレがあった。
内藤とショボンが見守る中、ツンは軽快に文字をタイプしていく。

301 :本当にあった怖い名無し :2006/03/11(土) 02:00:37 ID:crm5rpz2O
また会えないかなぁ。
ちょっとだけ真相聞いちゃってさ。続きが知りたくて仕方ない。
だってさ、途中までだと気になるじゃん!

ξ゚⊿゚)ξ「これでよし・・・と」
( ^ω^)「あとは待つだけかお・・・食いつくかお・・・?」

食いつく可能性は低い。
町田も四六時中、鮫島関連のスレをチェックしている訳ではないだろう。
それに今はまだ昼の3時だ。

( ^ω^)「町田はおやつ食ってるかもしれないお」
(´・ω・`)「そんなわけあるか阿呆」





ツンが書き込んでから随分時間がたった。
書き込んでからしばらくはスレをチェックしていたが、スル-され続けているのを見ていると次第に諦めがでてくる。
そのスレは緩やかだが確実に1000に向かっていた。
レス数が500を超えた頃には、すでに日は沈みかけている。
テーブルでひたすら待つ三人に、シャキンが夕食を用意してくれた。

(`・ω・´)「はい、バーボンハウス名物のテキーラカレーだよ!」
( ^ω^)「あ。どうもですお」
(´・ω・`)「・・・兄さん、ありがたいんだが俺は普通のカツ丼にでもしてくれ」
(`・ω・´)「なんだと、ぶち殺すぞ」
(´・ω・`)「兄さんこそテキーラカレーなんか早くメニューから消せ。ぶち殺すぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「テキーラ丼って・・・この匂い、まさかこのカレー・・・」
(´・ω・`)「ああ、テキーラが構成の6割を占めている」
(;^ω^)「・・・」

渋るシャキンに違う料理を頼み、三人は食事に移った。
テキーラカレーなんて意味のわからないものを作る割りには、普通の料理はちゃんと美味しい。
デザートまで食べ終えて、食後の休憩を楽しんだあとでも、スレには何の返事もなかった。
傾いていた日は地平に沈み、スレはもうすぐ1000に到達する。

(´・ω・`)「やはり・・・だめか」

画面の中でレス数が消費されていく。
999を迎え、ついに1000に到達しようとしたとき。
待ち望んだ反応があった。

1000 :本当にあった怖い名無し :2006/03/11(土) 22:10:45 ID:crm4mprty
>>301
明日会おう





ξ゚⊿゚)ξ「食いついた・・・!?」
(´・ω・`)「だがこれでは返信できんぞ。どうやって場所を伝える気だ?」
( ^ω^)「・・・メール欄を見るお。こいつ多分、1000まで待ってたんだお」

メール欄には捨てアドがさらされていた。
1000を狙ったと思われる返信に、メール欄の捨てアド。
偶然食いついた釣られ厨という訳ではない。

(´・ω・`)「本物の・・・町田か」
( ^ω^)「・・・メールで明日ここに来いって伝えれば良いのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。とりあえず捨てアドで・・・」

ツンはすぐに返事をだす。
明日の正午に、ここ喫茶店バーボンハウスにきて欲しいと。
町田がどこにいるのかはわからないが、おそらくIPを割る技術をもっているはずだ。
柏台リンチ事件で、仙人コテを名乗った町田はどうやってか鮫島コテのIPから住所を特定したという。
その町田が明日会おうと言うのだから、少なくとも1日かければバーボンハウスへ来ることが出来る距離にいるはずだ。

(´・ω・`)「もう遅いしな・・・今日は泊まっていけ」
(`・ω・´)「こらショボン!教師が女生徒を家に泊めるなんて問題だぞ!」
(´・ω・`)「大丈夫だ。乳臭い小娘に興味はない」
ξ゚⊿゚)ξ「なっ・・・!くぅ~~・・・・っ!!!」
(;^ω^)「ツン、落ち着くお」





(´・ω・`)「さて・・・部屋がたくさんあるほど金持ちじゃないからな。内藤とツンは同じ部屋で寝ろ」
(;^ω^)「ちょwwwwあんたそれでも教師かおwwww」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・し、仕方ないわね。へ、部屋もないみたいだし・・・」
(;^ω^)「ちょ、ツンはそれで良いのかお!?」
ξ゚⊿゚)ξ「い、いやに決まってるでしょ!け、けど、部屋がないから仕方ないし、その、我慢してあげるわよ!!」

内藤はツンに引きずられるようにして部屋にはいっていった。
ショボンは欠伸一つして隣にある自分の部屋に帰る。
隣がうるさくて、しばらくショボンは眠れなかった。





内藤とツンが使う部屋は、普段は使われていない客間のようだ。
広くない部屋に、セミダブルのベットが一つあるだけで、ほかには何もない。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・な、何もないわね。これじゃ時間もつぶせないじゃない・・・あーぁ、も、もう寝ようかしら」
( ^ω^)「ちょwww積極て・・・いや、明日は町田がくるかもしれないお。はやく寝るお。じゃ、僕は床で・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「え?いや、その、こんな季節に床で寝たら、か、風邪引くわよ?そんなの気分良くないから、ベッド使わせてあげるわよ!し、仕方なくだからね!」
(;^ω^)「うぇwwwwちょ、それは嬉し恥ずかs・・・ぷぉ!!」

反論する暇もなく、内藤はベッドに押し込まれた。
しかも、逃げれないような壁よりに。さらには、蓋をするようにツンが潜り込んでくる。
内藤の顔が引きつる。
ツンは仕方なくと言いながらも、内藤に背を向けず、むしろ内藤の引き攣った顔を見つめていた。

(;^ω^)「お、落ち着くおツン。早く寝ると良いお・・・!」
ξ゚⊿゚)ξ「え・・・わ、わかってるわよ、うるさいわね!ちょっと狭いからもっとよってよ!」
(;^ω^)「ちょ、これ以上は・・・ちょ、足が、絡でfもdせh手がmlgそこhcrだめdふぁdf」

ベッドの中で逃げるようにのたうちまわる内藤と、追うようにのたうちまわるツン。
軋むどころか浮かぶように動くベッドの音を、ショボンは苛立たしげに聞いていた。

(´・ω・`)「・・・セイセイ、不順異性交遊、セイ。明日ぶち殺す」



  

(´・ω・`)「さて・・・良く眠れたか?」
(;^ω^)「全然だお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「私も・・・」
(´・ω・`)「そうか。俺もだ・・・お前たちのせいでな」

内藤たち3人は眠たそうにまぶたを擦りながら、シャキンの用意した朝食を食べていた。
昨日町田に出したメールの返事は帰ってきていない。
はたして現れるのかどうか。
喫茶店にある雑誌や漫画を読みながら、三人は時間を潰した。

もうすぐ正午、メールが届いていれば、そろそろ町田が現れるはずだ。
三人の雑誌をめくる手が遅くなり、喫茶店のドアに注意が向きだす。
時計の針が12時を回っても、客は一人も現れなかった。
雑誌はすでに置かれ、ショボンは煙草を吸い、内藤とツンはしきりに時計を気にしている。
ツンが何度目かのメールチェックをしたとき、シャキンが外を向いた。
喫茶店のドアが開く。
三人が固唾を飲んで見守る中、それは現れた。

('A`)「おいすー。・・・って何で先生ら揃い踏みなんだ?」
(*゚∀゚)「マスターお昼ご飯お勧めないー?」





(;^ω^)「・・・はぁ。ドクオかお・・・おどかすなお」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
('A`)「・・・?なんだってんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちは人待ってるのよ。まったく、おどかさないでよもう・・・」

立ち上がりかけた三人は再び席に座る。
ドクオは訳がわからないというような顔をして内藤たちの隣のテーブルに座った。
その向かいに座ったつーが、外を眺める。

(*゚∀゚)「んー、人待ってるってどんな人?」
ξ゚⊿゚)ξ「えーと・・・とりあえずスーツで・・・ちょっとキモイ顔の・・・」

ツンは鮫島であった町田の姿を思い出していた。
なんともいえない特徴的な顔に、スーツ姿の男。町田の印象はそれくらいだった。
そういえば初めて聞く町田像に、内藤とショボンが顔を見合す。
ドクオは何も考えていないようにメニューを眺め、その向かいの席に座るつーは何か思案しているような顔をしている。

(*゚∀゚)「それってさー、喫茶店の外にいるあの人じゃない?」

つーが指差した窓の向こう。
喫茶店の駐車場にいつのまにか止まっていたバイクに持たれかかり、煙草を吸っている男がいた。
内藤たちのほうを向いた男とツンの目が合う。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・町田・・・」





窓の外にいた男、町田が喫茶店の入り口に歩いていく。
町田は最後に深く煙草を吸って、華麗に投げ捨てる。
喫茶店のドアが開き、店にベルの音が響いた。

    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
  . |(●),   、(●)、.:| +
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|    やぁ、マスター、お勧めはなんだい?
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::| +
   \  `ニニ´  .:::::/     +
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||



不気味なほどの爽やかさで、町田はマスターに話しかけた。





(´・ω・`)「・・・あれが町田か?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい・・・少なくとも、鮫島で私があったのは、あの人です」
(;^ω^)「予想と印象が違うお・・・しかも声が渋すぎるお。若本様のようだお・・・」

町田はシャキンにいやに親しげに話しかけたあと、優雅にこちらに歩いてくる。
足取りはゆっくり、顔には微笑を絶やさずに。
町田はテープルに近づくと、内藤たち三人の顔を見渡して席についた。

町田「君は鮫島であった娘だね。2chでメッセージを残したのは君かい?ご丁寧にたて読みで私を名指ししていたね?」

町田は公安に追われているとは思えないほどの気さくさで話しかけてくる。
ドクオとつーが何事かと見ている中で、内藤とショボンも怪訝な表情で町田を見つめていた。
ただ一人、町田を見たことがあるツンが口を開く。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・あれから、随分と調べて。どうしても聞きたいことがあるんです」

内藤とショボンは、わずかに目の前にいる町田は偽者なんじゃないかと思いはじめていた。
だが、その考えは町田の自信に満ちた台詞で打ち砕かれる。

町田「そうか。鍵は集めたのかな?それなら話そう、真相を」





町田「さて・・・それではまず、鍵を集めているか、そしてそれを正しく組み合わせているかを聞こう」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・わかったわ」

ツンは、昨日立てた仮説を語りだした。
町田、今目の前にいる男が無実の罪で死刑に処され、それを恨み一連の鮫島事件を起こした。
それが様々な要因を経て隠匿され、今は公安から逃げている、と。
町田は仮説を聞きながら落ち着いた動作でコーヒーを飲んでいた。
ツンが話し終えると、空になったコーヒーカップが置かれる。

町田「マスター、おかわり」
(`・ω・´)「はいよ、ただいま!」

久々の純粋な客にテンションが上がっているシャキンがすぐにおかわりを持ってくる。
空になったカップを片付けるシャキンに礼代わりに片手をあげ、町田は煙草をとりだした。
正解なのか、まったくの不正解なのか。
ツンと内藤、ショボンが返答をまっている中、町田はゆっくりと深く煙草を吸う。
吐き出す紫煙とともに、ようやく町田が口を開いた。

町田「鍵は集まっているようだね。だが、組み合わせと推理はダメだ、40点といった所かな?」





(´・ω・`)「・・・40点か」
( ^ω^)「どこら辺が違うんだお・・・?」
町田「まず時系列が間違っている。大事な部分が前後逆なんだ。そしてそれ故に推理が違う方向に行っているね」

町田は首を軽く振りながら答える。
警戒心をもってあたる内藤とショボンに対して、まったく敵対心とかそういう類の感情はもっていないようだ。
煙草を吸い終わり、当たらしい煙草を取り出しながら町田は間違いを指摘しはじめた。
まず死刑執行とリンチ事件は、リンチビデオ事件のほうが先だという。
リンチビデオ事件のあとに上陸事件があり、そのあとで柏台リンチ事件が起こったらしい。
上陸事件と柏台リンチ事件の時系列は合っている。
だが、死刑執行とリンチビデオ事件が時間的に逆だというのは大きな問題だった。

町田「そんなに私を悪者にしたいのかな。第一、私はリンチの下手人じゃないよ。・・・ビデオは売ったがね」





町田「そもそも・・・推理がどうとか以前に、君達が気付いていない重大なことがある」
ξ゚⊿゚)ξ「気付いていない?」
町田「そうだ。まぁ・・・まずは40点の理由から話そうかな」

町田のいう40点とは、鍵を集めきっている、というだけで30点を占めていた。
そして、上陸事件と柏台事件の時系列の正解。
それ以外の小さな点。それで40点。

町田「まぁ、甘く採点して40点、だな。推理が事実であるかどうかという点で考えると大外れだ」
( ^ω^)「それで・・・重大なことっていうのは・・・?」
町田「リンチビデオ・・・君達はその中身を知っているのか?」





(´・ω・`)「中身・・・ビデオの内容か」
( ^ω^)「全然知らないお。見たいとも思わないお。政府にとって見られたくないものだお?」
町田「それはそうだ。だが、その中身が大事なんだよ」

町田は、ビデオの内容を話す前に大まかな流れを説明しだす。
まず、町田はリンチをした人間ではないが、ビデオを販売した。
販売した理由は、政府への糾弾。
その後それに反応した公安が購入者を逮捕し、ビデオの回収に乗り出した。
それから少しして、人知れずに上陸事件が発生。そのころはリンチビデオ事件もまだ燻っており、この事件が2chに上るのはまだ後のこととなる。
そしてリンチビデオ事件が収まり町田が姿を消した後、柏台リンチ事件が起こる。
町田はそれ以降公安のマークをかわしながら生活している。

(´・ω・`)「・・・まて、意味がわからなくなってきたぞ。政府への糾弾?」
町田「そう、糾弾だ。あのビデオの内容がただのリンチビデオではない」
( ^ω^)「それは鮫島特殊学級の大物の子供がリンチされてるって事じゃ・・・」
町田「それは君達の推測だろう。ビデオを見たことがないために、その推測に至った。だが・・・あのビデオはそういう類の物じゃない。あれは、実験の報告ビデオだ」





ξ゚⊿゚)ξ「実験・・・?いったいなんの・・・」
町田「・・・終戦間近、日本にはまだ徹底抗戦を主張する強硬派があった。その連中は戦後も密かに研究を続けていた・・・兵器となりうる、ある新薬のな」
(´・ω・`)「荒唐無稽・・・B級映画のような話だな」
町田「事実は小説より奇なり、と言うだろう?そもそも大物の子供とはいえ、ただのリンチビデオで国が動くか?」

町田がいうには、戦後1960年代にその研究は政府によって嗅ぎ付けられ、中止を余儀なくされたらしい。
だがその研究者たちは諦めなかった。
政府の通達を無視し研究を続け、新薬は完成。
効果を実証する人体実験を行い、その後1970年代、政府の立ち入りにより完璧に施設もろとも消え去った。

町田「それが行われたのが犬鳴村だ」





( ^ω^)「・・・研究施設のわりには普通の学校の教室みたいだったお?」
町田「それは鮫島の犬鳴村だ。あれは本当に特殊学級だった」

だが、九州にあったという犬鳴村。それが研究施設だったとしたら。
九州の犬鳴村は人が入らぬ秘境だった。
政府に知られないよう研究を続けるのに適した場所だろう。
犬鳴村に近づいたら行方不明になる。それは、朝鮮人の仕業だった。
だが、なぜ隔離施設とはいえそんな秘境に隔離したのか。
隔離するのなら、ある程度は目が届く範囲でないと駄目なはずだ。
それはつまり、研究者たちが朝鮮人を招きいれ、近づくものへの警戒をさせていたからではないか。

町田「そして1970年代、研究が政府によって中止させられたのと同時に、九州の犬鳴村は無くなった」

だが、その時にはもうすでに新薬は完成している。
実験は同じ名前をもつ鮫島の犬鳴村にあった鮫島特殊学級の生徒を使って行われた。
その結果を撮影したのが、例のリンチビデオだ。

( ^ω^)「・・・そんなに昔にとられたビデオなのかお?それが何で今頃流出してるんだお?」
町田「言ったろう、糾弾だと。一部の強硬派の仕業とはいえ、政府の一部組織がそんな実験をしたというのは許されてはならん。だから町田・・・この私は、それを入手し世にばら撒こうとした」





ξ゚⊿゚)ξ「それがリンチビデオ販売事件・・・?それが公安に見つかり、あなたは身を隠した」
町田「まさに。少々ゴタゴタはあったが、私は今でもこうして逃げおおせている」
(´・ω・`)「・・・」
( ^ω^)「ビデオのことはわかったけど・・・結局どういうことだお?」
町田「大まかに言うと・・・こうだな」

リンチビデオといわれていた実験報告ビデオを、町田は政府への糾弾として2chで販売した。
それが公安の目に留まったため、町田は身を隠す。
そして柏台リンチ事件、上陸事件が起き、そのころのログは削除された。
事実を世に広めたかった町田は2chのとあるスレに縦、横、斜めの隠し文を残した。
それ以降、町田は身を隠しつつ、真実に近づくものを探していた。

ξ゚⊿゚)ξ「探していた・・・一人でも多く真実を知る者を導き、増やすために?」
町田「そうだ。だからこうして君達に話をしている」
(´・ω・`)「・・・柏台リンチ事件の仙人コテはお前だと言う話だが」
町田「まぁまて。君達に話をしている理由はもう一つあるんだ」
(´・ω・`)「・・・ふむ」
( ^ω^)「もう一つの理由?」
町田「そのビデオだが・・・もう大半は公安が抑えてある。広めるためにも手元に置いておきたいんだが、残念ながら手元にないんだ。そこで、だ。公安のマークが厳しい私にかわり、ビデオをとってきてほしい」





ξ゚⊿゚)ξ「それが私たちに接触してきたあなたの目的?」
町田「そうだ。ある場所はわかっているが私は動けないのでね、どうか頼みを聞いてもらいたい」
( ^ω^)「・・・なんで僕たちが・・・」
(´・ω・`)「いや、わかった、引き受けよう。どこにあるか教えてくれればもう帰ってくれてかまわない」
町田「・・・そうかい?それならこの紙に住所を書いてある。手に入ったら連絡をくれれば良いよ」

町田は用意していた紙を懐から取り出した。
それにはビデオの在処らしい住所と、携帯の番号が書かれている。
ショボンが紙を受け取り、町田は席をたつ。
きた時と同じように優雅に去っていった町田を見送った後、ショボンは席に戻った。

( ^ω^)「先生、なんで急に引き受けるなんて・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよ、まだ分からないことなんかもあるのに・・・」

内藤とツンの文句を聞きながら、ショボンは難しい顔をしていた。
町田から受け取った紙を見つめながら何か考えているようだ。
内藤とツンが怪訝に思ったとき、ショボンが口を開いた。

(´・ω・`)「・・・あいつ、何か変だぞ」





( ^ω^)「・・・変っていうと?」
(´・ω・`)「あいつの言っていることは真実かも知れん。だが・・・偏っていないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「偏っている?」
(´・ω・`)「もっとも重要とか言っていたが・・・あいつ、ビデオ事件以外のことをなぜ話さない?」

良く考えてみれば、町田はリンチビデオ事件とそれに付随する事件の話以外は詳しく説明していない。
町田が死刑執行されたときの話や、その理由。
過去ログが正しければ柏台リンチ事件の仙人コテの名前は町田であるはずなのに、それが本当かどうかも話を濁した。
そして、どうやってビデオを入手したのか。
ビデオの中でリンチ、町田のいう事が本当だと仮定するなら実験、の下手人は町田本人ではないと言ったが、ならばどうやって入手したのか。

(´・ω・`)「なにより・・・自分を綺麗に見せようとしている気がするな。それもやや過剰に」





ξ゚⊿゚)ξ「・・・先生、何が言いたいの?」
(´・ω・`)「そうだな・・・あいつ、本当に全てを知っているのか?」
( ^ω^)「けど、町田はビデオ販売事件、柏台事件、死刑執行に直接関わっているはずだお。それ以外の事件にも繋がりがあるだろうし・・・」
(´・ω・`)「確かにそのはずなんだが・・・頭がこんがらがってきた。そもそも、全てとはなんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・町田事件の真相とそれを覆い隠す5つの鍵の詳細、かしら・・・」
(´・ω・`)「そうだ。だが、俺にはどうもあいつが全てを知っているとは思えん」
( ^ω^)「なら色々と質問すればよかったのに・・・」
(´・ω・`)「柏台事件の事を聞いたとき、まぁ待て、で止められたからな。それが解せなくてな」

たしかに、ここまできた目的を話そうとする時に柏台事件の質問をされて後に回したかったのだろう。
だが、町田の目的が政府への糾弾という大義名分のもとにあるとすれば、柏台で鮫島コテをリンチしたという、ほぼこちらが確信している疑惑を晴らすべきだ。
町田はそれをあっさりと遮った。
大まかに話しの流れを語ったわりには、それもアバウトすぎる。

(´・ω・`)「言いたくなかったのか・・・それとも、知らなかったのか・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「知らないはずは・・・町田は全部知っているはずじゃあ?」
(´・ω・`)「・・・そうか、そこが納得できないのか・・・あいつ、本物の町田か?」





( ^ω^)「それはさすがに・・・町田じゃないと食いつかないように書き込んだんじゃないかお」
(´・ω・`)「町田じゃなくても、町田並みに関心を注いでいれば気付けるかも知れんぞ?」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・なら、あれは誰?なんで町田に扮する必要があるのかわからないわ」
( ^ω^)「それに、もっともらしい真相を話してはいたお。偽者だとするとここに来た理由がワケワカメだお」
(´・ω・`)「むぅ・・・直感に走りすぎたか・・・正直すまんかった」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・まぁ、渡された紙の住所に行けばわかるんじゃないかしら」
(´・ω・`)「・・・そうだな、本当にビデオがあるかも知れんしな・・・」

ショボンの疑いは晴れなかったが、ここで頭を捻っても埒が明かない。
偽者だとしたら、なぜビデオを欲するのか。本当に糾弾のためなのか。
そもそも、本当に実験ビデオなのか。
町田の真贋はともかく、ビデオを欲しているのは同じだ。
それなら、ビデオを入手できればこちらが優位に立てるかもしれない。

( ^ω^)「住所は・・・柏台の近くだお・・・」
(´・ω・`)「いくか。そう遠くはないし・・・ビデオの中身も確認するべきかも知れんしな」





高速道路をショボンのRX-8が走る。
内藤たち3人は何も言わずに、サービスエリアで買ったお菓子を食べ荒らしていた。

( ^ω^)「・・・」

内藤は隣でジャガリコをかじっているツンを眺めながら、ショボンの話した町田への疑惑について考えていた。
もしも町田が無実の罪での死刑執行を生き延びた人物とするならば、少なくとも何かを知っているはずだ。
その何かがビデオの内容、つまり戦中から戦後への新薬開発のことだとしよう。
そうすると、喫茶店に現れた町田は30年以上昔のビデオをどこからか入手し糾弾のために販売、その後身を隠した。
町田はそういった。だが、町田は死刑執行はリンチビデオ販売事件の後で起きた、とも話した。
普通自分が無実の罪、というよりも政府にたてついたから死刑に処されたのなら、それについての憤りなり何なりを漏らすはずだ。
なぜ喫茶店に現れた町田はそれを感じさせなかったのか。

( ^ω^)(政府への恨みなんか感じられなかったお・・・恨みがないのかお?殺されかけたはずなのに)

それによくよく考えてみれば、ショボンの指摘のとおり町田はビデオ事件のことを重点的に話していた。
それがもっとも重要だと言って。
重要とは、事件を紐解く鍵になるということのはずだ。
だが、もしも町田にとって重要なだけだとしたら。
事件の真相をある程度話し、ビデオを回収させることが目的だとしたら。

( ^ω^)(だとしたら・・・先生の言うとおり、偽者なのかお?ビデオが欲しいだけの・・・?)





ξ゚⊿゚)ξ「ここね・・・」
(´・ω・`)「マンションだな・・・301号室にビデオがあるらしいが」

内藤たち3人は、町田から渡された住所のマンションの前に立っている。
何の変哲もない普通のマンションだ。
ここの一室にかつてビデオを購入した人物がいるのだろうか。それとも、ビデオだけが残されたのか。
3人はエレベーターに乗り、ビデオがあるという部屋の前に向かう。

( ^ω^)「・・・山田さん。普通の名前だお」





その部屋の主は山田というらしい。
町田から渡された紙には、住所ともうひとつ、鍵の隠し場所が書かれていた。
その紙のとおりの場所に鍵が隠されているのを見つけ、3人は鍵を開ける。
部屋には誰もいない。もう人は住んでいないようだ。

(´・ω・`)「ビデオはどこかいな、と」
ξ゚⊿゚)ξ「けっこう埃がたまってるわね・・・」

随分長いあいだ使われていないらしい部屋で埃を舞い起こしながら、3人はビデオを探した。
本棚、机、床に置かれた紙袋、クローゼット。
ビデオはどこにもなかった。

(´・ω・`)「やはり、無いのか?」
( ^ω^)「ん・・・あれ・・・?」

諦めかけたとき、内藤の目がビデオデッキに向けられる。
ビデオデッキにはビデオが挿入されていることを示すランプがついていた。

ξ゚⊿゚)ξ「デッキにはいったまま・・・とか?」

マンションのそばを、竿竹屋が回っていた。





(´・ω・`)「・・・ビデオに名前は書かれていない、か。再生してみよう」

ショボンは一度取り出したビデオをデッキに戻す。
テレビをつけ再生を始めると、テレビの画面にノイズが走った。
すぐに昔のAVのような古臭い画質で、鮫島で見た廃墟、鮫島特殊学級が健在だったころの教室が映し出される。
教室には生徒と思われる者たちが並んでいた。
小学校くらいの段階の学級だと思っていたが、並んでいたのは高校生くらい、もしかしたらそれ以上かもしれないような年頃の者ばかりだった。

ξ゚⊿゚)ξ「私達より年上かもね」
( ^ω^)「・・・誰かはいってきたお」

教室にはいってきたのは、教師らしい壮年の人物だった。
手にはアタッシュケースを持っている。
並んでいる生徒たちの先頭が呼ばれ、教師の元に歩いていく。教師が開けたアタッシュケースには、注射器と数種類の薬品がはいっていた。

(´・ω・`)「この展開・・・本当に実験なのか・・・・?」





教師のもとに呼ばれた生徒の顔は蒼白だった。
そんなこと気にせずに、教師は注射器を取り出し薬品をセットする。
椅子に座らされた生徒の腕に針が刺さり、薬品が注入されていく。
そこで、今まで無音だったビデオで初めて音がたった。
生徒が椅子から倒れる音。
それと、生徒が教師を呼ぶ声。

町田先生、これなんの薬ですか
んん?ちょっとだけ苦しくなるけど大丈夫さ

たったそれだけのやり取りの後、生徒は苦しそうな呼吸を繰り返すだけになった。
教師は次の生徒を呼び、違う薬品を注射する。
その生徒も倒れると、次の生徒にはまた違う薬品を注射。
それを延々と繰り返した結果、生徒は全員床に崩れ苦悶に喘ぐだけになった。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・ひどい・・・さっき、この教師・・・」
( ^ω^)「町田って呼ばれてたお・・・けど、喫茶店に現れた町田とは全然違う・・・」




ビデオはまだ終わらない。
生徒が床で苦しむ教室に、新しい教師がはいってきた。
その教師は注射器をもった教師に、町田先生、と呼ばれた。

町田先生、どうですか
ああ、町田先生。とりあえず全員倒れちゃいましたよ
そうですか。では、次の注射にしましょうかね

新しく入ってきた教師が数種類の新しい薬品を取り出し、注射器をもった教師に渡す。
渡された薬品を注射器にセットし、教師は倒れた生徒たちに注射していった。
ある者は痙攣を起こし、ある者はそのまま動かなくなった。
ある者は胸をかきむしり、ある者は血を吐いた。
そして、ほんの僅かの生徒、青色の薬品を注射された生徒だけが、何事もなかったかのように立ち上がった。
教師は歓声をあげ、教室に数人の男たちがはいってくる。
新しくはいってきた男たちも全員、町田先生と呼ばれていた。
町田と呼ばれる教師たちの一人が持っている書類にカメラがズームされる。

書類の文面を映そうとしたところで、唐突にビデオは終わった。
リンチなども起きず、実験なのかどうかわからないような終わりかたで。
それから再びノイズが走った。




( ^ω^)「・・・なんだこりゃ、だお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「倒れた生徒はどうなったのよ・・・」
(´・ω・`)「変なところで終わったな。どうし・・・?」

ビデオの終わりを告げるノイズが途切れ、画面が青く染まる。
終わったはずのビデオが、再びどこかを映し出した。
画面に映っていたのは三人が今いる部屋。画質は最近の安物カメラで撮ったような感じのものになっている。
この部屋に住んでいた人物が重ね取りしたようだ。
画面に一人の男がはいってくる。
その男は画面中央の椅子に座り、神妙な面持ちで話し出した。
カメラの向こうの三人に向けて。

男「このビデオを見ているのは誰だろうな。何の関係もない一般人か、偶然このビデオを手に入れた2chネラーか・・・それとも町田、お前か?」



男「・・・なんてな。お前が見ているんだったら、今頃激怒してこのビデオは壊れてる頃だろう。だから今もこれを見ているのは町田じゃない。どうせ、町田に言われてこのビデオを回収しに来たんだろう」

画面の中で、こちらの返答の間を確保するように間隔をあけて男は話し続ける。
男の言うとおりだった。
町田に頼まれてここまで来た内藤たち3人のことを見据えているかのように、男は自己紹介をした。

男「俺の名前は鮫島・・・このビデオを見ている奴には馴染み深い名前だろう。町田の相棒だった男だ。ま・・・このビデオを見てるってことは今頃は俺は死んでるんだろうが・・・」


(´・ω・`)「鮫島・・・!」
( ^ω^)「・・・まさか柏台リンチ事件の?」
ξ゚⊿゚)ξ「町田の、相棒・・・?どういうこと・・・」

鮫島「これを取りに来たのが町田に言われてなら、あいつが悔しがる顔が目に浮かぶな。俺は数年ごしに一矢報いたわけだ。さて・・・町田がいないうちに、君達に真実を話そう。俺たちの、真実を」




数年前、アメリカのネラー社に勤める2人の男は世界中の過去ログを読み漁っていた。
世界中の過去ログ、しかも余すところなくネット情報が管理されているその会社のデータバンクの中には、インターネットの前身であるアメリカ陸軍のネットシステムで取り交わされた情報も残っている。
その中に、日本の新薬実験のログがあった。
それは当初兵器であるという噂からアメリカに注目されたが、兵器ではないと判明したためそのまま放置されたらしい。
それは兵器ではなく、心臓病などの難病の特効薬だった。
その開発は失敗し、人体実験をしたために政府の立ち入りを受け計画は消滅したとある。
だが2人は、日本のもっとも古いネット情報の中に、その計画で完成した薬があり、それはあらゆる難病への特効性をもっているという噂話を見つけた。
そして、その実験を記録したビデオの最後に調合表が映されていると。

鮫島「その情報を・・・俺たちは信じた。なぜ信じてしまったんだろうな・・・その情報を信じた俺たちは2人で日本に渡り、ビデオを探したよ。見つからなかったがな」

その二人、鮫島と町田は日本に渡りビデオについて調査をしたが、当然成果は上らなかった。
だが、二人が諦めアメリカに帰りかけたときに、2chでひとつのスレがたった。
リンチビデオの販売。
二人は何気なくそのスレを読み、そのビデオ内容に興味をもった。
そのスレはすぐに削除されたためビデオの購入はできなかったが、二人はIPを割る技術をもっていた。
販売者の住所を特定しそこに向かった二人は、無人の部屋に放置された購入者名簿を入手した。

鮫島「それからだよ、俺の相棒が町田を名乗りだしたのは。購入者名簿を持つことでビデオを販売した町田に成り代われると考えたからな。・・・思えば、町田はあれから代わっていった。大人しい奴だったんだがなぁ・・・」




購入者名簿を持った町田は、ビデオにたいして今まで以上に興味を持ち出した。
名簿を頼りに購入者を探しビデオを入手しようとしたが、購入者はすでに逮捕されたり姿を隠したりした後だった。
大人しく真面目に仕事をするタイプの人間だった町田は、その誰も知らないだろうビデオに隠れていた野心を燃やしたんだろう。
なにせ、情報が真実なら万病への特効薬なのだ。
その調合方法さえあれば、巨万の富が手に入る。
町田に半ば引っ張られるように、鮫島は調査に協力した。
幸い、同じ時期に乱立した鮫島スレの中には有益な情報も含まれていた。
まるで、誰かが意図的に紛れ込まれているように。

鮫島「誰かが真実を小出しに限れ込ませていたのか、まったくの偶然か・・・どちらにせよ俺たちは情報を集め、研究が行われていた犬鳴村の存在を知った」
鮫島「だが、九州の犬鳴村はすでに無く、俺たちが行こうと思った少し前に鮫島に上陸した5人の2chネラーが殺害されたって事件が起きていた。危なくて行けないよ。」

研究があったとされる場所に行けなかったのが町田を焦らしたのだろうか。
町田は強硬にビデオの購入者を探し、狩ろうとした。
すでに公安が動き出していた中で、そんな真似をすれば二人とも捕まり、アメリカに帰るのも難しくなる。

鮫島「だから俺はあえて2chに鮫島の名を名乗り書き込み、荒らした。危険な行動を起こすことによりさらに危険な行動を始めようとしていた町田を牽制するつもりだったんだ」




鮫島「だが・・・ビデオから富が得られると完全に信じ込んでいた町田は、暴走していた。仙人というコテを名乗り俺を柏台駅前に呼び出してきやがった」
鮫島「俺はこのビデオを撮り終わったら、柏台駅前に行く。町田は2chネラーを呼び集めでいるようだが・・・集まらないことを祈ろう。だが、もしボコられて死にでもしたら腹がたって死に切れんから、町田の化けの皮は剥がしておこうとこのビデオをとっているわけだ」

鮫島は最後に町田の情報をまとめた。
町田、アメリカのネラー社の社員だった男は、日本で購入者名簿を手に入れそれから町田を名乗りだした。
販売者である本物の町田を騙ることで、ビデオを手に入れようとしたのだろう。
だがビデオはすでに失われかけていた。

鮫島「町田は気付いていなかったが・・・俺はビデオを手に入れることに成功していた。俺は町田が暴走したと確信したときに、ビデオの
最後、もっとも大事な調合法がある部分に、今とっている映像を上書きする」

それに気付かない町田は、2chでの鮫島の妨害行動に激怒し、鮫島を呼び出した。
鮫島はこのビデオに上書きする映像を撮り終わったら、柏台駅前で最後の説得を行う気だ。

鮫島「それでダメならあの馬鹿を見捨てるしかない。おそらくこれを見ているのは俗に言う町田事件を追う2chネラーなんだろうな。だから、最後に町田事件に触れよう・・・もっとも、俺も町田もそう多くは知らないがな」




町田事件とは、誰がそう呼び出したのかも定かではない。
だがおそらく、命名者は新薬研究をしていた連中の組織名を知っていた。
その研究組織は、MACHIDA対策機関。
所属員が全員町田と呼ばれたことから名づけられたとか、I AM A CHDの字列変換だとか諸説はあるが、その機関名が「まちだ」であるのは確かだ。

それを最初から知っていた、もしくは突き止めた誰かが、すでに闇に葬られたはずのその事件を表舞台に引っ張り出した。
数十年ぶりに世にでたそれは、当時の実験報告ビデオという実体すら持って2chに現れた。
そんな昔の事が世にでるとは思わなかった公安は初動が遅れ、ある程度の数のビデオが出回った。
公安が大半を確保するころには、鮫島上陸事件が起き、鮫島事件とそれ以外のいくつかの都市伝説がいっせいに各地で囁かれ始めた。

鮫島「問題なのは、なぜそうなったかだ。誰かが巧妙にそんな昔の研究の存在を世に流し、なおかつそれをカバーする噂を流布し、鮫島に上陸した5人を殺害し、公安を撹乱し・・・俺たちくらいしか知らないはずのアメリカのネラー社の存在を都市伝説として流した」

鮫島「町田事件とはその一連の流れの総称だ。誰かがカビの生えた政府の失態を引っ張り出し世に広め、公安すら動かし、さらには数多くの都市伝説を生み出した。その大きな見えない力の流れとでも言うべきものが、町田事件と呼ばれている」

鮫島「事件としてではなく、もっと大きな流れ、それが町田事件。とある者が過去に、町田事件とは鮫島事件やそれ以外の鍵を使った壮大な人探しゲームだ、と言ったことがある。あるいはそいつがウォーリーだったのかもな・・・」

さて、そろそろ行って来よう。
無事に帰ってきたらこのビデオは破壊し、捨てる。
町田事件なんて不気味な流れは、最後のビデオであるこれを破壊すれば止まるはずだ。
最後にそう言って、鮫島は片手を上げた。
ビデオの映像が途切れ、再生が停止する。




( ^ω^)「・・・そして、この人はこの後柏台駅まえでリンチされ・・・死んだのかお」
(´・ω・`)「説得しようとした相棒と20人の2chネラーに、か」
ξ゚⊿゚)ξ「ビデオの中の調合法が欲しいから町田は私達に接触したのね・・・」

ならば、このビデオは町田が望むものではない。
肝心の調合法は鮫島により上書きされた映像によって消されている。
鮫島が言うには、今内藤たちの手元にあるこのビデオは公安が確保していない最後のビデオらしい。
それを知れば町田はどんな反応をするのか。

(´・ω・`)「ま・・・いい事を聞いた。帰って偽者ヤロウを呼び出してみるか」
( ^ω^)「・・・先生なんで急に強気になるんだお・・・」

内藤たちはマンションを後にし、ショボンのRX-8は再び高速道路をニュー速市に向かって走った。
その途中、珍しいものを見た。
高速道路を走る、竿竹屋のトラックを。





内藤たちは地元に戻ると、喫茶店バーボンハウスに町田を呼び出した。
ビデオを入手したから渡す、と。
町田には鮫島からのメッセージの事は話していない。
今、内藤たち3人の目の前にいる町田は、念願のビデオ、新薬の調合法が手に入るものと内心で小躍りしているだろう。

町田「さて・・・まず礼を言おう。助かったよ。さ、ビデオを渡してくれ」
(´・ω・`)「あんたが新薬とやらで荒稼ぎするために・・・か?」
町田「・・・!?」
(´・ω・`)「ん?冗談で言ってみただけだが・・・どうした?ほら、ビデオだ。受け取れ」

ショボンはテーブルにビデオを置いた。
半ば固まっていた町田がそれを見て、気を取り直す。
ビデオに手を伸ばしかけた町田は、喫茶店のドアが開く音で再び固まった。
喫茶店にはいってきたのは、凛としていて逞しい印象を受ける女性。
町田のほうにまっすぐ歩いてくる。

女「・・・やっと最後のビデオを持ち出してくれたな、町田。第三者ならマークされないとでも思ったか?」




町田「なんだと・・・あと一歩というところで・・・!」

町田は自分にむかって歩いてくる女を睨み付ける。
そんなもの意に介さないように向かってくる女に、町田は精神的に追い詰められていた。
追い詰められ焦った町田は、スーツの懐から拳銃を取り出し女に向けようとした。
だが、拳銃が前を向く前に、町田は腕を捻られ女に取り押さえられる。

女「町田・・・いや、ダディクール。貴様を逮捕する。罪状は面倒臭いから自分で考えろ」

取り押さえられ屈んだまま、町田は黙って床をにらみつけていた。
女のあとから二人の男が入ってきた。
そのうちの1人、屈強な男が町田を連れて行く。
もう一人の眼帯をした男は、ビデオを回収していった。
町田が喫茶店の表にいつの間にか止まっていた竿竹屋のトラックに載せられたのを確認し、女は内藤たちに向き直る。

女「さて・・・今起きた事とビデオの内容については・・・ん?」
(´・ω・`)「おや・・・見覚えがあると思えば・・・草薙三佐じゃないですか」
女「野戦特科の問題児か。久しぶりだな・・・アメリカ帰りの機で部下が世話になったというのはお前か」
(´・ω・`)「その節は失礼を。まさか三佐が公安に下っているとは・・・」
女「今は少佐だ、問題児。存外に居心地が良くてな・・・お前がいるなら私が言うまでも無いな?目をつけられたくなければそこの二人にしっかり言い聞かせておけ、私は帰る」

ショボンと短く言葉を交わしたあと、少佐と名乗った女は町田をつれていった屈強な男になにやら指示を出して、竿竹屋のトラックで去っていった。
内藤とツンはあまりに急すぎる展開に訳がわからないという顔をしている。
カウンターでは、厄介ごとが起きませんように、とシャキンが呟いていた。

(´・ω・`)「内藤、ツン。それとついでに兄さん。今おきたことは忘れるんだ、ビデオの内容もな。口外すればおそらく逮捕される」
( ^ω^)「・・・先生、あの女の人は何だお?知り合いかお・・・?」
(´・ω・`)「あれはただのメスゴリラだ・・・あまり詮索するな」




( ^ω^)「結局なんなんだお・・・わからずじまいだお」

喫茶店で起きた急すぎる終幕に、内藤はやや不満を感じていた。
自宅に戻ってからも、町田事件の事を考えている。
町田から洗いざらい聞き出したかったのに、町田はあっさりと捕まってしまった。
あの女は公安だというから、おそらく町田と接触したときからマークされていたのだろう。
ビデオの場所がわからなかったのか、内藤たちを尾行してビデオを手に入れるとともに、ついでに町田を逮捕する算段で動いていたか。

( ^ω^)「・・・けど、僕たちは何で逮捕も消されもしなかったお?公安に消されるって話じゃ・・・?」

しかし、国家の警察機構の延長であるはずの公安が国民を無闇に消すのもおかしい。
そう考えてみれば、公安に消されるという噂も間違いだったのだろうか。
だが実際に鮫島上陸事件で5人の2chは死亡しているし、自分たちが会ったタカラも殺された。
もしも、関係した人間を消したのが公安ではないとするなら。
なんのためにか知りすぎた人間を消し、その上神出鬼没、目撃者はいなくて、行動原理がわからない。
そもそも、存在するかどうかすらわからない。

( ^ω^)「そんな・・・幽霊みたいな奴・・・」

だが、その条件を唯一クリアーする人物像がある。
何のためにかビデオを販売した人間。それを騙ったダディクールの存在で忘れられそうだが、本物のビデオを販売した人間。
誰が残したかわからない町田事件のヒントも、存在する理由がわからないという点では、ビデオ販売と良く似ていた。

( ^ω^)「・・・理由のわからないヒントと行動・・・行動は販売、販売したのは・・・本物の、町田?」




( ^ω^)「・・・わからないお。町田とはいったい何なんだお・・・?」

内藤たちが今回関わった事件は、結局はアメリカから着た2人が町田事件を調べていく中で辿った道をなぞったに過ぎない。
誰かが用意したレールを歩いた鮫島と、偽町田・ダディクール。
それを追うことになった内藤たち3人と、公安。
謎は残る。
結局、死刑執行のときに生き延びた町田という男が実在したのか、それとも噂でしかなかったのか。
町田事件の全容とは実験ビデオのことなのか。
そもそも、本当の真実を知っている人間がいないために、嘘か真かもわからない。

( ^ω^)「結局はネタなのかお・・・?けど、ビデオは実在した・・・それでも、真実は見えない・・・」

鮫島事件、ひいては町田事件は、ネタか真実か判断がつかないために都市伝説として定着した。
何人もの人間がどれだけ調べようと、その答えは覆らなかった。
内藤たち3人も例外なく、最初の答えである真贋は判断できないという結果に帰着するのだろうか。

( ^ω^)「ん・・・メールかお。こんな時間に誰だお?」




件名:パソコンからごめん
本文:ツンだけど、今から会えない?私の家今日誰もいないからなんか心細くて・・・

( ^ω^)「・・・こ、これは・・・うほっwww」

時刻は深夜2時。
こんな時間に心細いなんて言われて黙っていては男じゃない、と言わんばかりに内藤は瞬時に着替え、出かける準備をする。
身にこたえる深夜の寒空も忘れて、内藤は自転車をこいだ。
ツンの家まであと半分という所で、ふと携帯を取り出す。

( ^ω^)「一応電話しとくお」

呼ばれたとはいえ、連絡もなしではダメだろう。
思えばメールに返信すればよかったのに手際が悪いことだ。
そんなことを考えながら、ツンが電話にでるのを待った。
何度目かのコールのあとで、ツンが眠そうな声が電話にでた。




ξ゚⊿゚)ξ「何よ内藤~・・・こんな時間にぃ・・・」
( ^ω^)「あ、ツン寝てたのかお?さっきツンに呼ばれたから今・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ?呼ばれたって誰によ・・・眠いんだから勘弁してよねぇ・・・ふぁぁ・・・」
( ^ω^)「へ?あ、ツン!・・・ちょ、切れたお・・・なんなんだお」

ここまで急いできたのが馬鹿みたいだ。
内藤のテンションが180度反転し、肩がうなだれる。
メールを送ってきておいてあのリアクションはないだろう。
待っている間に眠くなったのだろうか。

( ^ω^)「・・・そういえば、ツンのパソコンのアドレスも登録してるはずだけど・・・表示されてなかったお・・・?」




妙に寒気がするのは冬だからだろうか。
携帯を取り出してメールを確認すると、たしかに見たことのないアドレスでメールが届いている。
ツンの携帯もパソコンも登録しているのに。
内藤の背筋に、何か良くないものが走った。予感が確信にかわっていく。

( ^ω^)「ツンじゃない・・・誰が・・・」

内藤は恐怖や不安を打ち消そうと人気を求めて歩き出した。
自転車をつきながら、暗い細道を進む。コンビニでも近くにあれば良いが、この付近には何もない。
内藤の前方に自販機の光が見えた。

( ^ω^)「と、とりあえず明るいところへ行って、飲み物でも・・・」

自販機にむかって歩みを速める。
内藤が冷静なら、気付いただろう。
自販機の光が陰っていることに。それは、人がいるという事だ。
良く注意していれば気付いただろう。
背後から、ほんの小さな足音がついてきていたことに。

内藤は、気付けなかった。




ここで時間はさかのぼる。
喫茶店で町田が捕まってから少ししたころ。
そのトラックは、高速道路を走っていた。

ダディ「・・・ふう。そろそろ自由にしてくれ」
眼帯の男「まぁ・・・もういいか。ほらよ」
ダディ「あいたたた・・・きつく縛りやがって。少佐、もう少し優しく取り押さえてくださいよ」
女「そういうな、ビデオは手にはいった」

ダディは拘束をとかれ、偽装されたトラックの荷台で身をくつろげた。
喫茶店で彼、ダディクールを捕まえたのは、公安9課。
それは本来存在しないはずの9つめの公安課。日本のCIAと呼ばれる公安にあって尚秘匿性を持った首相直属の独立権力だ。
9課の捜査員、それがダディの肩書きだった。
彼らも、町田事件の全容は掴めない。
おとり捜査や地道な聞き込み、ネット調査のためのダミーであるアメリカのネラー社での活動も効果をあげなかった。

ダディ「しかし町田ってのは何者なんだろうな。町田の姿はつかめないが鮫島は奴に消されたはずだ・・・」
眼帯の男「わざわざ一般人を使ってビデオを回収すれば町田が食いつくかと思ったが・・・やはり尻尾は出さなかったな」
女「奴は巧妙だ。喫茶店にいた三人も危険だろうな。念のためバトーを置いてきたしあの問題児もいるが・・・彼らのうち誰かが一人で外出でもすればどうなるか」




店などもなく、深夜では人気のまったくない路地。
そこにポツンとたっている自販機の近くで、争いの後があった。
割れた自販機のガラスに、散乱した空き缶。
そして、地面には血痕。
まだ固まっていない血痕を調べるように屈んでいた男が立ち上がる。
髪を後ろで束ねた屈強そうな男は、周囲を調べた後で首を振って携帯を取り出した。

男「・・・ダメだ、少佐。死んではいないと思うが、いなくなりやがった」

短い報告を終え、男は振り返る。
振り返った先に、静かに喫茶店にいた3人のうちの一人が立っていた。

(´・ω・`)「・・・あんたら公安でも事件の全容はつかめず、町田の存在も把握できない。それでも、関わった人間は消えていく・・・か」
男「うすら寒いヤマだ。いつもこうして後手に回っちまう。・・・あんた、どうする?」
(´・ω・`)「内藤の行方を捜すさ・・・卒業式には出したいからな」
男「・・・教師ってのも大変だな」




VIP高校の卒業式は春休みの最中にある。
卒業生たちの中で、一人だけ出席しなかった者がいた。
彼の友人がどれだけ探そうと行方は知れなかった。
彼の想い人が泣き崩れようと彼は戻ってこなかった。
彼は、行方不明になった。

日本の巨大掲示板、2ch。
その2chに、タブーとされる事件がある。
曰く、その事件には近づくなと。
それは鮫島事件と呼ばれた。その裏に何があろうとも、鮫島事件という門を通った人間はやがて消える。
何年たってもそれは連綿と続いてきた。
まるで誰かが仕掛けたように。まるで消えた者が仲間を欲するように。

ξ゚⊿゚)ξ「内藤・・・!ない、と・・・ぅ・・・!」

そう、消えた者は、新しく誰かを連れて行く。
卒業式の日、家で涙を流す少女の携帯が懐かしい音を鳴らす。
いなくなった少年からのメールを知らす着メロ。
そのメールには、たった一言だけ書かれていた。
全ての始まりである、あの一言が。
終わりを告げるために。


いま、鮫島にいるお




-鮫島事件、町田事件についての日記-

今日、連絡がきた。
私は行ってみようと思う。
きっと、私は帰ってこない・・・だから、誰にも言わずに行こうと思う。
両親にも友達にも心配をかけると思うけど、あの馬鹿を放っとくのはいやだから。

それじゃ、行ってきます。
もし誰かがこの日記を見て、私がいなくなっているとしたら。
その時は、探さないでください。

きっと、あなたも居なくなってしまうから。

                        2006年3月28日 (火)





(´・ω・`)「探すなって言われるとなぁ。探したくなるのが人間ってもんだ」

鹿児島にむけて、RX-8が走っていた。
卒業式の日にツンまでいなくなってしまうと、教師としては非常に困る。
しかも残された日記は諦めきったような内容だった。

(´・ω・`)「まったく・・・面倒臭い奴らだ。鮫島って遠いから嫌なんだよ・・・なぁ、お前ら」

ショボンは突然後部座席のほうに話しかける。
普段は人のいないそこに、二人組みが静かに座っていた。

('A`)「そーね。けどま、多分無事だぜ、あいつら」
(´・ω・`)「お前に言われても普通は聞き流すが・・・今回ばかりは信じよう」
('A`)「しかし先生らが関わっちまうなんて思わなかったけどなぁ・・・タブーだぜあれ」
(*゚∀゚)「アメリカまで行ってたなんてね・・・しかも、あの人に会っちゃったもんだから」




(´・ω・`)「タカラ・・・お前の兄、か」
(*゚∀゚)「ん・・・あの人、気になったことはとことん追いかけちゃう人だから」

アメリカで偶然出会った男、タカラ。
彼はつーの兄だった。
内藤とツンがいなくなって捜索が始まった頃、ショボンは町田事件について別の角度から調査を始めた。
一度ダディに聞いたビデオの存在を忘れ、自分の仮説に基づいての調査を。
そこで、意外な人物から接触をうけた。
町田事件などまったく知らなさそうな自分の生徒、ドクオに。

ドクオはショボンに会わせたい人がいるといって、ショボンにも馴染みのあるつーをつれてきた。
つーの持っていた情報のおかげで、調査は進んだ。
そもそも、タカラはアメリカで全てを語っていなかったのだ。
つーは、その残りの情報を持っていた。




ダディの語ったビデオ事件は、確かに事実だった。
だがそれは事実であるからこそ、カバーストーリーとしての側面を持っている。
公安が町田事件の全容をつかめないのは、事実であるビデオ事件を軸に据えているからだ。
公安からすれば世の裏で蠢く町田事件とは、偽者に他ならない。

実際にある研究ビデオを販売し鮫島事件を生み出し、自らの存在を隠した男。
公安がダディと鮫島を使いビデオ事件を追っているときに、鮫島を消した男。
いるのかいないのか確かではなく、それでも関わった人間が消えていく。その裏に見え隠れする存在。
それに最も近づいたのがタカラだった。
そして今、タカラがすでに消され、その情報をつーから渡されたショボンこそがその存在に一番近いといえる。

(´・ω・`)「ダディクールとかいう馬鹿に惑わされたが・・・研究ビデオの件も関係あるかもしれんな」
('A`)「かもな・・・俺には難しいことはわかんないけど」
(´・ω・`)「そういやお前役に立ちそうにないのに何でついてきてるんだ?」




('A`)「結構役に立つつもりなんだけどなぁ・・・」

ドクオはもともと、鮫島事件に興味を持っていた。
普通にそこそこ調べればわかる程度の事しか知らなかったが。
そしてあの日。
ドクオは偶然立ち寄った喫茶店で、内藤たち3人がダディと接触した隣のテーブルので話を盗み聞いた。
鮫島事件や町田事件、リンチビデオなど、聞いたことのある単語が含まれる話を聞きながらの昼飯は味を感じなかった。

喫茶店を出た後つーの様子がおかしいことに気付き、つーから町田事件の情報を聞きだすことに成功。
それからつーと推理を繰り返していたが、内藤とツンが失踪したため、ショボンに接触。
ドクオ達の知っていることを話し、協力して内藤とツンの捜索を開始した。
だから今ここにいるわけだ。

(´・ω・`)「うっせー。さて・・・まだ鮫島まで時間があるから色々とまとめてみるか。ドクオは黙ってろよ」
('A`)「・・・先生俺のこと嫌いなん?」
(´・ω・`)「いや、別に。生徒はみんな愛してるぞ」
(*゚∀゚)「ちょー良い台詞なのにうそ臭ーい」




('A`)「で、まとめるってどうすんだよ」
(´・ω・`)「そりゃまずは分かっていることを列挙して、そのあとで分からないことを話し合うんだよ」
('A`)「わかってること、ね・・・」

わかっていることは少ない。
まずビデオ事件の真相、実は研究ビデオでした、という話は公安も信じているから本当だろう。
そして、本物の町田の存在。
確認はされていない上に名前がネットに出ているだけだが、その存在感は大きい。
なにより、実在してもらわないと辻褄が合わなくなる。
柏台で鮫島が殺されたのも確実なようだ。これは、ショボンが内藤のいなくなった日に公安の男に聞いた話からして信じることができそうだ。

(´・ω・`)「・・・そういえば、公安の男に聞いた話によるとダディも鮫島も公安関係者らしいが・・・」

内藤がいなくなった日、自販機の前でショボンが聞いた話は、なんともいえない脱力感に見舞われるものだった。
ダディと鮫島は公安の人間で、調査中に鮫島が消された。ビデオ事件の調査中に。
そのために公安はビデオ事件に注力していたわけだが・・・。
おかしくないだろうか。
鮫島はビデオに上書きした映像で、町田に呼ばれたと言っていた。
町田を名乗っていたダディは同じ公安の人間なのだから危害を加えるはずがない。
だが、鮫島は町田が金目当てで暴走し、止めようとしたら呼び出されたといった。

(*゚∀゚)「・・・意味わかんないねぇ」




鮫島のメッセージは誰に対してのものだったか。
それは町田、ダディの頼みを聞いてビデオを取りに来た人間に対してのはずだ。
つまり、ダディがいつかビデオを回収しに来るとわかっていた。これは同じ公安だから不思議ではない。
公安の方針ですでに最後のビデオ回収による釣り作戦が決まっていたのなら、鮫島も知っていただろう。
それならば何故、町田が暴走し云々などという事をわざわざビデオに上書きしてまで伝えたのか。

('A`)「つーか誰が回収しても結局ビデオは公安が手に入れるんだろ?鮫島って奴は公安の連中に伝えたかったんじゃないか?」
(*゚∀゚)「・・・そっか・・・ドクオ君意外と頭回ってるね、偉いぞー」
('A`)「・・・なんであんまり嬉しくないんだ?」

鮫島が公安に伝えるためにメッセージを送ったのなら、ビデオ中の町田というのはダディのことではない。
となると、本物の町田だろうか。
鮫島は本物の町田と接触したか、それとも誰かに知らされたか。
それはわからないが、町田が暴走しているという事をなんとしても伝えたかったのか。

(´・ω・`)「・・・鮫島はベテランって訳じゃないらしいからな・・・情報だけ伝えて独断専行したか・・・?」

2chで鮫島が荒しを繰り返したのは、町田を釣り上げるためだろうか。
それに成功し、町田から呼び出されるという形で、町田を柏台駅に誘い出すことに成功した。
そして仲間を待たずに一人で柏台駅に行き、リンチされた。

('A`)「それが本物の町田だとすると、鮫島がどういう捜査でそいつに行き当たったかわかれば・・・」
(´・ω・`)「町田に近づけるかも知れん・・・ってお前どうしたんだ?なに普通に推理できてるんだ、ドクオのくせに」
('A`)「・・・何か扱いがおかしいと思うのは俺だけかな・・・」




(´・ω・`)「まぁともかく・・・鮫島がどういう捜査をしたかってのは気になるな」
(*゚∀゚)「今からそれを調べるのも難しそうだし・・・それより今は内藤君たちだね」

確かに、鮫島の事より今は内藤とツンだ。
公安の男が言うには、内藤は少なくとも殺されたわけではないらしい。
ツンは自ら鮫島に渡ったから襲われたのではない。
つまり、鮫島で致命的な危害が加えられていなければ、まだ二人は生きている可能性がある。

('A`)「そういやなんで先生は襲われもせずにピンピンしてるんだ?先生もビデオ取りに行ったんだから目立ってるはずだろ」
(´・ω・`)「俺に恐れをなしたに決まってるじゃないか。馬鹿かね君は?」
('A`)「・・・これが・・・殺意か・・・」
(*゚∀゚)「けど、もしもそうだとしたら・・・」

冗談ではなく、本当にショボンの武力を恐れ、襲うのをためらったのなら。
町田はショボンの強さを知っているという事になる。
そんなことを知っているのはごく一部の生徒と、公安くらいか。
生徒が犯人というのは無理があるとして、公安の女隊長はショボンを知っていた。
だが、喫茶店で会うまではショボンが関係していると知らなかったのだから、町田が公安の情報を手に入れたとするなら最近のはずだ。
そう仮定すると、町田は今も公安から情報を得られると考えていい。
そして、そう仮定すると鮫島捜査官が消されたときに20人を集めた理由も想像できる。
本来なら20人など集めずに町田一人で消せばいいのに、なぜ20人も集めたか。
それは鮫島捜査官が公安の人間だと知っていて、一人では手に負えないと判断したからではないか。

(´・ω・`)「神出鬼没に存在は掴めない・・・しかも公安から情報をリークできる可能性まででてきたか」




(*゚∀゚)「公安なんていう国家の機関から情報をリークできるっていう事は・・・情報の入手にかけては神業ね」
('A`)「だから神出鬼没か。どこから敵がくるか分かるからその前に逃げるんだな」
(´・ω・`)「俺たちが鮫島に向かっているのもわかっていると思うか?」
('A`)「俺たちは電子機器の類は使ってないからな・・・わかってないんじゃねぇの?」

町田が公安の裏をかけるほど情報戦に優れていようと、直接会って話してから鮫島に向かっているショボン達の動向は掴めない。
それどころか、鮫島に向かっていることもわからないはずだ。
町田が内藤たちを始末しない理由はない。
だが、まだ生きている可能性もある。
ショボンたちが間に合って、内藤たちが少しでも抵抗し時間を稼いでいれば。
もしかしたら間に合うかもしれない。

(´・ω・`)「飛ばすぞ。警察がきたら教えろ、逃げ切る」
('A`)「・・・相変わらず教師らしくない教師だな、先生」




【ここで視点と時間軸が変わる】




「ん・・・んん・・・?」

その部屋は暗かった。
締め切ったカーテンから差し込む光だけが部屋の様子を薄く知らせている。
そこは、教室のようだった。

( ^ω^)「・・・ここは・・・?」

頭が痛い。
目覚めたばかりの頭では状況を理解できず、内藤は体が痛いなぁ、とだけ思った。
起き上がり、周囲を見渡す。
どうやら、乱雑に散らかった机と椅子の中で寝ていたようだ。

( ^ω^)「・・・そうだお、僕は自販機の前で・・・ぁ痛っ・・・」

そうだ、ツンに呼ばれた夜に内藤は自転車でツンの家に向かった。
だがメールはツンからの呼び出しではなく、誰かわからない人間からのもので。
得体の知れない恐怖から人気を探して歩く途中、自販機の光を見つけた。
今思えばあの自販機の光は翳っていた。
ちょうど、人が立っていたように。
そして、頭を後ろから何かで殴られた。後ろから尾けていた誰かに。

( ^ω^)「やられたお・・・こういう時は素数を数えて落ち着くお・・・」



( ^ω^)「・・・とかいって素数って何だお?まぁ落ち着いたから結果オーライだお」

内藤は素数を知らなかったが、とりあえずこの状況に混乱するような事態は避けられたようだ。
落ち着いた頭で自分の持ち物を調べてみる。
服はあの時のまま、携帯や財布もそのままだった。何もとられてはいない。
携帯の電池もまだ残っている。
日付は3月27日。

( ^ω^)「27日・・・?随分長い間ここで眠っていたのかお?その間何もされずに・・・?」

それは極めて不自然だった。
およそ1週間ほど、内藤を襲った犯人は内藤に何も手を出さずにいたのだろうか。
たしかに体に痛みはあるが、それは襲われたときの打ち身と硬い床で眠っていたせいだろう。
他には危害は加えられていないとしか思えない。

( ^ω^)「・・・何のために犯人は僕を襲ったお?それに、何で僕は約1週間も眠りっぱなしだったんだお・・・」




内藤を襲い連れ去ったなら、当然目的は内藤を消すことのはずだ。
だが、内藤は何も危害を加えられてはいない。
監禁が目的だったとしても携帯という連絡手段を残しておくのはおかしい。
犯人の考えはいったい何なのか見当がつかない。

( ^ω^)「・・・そんなことは関係ないお。問題は、ここはどこで、どうやって帰るか、だお」

よくよく考えてみれば、犯人の思惑など知ったこっちゃないのだ。
たしかに相手の考えがわかれば裏もかけるだろうが、別にそうしないといけない訳ではない。
要は相手の思い通りにさせなければ良いのだから。
犯人の思惑はわからないが、内藤を連れてきタという事は逃げられると困るはずだ。
ならば脱出して無事に帰り着けば、内藤の勝ちだろう。

( ^ω^)「・・・見覚えのある教室だお。ここは・・・多分、鮫島特殊学級だお。つまり、僕がいるのは鮫島・・・」

教室から出るのは容易い。
たとえ鍵がかかっていても窓を破れば外に出られる。
問題はその後。
鮫島から脱出するには海を越えねばならない。

( ^ω^)「泳ぐかお・・・?いや、それはさすがにねーよwwww」

一瞬泳いで脱出することも考えたが、それはあまりに無謀すぎる。
船があれば良いが、人の住んでいないこの島には船など停まっているはずはない。
なんとかして船か、それに変わるものを調達、発見しなくてはならない。
それが第一目標だ。




案の定教室には鍵がかかっていた。
想定の範囲内だったので問題なく椅子で窓を破る。
ガラスの割れる音で犯人が来る可能性もあったが、一向にそんな気配はない。

( ^ω^)「とりあえず犯人は近くにいない、と・・・船がなくても島内で鬼ごっこすれば時間を稼げるかお?」

今までの鮫島事件を追った経験が、内藤に冷静な行動力を与えていた。
自分が襲われ捕まっている状況でも落ち着いて行動できる強さを。
もうあの夜のように恐怖に竦むのは御免だった。
カーテンが閉められた薄暗い教室から外に出る。
思いのほか外は明るかった。
携帯の表示時間はまだ正午くらい。活動するにはうってつけだ。
途中で拾った角材で武装し周囲を警戒しながら、内藤は海辺へ急いだ。




( ^ω^)「やっぱり船なんか無いかお。こんな島に来る物好きもいるとは思えないし・・・さて、どうするかお」

浜辺に出たが、当たり前のように打ち捨てられた舟の一つもない。
海に突き出た船着場は年に何回機能するのだろうか。
おそらくこの島には船などないだろう。
となればどうにか呼ぶしかないが・・・。

( ^ω^)「・・・犯人が携帯を残しているのが気になるお。使っても大丈夫なのかお・・・?」

内藤の持つ唯一の連絡手段は自分の携帯だけだ。
電池は残り2本。ドコモの携帯はすぐ2本目がなくなるめ、実質は残り1本と考えていいだろう。
あまり悩んでいる時間はない。

( ^ω^)「これは困ったちゃんだお・・・携帯に仕掛けでもあるのか、犯人が間抜けなのか・・・」

ただ単に犯人が間抜けなのだったら別にいいとして。
仕掛けがされているとしたら盗聴だろうか。
詳しい人間なら何をしてくるか分からないが、一般人に出来るのはその程度のはずだ。
つまりメールなら問題なく連絡できる可能性が高い。
だが、もし相手が携帯などの機器に精通していたら、内藤の思いつかないような仕掛けがある可能性もある。
それこそ外界に連絡をしようとして爆発、なんて展開にでもなったら大変だ。

( ^ω^)「携帯は最後の手段にしておくお・・・今はひとまず地理の把握をしとくお




内藤は島を歩き回った。
前回来た時にざっと見たが、深い森と山を除けば人が歩ける範囲はそう広くない。
さすがに特殊学級には近づかないとすると、もし犯人が出てきた場合の鬼ごっこの舞台は特殊学級への道と浜、それ以外の平地くらいだ。
浜には昔漁に使っていたのか、小屋がいくつかある。

( ^ω^)「遮蔽物がなくて見晴らしが良いお。浜周辺を拠点にするお。・・・にしてもこの辺は寒いお」

海からの風が歩きつかれた体に堪える。
もう日は傾き、一番星が見えていた。
夜になるとさらに冷え込むだろう。体力を温存しておくべきかも知れない。
幸い今は浜辺に戻ってきている。
いくつかある小屋のどれかに隠れて休めば、すぐには見つからないだろう。

( ^ω^)「犯人がいる様子もないし・・・ちょっと休憩するべきかお?」




内藤はいくつかある小屋の一つにはいった。
中には漁具のほかに古ぼけたマッサージチェアが置かれている。
壊れているが、少し眠るくらいならできそうだ。

( ^ω^)「・・・危険かもだけど歩き回って疲れたお。ちょっと失礼して・・・よっこらせっくす、げほんげほん!」

マッサージチェアに腰掛ける。
舞い上がった埃で咳き込むが、すわり心地は中々よかった。
予想外に眠い。
冷静に行動できたのは良いが、それでも緊張はしていたようだ。
こんな状況で眠くなるのは好ましくない。

( ^ω^)「ねみー。けどその前に脱出手段を考えるお・・・」

この島には船はない。おそらく訪れる船も。
映画のようにイカダを作るのは不可能だし、その間の食料もない。
やはり、誰かを呼ぶしかない。
不安は残るが携帯を使うしかないだろう。




( ^ω^)「誰に送るかお・・・先生、ツン・・・すぐ動きそうなのはツンだお」

電話帳からツンのアドレスを開き、メール作成画面を呼び出す。
どんな内容が良いだろう。
とりあえず今鮫島にいることは真っ先に伝えなければならない。
次になにを伝えれば良いか考える。
考えるが、頭に靄がかかっている。まぶたが重い。
マッサージチェアに座るべきではなかった。予想以上の疲労が睡魔となって内藤に襲い掛かる。

( ^ω^)「・・・これはやばす・・・あ゛ー・・・」

片手に携帯を持ったまま、内藤は眠りに落ちた。




( ^ω^)「・・・グヘ、グヘヘヘ・・・ムニャ・・・」

内藤は夢を見ていた。
バーボンハウスでツンと過ごした一夜の夢を。
だが、夢は良いところで雑音に邪魔をされた。
まるでドアを開け閉めするような音が、だんだんと大きくなっていく。

( ^ω^)「んむぅ。なんだお・・・?・・・って寝てる場合じゃなすwwww」

すっかり明るくなった中とびおきる。
片手にはまだ携帯が握られていた。
ツンへのメールを作成途中のまま呑気に夢を見ていたようだ。
時刻は28日の昼過ぎ、随分長い間眠ってしまった。

( ^ω^)「いい夢みてる場合じゃないお。あの音がなかったら・・・音が・・・?」

夢を邪魔した音は、ドアを開け閉めするような音だった。
ちょうど今聞こえているような。
その音は一定間隔を置いて近づいてくる。
風でおきる音ではない、明らかに人間が起こす音。
その音は内藤を探していた。




内藤の居る小屋は一列に並んだ小屋の一番端にある。
音の主は、今大体3個となりの小屋にはいったようだ。
もうすぐ内藤の小屋まで来るだろう。

( ^ω^)「・・・!メール送ってさっさと逃げるお・・・!」

書きかけのメールを急いで送信し、携帯を仕舞う。
音の主は当然、内藤をここまで連れてきた相手だろう。
相手は3つ隣の小屋から出て、2つ隣の小屋のドアをあけた。

( ^ω^)「はいったお・・・中に誰かいないか探して・・・出てきたお。出るまで、約40秒・・・」

内藤は壁に寄り添って音を聞いていた。
確か小屋の扉は開き戸だったはずだ。
運のいい事に、扉を引いた場合、扉が死角になる方向に内藤の居る小屋がある。
つまり、相手が隣の小屋の扉を開け、中を確認する約40秒の間にこの小屋から出れば見つからない。

( ^ω^)「隣の小屋のドアが開く音にあわせて、外にでるお・・・」

音の主はもう砂浜を歩く足音が聞こえるくらい近くにきている。
すぐ隣の小屋のドアノブが回る音が聞こえた。
それにあわせて、内藤はドアノブを回す。
内藤の小屋と隣の小屋、その扉が同時に開いた。




外に出た内藤は隣の小屋を見る。
予想通り小屋の扉が死角になり、相手はこちらに気付いていない。
顔を確認したいところだが、そうも言っていられない。
扉を閉め切らず、音がでない辺りでとめて、小屋の裏手を目指す。
抜き足で小屋の横側に回ったあたりで、扉を閉める音が聞こえた。

( ^ω^) (これで奴が僕がさっきまでいた小屋を調べるのに約40秒・・・走って逃げても見つかるお・・・)

走って逃げても、40秒では途中で見つかり追いかけられるのは確実だった。
内藤の居た小屋の扉が開く音が聞こえてくる。
ここはひたすら隠れてやり過ごすのが得策だろう。
内藤は全神経を耳に集中させ、相手の足音に注意した。
小屋の扉を開けてから足音は聞こえない。
その場で中を確認しているのか、それとも忍び足でこっちに来ているのか。

(;^ω^) (・・・緊張するお。いつもこんな思いをしているスネークを尊敬するお・・・)




しばらく何の音もしなかったが、突然足音がした。
気配を殺そうなどという思惑が感じられない大きな足音。
その足音は小屋の中央あたりで止まった。

(;^ω^) (小屋の中に・・・?何か残してしまったかお・・・?)

内藤は何も残していないはずだ。
残すも何も、携帯以外何も取り出していない。
相手は小屋の中でじっとしているようだ。
今のうちに逃げたほうが良いだろうか。
そう思ったとき、小屋の中から声が聞こえた。

男「頭かくして尻隠さず・・・って知ってるか?ん?中々注意深くて度胸もあるみたいだがよ・・・この小屋って板が割れてるのな」
(;^ω^)「!!」

そう、板が割れていた。
小屋の壁の板、ちょうど内藤が立っているあたりの、足元の板が。
その割れ目から内藤の足が見えている。

(;^ω^)「大佐!ミッションは失敗だお!!どうしたスネーク!スネェェーーーク!!」

もうやり過ごすとか言ってる段階ではない。
とりあえず意味不明な大声を出しながら内藤は駆け出した。




( ^ω^)「レッドアラート、レッドアラート・・・!」

背後から足音と、なにやら叫ぶ声が聞こえる。
待てと言っているのだろうが、そういわれて待つ馬鹿はいない。
撹乱のために林にはいる。
しばらく走って背後を確認すると、人影はなかった。

( ^ω^)「・・・?ま、撒いたのかお?やけにあっさりだお・・・」

必死に追いかけてくるかと思ったが、そんな気配はない。
軟禁の仕方といい追いかけてこない事といい、内藤に関心はないのだろうか。
だが、逃げ出した内藤を探していたという事は、少なくともこの島から逃げてほしくはないのだろう。

( ^ω^)「・・・油断大敵だお・・・寝ちゃって危なかったからもう寝れないお。とりあえずこの木の上に・・・」

林の入り口近く、何とか浜辺が見える木によじ登る。
葉も多くしっかりしている枝は、隠れるには中々良い。
出来るだけ見付かり難そうな枝に陣取り、内藤は周辺を監視した。




葉の陰から見える浜辺には人影はない。
内藤を探していたのは声からして男だった。
あの男はどこに行ったのだろうか。
もし相手が一人ならどうにかして取り押さえるのも有りだと思うが、自販機前で内藤を襲ったのは二人組みのはずだ。
この鮫島にも、さっきの男以外にもう一人いると考えたほうが良い。

( ^ω^)「・・・そういえば携帯、メール出したんだお・・・」

浜辺の小屋でメールを送信したことを思い出す。
急いでいたため途中メールしか送れなかった。鮫島にいることしか伝えられていないため、もう一度メールを出したほうが良いだろう。
携帯を取り出しメール作成画面を立ち上げようとするが、携帯の電源ははいっていなかった。
何度試しても電源は入らない。

( ^ω^)「・・・電池切れ・・・」

内藤はツンに事情を伝えた後、ショボンを呼ぶ気だった。
ツンだけでは危険だし、心もとない。
ショボンも呼んだほうが心強いのだが、これではもう誰にも連絡できない。

( ^ω^)「・・・警察でも呼んだら良かったお・・・ツンは、来るかお・・・?」




内藤は木の上で夜を明かした。
体を休めるにもこんな木の上では休めず、さすがに堪える。
木から降りようかと思ったとき、船など寄り付かないと思っていた船着場に向けて、船が向かっているのが見えた。

( ^ω^)「・・・!誰か来たのかお!?」

ツンにメールを送ってから1日しかたっていない。
さすがにこんなに早く来るはずはないと思うが、飛行機にでも乗って急いでくれば無理な時間ではない。
内藤が見守る中、船が船着場に着く。
どうやら漁船のようだ。
漁師のおじさんが船をとめ、中から誰か出てくる。
内藤の都合のよすぎる期待が珍しく実った。
中からでてきたのは、昨日メールを受け取ったばかりのはずのツン。


漁師「いんやー、こんな所に何の用か知らんが気をつけてなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、どうもありがとうございます」
漁師「気にせんで良いよ。んで、明日迎えに来れば良いんかい?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、明日の正午で・・・必ずお礼はしますから」
漁師「まぁ暇だからねぇ。危ないことはするんじゃないよ」

ツンをおろした漁船は悠々と帰っていく。
帰っていく船に手を振り、ツンは歩き出した。

ξ゚⊿゚)ξ「あの馬鹿、どこにいるのかしら・・・」



内藤は木から飛び降りた。
着地の衝撃で痺れる足を引きずって走る。

( ^ω^)「こんなに早く来てくれるなんて思わなかったお・・・!」

もしかしたら今すぐツンと合流すれば、あの漁船を呼び戻せるかも知れない。
犯人と思われるあの男も気付いているかもしれないが、島から出てしまえば内藤の勝ちだ。
一応周囲を警戒するば、人影はない。
もし誰か来ても内藤が船着場にたどり着くほうが早いだろう。
それに、ツンも馬鹿ではない。護身用具くらい持ってきているかもしれないし、合流すれば有利になるはずだ。
一気に形成有利になる可能性が出てきて、内藤は拳を握り締めた。
疲れなど忘れ、砂を踏みしめ走る。
浜辺を突っ切り船着場までたどり着いた内藤を、唖然とした表情のツンが出迎えた。




ξ゚⊿゚)ξ「・・・は?」
( ^ω^)「ツン!来てくれてサンキュー愛してるだお!あの船呼び戻せないかお!?」
ξ゚⊿゚)ξ「ぇ、ちょ、愛・・・!?って違う!何なのよ内藤、あんたなに普通に出てきてんのよ!?」
( ^ω^)「そんな事より船だお!呼び戻せればさっさと脱出できるお!」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ?呼び戻すってどうやんのよ!大声だしても聞こえないし!!」
( ^ω^)「ええぃ使えな・・・なら何か武器になりそうな物とかないかお!?」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょ、今使えないって言おうとしたでしょ!せっかく来てあげたのに!ええ武器になる物なんかありませんよ、私は使えない女ですからねーだ!!」
( ^ω^)「ちょ、逆ギレっておま、プギャーwwww」
ξ゚⊿゚)ξ「くぅぅ・・・!心配した私の時間を返せバカ内藤ーっ!!」

寂しい静寂が支配するはずの鮫島船着場が一気に騒がしくなる。
内藤は期待と焦りのためにテンションが上がり、ツンは意味もわからない急展開にとりあえず内藤に張り合っていた。
内藤とツンは小1時間ほど怒鳴りあい、少しずつ落ち着いていく。
よく考えればこんな所で口論している場合ではない。

( ^ω^)「はぁ・・・はぁ・・・いや、来てくれてありがとうだおツン・・・サンクスギビング!」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと・・・爽やかに収集つけようとしてんじゃないわよ・・・ふぅ・・・疲れた・・・」




しばらくわめき散らした割りに、船着場にはまだ誰も近づいていないようだ。
とりあえず合流は無事成功したといって良いだろう。
内藤はツンの持ち物を確認した。
携帯と電池式の充電器に、化粧品一式、ペットボトルの飲料水。
他にはフリスクと痴漢撃退用スプレーにカロリーメイトが1箱。

( ^ω^)「・・・なんで化粧品なんか持ってきてるんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いつも使ってるバッグもって急いできたからよ・・・それより説明しなさいよ。なんであんたピンピンしてんのよ」
( ^ω^)「それは・・・」

内藤は目覚めてからの経緯を説明した。
最初は軽く機嫌が悪かったツンだが、しだいに何か思案するような表情になる。
おそらく内藤と同じ疑問を感じているのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ「わざわざ内藤を襲って連れてきたわりには待遇が変ね・・・邪魔ならさっさと殺せば良いし、利用するにしても無関心すぎる」
( ^ω^)「そのとおりだお。僕をここに連れてくることに意味があったのかお・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤に用でもあったって?けど確かにそうでもない限り生かしておく理由は・・・」




( ^ω^)「けどそれにしては・・・!?・・・ストップだお、ツン。ちょっと話しすぎたお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」

誰も近づいていなかったはずの船着場の入り口に、二人組みがたっていた。
内藤を探していた男と、見知らぬ女が。
浜辺にあるいくつかの小屋の一つ、その扉が開いている。
まさかあの小屋に潜んでいたのだろうか。

男「本当に話しすぎだ。逃げ場ないぞ、そこ」
女「だからちょっと話聞いてもらおうかしら?」




( ^ω^)「話・・・?」
男「ああ、まず君をボコって連れてきたのは謝るよ」
女「これは伝統でね。どうしてもこの鮫島で話を聞いてもらいたかった」

相手の二人組みからは敵意は感じられない。
船着場の入り口にたっているため内藤とツンに逃げ場はないのだが、襲ってくる気はないようだ。
内藤はさりげなくツンを後ろに下がらせ、相手の出方を伺った。

( ^ω^)「どういうことだお。あんたらは町田事件に近づいた僕たちを消すのが目的じゃないのかお?」
男「それは違うな・・・消すのは目的じゃない」
女「町田事件に近づいたあなたを引き入れるため・・・一人増えたみたいだけど、そのために携帯を残しておいたんだし別に良いわ」
ξ゚⊿゚)ξ「増えたって私のことね・・・引き入れる・・・?」

男「そう。引き入れ、勧誘、後継・・・。ちなみに俺の名前は町田」
女「そして、私も町田・・・」




( ^ω^)「町田・・・!?二人とも・・・?」
ξ゚⊿゚)ξ「なにを・・・」

こちらを混乱させるのが目的、という感じではない。
町田と名乗った二人組みは大真面目な顔をしている。
男は、後継といった。
後を継ぐとは何を継ぐというのか。

町田A「町田というのは個人じゃないんだ。もとは個人だったんだろうけど、今は違う」
町田B「あなた達のように、町田事件に近づける人。それが町田になる条件」

二人組が言うには、町田というのは一種の思想や概念のようなものらしい。
数十年前にいたとされる町田という人物の考えを受け継ぐ人間が、町田という名を名乗る。
神出鬼没であり、時に行動理念が理解できなかったりする理由がそれだった。
複数いるから、神出鬼没で、且つ理念に違いがでる場合がある。
そして、複数だからこそ町田は捕まらない。

( ^ω^)「・・・嘘こけだお。大体なんのためにそんな事をするお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ビデオ販売や柏台事件の犯人もあんた達なの・・・?」
町田A「違う。それは先代の町田だ」
町田B「先代は偉大だったわ。今の町田事件、鮫島事件のほとんどは先代の仕業なのよ




内藤たちの前にいる2人組みは、先代とやらの偉業を語りだす。
その先代の町田は一人だったそうだ。
基本的に町田の思想というのは反国家的なものであるため、政府へのイメージダウンなどを、政府を蝕むことを目的としているらしい。
町田事件を分割し隠す5つの鍵のうちの一つ。
今まで詳細がわからなかった死刑執行の都市伝説は、この先代の事のようだ。
先代町田は政府に都合の悪いネタを偶然掴み、捕まった。
そのころの町田は1人だった上に、捕まえた公安も町田という名前は知らなかったため、普通の事件として処理しただろう。
だが、本当に偶然、先代町田は死刑執行後も死ななかった。
執行後に逃れた町田は自分の恨みも重なり、政府ですら覚えていないような実験ビデオを販売、町田の存在を偶然嗅ぎつけた鮫島捜査官を消し、数々の隠蔽工作を行った。

町田A「その辺の詳しいことは君達も知っているだろう」
町田B「政府を蝕む、という点では地味に思うかもしれないけど、その活動は町田事件という日本最大級の都市伝説を形成するに至ったわ」

そして、その当時町田事件を追いかけていた男女に町田の名を譲り、姿を消した。
今その先代がどこで何をしているのかはわからない。

町田A「俺たちも最近公安に目をつけられ始めたらしくてな」
町田B「まだ捕まらないと思うけど、町田という存在は掴み難ければ掴み難いほど良い」
( ^ω^)「・・・だから素質がありそうな僕たちを後継者にしようってのかお?そんな事にメリットがあるとは思えないお」
ξ゚⊿゚)ξ「メリット・・・そうよ、なんの利があってそんな危ない橋を・・・あなたたちだって捕まる危険を冒してまで・・・」




町田A「メリットといわれてもな・・・それは人それぞれじゃないかな」
町田B「お金、復讐、愉快犯、理想・・・とかね」
( ^ω^)「金や愉快犯なんて論外だお。復讐だって別に褒められたことじゃないお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「理想って何よ、犯罪にかわりはないでしょうに」
町田A「理想か・・・お前たちは今の日本はダメだと思わないか?」
町田B「私達は日本を憂いて町田として活動しているの。真に憂国の士としてね」

町田二人組みは、日本を正しい方向に軌道修正するために活動しているという。
欧米に傾きすぎ、特定亜細亜との待遇にある差や、戦時中の賠償責任。
日本は隣国との連携を強くすべきである。等等。
その活動の裏には某政党や宗教団体がついているとも。

( ^ω^)「・・・バカじゃないのかお。あんたらは日本を売り渡すために、わざわざひーこら言ってるっていうのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたら本当に日本人なの?たしかに日本はダメかもしれないけど、あんたらの言ってることはもっとダメだわ」

町田二人組の主張はおかしかった。
明らかに某宗教団体に洗脳されているとしか思えない。
そんな奴らが偶然町田事件を調べ、先代町田とやらに見初められたというのなら、世も末としか言いようが無い。
おそらく周囲の人間にもそう言われて町田を継いだのだろう。
その反論に、二人の顔色が変わった。

町田A「・・・この日ノ本原理主義者め」
町田B「期待はずれだわ・・・」




( ^ω^)「期待はずれなんてよく言うお。結局あんたらは町田の思想じゃなくて自分の主張を押し付けてるだけじゃないかお」

町田二人組みは無言だった。懐に手をいれ、スタンガンを取り出す。
内藤たちに逃げ場はない。
ツンの前に立ち、内藤は身構えた。
町田二人組はゆっくりと歩いてくる。
啖呵を切ったは良いが、内藤たちに逃げ場がない以上取っ組み合わなければならない。

町田A「残念だよ」

内藤たちの目の前まで迫った町田Aがスタンガンを構える。
飛び道具でない分マシだが、当たれば終わりではある。

( ^ω^) (・・・謝っちゃおうかお・・・とりあえずこの男は何とかして・・・)

内藤がどう出るか思案する間もなく、町田Aは腕に力を入れる。
内藤の体が強張った瞬間、内藤の背後からツンが飛び出した。




ξ゚⊿゚)ξ「えい」
町田A「!?おぅっ・・・!」

ツンが手を突き出す。
突き出したツンの手には痴漢撃退用スプレーが握られていた。
突然飛び出てきたツンにスプレーを吹きかけられ、町田Aが怯む。

( ^ω^)「あ、隙ありだお!」

内藤はその隙を見逃さなかった。
横合いから思いっきり体当たり、船着場から一気に町田Aを突き落とす。
水飛沫を上げて派手に海に落ちた町田Aを見て、少し離れていた町田Bが駆け出してくる。

ξ゚⊿゚)ξ「よっ・・と」
町田B「くっ!」

だが、町田Bもツンのスプレーをあっさり食らい立ち止まった。
町田Aと同様に町田Bを海に突き落とし、内藤はツンの手を引いて走りだす。

( ^ω^)「ナイスだお、ツン・・・ていうか手馴れすぎだお」
ξ゚⊿゚)ξ「痴漢に会うなんて茶飯事だから慣れちゃってね・・・これからどうするの?」




ξ゚⊿゚)ξ「先生に連絡しましょう。それと、警察にも」

ツンは走りながら携帯を取り出した。
内藤は後ろを警戒しながら林のほうへツンを誘導する。
小屋のときと違って、今度は町田たちもすぐ追いかけてくるだろう。
追いつかれる前にどこかに隠れたほうが良い。

( ^ω^)「ツン、この木に登るお。隠れるには最適だお」
ξ゚⊿゚)ξ「は?木の上・・・?」

内藤は昨日隠れていた木に隠れるつもりだった。
しぶるツンを説得し、なんとか無事に木の上に登る。
まだ町田たちは追いついていないようだ。海に突き落としたのは良い判断だったようだ。
近くにこられてもばれないように葉の多い枝に陣取り、息を殺す。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・電話はまずいわね。メールで先生に・・・警察にも連絡してくれるように言っておくわ」
( ^ω^)「頼んだお。それとツン、カロリーメイト食べてもいいかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「だめ」
( ^ω^)「・・・お願いだお」
ξ゚⊿゚)ξ「だめ。静かにしてないと見つかるわよ」
( ^ω^)「・・・カロリーメイト・・・」





鹿児島のある港。
そこに、鮫島から一隻の漁船が帰ってきた。
停泊した船から人の良さそうな漁師がでてくる。

漁師「いんやー鮫島は遠いやねぇ。肩こったー」

ツンを鮫島まで送った漁師だった。
この港から鮫島まで行くには片道2時間もかかる。
さっき送ってきた少女はあんな辺鄙な島に何の用があるのだろうか。

漁師「ま・・・別に関係ないやね。自然が好きかなんかやろ」

漁師は港のそばにあるいきつけの飲み屋で馴染みの店主と雑談を交わしたあと帰路についた。
いい具合に日が焼け、水平線が赤く染まっている。
夕焼け空を眺める漁師の背後に、三人組がたっていた。
一人は携帯を開いている。

('A`)「あー、すんません。ちょっと」
漁師「んあ?なんだぁね?」
(*゚∀゚)「いきなりで申し訳ないんですけど・・・鮫島まで連れて行ってくれませんか?」
漁師「・・・まーた鮫島かい。あの島でなんかあるのかねぇ・・・」





ξ゚⊿゚)ξ「メール、送ったわよ内藤」
( ^ω^)「把握したお。先生は何て・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「もう港に来てるんですって。私が書き置いてきた日記見たって・・・乙女の日記を速攻読むなんて何考えてるのかしら」
( ^ω^)「覗き趣味でもあるんじゃないかお?」

ツンの日記はどうでも良いとして、すでに港まで来ているのなら僥倖だ。
すぐに来てくれるとすれば、あと数時間で鮫島につくだろう。
内藤は木の下を確認した。
足跡などの痕跡はない。この木の上で隠れ切れればショボンが来てくれる。
警察にも連絡してくれているはずだから、町田たちを取り押さえることが出来れば即引渡しもできるだろう。
そうすればこの一連の騒動も終わるはずだ。
そもそもツンの行方を捜すために首を突っ込んだのに、必要以上に町田事件に近づいてしまった。
その報いとして厄介なことになっているのだろうが、それも後少しで終わる。

( ^ω^)「・・・そういえばツンが鮫島事件に首突っ込まなかったら良かったんじゃ・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「何かいった?」
( ^ω^)「いや・・・カロリーメイト食べたいなぁって・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「だめ。私が食べるんだから。まぁ、どうしてもって言うなら考えなくもないけどね」
( ^ω^)「カロリーメイトにそこまでしなくても・・・」





ξ゚⊿゚)ξ「あんただってしつこい癖に・・・待って内藤、静かに」
( ^ω^)「・・・来たかお。ばれないと思うけど・・・」

ツンの視線の先、内藤たちがいる木の下に町田二人組みがいた。
スタンガン片手に内藤たちを探している。
体は濡れているが、スタンガンだけは拭いたようだ。
海に突き落としたときに感電するかとも思ったが、別になんともなかったようだ。

町田A「くそ、どこ行った・・・」
町田B「情けないわ、あんなにあっさり・・・」

かなり注意深く探しているようだが、上には注意を向けていない。
内藤とツンは息を殺して町田たちを観察する。
船着場での反応といい今の言動といい、あまり知能犯という印象は受けない。
ただ単に町田と名乗っているだけのようにすら思える。
結局町田たちは木の上に視線を向けすらせずに通り過ぎていった。

( ^ω^)「いったお・・・それにしてもあいつら、それほど頭が良いようには思えないお」
ξ゚⊿゚)ξ「町田は思想や概念の類って言ってたけど・・・なんなのかしら。町田の思想っていうのはあいつらの言ってたような考えなの?」





( ^ω^)「町田の思想・・・町田という概念。そんなに単純なものならとっくに捕まってなくなってるんじゃないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ・・・どんな思想かは知らないけど、政府に仇をなすっていうのは確かみたいだし」
( ^ω^)「それがあんな陳腐なことを言うかお・・・?」

町田事件という大掛かりな事件まで作り出し、名前すら冠するに至ったのだから先代の町田とやらは随分頭が良かったのだろう。
それが後継に選ぶからには、それなりの理由があったはずだ。
本当に理想の合致だろうか。
今内藤たちを探している町田二人組みの目的は、単純に言えば政府のイメージダウンを促し大陸側への影響力を弱める、といったもののようだ。
だがそれが町田という思想の目的なら、もっと表立って活動もできるはずだ。
存在を巧妙に隠しながら数十年も動く理由としては少し弱い気がする。

( ^ω^)「なんにせよあの二人組みが町田だっていうからには、今の町田の行動理由は奴らがいってた事なのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね・・・思想なんて磨耗するわ。結局は町田っていう隠れ蓑を使って自己満足してるだけなのかもね・・・」





内藤とツンは小声で話を続けた。
先代の町田からの後継があの二人のみだとすれば、あの二人を捕まえる事が出来れば町田事件は終わる。
町田という存在も途絶え、2chで鮫島事件、町田事件に興味をもつ人間も減っていくだろう。
ツンの興味から巻き込まれた事件だが、内藤は今捕まって消されるか、捕まえて終わらせるかの重要な分岐にさしかかっていた。
捕まえると行っても、内藤たちが向かっていく必要はない。
ショボンが警察を連れてきてくれるとすれば、それまで見つからずにいれば良いのだ。
あと数時間、この木の上でじっとしていれば町田事件は終わる。
それを確認し、内藤とツンはカロリーメイトをわけあった。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・暗くなってきたわね。どれくらいで先生来るかしら・・・」
( ^ω^)「港で船を探して警察もつれて・・・だと、時間が掛かるかもしれないお。それでも今日中には来てくれるはずだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。はやくき・・・あっ」

わずかに動かしたツンの足が、狭い枝の上に置かれたペットボトルに当たった。
中身が半分ほど残っている500mlのペットボトルが眼下のしげみに落下し、大きな音をたてる。
少しして、ペットボトルの落ちた茂みにライトの光があたった。




( ^ω^)「ちょwwwねーよwww」

ライトに照らされたしげみの中に落としたペットボトルが見える。
内藤とツンは体を強張らせ息を殺したが、ライトの持ち主はどんどん近づいてくる。
ショボンが来るにはまだ早い。ツンの迎えの漁師でもないだろう。
間違いなく町田だ。
ライトの光は一つしかない。二人で1つのライトを使っているのだろうか。
近づいてきたライトが持ち主の体を照らす。体格、服装からして、町田の男のほうだった。

町田A「・・・イタチか何かか?ここら辺で・・・」

茂みを覗き込む町田Aの動きが止まる。
町田Aは茂みの中に手をいれ、ペットボトルを拾い上げた。
左右を見渡し、しばらくして上を向く。
木の上を見つめる町田Aは、とんでもなく嫌な目をしていた。
薄ら笑いを浮かべてじっくりと1本ずつ枝にライトをあてていく。

(;^ω^) (・・・これは・・・見つかるかも知れんお。ていうか多分見つかるお)
ξ゚⊿゚)ξ (相手は一人だしやっちゃいましょう。内藤がここから飛んでぶつかればいけるんじゃない?)
(;^ω^) (そんなに簡単に言うならツンがやれば良いと思うお・・・)

内藤たちの隠れている場所にライトが当たる。
下方からは葉で見えにくいはずだが、少しでも動けばばれるだろう。





町田Aは葉の集まった枝にライトをあて、注意深く観察する。
その枝はちょうどペットボトルが落ちてあった茂みの真上だ。
内藤たちが上にいるとは限らない。もしかしたら遠くから放り投げただけで、とっくに別の場所に逃げた可能性もある。
だが、ペットボトルの落ちていた茂みの真上に、偶然葉の多い枝があるのが気になった。

町田A「怪しいな。こっから見えないのが怪しい・・・どれ」

町田Aは太めの石を拾い、葉の中心あたりに投げた。
狙ったのは、ちょうど枝の上。人がいればそこに座っていると思われるくらいの場所だ。
石は葉を突きぬけ、枝の上を通り過ぎていった。
だが、次に投げた石は様子が違う。
枝の上で何かにあたったように、石は勢いを失いそのまま真下に落ちてきた。
枝にあたったような音もしなければ、石が落ちたのはペットボトルが落ちていたすぐそば。

町田A「見つけたぞっと・・・」

町田Aの頬が吊りあがる。
ライトをもつ手と反対の手にスタンガンを持つと、木の幹を蹴りだした。
木の幹を蹴りながら、どうやって引き摺り下ろそうかと町田Aが考えた時、枝の上から何かが飛び出した。




町田A「ふひっ!バカめ!」

おそらく突然飛び降りて嘘をつこうとしたのだろう。
だが町田Aはひるまなかった。
飛び出した相手が着地する前にスタンガンを振るう。
思い切り降ったスタンガンは相手の腹に突き刺さり、電流で気絶する。

町田A「あ?」

そのはずだった。
だが、町田Aのスタンガンは空を切る。
そこに降り立ったはずの相手は居らず、茂みに何かが埋まっていた。
それが町田Aが探していた二人組の片割れの女が持っていたバッグだと気付いた時、町田Aの首に衝撃が走った。





( ^ω^)「ひっかかったお!」

町田Aは、苦し紛れに内藤が落としたツンのバッグに反応した。
内藤は茂みを覗き込むような体勢の町田Aの延髄目掛けて、全体重をのせて降り立った。
降ってきた内藤に踏まれ、町田Aはカエルのように地面に突っ伏す。

( ^ω^)「スタンガンなんて微妙な武器もってんじゃねーおwww」

内藤は町田Aが立ち上がる前にスタンガンを拾い上げた。
使い方はわからないが、スイッチは既にはいっている。
スタンガンの先端に青い電光を確認した内藤は、躊躇なく呻いている町田Aに押し付けた。
洗濯バサミの外れたような音がして、町田Aの体が一度大きく跳ね上がる。
そのまま崩れ落ち、時折痙攣しながら町田Aは意識を失った。

ξ゚⊿゚)ξ「最近のスタンガンって凶悪ね・・・」

町田Aが気絶したのを見届けて、ツンがゆっくり木から下りてくる。
内藤は町田Aの持ち物を物色していた。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・なにしてんの内藤?何か役に立ちそうなものでもある?」
( ^ω^)「たいしたものは持ってないお。食料くらい持ってて欲しかったお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「食べ物は後で食べられるから我慢しなさい・・・とりあえずこいつ縛っときましょう」




( ^ω^)「縛るって・・・ロープなんかないお」
ξ゚⊿゚)ξ「そいつの服脱がして縛れば良いじゃない。私後ろ向いてるから早くね」
( ^ω^)「ツン・・・恐ろしい子・・・!」

内藤は町田Aの服を脱がし、それをロープ代わりにして木の幹に縛り付けた。
可哀想だからパンツは残しておく。というより、触るのが嫌だった。
スタンガンとライトを頂いた後、町田Aを放置して場所を変える。
町田Aが一人だったという事は、残る女町田のほうもどこかで内藤たちを探しているのだろう。

( ^ω^)「・・・ということは、特殊学級跡にもどれば食べ物くらいあるんじゃ・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたそんなにお腹減ってんの?」

おそらく町田たちは特殊学級跡を拠点としているはずだ。
となると、食料や水もあるだろう。
さらに言えば、あれは鮫島でもっとも建物らしい建物だ。
鍵も掛かるし、スタンガンしか持っていないはずの町田Bを相手になら十分立て篭もれる。
これは内藤が空腹のあまり思いついた理屈だったが、ツンもたしかにこの寒空の中で外を逃げ回るのは嫌だった。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・そうね。灯台下暗しって言うし、あんがい見つからないかも・・・」





内藤とツンは特殊学級跡のそばにある林から、特殊学級の教室を見つめていた。
電気など通っていないだろうから明かりの有無なんかでは中に人がいるかどうかわからない。
だがそれでも、中に人がいるならライトの光が見えるはずだ。

( ^ω^)「いってみるお、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・そうね。カーテンを閉めてるのが気になるけど、それでも全然気配はないし・・・近付くくらいなら大丈夫だと思うわ」

内藤とツンは林から出て、特殊学級の壁に寄り添う形で進んでいった。
カーテンの隙間から教室の中を覗いてみるが、どの部屋にも町田の姿はない。
二人は特殊学級の中にはいり、入り口に鍵をしめた。
内藤が捕まっていた教室には何もない。もう一つの教室も似たようなものだった。
町田たちが使っていたのは職員室のようだ。

( ^ω^)「お・・・リュックがあるお。やっぱりここに陣取ってたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤、こっちのリュック食べ物はいってるわよ。コンビニ弁当とか」
( ^ω^)「そこkwsk」

職員室の机の上には2つのリュックがあった。
ツンが開けたリュックの中にはおにぎりやパン、弁当などが入っている。
内藤はそれを見るやすさまじい速さで封を切り、次々に平らげて行った。
ツンはしっかり自分の分をキープしつつ、残りのリュックを開ける。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・!これ、ピストル・・・?」

リュックの中からは雑用品に混じって拳銃が出てきた。
それも、一丁だけ。一丁しか持っていなかったのか、それとも。

ξ゚⊿゚)ξ「あの女のほう、ピストル持ってるんじゃないでしょうね・・・」




ξ゚⊿゚)ξ「・・・内藤、やっぱりどこかに隠れましょう。女のほうの町田、ピストルもってるかも・・・」
( ^ω^)「ぶふぉっ!ピストルって拳銃かお?マジデ?」

盛大に噴出されたコンビニ弁当を避け、ツンは頷いた。
リュックから出てきた拳銃を見せると、内藤もツンの言わんとしている事を理解したようだ。
残った食料を全部リュックにつめ、肩にかるって立ち上がる。

( ^ω^)「二人組みだから拳銃が1つしかないのはおかしい・・・ってことかお」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ・・・スタンガンくらいなら何とかなるとしても、撃たれるとどうしようもないわ・・・見つかってもここに篭城すれば良いって訳にはいかないわね」
( ^ω^)「・・・じゃあ移動するかお・・・戻ってこられた面倒だお」

内藤は職員室のドアをあけ、廊下の様子を窺う。
内藤が食料をむさぼっていた時間はそう長くない。さすがにまだ町田Bが戻ってきていない。
ツンも拳銃が出てきたリュックに出てきたものを詰めなおし後に続いた。
先ほど鍵を閉めた入り口に向かい、鍵を外す。
ツンは外に出る前にドアを開けっぱなしの職員室を振り向いた。
拳銃が出てきたリュックは、最初よりすこし小さくなっているように見える。
ちょうど何かを取り出したように。





入り口の扉をあけ、内藤が顔をだした。まず左を向いて安全を確認する。
次に右を向く。
内藤の顔のすぐ右手に、何か黒い塊があった。
暗くてよく見えないが、何か穴が開いていて、こっちを向いているような・・・。

(;^ω^)「あ゛・・・」
町田B「お久しぶり・・・」

入り口から顔を覗かせたまま内藤が固まる。
町田Bは拳銃を突きつけたまま、内藤に中にはいるように促した。
ツンが後ずさりスペースを開けると、内藤も後退する。
町田Bは勝ち誇ったように笑っていた。

町田B「手間をかけさせて・・・おとなしく私たちの後を継げば良かったのに」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・じゃあもし継ぐって言ってたらどうなったの?あなたたちと仲良く犯罪者?」

圧倒的不利なこの状況で、ツンは町田Bを睨み付けた。
内藤の横に歩み出て町田Bに張り合ったツンを見て、内藤は困惑した。

(;^ω^) (ちょ、なに挑発してんだお。撃たれちゃうお)





引き金はすぐにはひかれなかった。
反抗してきたツンが面白いのか、町田Bの笑みは崩れない。

町田B「気丈な娘ね。そうよ、私たちと協力して一緒にこの日本を・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「嘘ね。公安に嗅ぎ付けられかけてるって言っといて一緒に、なんて・・・私たちを囮にして公安をやり過ごすつもりなんでしょう?」
町田B「・・・ふん」

図星なのだろう、町田Bの表情が固まる。
内藤をここまで連れてきた理由が跡継ぎとして使うためなら、わざわざ鮫島に来た理由も分かる気がした。
ただ単に町田という思想を受け継いで欲しいだけなら、鮫島まで連れてくる必要はない。
だが公安への囮、ダミーとして使うのならば。おそらくこの鮫島で町田たちの知っている情報を与え、一足先に町田たちが帰った後で公安が内藤を捕まえる。
そんな感じの算段だったのではないか。
町田Bは表情を固めたままため息をついた。

町田B「・・・否定はしないわ。たしかに、身代わりはほしかった・・・」
( ^ω^)「・・・ツン、さがるお。危ないお・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ内藤・・・さっき持ってきたから」

ツンは隠していた拳銃を町田Bにむけて勢いよく取り出した。
わずかに震える手でしっかりと拳銃を握る。

ξ゚⊿゚)ξ「これで条件は同じ・・・いえ、こっちは2人だからあなたが不利よ」





町田B「あなた・・・使い方知ってるの?」

町田Bは驚きもせずに冷ややかに言い放った。
固まっていたその表情はわずかに変化し、呆れたようにさえ見える表情を浮かべている。
ツンは無言で拳銃を向けている。
手の震えが増したように見えるのは、動揺しているのだろう。
内藤は拳銃を見た。

( ^ω^)「・・・大丈夫だお、ツン。ロックの類はかかってないお。あとは引き金を引けば弾が出るお」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・なんでわかんのよ」
( ^ω^)「僕はガンオタだお。ちなみにそれはベレッタM93Rだお。特徴は3点バー・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「わかったわ。・・・どうするの町田さん、弾撃てるらしいわよ・・・」

ちなみに内藤のいっていたのはハッタリだ。
拳銃の名前はあっているが、内藤は安全装置やら何やらのことは知らない。
それでも詳しいふりをすれば町田Bへの牽制になるはずだ。
拳銃が撃てる状態だと思わせても、ツンが実際撃てるかどうかを町田Bは考えるだろう。
内藤もツンに人を撃ってほしくはなかった。
ツンの手に自分の手を重ね、拳銃を受け取る。

ξ゚⊿゚)ξ「内藤・・・」
( ^ω^)「ツンはやらなくて良いお。いざという時は僕が・・・」

内藤がツンに変わり拳銃を構える。
その手は震えていなかった。火事場の馬鹿力というか、内藤はピンチになると胆が据わるようだ。
だが、本当に撃ちそうな雰囲気の内藤を前にしても、町田Bは表情を変えない。

町田B「あなたたちね・・・なんでそれ置いていったかわかる?」





町田B「私より好戦的なはずの私の相棒がなんでそれを置いていったか・・・」
( ^ω^)「・・・!くっ・・・!」

町田Bの言わんとしている事を理解し、内藤は引き金を引いた。
引き金には抵抗がなく、弾丸を発射する変わりに虚しい手ごたえを内藤に伝える。
町田Bは適当に狙いをつけているようだ。というより、専門的な知識はないのだろう。
おおまかに狙いをつけたその銃口は、ツンに向いていた。
内藤はとっさにツンを抱きこみ身を捻る。

町田B「それね、壊れてるのよ」

ツンが声にならない悲鳴を上げる。
内藤に抱きかかえられ、庇われながら、ツンは生まれて初めての本物の銃声を聞いた。
ツンがその銃声に目を瞑る前に少しだけ内藤と目があった。
内藤は、ツンにむけて笑いかける。





ξ゚⊿゚)ξ「・・・っ!」

はじめて聞く銃声は、想像と違ってあまり迫力がなかった。
体はなんともない。
それでも、瞑った眼を開きたくなかった。
目を開けば抱かかえられている自分の体ごと、内藤が倒れてしまうような気がして。
だが、内藤は倒れなかった。
かわりに何かが地面に落ちる音がする。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・?」

目を開くと内藤の顔が見える。
内藤は呆けた顔で町田Bのほうを見ていた。
ツンもそれに習い町田Bの方を見る。
町田Bの手に握られた拳銃から硝煙が昇っている。月明かりに照らされ、その硝煙はとても綺麗に見えた。
拳銃を握る町田Bの手は明後日の方向に向けられている。
町田Bの手首を、誰かの手が掴んでいた。

いつのまに近付いていたのか、その手は町田のたっている入り口の横から伸びている。
内藤とツンのいる場所からはその手が誰の手かわからない。
だが、手首にある腕時計には見覚えがある。それは毎日教室で見ていた時計だった。

( ^ω^)「まさか・・・こんなに早く・・・?」

町田Bの手を掴んだまま、手の持ち主が視界にはいってくる。
入り口から町田Bを引き摺るように校舎内にはいってきた男は、見慣れた垂れ眉をしていた。

( ^ω^)「ショボン先生!」
(´・ω・`)「Yes I am.....チッ、チッ、チッ」





ショボンは町田Bから拳銃を取り上げた。
町田Bの腕を後ろでに極め、取り押さえる。
身動きのとれない町田Bの上に座り、ショボンは取り合げた拳銃を放り投げた。

( ^ω^)「さすがショボン先生だお。僕たちに出来ないことを平然とやってのけるお!そこにしびれる憧れるお!ところで今ついたのかお?」
(´・ω・`)「いや、実は結構前から見てたんだ。どこで出て行けばキマるかなーと思ってな」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・」

唖然としているツンを意に介さず、ショボンは携帯をとりだし電話をかけた。
どうやら相手はドクオのようだ。
会話内容からすると、船着場にショボンたちが乗ってきた漁船と警察がのってきた漁船が停まっているらしい。

(´・ω・`)「さて・・・途中の林にいた裸の男はドクオが連れて行ってる。あとはこの女を連れてけば終わりだ」
( ^ω^)「無駄に手際がいいお・・・警察ってそんなに早く動くもんかお?」
(´・ω・`)「とりあえず誘拐事件って言ったからな・・・」

ショボンは町田Bを立ち上がらせ、さっさと船着場にむけて歩き出した。
内藤とツンもそれに続く。
船着場につくまでも、警察に引き渡されても町田Bは無言だった。
警察のおっさんに質問されても何も答えずに、黙ったまま船の中に連れて行かれる。
船に入る前に、内藤とツンを見てから町田Bは漁船の中に消えた。





内藤たちも警官に促され漁船に乗り込む。
ツンを連れてきたあの漁船だった。運転席にいる漁師がツンを見て笑いかける。
船の後ろには既にドクオとつーが座っていた。

('A`)「よう内藤、災難だったな」
( ^ω^)「まったくだお・・・で、なんでドクオも来てるんだお?しかもつーさんまで連れて・・・」 
(*゚∀゚)「鮫島事件絡みって聞いちゃうとねー・・・」

つーはここまでついて来た理由を説明する。
たまたま内藤がいなくなった理由をショボンに尋ね、たまたまショボンが正直に理由を教えた。
その理由が鮫島事件、町田事件絡みで、しかもよくよく話を聞くと、ショボンと内藤はアメリカで失踪したつーの兄、タカラによって多大な情報を得たという。
つまり、自分の兄のせいで真相に大きく近付き、その結果内藤は連れ去られた訳だ。
そのことに責任を感じたつーと、つーを気遣うドクオはショボンへ同行を願い出た。

('A`)「んでまぁ先生と話したり何だりしながら・・・ここまで来たわけよ」
(*゚∀゚)「内藤君たちも無事だったし、これで終りかな、町田事件も・・・」

そうだ、たしかに二人の町田は今逮捕された。
取り調べで何かしら口を割れば今まで町田を名乗った者を捕まえる事さえ出来るかもしれない。
複数存在するとはいえ、秘匿性という点でも同じ時代に存在する町田の人数はそう多くないはずだ。
おそらく今捕まった二人の町田を最後に、町田という存在は真に都市伝説となるだろう





内藤たちを乗せた船が船着場をはなれる。
町田二人と警官を乗せた船はまだ出港しないようだ。
少しずつ遠ざかる鮫島を眺めながら、内藤は口を開いた。

( ^ω^)「皆、ありがとうだお。おかげで助かったお」
(´・ω・`)「ん・・・まぁ気にするな、無事ならそれでいいさ」
(*゚∀゚)「町田も逮捕されたし、めでたしめでたし、ね」
('A`)「にしても町田ってのが特定個人じゃなかったとはなぁ・・・どうりで捕まらん訳だ」
ξ゚⊿゚)ξ「それもあの二人の逮捕で終わるわね・・・結局、本当の真実なんてものはわからなかったけど」

町田二人は取り調べの後、おそらくは刑務所行きになるだろう。
それはつまり、本当の真相の手掛かりがなくなることを意味する。
もともと鮫島事件の真相に興味を持ち鮫島まで赴いたツンからすれば、どうもすっきりしない。
ここ数年にかけて広まった鮫島事件。そして、それに覆い隠された町田事件。
真相は事件を起こした張本人である町田を名乗る人物と、その事件に深く関係した僅かな者しか知りえない筈だ。
それらの人物から話を聞くのももはや叶わず、間接的に真相を知っているかも知れない今代の町田二人も今頃は取り調べの真っ最中。

ξ゚⊿゚)ξ「あーぁ・・・結局私に出来る事なんて推理することくらいかぁ・・・」




( ^ω^)「ツン、まだそんなこと言ってるのかお?」
(´・ω・`)「こりない奴だな」
ξ゚⊿゚)ξ「だぁってぇ・・・気になるじゃない」
('A`)「けど推理つってもなぁ・・・内藤たちの話からすると町田ってのはものの考え方なんだろ?」
(*゚∀゚)「それに基づいて行動を起こすのが町田、っていう・・・一種の役職というか肩書き?なんだよね」
( ^ω^)「そんな感じだと思うお」
('A`)「そんならやっぱその考え方、思想か?それがわかんねぇとなー」
(´・ω・`)「結局は机上の空論ということになるな」

内藤もツンも無事戻ってきたし、もう関わらなくても良いだろう。
そんな雰囲気が場を支配していた。
ショボンの言う通り、事実であるという確認が取れない上に、誰かを助けるとかそういった何かしらの目的がない以上、推理することも端的に言えば無意味だ。

(´・ω・`)「それよりも・・・帰ったら内藤は卒業証書とりに来い。それと俺の家に泊まった時の事を詳しく話してもらおうかな」





( ^ω^)・ξ゚⊿゚)ξ「・・・!?」
('A`)「先生の家に泊まったぁ?そん時なんかあったのか?」

ショボンの一言で場の流れが変わり、一気に雰囲気が明るくなる。
明るいというより下世話な空気だったが、それでも町田事件絡みの雰囲気は消えうせ、まだ未練のあるツンもその喧騒の中で町田事件が頭から離れていく。
鹿児島の港に戻るまで、船は内藤とツンは部屋で何をしていたか、という話題で賑わいを見せた。
ニュー速市に帰るショボンの車では、疲労の上にさらに質問攻めによる疲労を重ねた内藤とツンが肩に頭を預けあうように眠っている。
ツンが失踪してからというもの、あまりに急な展開で厄介事が起きてきたが、それもようやく終わり。
そんな気にさせてくれるような寝顔だった。

(´・ω・`)「しんどかったが・・・後はあのメスゴリラあたりが上手い事やるだろう。はやく帰ってバーボンでも・・・」

内藤たちが町田二人組みに聞いた話によると、先代の町田というのが公安が主にマークしていた人物のようだ。
捕まった町田二人はその町田から後継として選ばれたのだから、素性を知っているという可能性も大いに在り得る。
おそらく今頃は逮捕を聞きつけた公安9課が鹿児島の港に向かっていることだろう。

(´・ω・`)「公安の尋問で真相が割れ、うまく行けば芋づる式に町田が逮捕されていき、町田思想は消滅。俺ら一般人には知らないところで真相は雲の上、都市伝説はあるべき形へ戻る・・・か」





内藤たちはニュー速市に帰ってきた。
それぞれの家の前でショボンの車から降ろしてもらう。
内藤は久しぶりの我が家で家族に色々と説明した後、ベッドにもぐりこんだ。
体に染み入った疲労が眠気に変わっていく。

( ^ω^)「うぼぁー・・・極楽だおー」

もし鮫島で町田二人組みの申し出を断らなかったらどうなったのだろうか。
その場合もこうして心地よく眠りにつけただろうか。
おそらく申し出を受け町田を継いでいた場合、気持ちよく眠ることも出来ずに、さっさと次の後継者を探して重荷を押し付けていただろう。
そもそも、初代の町田の思想と同じ考えをもつ人間が町田を名乗るべきだ。
それがどこかで狂ったから町田二人組みのような少しズレた者が出てきたのかも知れない。

( ^ω^)「ま、そんな事どうでもいいかお・・・zzz」





内藤は夢を見ていた。
男は捕まりそうになり、生贄を用意した。その生贄は捕まり、殺された。
その男は生贄が殺された後も活動を続けた。
止めるべきだったのに活動を続けた。それが信念に基づくものだったから。
理想の実現のためになら誰かを利用し、色々なものを消していった。
かの駅で邪魔なものを消した。その主犯を務めてくれた男も消した。
かの島に上陸した者を消した。都合の悪いログも消した。
アメリカで自分の起こした事件を嗅ぎまわっていた男を消した。
その男は永い間一人だった。
一人ではあったが、複数だった。複数の一人は入れ替わりを繰り返し、連綿と複数であり続ける。
そして、複数は捕まり続けた。
だけど決して、元々の一人は捕まらなかった。
その削除人は、最初に自分というものを消していたから。
そんな、意味のわからない夢を見ていた。

( ^ω^)「ぷひゅー・・・ふ・・・朝かお・・・。ふぁーぁ、わけわかめな夢みたお・・・」

その夢も朝日の中に消えていく。
夢というものは得てして奇妙なものだ。自分の持ちうる情報でさえあれば、どんな突拍子のない話でも組み立ててしまう。
おそらく夢のような想像力を日常から発揮できる人間が天才という奴なんだろう。

( ^ω^)「・・・いやー、朝からインテリチックだお。今日の朝ご飯はなんだお?」




( ^ω^)「うーん、トーストにみそ汁ってのはスタンダードなのか否か、それが気になるお・・・ハムハム、ズズー」

内藤家のいつもの朝食をありがたく頂きながら、内藤はプリントを眺めていた。
ショボンが別れ際に渡してきたプリントには、VIP高校の卒業式に出席できなかった内藤のために一人だけの卒業証書授与式を行う旨が書かれている。
場所がバーボンハウスなのが気になるがショボン個人の計らいなのだろう。
式の予定は今日。
とりあえず時間はいつでも良いらしいので今から向かおうかと思う。
少々早いが喫茶店でゆっくり寛ぎに行くと思えば問題ないだろう。
朝食を終えた内藤は玄関で、通学用のはき慣れた靴に足を通す。
内藤は出席できなかったが、もう卒業式は終わっているのだ。この靴を履いていつもの道を歩くことはもうないのだと思うと、感慨深いものがある。

( ^ω^)「・・・高校生活も終わっちゃうのかお。ぶっちゃけ進路なんか決めてないお」




(`・ω・´)「いらっしゃい!バーボンハウスへようこそ!」
( ^ω^)「おはようだおマスター。今日も元気だお」
(´・ω・`)「無駄に早いな・・・まぁ良いか、コーヒー飲み終わってこれ読み終えるまで待て」

喫茶店バーボンハウスでは、まだ客のはいっていない店内でショボンがくつろいでいた。
店の中央のテーブルにわざわざコーヒーメーカーを持ってきて、おかわり自由、オレが王様的な雰囲気を醸し出している。
内藤はショボンの向かいの席に座りマガジンを広げた。
ちなみに取ってきたわけではなく、テーブルの上にあったマガジンだ。ショボンがもってきたのだろう。
バーボンハウスにある全ての雑誌がテーブルに山積みにされている。
この状況でなにも注文しないのはあまりにシャキンが可哀想なので、とりあえずコーラを頼む。
内藤とショボンは無言でページをめくり、店内にはつけっぱなしのTVニュースの音声だけが流れている。
構造欠陥偽装のニュースが終わり、次のニュースに切り替わった。

「昨晩から行方不明になっていた鹿児島漁協の船舶が洋上で発見されました。船内には人の姿はなく、警察は何らかの事故に遭遇したと見て捜査を―――」





(´・ω・`)「・・・今ひどいニュースを見た」
( ^ω^)「あーあー聞こえなーい・・・わきゃねーお・・・」

明らかに不吉な匂いのするニュースだ。
鹿児島県沖で漁船が行方不明で、しかも発見された時にはもぬけの殻。
TVに目を向けると、鮫島で見たあの船が映し出されている。
町田二人組を乗せていた漁船。
もぬけの殻というのだから、町田二人が逃亡したと考えるべきだろうか。

(´・ω・`)「あいつらが逃げたにしては・・・なぜ警官がいない。そもそも手錠をどうやって外したんだ?」
( ^ω^)「・・・警官が外さないと無理だお・・・公安の人はついてなかったのかお?」
(´・ω・`)「む・・・しまった、そうか・・・。公安がマークしているはずの町田に対して、あの警官は迅速すぎた・・・のか?いや、だが末端の巡査がたまたま動いただけかもという事もあるしな・・・」

あの警官が町田の協力者だったのだろうか。
しかしそれなら鮫島で内藤たちを襲えば良いのでは。警官だから拳銃を持っているだろうし、なにより内藤たちは気を抜いていた。
わざわざ連行する真似をしなくても簡単だ。

( ^ω^)「むぅ・・・抑止力としての警官がいるから町田は大人しかったんじゃ・・・それに海の上で姿を消すにしてもどうやって」
(´・ω・`)「抑止力、か。町田に対しての・・・つまり町田以外には警戒はなかった。町田以外であの船にいた人間・・・」
( ^ω^)「船の・・・持ち主・・・?漁師さん・・・なら、海の上で船を取り替える事も出来なくはないお」





(´・ω・`)「・・・はぁ。漁師か。もう、うん。ぶっちゃけ誰でも良い気がしてきたぞ。大体もう関係のない話だ・・・」
( ^ω^)「ちょ、そりゃそうだけど・・・むぅ。気にはなるけど確かに関係ないお・・・」
(´・ω・`)「だろう?そんな事より今日の晩飯を気にしたほうがずっと建設的だ」

あっさり頭を切り替えたショボンは再びマガジンに目を落とした。
内藤はまだニュースを見ていたが、確かに町田事件を追いかける必要がない今、そのことで頭を動かすのはカロリーの無駄だ。
もやもやは残るが、ある意味正論ではある。

( ^ω^)「はぁ。まぁ、分からなくもないお。ところで先生、卒業証書はまだ・・・」
(´・ω・`)「ん・・・あー何かもう面倒だな。ほれ、内藤。卒業おめでとう、これからもがんばれ、以上。わーぱちぱちぱち」

ショボンはマガジンを読みながら、傍らの鞄から適当に卒業証書を差し出してきた。
受け取った内藤に口で拍手を送りながらも、手はぺージをめくる。
軽く感動の授与式を期待していた内藤は、どうにもやるせない気分になった。
卒業証書を持ってきた鞄に入れると、鞄の中で携帯が震えていた。
震え続けているあたり、誰かからの電話のようだ。携帯を開くと、ツンという名前が表示されている。

( ^ω^)「もしもし?なん・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「なーいーとーうー!見た?ニュース見た!?ちょっと、もうあれよ、まだだったのよ!」
( ^ω^)「OK。時に落ち着くお、ツン」




ξ゚⊿゚)ξ「落ち着いてらんないわよ!ねぇ、どう思う?私的には警官か、もしくは漁師が怪しいんじゃないかと・・・」
( ^ω^)「今ちょっとその話したけど、良く考えれば捕まってる町田以外には警官と漁師しか居ないんだから、そりゃそのどっちかが怪しいに決まってるお」
(´・ω・`)「はっは、そりゃそうだ」

一度関係ないと考えてしまえば、客観的に物事を捉えられるようになる。
内藤は今まであくまで客観的な立場からの主観で町田事件を捉えていたが、今になってようやく真に客観的に考えられるようになっていた。
そもそも、単純に考えれば判ることこそが真理なのかも知れない。
昨日までは何故町田が後継を残すのか等と考えていたものだが、大雑把に考えてしまえば簡単なことだ。
単純に捕まりそうだから後継とするのか、もしくは自分の身代わりに出来るから。
まぁ、そんなところだろう。

( ^ω^)「ん・・・?ということは、町田が身代わりに後継者を乱造してるとすれば・・・町田ってのは今も・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「身代わりに・・・?そうか・・・偶然あの町田二人組みが私たちを囮に使おうとしたように、先代の町田も同じことをしていたのなら・・・!」
(´・ω・`)「おいおい、何か物騒な話してないか?頼むからもう首は突っ込むなよ・・・」

白熱するツンと、それに半ば引っ張られる内藤。
ショボンには内藤の声しか聞こえていないが、ツンのテンションが上がっているのは伝わってくる。
もう厄介ごとにならないように神に祈りながら、ショボンはコーヒーを飲み干した。





ξ゚⊿゚)ξ「うーん・・・だめね、エンジンかかっちゃった。今からそっち行くわ」
( ^ω^)「いや、来なくて・・・切れたお」
(´・ω・`)「・・・はぁ。あんまり首突っ込むと消される、なんて全然怖がってないなアイツは」

とはいえ、そういう人間こそが町田事件に近づけるのだろう。
鮫島事件に近付く者は公安に消される、という噂はある意味第一関門として機能しているようだ。
噂といっても、実際に公安は動いていたわけだが。
そのせいで貴重な情報を提供してくれたタカラも―――。

(´・ω・`)「・・・タカラ、だと?」
( ^ω^)「ん?どうしたお先生」
(´・ω・`)「・・・内藤。タカラは誰に殺されたんだ・・・?」

タカラは公安に殺された。そう言おうとして、内藤の口が止まる。
内藤たちは実際に公安に遭遇し、あまつさえショボンは公安の女のことを知っている。
公安は政府の下にある組織だ。それ故にアメリカでの内藤たちの動向等を察知しタカラを消した。
そう考えていたが、政府の組織がそうあっさりと自国民を消すだろうか。
それに鮫島事件に近付いた人間が公安に消されるのならば、内藤たちも消されるはずだ。





(´・ω・`)「だが俺たちは消されるどころか、内藤がいなくなった時には公安の一人が警備につきさえしていた」
( ^ω^)「じゃあタカラは・・・誰に?まさか町田がアメリカにも?」
(´・ω・`)「わからん・・・だが国外逃亡までしていたタカラを消すのは公安としても労力の無駄のはずじゃないか・・・」
( ^ω^)「とすると飛行機の中にいた公安の人も偽者・・・?」
(´・ω・`)「いや、あれは本物の公安みたいだぞ。少佐が部下が世話になったと言っていたからな」

飛行機の中でショボンが取り押さえた公安の人間。
内藤たちは今まで、自分たちを消すために飛行機に乗っていたのだと思っていた。
だがもし違うとすると、なぜあの飛行機に乗っていたのか。
偶然ではない。喫茶店で公安の女は自分からあの飛行機内の公安の話を振ってきた。
つまり、なんらかの任務で飛行機に乗っていて、それを公安の女は把握していたという事になる。
公安の任務で、アメリカ帰りの飛行機。
別件の可能性もあるが、おそらくは町田事件関係。タカラ目当てだったのではないか。

( ^ω^)「タカラの保護、または接触が目的だったのかお?」
(´・ω・`)「だが、それは叶わなかった。タカラが何者かに消されたために、情報を渡された俺たちに接触を・・・」
( ^ω^)「・・・それなら、何でつーさんに接触しなかったお・・・?公安なら妹の存在くらい知っているはずだお」




(´・ω・`)「む・・・つーが言うにはタカラは戸籍なんかも処分して・・・いや、それもおかしいか?」

戸籍を処分していたとしても、公安はタカラを見つけ出している。
となれば、当然その捜査の途中で妹であるつーの存在も、つーが情報を持っている可能性も浮き出てきたはずだ。後手に回していたとしても、タカラが殺されたのならばつーに接触するはず。
だが、つーはそんな事は話さなかった。

( ^ω^)「・・・タカラはアメリカで、情報は全部話したと言ったお。けど、実はまだ続きがあって、つーさんはその続きを知っていて・・・」
(´・ω・`)「・・・つーを疑っているのか?内藤・・・」
( ^ω^)「・・・いや・・・けどまぁぶっちゃけ怪しくなって・・・いやいやいや・・・」
(´・ω・`)「・・・たが確かに怪しい、ような気がしてきたな・・・」

怪しいという前提で考えれば、確かに怪しい。
内藤がいなくなった時点で偶然ショボンと合流したこと。
そこで偶然タカラの妹で、タカラが隠していた情報をもっていたこと。
あげく、今まで鮫島事件に興味があるような気配がなかったドクオまで連れてきたこと。
そして、内藤にはもう一つ気に掛かることがあった。

( ^ω^) (僕を襲ったのは二人組み・・・つーと・・・ドクオも、
二人組み・・・だお)





(´・ω・`)「・・・そういえば喫茶店でダディと会った時にも、偶然現れたな」
( ^ω^)「・・・いや、まぁ、きっと偶然だお。友達を疑うなんてのは・・・」

たしかにドクオとつーを疑うのは気分が悪い。
しかし疑って掛かると、それはそれで一つの説が成り立つ。
内藤たちが町田事件を調べ始め、公安がそれを利用し、ビデオ回収の罠に使った。
それを察知した町田たち。つまりつーとドクオは、偶然を装って喫茶店バーボンハウスへ現れ、内藤たちの話を盗み聞くことが出来る席に座った。
その会話から罠であると感付いたのか、つーとドクオはビデオの罠を回避し公安をかわした。
その後、知りすぎた内藤たちを消そうと手始めに内藤を襲い、鮫島に送る。次に狙う予定だったのかも知れないツンが内藤を追い鮫島に向かい、その手間は省けた。
あとは鮫島にショボンを連れて行って三人を消せば、町田事件の不気味さをさらに増しつつ、障害を取り除くことが出来る。

( ^ω^)「疑うなんてのは・・・ダメ、だお・・・」

さらに、タカラだ。
公安に消されたとばかり思っていたが、それも確度が失われてきた。
もちろん、つーとドクオがわざわざアメリカまで行って殺してきたとは言わない。
だが、もしも万が一。タカラも町田側の人間だったら。
何故内藤たちに情報を渡したのかはわからないが、町田側の人間だとすると誰が殺したのかはわかる。おそらく、タカラは自殺したのだ。役目を終え、公安を煙に巻くために。
町田側の人間だからこそ、あのタイミングで都合よくつーが妹役で出てくることも出来る。

( ^ω^)「・・・」





( ^ω^)「・・・いやいや。あんな事件に巻き込まれたから頭が休まってないみたいだお。それはさすがにねーよ・・・」
(´・ω・`)「なんなんださっきから?」
( ^ω^)「なんでもないお。ちょっとツンに影響されてるみたいで・・・変なことを考えてしまうお」

思考を振り払おうとする言葉とは裏腹に、内藤の脳は稼動し続ける。
つーとドクオが町田の人間だとしたら、鮫島でなぜ動かなかったのか。
あの日、内藤とツンが鮫島から出れた日。
つーとドクオはショボンに協力するという自然な形で鮫島に上陸し、内藤とツン、ショボンという消したい人間を集めた上に、町田二人組とつー、ドクオが揃うという理想的な形で、鮫島には役者が揃っていたはずだ。
後は消すだけだったろうに何故そうしなかったのか。

( ^ω^) (・・・警察・・・あれは本物?もし本物の警官だったんなら、動けなかった理由も・・・なら、無人になって発見された船とかは・・・まさか・・・)

鹿児島からの帰りで、車に乗ったのは内藤とツン、ショボンだけだ。
つーとドクオは気を利かせて内藤たちを先に帰らせ、自分たちは後で電車か何かで帰ると言っていた。
そして、重要な参考人であるはずの町田二人組は、公安の手に渡る前に洋上で姿を消した。
今までの仮説とはまた違った説。
既に把握できないような段階になった町田事件への考察に対して、内藤はひとつの答えを出した。

( ^ω^)「・・・やっぱさっき言ったとおり気にしないでおくお。もう関係ないお」
(´・ω・`)「結局はそこに落ち着くか・・・だが、もう一山くるみたいだぞ」

内藤がようやく思考を切り替えたというのに、ショボンが指差した向こうに、自転車を漕ぐツンの姿が見えた。
生まれて始めて内藤は、意中の相手を見て顔をしかめた。





ξ゚⊿゚)ξ「それで私的には漁師や警官が怪しいとするともう町田っていうのは国家的な・・・そう、参議院と衆議院みたいな関係で・・・」
( ^ω^)「先生、そろそろ昼だお。ランチただになったりしないかお?」
(´・ω・`)「俺に聞くな」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・ちょっと内藤聞いてんの?」

喫茶店にツンが現れてから数時間、ツンはずっと話し続けていた。
町田事件の鍵である鮫島事件以下都市伝説の組み立て方、その真相についての推理から始まり、今や町田事件イコール政府内での二分勢力による主権争いへと発展している。
実際そうだとしたら数々の事件が少しばかりショボい訳だが、知られていない大きな事件があった可能性もないわけではない。
ないわけではないが、可能性は低いというかぶっちゃけありえない。

( ^ω^)「二分勢力が云々だとしたら町田事件はなんのために起きたんだお?ビデオ売ったり人消したりするよりもっとこう・・・なんかあるお」
ξ゚⊿゚)ξ「フ・・・そこで2000年5月以前の自衛隊機のスクランブルや警察の警戒強化、鮫島代議士絡みの事件が出てくるわけよ。そうすれば真実味が・・・」
( ^ω^)「あーそれはすげー。もう良いじゃないかお、ツン。町田事件はもう僕たちには関係ないお。それより今日のランチセットはAかBか、それが重要だお」

実際ランチセットなどどちらでも良いが、内藤はもう町田事件の事を考えたくなかった。
内藤たちは随分と近づいたのだろうが、それでも謎がありすぎる。
ありすぎる疑問はあらゆる仮説の可能性を内包し、身近な人でさえ怪しく思えてくる。
都合のよすぎる展開で登場したつーとドクオ、挙句、疑おうとすればツンさえ疑えてしまう。
しかもその疑問に答えが出たとしても、内藤には何の得もない。
片足どころか両足を突っ込んだが、犬にかまれたと思って忘れるのが一番懸命だと内藤は判断した。





ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ真実がわかっても別に得はないけど・・・気になるのよねぇ・・・」
( ^ω^)「気になるのはわかるけど、触らぬ神に臭い蓋だお」
ξ゚⊿゚)ξ「むぅ・・・最初はノリノリだったのにつまんない・・・はぁ~、ロマンがないわぁ」

ため息をついて、ツンはランチセットAを注文する。
内藤もそれにならいBセットを注文し、ショボンはテーブルに積み重なった雑誌をせっせと本棚に戻しはじめた。
昼飯時になると客もはいってきて、ようやく喫茶店らしい雰囲気が出てくる。
近くの工事現場のおっちゃんや隠居したおじいさん、外回りのサラリーマン等が入店する中で、内藤が今あまり会いたくない友人の姿が見えた。

('A`)「ちっす」
(*゚∀゚)「あらら、内藤君たち何気に常連ねー」
( ^ω^)「・・・こんにちわだお」

普段と変わりない様子で、ドクオとつーはいつかのように内藤たちの隣のテーブルに座る。
日常の光景なのに、ツンと談笑するつーが別人のように狡猾に思えてしまう。
雑誌を読んでいるだけのドクオにさえ、何か得体の知れない企みがあるような。
もう考えまいと思っても、ドクオとつーが町田側の人間だとする仮説が頭の中で組みあがっていく。
内藤はその考えを振りほどけずに、昼食を終え立ち去っていくドクオとつーの後を一人で追いかけた。




内藤がついてきていることを知っているだろうに、ドクオとつーは振り向きもしない。
たわいない会話を続けながら歩くドクオとつーに、内藤の疑惑は膨れて言った。

( ^ω^) (・・・気付いているはずだお。なんで何も話しかけてこないお?)

喫茶店バーボンハウスの周りはどちらかというと寂れている。
人気も少なく、昼間から外を歩いている者はいない。
ドクオとつーは喫茶店の近くのとおりにある駐車場に止めてあったバイクに乗ろうとして、ようやく内藤に気がついた。

('A`)「あ?内藤?・・・なにしてんだお前?」
( ^ω^)「・・・いや、ちょっと話でもしようかなぁと・・・」
(*゚∀゚)「・・・?」

ドクオとつーはいつもと何も変わらない様子だった。
内藤がそれでも自らの疑惑をぶつけたかったのは、一重に自分の考えを否定したかったからだろう。
友人にかける言葉ではないと思いながらも、内藤は口を開いた。

( ^ω^)「かなり良くないこと聞くけど・・・ドクオ、町田のこと知ってるんじゃないかお?いや、というよりも、ドクオが・・・」
('A`)「・・・俺が?まさか町田なんじゃないかってのか?」





( ^ω^)「・・・そうだお。そう考えれば辻褄があう気がするんだお・・・そう考えてしまう自分がいるお。それを確かめて、安心したいんだお」
('A`)「あーその、お前・・・なんだ、ノイローゼか?なんつーかかんつーか、大分キてるなぁ・・・」

呆れたような顔で、ドクオは先を促した。
内藤がぶつける疑問に答えようとするが、答えにくそうだ。
例えばなぜ都合よくドクオが鮫島事件に興味を持っていたのかと聞かれても、そんな事を言われても、と答える。
ドクオ本人からすれば、そんな事を言われても興味があったものは仕方がないとしか言いようがない。

( ^ω^)「それにあの日、ドクオたちは僕とツンを車に乗せて後から・・・そして、船は洋上で・・・」
('A`)「んな事言われてもなぁ・・・普通に俺たちはバスで帰ったし、船がどうこう言われてもぶっちゃけんなこた知らねぇって」
(*゚∀゚)「考えすぎよ内藤君。もし本当に私たちが町田な人だったら、今頃内藤君海の底とかじゃない?」
( ^ω^)「う・・・確かに、鮫島で消すのが自然だろうし・・・うむむむぅ・・・考えすぎかお?」
('A`)「もう良いじゃん、誰でも。害がなけりゃほっとけきゃ良いんだって」
( ^ω^)「・・・まぁ、そうだお。どうかしてたお、まだ疲れてるみたいだお・・・ごめんお」

喫茶店から今までで膨れ上がった疑惑が急速に晴れていく。
さも当然のように返されては、自分の考えすぎだったと痛感する。
適当にフォローしてくれたドクオを見送って、内藤は喫茶店に戻った。
どこか釈然としないが、憑き物が落ちたような感じはする。
もう気にしないと、内藤は何度目かわからない決心をした。





(´・ω・`)「わかったから落ち着け、ツン。だんだんSFチックになってるぞ・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「だから先生、きっと町田思想っていうのは秘密結社の世界征服計画で・・・」
( ^ω^)「・・・まだやってたのかお」

喫茶店では昼食を食べ終え元気を取り戻したツンが、ショボンに新説を語っていた。
ツンの新説は荒唐無稽の域に達していたが、内藤の考えもそれと似たようなものだったのかも知れない。
好奇心というのは本当に恐ろしい。少しの材料と無限の可能性があれば、どんな話でも作り出せてしまう。

( ^ω^)「本当に怖いのは人の想像力だお。くわばらくわばら・・・」
(´・ω・`)「なんだ、悟ったな内藤」
ξ゚⊿゚)ξ「その想像力が事件解決に繋がるのよ、内藤」
( ^ω^)「まぁ結局推理しても町田思想てのがわからないと手詰まりってのに変わりないお。ツンも諦めようお」
ξ゚⊿゚)ξ「う・・・わかってるわよ、それくらい・・・だから楽しんでるのに」

結局、推理を繰り返してもそこにたどり着く。
答え合わせのためには町田思想の具体的な中身という採点ペンが必要だ。
それがわからない以上、推理は推理でしかない。
ツンもそれをわかっているから、飛躍した推理を楽しみながら展開していたのだろう。

(´・ω・`)「思想ね・・・お前らが町田を名乗れば分かってくるかもしれんな」





( ^ω^)「・・・はい?」
ξ゚⊿゚)ξ「私達が町田を名乗る?」
(´・ω・`)「そうしてりゃいつか本物が教えてくれるかも分からんし、自分で気付くかも知れんぞ?」
( ^ω^)「またそんな爆弾を・・・やめてほしいお、先生」
ξ゚⊿゚)ξ「興味はあるけどさすがに犯罪者になろうとは思わないわ」
(´・ω・`)「・・・そうか、いや冗談だよ。本気にするなよ?」
( ^ω^)「さすがに本気にはしないお。先生もツンに当てられたのかお?」
(´・ω・`)「ツンの話を聞いてると頭がやられてなぁ・・・困ったもんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「なによそれ、私が変な人みたいじゃないの・・・」

こと町田事件に関しては軽く変人だ。
内藤の突っ込みに反応したツンと内藤によってバーボンハウスは俄かに騒がしくなる。
朝から随分長い間喫茶店に居座っていたこともあり、内藤とツンは店を出ることにした。
二人はショボンとシャキンに見送られて帰路につく。
春休みが終われば、内藤とツンには新しい生活が待っている。
こうして喫茶店に来るのも、もしかしたら最後かもしれない。

( ^ω^)「そうだお、今から忙しいはずだお・・・町田事件なんて忘れようお」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・そうね、たしかに忙しいもんね。気になるけど・・・」










(`・ω・´)「・・・良かったのか?骨を折ったんだろう?」

客のいなくなった喫茶店バーボンハウス。
カウンターでコップを磨きながら、独り言のようにシャキンは呟いた。
言葉を向けた相手は、もっとも真実に近い二人。
手駒を増やそうと事件に巻き込み、それを助けつつ町田という好奇の罠に嵌めようとしていた者と、その同胞。

(´・ω・`)「まあな・・・けどま、興味が尽きなければいつかはこっちに来るだろう。思想を知るためにな」
(*゚∀゚)「ふふ・・・私たちもしらない物を餌に釣ろうなんて可笑しな話ね」

町田思想などという物を知っている人間が本当にいるのかはわからない。
だが、人の好奇心は尽きないものだ。そして事実不可解な事件も起きている。
その謎を解くことが無意味だと分かっていながらも、人は謎を解きたがる。
そのために、謎に扮する。それが町田の1つの形とも言えるだろう。
その昔事件を起こした人物と、その思想を受け継いだ人物。
そうして続いてきた事件に魅かれ、謎を解こうとした者。
それぞれの思いが絡み合い、それは現実に事件を起こし続けるような、決して小さくない力となった。
だから魅かれた者はかつての事件を模倣したり、情報を小出しにして新しく興味を持つ人間を作る。
かつて自分たちがそうされたように。

(´・ω・`)「わかってはいるが・・・人の業という奴だろうな」










内藤とツンはそれぞれ新しい生活に忙殺された。
内藤は就職し上司にこき使われ、ツンは大学にはいり勉学にいそしんだ。
季節は夏に差し掛かり、ツンは大学の夏休みを利用して地元に帰ってきた。
その足はバーボンハウスへ向かう。
おそらくあの喫茶店では今日もかつての担任が寛いでいるだろう。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・内藤には悪いけど、どうしても我慢できない。バカね、私って・・・」

喫茶店のドアを開けた先には、いつものようにコップを磨いているシャキンと、真ん中のテーブルでコーヒーを飲んでいるショボン。
そして、ショボンの向かいに座るつーの姿があった。

ξ゚⊿゚)ξ (ショボン先生とつーさんの二人組みなんて珍しいわね・・・)

その日、町田を名乗る人間が一人増えた。
好奇心故に謎に近づき、さらに謎の根源に扮する。
こうしてさらに町田事件は難解になり続け、誰もが忘れない限りこの日本からなくなることはない。
だからいつか、どこかの掲示板に再びあの書き込みがあるだろう。

鮫島にいる、と。









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